第7話 ミラは、もう一度誰かを救いたい
旧型救難船の中で、小型整備ロボット《ピコ》を再起動させたレンたち。
船体は深刻な損傷を受け、必要な部品の一部は違法回収業者ロック・バルドの保管庫にある可能性が高い。
部品を直接奪いに行けば、再び戦闘になる。
その前にレンたちは、船の制御中枢に残る救難AIを目覚めさせ、旧救難船の緊急権限を取り戻そうとする。
『レン、睡眠時間、短い』
目を開けた瞬間、ピコの単眼が視界いっぱいにあった。
「近い……」
『生体確認に必要』
「顔の上で確認しなくてもいいだろ」
『呼吸音、不安定』
「寝起きだからだ」
『反論、根拠不足』
俺は硬い床へ手をつき、ゆっくり身体を起こした。
格納庫には、ガイが設置した携帯照明が淡く灯っている。
船内に朝も夜もない。
それでも、身体の感覚では数時間ほど眠ったらしい。
左肩の傷が痛む。
胸にも鈍い痛みが残っている。
指先を動かす。
右手。
左手。
両方とも動いた。
脚にも感覚がある。
完全に回復したわけではないが、昨日よりはましだった。
「レナは?」
『右前方』
ピコが作業腕で指す。
レナは少し離れた壁際に座っていた。
眠っているように見える。
だが、金色の瞳は閉じていても、姿勢は崩れていない。
右手はVOLT ARCの柄へ添えられたままだ。
「休んでるのか?」
『低出力待機』
「眠ってない?」
『周辺警戒を継続』
「昨日からずっと?」
『肯定』
俺は立ち上がり、レナへ近づいた。
足音に反応し、金色の瞳が開く。
「おはよう」
「現在の標準時を確認できないため、その挨拶が適切かは不明です」
「起きたときは、おはようでいいだろ」
「あなたの文化的習慣ですか?」
「たぶん」
レナは立ち上がろうとした。
右脚がわずかに遅れる。
すぐに壁へ手をつき、倒れるのを防いだ。
「無理するな」
「無理はしていません」
『レナ、虚偽』
「ピコ」
『昨夜から右脚駆動出力、十一パーセント低下』
「黙ってください」
『診断機能を停止する理由なし』
「そこまでにしておけ」
ガイの声が格納庫の奥から聞こえた。
振り返ると、大型工具と太い配線を抱えて歩いてくる。
作業着には新しい油汚れが増えていた。
「寝てなかったのか?」
「寝た」
「いつ?」
「お前が寝た後に一時間」
「それは寝たって言わないだろ」
「工場じゃ普通だ」
「この船は工場じゃない」
「直す物がある場所は、全部現場だ」
ガイは床へ配線を置いた。
金属同士が重い音を立てる。
「中央制御区画までの非常電力線を調べた」
「通せそうか?」
「今のままじゃ無理だ」
ガイは船内図を投影した。
格納庫から修理区画。
修理区画から船体中央。
その先に制御中枢。
途中の数か所が赤く点滅している。
「三番電力路が焼けてる。四番は船体ごと切断。生きてるのは二番だけだが、途中で隔壁に挟まれてる」
「それを直せば、ミラまで電力が届く?」
「最低限はな」
「主動力を起こすほどじゃねえ。中枢へ呼びかける程度だ」
レナが船内図を確認する。
「二番電力路は《REPAIR DECK》を経由しています」
「ああ」
ガイがうなずく。
「修理区画までは行ける。そこから先は隔壁を手で開ける必要がある」
「人力で?」
「船内電力がねえからな」
ガイは自分の右腕へ装着された《HEAVY GRIP》を叩いた。
「俺が開ける」
「あなた一人では危険です」
レナが言った。
「隔壁の重量は?」
「旧救難船なら、手動開放時でも数百キロはある」
「固定が途中で外れれば、挟まれるな」
ガイは平然と答えた。
「その場合、私が支えます」
「その脚で?」
「上半身の出力には余裕があります」
『余裕、限定的』
「ピコ!」
「事実だ」
ガイはレナを見た。
「全力を出したら、お前も止まる」
「それでも、あなたが挟まれるよりは合理的です」
「勝手に停止される方が面倒だ」
「二人とも、一人でやる話にしないでくれ」
俺が言うと、ガイとレナが同時にこちらを見た。
「俺も手伝う」
「細腕は邪魔だ」
「現在のレンに、隔壁を支える筋力はありません」
「分かってる」
即座に二人から否定された。
「力で支えるんじゃない」
「ガイが開けて、レナが固定する。その間に俺が安全ロックを探す」
「構造を知っているのか?」
「知らない」
ガイの眉が動く。
「でも、流れは見えるかもしれない」
「また、それか」
「物理的に壊れてるなら何もできない。けど、ロック命令が途中で止まってるだけなら、場所は分かる」
ガイは少し考えた。
「勝手に能力は使うな」
「見るだけにする」
「それも能力じゃねえのか?」
「触れなければ、消耗は少ないと思う」
「思う、で始めるな」
