それぞれの傷痕
目を開ける。
白い天井。
見慣れた天井だった。
窓から入る光が、天井を淡く照らしている。
視線を動かす。
窓。
揺れるカーテン。
風に押されて膨らみ。
また。
戻っていく。
……
夢?
少女は天井を見る。
森。
夜。
血。
黒いもの。
光。
ガゼル。
……
夢。
どっちが。
少女は身体を起こそうとした。
「……っ。」
肩に力を入れた瞬間。
痛みが走る。
肩。
背中。
脇腹。
脚。
一つだけじゃない。
身体のあちこちが痛い。
その奥も。
重い。
鈍い。
力を抜く。
身体が寝台へ沈む。
「……。」
右腕。
動かない。
視線を落とす。
肩から手首まで。
厚い布と添え木で固定されている。
指を動かす。
一本。
二本。
動く。
でも。
痛い。
少女は指を止める。
夢じゃない。
森も。
血も。
アレも。
あった。
少女は目を閉じる。
頭が痛い。
額の奥。
もっと。
奥。
ずき。
ずき。
脈に合わせるように痛む。
目を開ける。
喉も。
乾いている。
舌が上顎に張りつく。
唾を飲み込む。
喉が痛い。
「みず……。」
掠れた声が出た。
少女は顔を横へ向ける。
寝台のそば。
小さな机。
水差し。
ある。
少女は左手を伸ばす。
重い。
肘を浮かせる。
もう少し。
届かない。
腕が落ちる。
「……。」
水。
飲みたい。
もう一度。
左腕を持ち上げる。
その時。
視界の端に。
もう一つ。
寝台が見えた。
少女の手が止まる。
人がいる。
眠っている。
長い髪。
見慣れた横顔。
……
「ガゼル……。」
少女は身体を起こそうとした。
「っ……!」
肩。
脇腹。
背中。
痛い。
それでも。
顔を向ける。
隣の寝台。
少女が眠っている。
「ガゼル。」
返事はない。
少女は、その胸を見る。
上下している。
息。
している。
……
生きてる。
肩から力が抜ける。
少女は息を吐いた。
それから。
眠る少女を見る。
顔。
首。
肩。
白い寝具。
その上へ。
長い髪が広がっている。
少女の瞳が止まる。
……
髪。
何か。
違う。
見ている。
いつもの色を。
探す。
……
ない。
少女は目を細める。
淡い。
ほとんど。
白い。
わずかに。
色が残っている。
毛先。
ところどころ。
消えきらなかったように。
残っている。
少女は。
その髪を見つめる。
「……ガゼル?」
返事はない。
少女は。
眠る少女を見る。
その身体。
……
魔力。
ほとんど。
ない。
少女の瞳が細くなる。
いつもなら。
もっと。
見える。
身体のまわり。
内側。
流れているもの。
それが。
ほとんど。
ない。
「……。」
窓から。
風が入る。
カーテンが膨らむ。
少女の髪も。
ふわりと持ち上がった。
視界の端を。
長い髪が横切る。
少女の瞳が動く。
……
髪。
手を伸ばす。
一房。
指に取る。
いつもの。
白銀。
……
違う。
色が。
混じっている。
少女は。
指の間の髪を見る。
それから。
寝台の少女を見る。
枕の上へ広がる髪。
もう一度。
自分の髪。
……
同じ。
色。
それだけじゃない。
微かに。
感じる。
この髪から。
自分の身体から。
知っている魔力。
……
ガゼル。
少女の指が止まる。
もう一度。
寝台を見る。
ほとんど。
魔力がない。
自分には。
ある。
ガゼルの。
魔力が。
……
少女の手が。
ゆっくり。
握られる。
髪が。
指の間から落ちる。
拳だけが。
残る。
……
私の。
せい。
……
眠る少女を見る。
色の抜けた髪。
ほとんど。
感じない魔力。
……
『そばに。』
『いる。』
『それだけ。』
……
『きっと。』
『いい。』
……
『今は。』
『それでいい。』
……
少女は。
握った左手を見る。
……
ほんとうに。
それで。
いいの。
……
こん。
こん。
扉が。
叩かれた。
少女は。
顔を上げる。
「失礼いたします。」
扉が開く。
姉と。
妹。
妹の手には。
盆。
水差し。
コップ。
……
妹の足が。
止まった。
少女を見る。
……
目が。
大きく開く。
「……。」
手から。
盆が落ちた。
がしゃん。
水差しが倒れる。
水が。
床へ広がる。
「おもち様……!」
妹が。
駆けてくる。
「……?」
そのまま。
抱きしめられた。
「っ……。」
身体が。
痛む。
でも。
妹は。
離れない。
「よかった……。」
声が。
震えている。
「よかった……っ。」
少女は。
動かない。
肩に。
顔が触れている。
腕が。
身体へ回っている。
……
その腕が。
震えている。
「本当に……。」
息を吸う音。
「本当に……心配したんですよ……。」
……
少女は。
目を動かす。
姉。
扉のそば。
立ったまま。
こちらを見ている。
……
口元は。
動かない。
でも。
眼鏡の奥。
