表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束  作者: おがわかなた
9/10

約束 第9話

安齋はいつも通り、階段中腹で胸が痛くなり、

いつものベンチで休憩することが、

日課となっていた。

いつもの光景、いつもの行動をしていたが、

1点だけいつもと異なっていた。

「顔色悪いですけど、どうかしたのか?」

1人の青年が声をかけてきた。

「・・・・・・」

その青年が隣のベンチに腰掛ける。

このご時勢、声をかけてくれる人なんて珍しい。

この為、安齋は驚いてしまったのだ。

しかし、見ず知らずの人間である。

いざ声をかけられると、疑念を持たざるを得ないのである。

「浮かない表情だな」

そう言いながら、その青年は横のベンチに座った。

彼はうつむいたまま、沈黙を守る。

初対面で素性が分からない。

自分の置かれた状況を話すことではない。

何より、『宗教勧誘ではないか』と感じたのだ。

彼は沈黙を続けている。

そうすると、彼は、名刺を渡してきた。

そこにはこう書かれていた。

『厚川探偵事務所 厚川光矢(あつかわこうや)

「探偵さん?」

青年は黙ったままだった。

『なぜこ」の青年は私に声をかけてくれたのか』

頭の中で、情報が錯綜する。

『宗教勧誘では?』

考えるほど、

しかし、答えがでるはずもない。

「どうするか?」

そう迷っていると、

「部下の橋上さんから依頼されている」

「!!」

橋上の名前を知っている、それだけで信用できない。

しかし、次の言葉は信頼に値するものだった。

「橋上さんも心配していたぞ。

 課長にミルク2個入れたコーヒーはいつだせるんだろうって」

その場を足音と電車の音が支配する。

冷たい風を2人に吹きかかる。

「・・・・・・課長職を務めながらプロジェクトの統括もして

 おりました。 そのプロジェクトは人間関係のこじれより、

 私が課長職と兼務することになりました」

「大変だな」

「部下達の頑張りもあり、そのプロジェクトは最終段階まで

 いきました。お客様の提案の時に、失敗をしてしまいました。

 そのせいできっと、プロジェクト自体は失敗してしまっている

 と思います」

「会社に確認したのか?」

「いや。

 それ以降、会社にも行けていないし、電話でも聞いていない」

「聞かなきゃ、分からないだろう」

「・・・・・・」

安齋は以降、黙り込んでしまった。

「それで、いつもここで立ち止まる」

「そうです……」

彼はうつむいたまま黙ってしまった。

「安齋課長!」

女性の声がした。

「橋上さん」

スーツを着た女性が寄ってきた。

しかし、彼はその男女から目を背けた。

今まで、会社にいけずに逃げ回っていた自分を誰が許してくれるだろう。

あわせる顔がない為、顔を上げることができない。

「課長、顔を上げてください」

顔を上げることができなかった。

しかし、ある一言で彼の気持ちが一変する。

「あのプロジェクト、成功しました。

 うちの会社のシステムを使ってくれるそうです」

「えっ、本当か?」

「約束したじゃないですか、必ず成功させるって!」

「本当か?」

「そうです。

 課長がいなく(・・・)なってから大変でした。

 でも、皆頑張ってプロジェクトを継続したんですよ。

 プロジェクトマネージャとも和解して、今ではお互い信頼関係で結ばれてますよ」

「そうか、そうなのか、、、」

再び顔を伏せてしまう。

こんなに休みがちな課長を誰が許してくれるのか。

会社だって、解雇の方向に向かっているはずだ。

「かちょう、、、」

彼女の目には涙が溢れていた。

「お、おい、泣くことないだろ」

「私達、課長にプロジェクトマネージャ兼務する事になった時に

 仰っていた言葉に励まされたんです。

 このプロジェクトはとても面白い物だ、成功させよう、約束だぞ、って。

 シンプルだけど、ちょっと視野が狭くなっていた私達の心に響きました。

 その後は、シンプルに考えることができるようになり、成功したのですよ」

「そうか、そうなのか、、、」

「課長、会社や私達の心配はしないで下さい。

 必ず、この会社を大きくしてみます。

 課長の夢を私達の手でかなえてみます」

「だから、課長、安心してください」

「そろそろ時間です」

光矢が、この後の言葉を遮った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