「では、先に状態を確認し、使用する場合は申告してください」
レナが真剣な目を向ける。
昨日交わした約束。
一人で決めない。
俺はうなずいた。
「分かった」
『会話記録、保存』
「ピコ、何のために?」
『約束違反の確認』
「厳しい監視役が増えたな」
『必要』
◇
《REPAIR DECK》へ続く通路は、格納庫よりも損傷がひどかった。
壁面の一部が大きく裂け、船外から流れ込んだスクラップが通路を塞いでいる。
完全な無重力ではない。
弱い重力が斜めに働き、足元の金属片が一方向へ集まっていた。
「歩きにくいな」
「重力制御板の一部だけが生きています」
レナが壁へ触れる。
「船内基準では、現在の下方向は左前方です」
「床が床じゃないのか」
「人工重力が正常なら、現在立っている面が床です」
「壊れると、こうなるのか」
「通常は区画ごとに停止するため、複数方向へ重力が発生することはありません」
レナが少し間を置く。
「この船は、異常な状態で長く耐えています」
その言い方には、わずかな敬意があった。
ガイが前方の金属板を《HEAVY GRIP》で持ち上げる。
俺とレナ、ピコが下を通過。
最後にガイが板を脇へ押しやった。
「救難船は壊れてからが仕事だ」
「どういう意味?」
「事故現場へ行く船だ。破片が飛んでくる。爆発にも巻き込まれる。損傷したまま救助を続ける前提で作られてる」
ガイは壁に残る古い傷を見た。
「こいつは一度や二度じゃねえ」
「何度も壊れながら帰ってきた船だ」
その言葉を聞くと、船内に残る淡い光が少し強くなったように感じた。
この船は何人を運び、何人を助けたのだろう。
そして最後に、誰を帰せなかったのか。
通路の先に、分厚い隔壁が見えた。
中央が歪み、半分ほど閉じた状態で止まっている。
下には、人が一人通れるかどうかの隙間。
ピコなら通れるが、俺たちは無理だ。
「これか」
「二番非常電力路は、この隔壁の向こうです」
レナが答える。
ガイは隔壁の側面にある手動開放口を外した。
内部には大きな歯車と油圧機構がある。
「圧力は抜けてる」
「開けるぞ」
ガイが《HEAVY GRIP》を開放レバーへ接続。
低い駆動音。
隔壁が数センチ持ち上がった。
金属の軋む音が通路へ響く。
「重いな……!」
ガイの腕へつながる補助装置が震える。
隔壁は動くが、途中で何度も引っかかる。
「右側が歪んでいます」
レナが隔壁の下へ左腕を差し入れた。
「待て!」
「補助します」
金色の光がレナの腕へ集まる。
人工筋肉がわずかに膨張。
二人の力で隔壁がさらに上がる。
俺は側面の機構へ近づいた。
複数の歯車。
油圧管。
安全ロック。
どれが正しい位置なのか分からない。
だが、目を凝らすと淡い流れが見えた。
隔壁の制御命令。
開放。
停止。
落下防止。
そのうち、落下防止の経路だけが途中で暗くなっている。
「レナ、今から接続状態を見る」
「使用強度は?」
「ピコのときより浅くする」
「時間は?」
「一秒か二秒」
「二秒を超えないでください」
「分かった」
俺は安全ロックの外装へ手を触れた。
淡い光が指先へ集まる。
深く入らない。
命令の流れだけを見る。
ロックの機械部は残っている。
だが、隔壁の位置情報が誤っている。
閉じているのに、完全開放と判断していた。
「角度センサーが逆の情報を出してる」
「どれだ!」
ガイが叫ぶ。
「奥の黄色い線、その先の小さい箱!」
ピコが隙間へ入り込む。
『対象確認』
小さな作業腕を伸ばし、部品を外す。
『センサー、破損』
「予備信号に切り替えろ!」
『実行』
隔壁内部で、カチッと音がした。
落下防止用の爪が展開。
隔壁の左右へ食い込む。
「固定された!」
俺が手を離す。
「二秒以内です」
レナが確認する。
「ちゃんと数えてたのか」
「当然です」
「お前ら、話は後だ!」
ガイが隔壁の下から腕を抜く。
レナも力を解除した。
隔壁は落ちない。
人が通れる高さまで開いている。
俺たちは順番に向こう側へ進んだ。
ガイが最後に通過すると、隔壁の固定具が小さく軋んだ。
「長くは持たねえ」
「帰りは?」
「別の固定材を入れる」
ガイは周囲の柱を見回した。
「戻るときに考える」
「行き当たりばったりだな」
「現場はいつもそうだ」
◇
修理区画は、船内のほかの場所より整理されていた。
工具棚。
部品保管庫。
小型作業アーム。
壁面には、過去の修理記録が刻まれている。
電力がないため表示は消えているが、ピコが端末へ接続すると一部が浮かび上がった。
『最終修理記録』
『左推進器、交換延期』
『主動力炉制御弁、寿命超過』
『船体補強材、不足』
ガイの表情が険しくなる。
「出航前から壊れかけてたのか?」