目元が。
濡れている。
……
「痛い。」
「……え?」
少女は。
自分を抱きしめている。
妹を見る。
「痛い。」
「あっ……!」
妹の腕が。
離れる。
「ご、ごめんなさい!」
身体から。
重さがなくなる。
少女は。
息を吐く。
……
視線を落とす。
床。
倒れた盆。
転がったコップ。
その周りに。
水が広がっている。
……
水。
少女は。
妹を見る。
「エステラ。」
「はい?」
「水。」
「……。」
妹の顔が。
止まる。
目元には。
まだ。
涙が溜まっている。
それなのに。
口元が。
緩んだ。
「あなたって。」
一度。
鼻を啜る。
「本当に……。」
泣きながら。
笑っている。
「……水ですね。」
少女は。
頷く。
妹は。
床へ屈む。
落ちた盆。
コップ。
水差し。
一つずつ。
拾っていく。
それから。
寝台のそば。
置かれていた水差しも。
手に取る。
「こちらも。」
「一度交換しますね。」
少女は。
水差しを見る。
水。
「すぐに。」
妹は。
もう一度。
少女を見る。
「新しいものを持ってきますからね。」
少女は。
頷く。
「うん。」
妹は。
水差しと盆を抱える。
立ち上がる。
そのまま。
扉へ向かう。
足が。
速い。
……
姉の横を。
通り過ぎる。
その時。
「姉さん。」
妹が。
小さく呼んだ。
足は。
止めない。
姉は。
俯いたまま。
「……わかってます。」
……
妹は。
何も言わない。
そのまま。
部屋を出ていった。
扉が。
閉まる。
……
少女は。
姉を見る。
俯いている。
眼鏡の奥。
見えない。
……
さっき。
濡れていた。
目。
「……。」
姉は。
一度。
息を吸う。
顔を上げる。
「おもち様。」
いつもの。
声。
……
でも。
いつもより。
少し。
小さい。
「お身体は。」
姉が。
寝台のそばへ。
歩いてくる。
「どこか。」
「強く痛むところはありますか?」
少女は。
自分の身体を見る。
右腕。
肩。
背中。
脇腹。
脚。
頭も。
痛い。
……
「全部。」
「……。」
姉の足が。
止まる。
「そう。」
一度。
息を吸う。
「ですか……。」
……
視線が。
下がる。
少女は。
姉を見る。
……
「ガゼル。」
姉の瞳が。
僅かに動く。
「起きない?」
「……はい。」
姉は。
隣の寝台を見る。
「姫様は。」
「まだ。」
「お目覚めになっていません。」
……
少女も。
寝台を見る。
眠ったまま。
動かない。
「どのくらい?」
姉が。
指を重ねる。
「もう。」
一度。
唇を結ぶ。
「丸二日。」
「眠っておられます。」
……
二日。
少女は。
瞬きをする。
「私も?」
「はい。」
姉が。
少女を見る。
「おもち様も。」
「同じだけ。」
「眠っておられました。」
……
「ですが。」
姉の口元が。
ほんの少し。
緩む。
「目覚められて。」
「本当に。」
「よかったです。」
……
少女は。
姉を見る。
それから。
眠る少女を見る。
色の抜けた。
長い髪。
ほとんど。
感じない魔力。
……
「ガゼル。」
姉の顔が。
そちらへ向く。
少女は。
眠る少女を見たまま。
「私の。」
声が。
止まる。
……
左手が。
握られる。
「せい。」
……
姉の身体が。
動かなくなる。
少女は。
眠る少女を見る。
「ごめんなさい。」
……
姉は。
何も言わない。
……
唇を。
噛んでいる。
強く。
……
姉の手が。
握られる。
指先が。
掌へ沈む。
……
もっと。
強く。
……
少女は。
その手を見る。
爪の先。
赤が。
滲んでいる。
……
姉の唇にも。
赤が。
滲んでいる。
……
「違います。」
小さな声。
……
姉は。
顔を上げない。
「おもち様の。」
「せいでは。」
「ありません。」
……
握った手が。
また。
強くなる。
「全て。」
……
声が。
震える。
「私の責任です。」
……
少女は。
姉を見る。
「……?」
「私が。」
姉は。
息を吸う。
「もっと。」
「ちゃんとしていれば。」
……
隣の寝台。
眠る少女へ。
視線が向く。
「姫様が。」
「このようなことには。」
……
声が。
止まる。
姉は。
目を閉じる。
……
「おもち様。」
少女を見る。
「どうか。」
「これからも。」
……
唇が。
震える。
「姫さ――」
がしゃん。
「……。」
少女は。
扉を見る。
……
水差し。
床。
また。
水が。
広がっている。
……
妹が。
立っている。
「……姉さん。」
……
姉の身体が。
僅かに。
強張る。
妹が。
歩いてくる。
速い。
「エステ――」
胸元へ。
手が伸びた。
ぐい。
「……っ。」
姉の身体が。
前へ引かれる。
妹が。
姉の胸ぐらを。
掴んでいる。
……
「姉さん。」
「さっき。」
「なんて言いました?」
「……。」