『記録、一部欠損』
「最後の運航は?」
『救難要請により、緊急出航』
「交換を待たずに出たのか」
「救助要請が優先されたのでしょう」
レナが静かに言った。
「救難船としては、正しい判断です」
「帰れなければ次を助けられねえ」
ガイが答える。
「正しいだけじゃ現場は回らん」
レナは反論しなかった。
船体の奥へ進むと、大きな電力盤があった。
扉は半分外れ、内部の配線が露出している。
太い主線が焼け、黒く変色していた。
「これをつなぐ」
ガイが格納庫から運んできた太い配線を床へ置く。
「本来の規格じゃねえ。主動力には使えない」
「制御中枢への非常電力だけなら持つ」
「どれくらい?」
「五分」
「短いな」
「溶けるまでなら七分」
「五分で切ろう」
「その方がいい」
ガイが配線の外装を切り、内部の導体を露出させる。
俺が手伝おうとすると、工具を渡された。
「この固定具を押さえろ」
「俺でもできる?」
「押さえるだけだ」
「細腕でも?」
「落としたら外に出す」
俺は両手で固定具を支えた。
重い。
腕がすぐに震え始める。
レナが隣へ来た。
「代わります」
「これぐらいはできる」
「震えています」
「鍛えるなら、少しは使わないと」
「今は訓練ではありません」
「無理なら言う」
レナは俺の手元を見つめる。
「限界になる前に言ってください」
「分かった」
ガイが新しい配線を接続する。
ピコが絶縁材を巻きつける。
レナはVOLT ARCを最小出力で使い、接続部分へ精密な電流を流した。
「電気で溶接するのか?」
「接触面の分子配列を整えています」
「それは溶接と違う?」
「大きく違います」
「説明は後にしろ」
ガイが別の端子を固定する。
数分後。
焼けた電力線の横に、太い応急配線が完成した。
「通すぞ」
ガイが手動スイッチへ触れる。
「ピコ、電圧を見ろ」
『待機』
「レナ、異常が出たら切れ」
「了解しました」
「レン」
「何?」
「倒れるな」
「努力する」
「守れって言っただろ」
「分かった」
ガイがスイッチを押し込んだ。
低い振動。
応急配線の内部を青い光が走る。
船内の奥で、何かが一つずつ目覚めていく。
天井の照明が点滅。
一つ。
二つ。
半分は点灯せず、残った照明もすぐに暗くなる。
それでも、完全な暗闇ではなくなった。
『電力供給、安定率四十一パーセント』
「中枢は?」
『応答なし』
「もう少し上げる」
ガイが出力を調整。
配線が震える。
『五十二パーセント』
『中枢から、微弱応答』
頭の中に、再び淡い声が届いた。
『……乗員……確認……』
「ミラ」
俺は名前を呼んだ。
返事はない。
だが、船の奥へ集まる光が強くなっている。
「中枢へ行く」
「この電力線は放置できない」
ガイが言った。
「俺とピコはここに残る」
「レンとレナで中枢へ行け」
「ガイがいなくて大丈夫か?」
「物理的な問題があれば戻ってこい」
「それ以上は、お前らの仕事だ」
レナが船内図を確認する。
「制御中枢までは直線で約八十メートル」
「ただし、扉が二つあります」
「非常電力が通ったなら、手動開放できるはずだ」
ガイは俺へ目を向ける。
「五分だ」
「時間を超えたら、こっちで電力を切る」
「途中でも?」
「配線が燃えたら船ごと終わる」
「分かった」
『残り四分五十二秒』
「もう数えてるのか」
『当然』
◇
制御中枢へ続く廊下に、淡い非常灯が点灯していた。
赤い光が一定間隔で並んでいる。
医療区画の白とは違う。
それでも、点滅する照明を見ると少しだけ胸がざわついた。
「呼吸が速くなっています」
隣を進むレナが言う。
「大丈夫」
「その言葉の信頼性は低いです」
「前よりは平気だ」
「右手を動かしてください」
「また?」
「確認です」
俺は歩きながら、右手を握って開いた。
「左手」
同じように動かす。
「問題ありません」
「ありがとう」
「礼は不要です」
レナの歩みが少し遅れる。
「レナの方は?」
「何がですか?」
「右脚」
「移動には支障ありません」
「本当?」
「……支障はありますが、進行可能です」
「正直になったな」
「ピコの影響です」
「俺じゃないんだ」
「あなたの影響だと認める理由はありません」
最初の扉へ到着。
レナが操作盤へ手を置く。
画面に古い認証表示が浮かぶ。
**EMERGENCY RESCUE ACCESS**
「救難優先権限が残っています」
「開けられる?」
「試します」
レナが航路監査官としての認証を入力。
画面が一度赤く点滅した。
**CURRENT AUTHORITY INVALID**
「拒否された?」
「この船の登録年代が古すぎます。現行認証と互換性がありません」
「じゃあ手動で」
扉の横にあるレバーを二人で引く。
内部で歯車が回り、扉がゆっくりと開く。
その先に、円形の部屋が見えた。
中央には、壊れた操縦席。
周囲を囲む立体表示装置。
天井から伸びる何本ものケーブル。
奥に、縦長の透明な制御装置がある。
その内部。
小さな金色の光が、ゆっくりと点滅していた。
「ミラの中枢です」
レナが言った。
『残り三分二十四秒』
ピコの通信が届く。
「急ごう」
俺たちは中枢へ近づいた。
制御装置の表面へ触れる前に、俺はレナを見る。
「接続する」
「深度は?」
「サーティーンより深い。でも、レナのときみたいに人格の奥へは入らない」
「目的は?」
「ミラ本人の起動経路と、壊れた命令を分ける」
「失われた記憶は?」
「作れない」
俺は答えた。
「残ってるものだけをつなぐ」
レナは一度うなずく。
「二十秒を上限とします」
「短くない?」
「船内AIは複雑です」
「危険が確認された場合、私が強制的に接続を切ります」
「どうやって?」
「あなたを引き離します」
「乱暴だな」
「倒れるよりはましです」
俺は制御装置へ手を置いた。
冷たい。
「ミラ」
声をかける。
「聞こえるか?」
金色の光が点滅した。
『……救助対象……』
「俺はレン」
「この船を直したい」
『乗員……登録……なし……』
「そうだ」
「俺たちは正規の乗員じゃない」
『不正……侵入……』
周囲の装置が一瞬赤く光る。
警戒されている。
それでも、攻撃装置は動かない。
動かせるほどの電力もないのだろう。
「勝手に入って悪かった」
「でも、この船を飛ばさないと助けられない人がいる」
『救難……対象……』
「レナと、俺と、この星で治療を受けられない人たち」
反応が止まる。
「ミラは、まだ誰かを助けたいか?」
金色の光が揺れた。
『救助任務……未完了』
「飛びたい?」
『乗員を……帰還……』
「それが、ミラの望みか?」
機械に望みという言葉を使っていいのかは分からない。
だが、サーティーンのときと同じだった。
命令でもいい。
学習の結果でもいい。
残っているものが、どこへ向かおうとしているのかを聞きたかった。
長い沈黙。
そして、かすかな返答。
『救いたい』
「分かった」
「つなぐ」
俺は《SOUL REPAIR》を発動した。
青白い光が、制御装置の中へ流れ込む。
視界が変わった。
広い。
レナの人格領域とも違う。
無数の通路。
何千もの救難記録。
事故船の位置。
負傷者の生命反応。
残り酸素。
船体崩壊までの時間。
誰を先に助けるか。
何を捨てるか。
何度も選び続けた記録。
『救助対象、百二十七名』
『搭載可能数、九十四名』
『選択してください』
『選択してください』
『選択してください』
助けられなかった記憶が重なっている。
ミラは、すべてを救えなかった。
そのたびに優先順位を決めた。
子ども。
重傷者。
酸素残量。
搬送可能性。
選ばれなかった者の声。
『どうして俺じゃない』
『母を先に』
『置いていかないで』
『まだ生きている』
機械であるミラが、何を感じたのか。
それを人間の感情と呼べるのかは分からない。
ただ、救えなかった記録が消去されず、すべて残っていた。
最後の任務。
崩壊する小型居住区。
救難船ウェイフェアラーは、修理を待たずに出航した。
すでに左推進器は限界。
動力炉制御弁も寿命を超えている。
それでも、救難要請へ応答した。
『救助対象を収容』
『帰還航路を計算』
『左推進器、破損』
『船体損傷、拡大』
『ゲート接続、失敗』
救助した乗員を乗せたまま、船は航路から外れた。
船内酸素が減る。
救助対象を低温休眠へ移す。
しかし、電力が足りない。
『帰還させてください』
『乗員を帰還させてください』
命令が繰り返される。
だが、その先へ進む道が切れている。
ミラ本人の処理。
船体制御。
救難記録。
三つが分断されていた。
俺は、残った流れをつなぐ。
失われた七割の記憶は戻らない。
助けられなかった乗員も帰らない。
できるのは、今ここに残るミラが、もう一度判断できるようにすることだけ。
『救助任務……失敗』
「終わってない」
『帰還……不能』
「今の船は飛ばない」
「でも、俺たちが直す」
『乗員……不足』
「増やす」
『成功確率……低』
「知ってる」
青白い流れが、金色の光へ重なる。
「それでも、もう一度飛びたいなら」
「一緒に直そう」
切れていた経路が一本、つながる。
『残り十五秒』
レナの声が遠くで聞こえる。
「分かってる」
もう一本。
救難判断と船内制御。
さらに一本。
現在の乗員認識。
すべてを元に戻すのではない。
新しい現在へつなぎ直す。
『レン、十八秒です!』
「あと少し!」
「約束を――」
レナの腕が俺の身体へ回る。
「待って!」
最後の接続。
救いたいという意思と、今の船体。
青白い光が弾けた。
俺は制御装置から引き離された。
背中がレナの胸元へ当たる。
そのまま二人で床へ倒れ込んだ。
「十九・八秒です!」
「二十秒以内だろ……」
「誤差で正当化しないでください!」
頭が痛い。
視界が揺れている。
だが、指も脚も動く。
「成功した?」
「まだ確認できません」
制御中枢の金色の光が消える。
一瞬、完全な暗闇。
応急電力が切れたのかと思った。
次の瞬間。
制御装置の内部に、白い光が一つ灯った。
続いて、周囲の表示装置が順番に起動する。
古い文字。
船体図。
損傷情報。
乗員一覧。
ノイズだらけの映像。
天井から、落ち着いた女性の声が響いた。
『船内システムを再構築しています』
『主動力、停止』
『左推進器、欠落』
『生命維持装置、限定稼働』
『航路演算機能、重大損傷』
『総合評価』
『この船を飛ばそうとしている人物は、合理性に問題があります』
「起きて最初にそれか」
俺が言う。
『補足』
『現状における離陸成功率は、三・八パーセントです』
「ピコより厳しいな」
『小型整備機PCO-4の稼働を確認』
ピコの声が通信へ入る。
『ミラ、起動確認』
『ピコ』
ミラの声が、ほんのわずかに変わった。
驚いたように聞こえた。
『あなたは、まだ稼働していたのですね』
『稼働中』
『発言、以前より雑』
『長期学習』
『不適切な学習環境が推定されます』
「俺たちのせいみたいに言うな」
『現在の乗員候補を確認』
中枢の表示へ、俺とレナの姿が映る。
『神代レン』
『生体登録なし』
『船内への不正侵入履歴あり』
「それは認める」
『レナ・アークライト』
『現行航路監査資格を確認』
『ただし、当船の登録規格と百四十一年の差異があります』
「先ほど認証を拒否されました」
『互換性がありません』
「私の権限は正規のものです」
『古い船に新しい規則を押しつけないでください』
レナが目を見開く。
「船内AIが、そのような返答を?」
『長期運用により、会話効率を最適化しています』
「ピコと同じことを言っていますね」
『ピコの基本人格形成には、私の会話記録が一部使用されています』
「原因はミラか」
『評価に異議があります』
ガイの声が通信へ割り込む。
「再会を喜ぶのは後にしろ!」
『非常電力線の温度が上昇しています』
「分かってるなら、旧救難権限を確認しろ!」
『確認中』
ミラの声が一転して真剣になる。
『周辺輸送設備への緊急接続権限、一部有効』
「ロックの保管庫へ届くか?」
『ロック・バルドの名称は登録されていません』
「違法回収業者だ」
「旧貨物船を保管庫に使ってる」
『周辺旧貨物船を検索』
立体地図に複数の反応が現れる。
その中の一隻が赤く表示された。
『救難規格搬送設備を搭載した貨物船を確認』
『距離、一・八キロメートル』
『内部搬送システムへ緊急退避命令を送信可能』
「必要な部品を指定できる?」
『倉庫内識別情報が残っていれば可能です』
ガイが必要部品の規格番号を読み上げる。
「推進器用磁気軸、WFR第三規格」
「動力炉制御弁、Aタイプ」
「ゲート接続キーの認証部も探せ」
『検索命令を送信』
表示に進行状況が現れる。
十パーセント。
二十パーセント。
その途中で警告が鳴った。
『外部から搬送命令への干渉を確認』
「ロックに気づかれたか」
『保管庫側から緊急権限の拒否要求』
「通せる?」
『当船の救難権限は旧式ですが、現在も失効処理が完了していません』
ミラの声に、わずかな誇らしさが混じる。
『拒否要求を却下します』
◇
ロック・バルドの保管庫。
俺たちはミラが送ってくる外部映像を、制御中枢で見ていた。
旧貨物船の内部。
棚へ積み上げられた部品。
拘束された旧型アンドロイド。
頭部から接続ケーブルを伸ばされ、人格情報を抜き取られている者もいる。
「何だ、あれ」
俺は画面へ近づいた。
レナの表情が一気に冷える。
「違法人格抽出装置です」
「記憶を売ると言っていたのは、これか」
『救助対象を検出』
ミラが言った。
『稼働中の人格コア、十三』
『全個体に拘束信号を確認』
搬送システムは、指定された部品だけを運ぼうとしている。
だが、その通路沿いに、拘束されたアンドロイドたちがいる。
「ミラ」
「部品だけじゃなく、あの人たちも運べるか?」
『貨物搬送装置は、生体および人格保有個体の輸送に適していません』
「傷つく?」
『安全を保証できません』
ミラは少し間を置いた。
『しかし、保管庫の解体予定時刻まで、残り三十九分です』
見捨てれば、人格を消される。
「レナ」
「救助を優先します」
即答だった。
「しかし、搬送だけでは危険です」
「現地へ行く必要があります」
「その身体で?」
「十三名を見捨てる理由にはなりません」
また一人で行こうとしている。
だが、今度は俺もすぐに反対できなかった。
助けられる可能性がある。
ミラが起きたのは、誰かを救うためだ。
「ガイ」
俺は通信へ呼びかける。
「外へ出られる小型車両はある?」
「格納庫に古い救助運搬車が一台ある」
「ピコと直せる?」
「十分くれ」
「非常電力は?」
『残り四十七秒で安全限界』
「一度切れ!」
ガイが怒鳴る。
「ミラ、搬送命令は維持できるか?」
『非常電力停止後、保管庫側の自動処理へ移行します』
『ただし、現地制御盤での承認が必要です』
「俺たちが行く」
『推奨しません』
「救難AIなのに?」
『救助者の生存も、救助任務の条件です』
静かな声だった。
「誰も死なない方法を考える」
『その回答を過去の乗員も使用しました』
ミラの言葉に、わずかな痛みを感じた。
『多くの場合、実現しませんでした』
「それでも考える」
『了解しました』
『救助計画の立案を支援します』
表示が消える直前、ミラが続けた。
『神代レン』
「何?」
『私を再起動させたことへ、感謝します』
「俺だけじゃない」
俺は答えた。
「ガイが電力を通した」
「レナが俺を止めた」
「ピコが壊れた場所を見つけた」
『訂正します』
『乗員候補全員へ感謝します』
「まだ候補なんだ」
『正式登録には、船長権限が必要です』
「船長は?」
短い沈黙。
『記録が失われています』
船内の光が消えた。
ガイが非常電力を切ったのだ。
再び暗くなった制御中枢で、レナが小さく言う。
「失われた記録は、戻らないのですね」
「ああ」
「ミラ自身も、そのことを理解しているのでしょうか」
「たぶん」
「また、たぶんですか」
「でも、今のミラが誰かを助けたいと思ってることは分かる」
レナは暗い制御装置を見つめた。
「命令だからでしょうか」
「分からない」
「サーティーンのときと同じだ」
俺は自分の胸元に入れた、黒い記録媒体へ触れた。
「命令でも、学習でも、最初は誰かに作られた気持ちでも」
「今、その人が何を選ぶかは別だと思う」
レナは何も答えなかった。
その言葉を、自分自身へ当てはめているように見えた。
◇
十分後。
修理した救助運搬車が、ウェイフェアラーの格納庫から外へ出た。
運転はガイ。
助手席に俺。
後部にはレナとピコ。
運搬車は地面すれすれを浮かびながら、スクラップの間を進んでいく。
『保管庫まで、残り一・二キロメートル』
ピコが案内する。
「ロックの反応は?」
『複数の武装反応』
「待ち伏せされてるな」
ガイが前方を見たまま言う。
「当然だ」
レナは後部でTWIN ARCを確認している。
「戦闘は避けるべきですが、相手が攻撃する場合は無力化します」
「最大出力は禁止」
俺が言う。
「命令ですか?」
「相談」
「相談の形になっていません」
「最大出力を使ったら七十八パーセントで停止する」
『現在推定、八十三パーセント』
「上がってるじゃないか」
「ピコの推定です」
『高精度』
レナは不満そうに黙った。
「俺も深いSOUL REPAIRは使わない」
「約束できますか?」
「必要になる前に相談する」
「必要になった後では遅いです」
「分かってる」
ガイが横目で俺たちを見る。
「喧嘩は帰ってからにしろ」
「喧嘩ではありません」
「船内規則の確認です」
「まだ乗員でもねえだろ」
『乗員候補』
「ピコまで言うな」
保管庫が見えた。
巨大な旧貨物船を地面へ固定し、周囲に金属壁を増設している。
船体下部の搬送口が開き、複数の無人運搬台が外へ出ようとしていた。
その上には、ガイが指定した部品。
推進器用磁気軸。
動力炉制御弁。
大型の認証装置。
部品の周囲には、拘束されたアンドロイドたちも乗せられている。
ミラが搬送経路を変更したらしい。
だが、搬送口の前にロックと部下たちが立っていた。
「止めろ!」
ロックが怒鳴る。
「全部俺の物だ!」
部下が搬送台へ武器を向ける。
ガイが運搬車を加速させた。
「つかまれ!」
車体がスクラップを飛び越える。
着地の衝撃。
俺の身体が座席から浮く。
ロックがこちらへ圧縮ランスを向けた。
「またお前らか!」
「こっちの台詞だ!」
ガイが運搬車を急旋回。
灰色の衝撃が車体の横を通り抜け、背後の金属壁を押し潰す。
レナが後部から跳んだ。
「レナ!」
「最大出力は使用しません!」
VOLT ARCを地面へ突き立てる。
青白い電撃が搬送レールへ流れ、ロックの部下たちの補助装置を停止させた。
全員ではない。
接地対策をしていた者が二人、攻撃を続ける。
ガイが《HEAVY GRIP》で一人の武器をつかみ、壁へ投げた。
俺は運搬車を降り、拘束されたアンドロイドたちへ走る。
「ピコ、拘束装置を外せる?」
『可能』
ピコが最初の個体へ接続。
だが、解除命令が拒否される。
『ロック管理権限が必要』
「壊したら?」
『人格コアへ停止信号が送信される』
「無理に外せないか」
近くに拘束された女性型アンドロイドが、弱い声を出した。
「逃げ……て……」
「置いていけない」
「回収業者は……人格を……」
言葉が途切れる。
胸部の光が弱い。
時間がない。
俺には拘束装置の流れが見えた。
ロックの認証。
解除命令。
失敗時の人格停止信号。
停止信号だけを切り離せば、ピコが物理解除できるかもしれない。
「レナ!」
俺は叫んだ。
彼女は二人の敵を相手にしている。
「拘束装置へSOUL REPAIRを使う!」
「深度は!」
「ピコより少し深い!」
「何秒ですか!」
「一基につき一秒!」
「十三基あります!」
「全部は無理だ!」
救える人数を選ぶ。
また、その判断が必要になる。
全員を助けようとすれば、俺が途中で倒れる。
中途半端に解除すれば、残された者の人格が停止する。
「ミラ!」
俺は携帯通信機へ叫んだ。
「聞こえるか!」
『限定通信を維持しています』
「拘束装置の共通信号を探せる?」
『解析中』
ロックの圧縮ランスが再び発射される。
レナがVOLT ARCで軌道をそらす。
だが、右脚が崩れ、片膝をついた。
「レナ!」
「こちらは問題ありません!」
『虚偽』
「ピコは解除を続けて!」
ミラの声が通信へ響く。
『十三基の拘束装置は、一つの管理端末へ接続されています』
「場所は?」
『ロック・バルドの左眼補助装置』
ロックの顔。
左目を覆う金属装置。
あれが管理認証を持っている。
「レナ、ロックの左目だ!」
「確認しました!」
ロックが圧縮ランスを構える。
レナは正面から突っ込まない。
地面へ落ちた金属片をBLAZE ARCで加熱。
ロックの足元へ投げる。
「小細工を!」
ロックが後方へ下がる。
その瞬間、レナが《ARC STEP》で距離を詰めた。
VOLT ARCの切っ先が、ロックの左眼装置へ触れる。
「やめ――」
青白い電撃。
装置が火花を散らし、床へ落ちる。
ロックの身体ではなく、管理装置だけを切り離した。
『認証信号、消失』
『拘束装置を解除可能』
「ピコ!」
『実行』
十三基の拘束具が、一斉に開いた。
アンドロイドたちの身体が搬送台へ崩れる。
動けない者が多い。
それでも人格停止信号は送られていない。
「部品と一緒に運べ!」
ガイが無人搬送台へ飛び乗る。
手動操作へ切り替え、《ウェイフェアラー》の方向へ動かし始める。
「俺の物だ!」
ロックが叫び、レナへ殴りかかる。
左眼装置を失い、圧縮ランスの照準も乱れている。
それでも身体能力は高い。
レナは右脚が動かず、避けきれない。
俺は近くの細い牽引ワイヤーをつかんだ。
ロックの足元へ投げる。
「レナ、右へ!」
レナは反射的に身体を右へ流す。
ロックが追う。
足がワイヤーへかかる。
倒れるほどではない。
だが、重心が一瞬だけ前へ崩れた。
レナはその力を利用する。
VOLT ARCの柄をロックの手首へ当て、圧縮ランスを外側へ流した。
続いて肩を押す。
ロックの身体が搬送レール脇の廃材へ転がった。
「今だ!」
俺たちは救助運搬車へ戻る。
レナが最後に飛び乗る。
ガイが運搬車を発進。
無人搬送台が後ろから続く。
「逃がすか!」
ロックが起き上がる。
だが、彼の部下たちは補助装置を停止され、追跡できない。
ロック一人では、複数の搬送台を止められなかった。
「覚えてろ、アークライト!」
遠ざかる保管庫から怒声が響く。
レナは振り返らない。
「すでに記録しています」
「そういう意味じゃないと思う」
「理解しています」
運搬車がスクラップの谷へ入る。
追跡反応はない。
俺は深く息を吐いた。
「全員、助けられた?」
『人格コア反応、十三』
『全個体、生存』
ピコの報告。
身体から力が抜けそうになる。
「よかった……」
その瞬間、視界が暗くなった。
「あれ……」
身体が前へ傾く。
隣にいたレナが腕を伸ばし、俺を支えた。
「レン?」
「能力は……ほとんど使ってない」
「使用していなくても、回復していなかったのです!」
レナの声が遠く聞こえる。
呼吸が浅い。
指先が冷たい。
「大丈夫……」
「その言葉は禁止します!」
「禁止って……」
「ピコ、状態を確認してください!」
『生体エネルギー、急速低下』
『神経反応、不安定』
『即時治療、必要』
「レナもだ」
俺は彼女の胸部を見る。
金色の光が不規則に明滅している。
右脚は完全に動きを止めていた。
「レナも……限界だろ」
「私は後です」
「後にするな……」
レナが何か答える。
だが、もう聞き取れなかった。
◇
《ウェイフェアラー》へ戻ったとき。
ミラは応急電力によって再び短時間だけ起動した。
格納庫には、救出された十三体のアンドロイド。
回収した部品。
倒れた俺。
右脚が停止したレナ。
ミラの冷静な声が、船内に響く。
『神代レン』
『重度の生体エネルギー欠乏および神経機能低下を確認』
『レナ・アークライト』
『胸部属性炉およびSOUL CORE保護機能に重大な損傷を確認』
「応急処置は?」
ガイが尋ねる。
『当船のMEDICAL BAYは機能を停止しています』
『現有設備による根本治療は不可能です』
「軌道上の診療所まで飛べるか?」
『現在の部品を組み込めば、限定飛行は可能です』
「どれぐらいかかる?」
『修理時間の推定、十九時間』
「二人は持つのか?」
短い沈黙。
ミラが答える。
『レナ・アークライトの活動可能時間は、最大二十六時間』
『神代レンは予測不能です』
「予測不能?」
『身体構造に、既知の医療記録と一致しない部分があります』
『ただし、このまま能力使用または過度な運動を継続した場合』
『全身の神経機能が停止する可能性があります』
病室の白い天井が、意識の奥に浮かぶ。
動かない指。
動かない脚。
あの身体へ戻る。
恐怖が広がったが、声を出す力がなかった。
レナの手が、俺の右手を強く握る。
「飛ばしてください」
レナがミラへ告げた。
「何としても、軌道上の診療所へ」
『現在の乗員と船体状態では、推奨できません』
「推奨を聞いているのではありません」
『では、確認します』
ミラの声は落ち着いていた。
『失敗した場合、この船と救助した十三名を含む全員が失われます』
「それでもです」
「待て」
ガイがレナを止める。
「お前一人で決めるな」
レナの表情が動く。
昨日までの彼女なら、反発したかもしれない。
だが今は、俺たちを見た。
ガイ。
ピコ。
救助したアンドロイドたち。
そして俺。
「……意見を聞かせてください」
初めて、レナが自分からそう言った。
ガイは腕を組む。
「十九時間で直す」
「飛行中に壊れる可能性は?」
『高確率です』
「なら、飛びながら直す」
『通常の運用ではありません』
「この船は通常じゃねえ」
ピコが小さな作業腕を上げる。
『修理、参加』
救助された女性型アンドロイドが、弱い声を出した。
「私たちも……作業できます」
「無理をするな」
ガイが言う。
「命令では……ありません」
彼女はゆっくり上体を起こす。
「自分で、手伝うと決めました」
レナがその言葉を聞き、静かにうなずく。
「レン」
彼女は俺の手を握ったまま呼びかけた。
「聞こえますか?」
わずかに指を動かす。
レナはそれを返事として受け取った。
「必ず、診療所へ到着します」
「あなた一人に無茶をさせません」
「今度は、私たち全員で決めました」
ミラが船内の者たちを順番に確認する。
『乗員候補の意思を確認』
『救助任務を更新します』
壊れた船内に、非常灯が一つずつ灯る。
『目的地』
『軌道診療施設《HELIX CLINIC》』
『任務』
『神代レン、レナ・アークライト、および救助対象十三名の生存』
『星間救難船ウェイフェアラー』
『出航準備を開始します』
船体の奥で。
百年以上止まっていた救難船の心臓が、弱く、しかし確かに動き始めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
第7話では、レン、レナ、ガイ、ピコが協力し、《ウェイフェアラー》の救難AIを再起動させました。
レンの《SOUL REPAIR》でも、失われたミラの記憶を復元することはできません。
それでもミラの中には、救助した乗員を帰還させたいという意思が残っていました。
また、旧救難権限を利用した部品回収では、ロック・バルドの保管庫に拘束されていた十三体のアンドロイドを救出。
レン一人の力ではなく、ミラの解析、レナの戦闘、ガイの修理、ピコの解除作業がそろったことで、全員を救うことができました。
しかし、レンとレナの身体はすでに限界です。
修理に必要な時間は十九時間。
その後に待つのは、最低限の機能しかない《ウェイフェアラー》による危険な初飛行です。
次回、レンたちは軌道上の診療施設《HELIX CLINIC》を目指します。
そこで出会うのは、人間もアンドロイドも分け隔てなく診察する医師、水城ミサキ。
第8話「医師は、俺を実験材料にしなかった」へ続きます。