「わかってますって。」
「言いましたよね?」
「……はい。」
「わかってないじゃないですか。」
……
少女は。
二人を見る。
床を見る。
……
水。
また。
なくなった。
……
「おもち様の前で。」
妹の手が。
姉の胸元を。
強く掴む。
「ましてや。」
「姫様の前で。」
「そんなこと言わないで!」
姉の身体が。
揺れる。
「でも……。」
「でもじゃない!」
妹の声が。
部屋に響く。
「姉さんがいたから。」
「二人とも助かったんでしょ!」
「姉さんが。」
「見つけて。」
「ここまで連れて帰ってきたんでしょ!」
「間に合わなかったら。」
声が。
詰まる。
「今頃。」
「二人とも……。」
……
妹の口が。
止まる。
姉は。
俯いたまま。
何も言わない。
……
しばらくして。
小さく。
「でも。」
声。
「そもそも。」
「私が。」
……
「姫様と。」
「はぐれなければ……。」
妹の眉が。
大きく寄る。
「だから――」
どんっ。
「……っ!」
姉の背中が。
壁へ当たる。
妹が。
胸元を掴んだまま。
押しつけている。
「うるさい!」
「じゃあ何!?」
「侍女辞めるって!?」
「それで責任取ったつもりになるの!?」
姉の肩が。
震える。
「そんなの!」
「責任じゃない!」
「逃げてるだけでしょ!」
「……っ。」
「王妃様の言葉。」
「忘れたの!?」
姉の顔が。
上がる。
……
妹の瞳も。
もう。
濡れている。
「これから先も。」
「ガゼルのそばにいてあげてくださいって。」
「頼まれたでしょ!」
……
姉の唇が。
震える。
「その重みを――」
「わかってますよぉ……!」
妹の声が。
止まる。
……
姉の顔が。
歪む。
眼鏡の奥から。
涙が。
落ちる。
「わかってます……。」
「そんなこと……。」
「わかってますよぉ……。」
……
声が。
崩れる。
「それでも……。」
「私が。」
「ちゃんとしてたら……。」
「姫様は……。」
「こんな……。」
……
妹の顔も。
歪む。
涙が。
頬を伝う。
それでも。
姉の胸元を。
離さない。
「だったら!」
声が。
震える。
「次は!」
「離さなければいいじゃん!!」
……
姉の瞳が。
大きく開く。
妹は。
泣いている。
「次は。」
「絶対。」
「離さなければ。」
「いいじゃん……!」
……
「なんで。」
「いなくなる方を。」
「選ぶのよ……。」
……
少女の左手が。
きゅっと。
握られる。
……
妹の手は。
まだ。
胸元を掴んでいる。
「姉さんが。」
「見つけたんだよ。」
……
声が。
崩れる。
「二人とも。」
「帰ってきたんだよ……。」
……
姉の頬を。
涙が伝う。
「それじゃ。」
「足りないの……?」
……
返事は。
ない。
「十分じゃん……。」
「十分だよぉ……。」
……
「……もち……。」
小さな。
声。
妹の身体が。
止まる。
姉も。
顔を上げる。
……
少女は。
隣の寝台を見る。
「ガゼル。」
瞼が。
開いている。
ほんの少し。
……
少女は。
身体を動かす。
「っ……。」
痛い。
それでも。
寝台の端へ。
近づく。
「ガゼル。」
……
翡翠色の瞳が。
動く。
ぼんやりと。
少女を捉える。
「……おもち。」
「うん。」
……
しばらく。
見ている。
焦点の合わない目で。
少女の顔を。
髪を。
……
「おもち……。」
掠れた声。
「髪……。」
……
少女は。
自分の髪を見る。
白銀に。
混じった。
淡い色。
……
「きれい……。」
少女の瞳が。
動く。
「……。」
その時。
後ろで。
息を呑む音。
「姫様……!」
姉が。
駆け寄る。
「姫様!」
妹も。
胸元から手を離し。
寝台へ走る。
「姫様……!」
「わかりますか!?」
「姫様!」
……
その瞳が。
ゆっくりと。
二人へ向く。
姉。
妹。
それから。
もう一度。
少女。
……
口元が。
僅かに。
緩む。
「よかった……。」
……
「みんな。」
「いる……。」
「姫様……。」
姉の声が。
震える。
妹が。
寝台へ手をつく。
「はい。」
「います。」
「みんな。」
「ここにいます。」
……
翡翠色の瞳が。
細くなる。
「……よかった。」
息が。
抜ける。
瞼が。
落ちる。
「ガゼル?」
……
返事はない。
少女は。
その顔を見る。
「寝た。」
……
眠っている。
呼吸は。
している。
……
姉が。
震える息を。
吐く。
妹も。
顔を伏せる。
……
少女は。
自分の髪へ。
視線を落とす。
……
『きれい。』
……
少女は。
顔を上げる。
姉を見る。
妹を見る。
二人とも。
泣いている。
……
「二人とも。」
「泣かない、で。」
「……。」
妹が。
顔を上げる。
涙の残った目で。
少女を見る。
「……誰のせいで。」
「?」
「どれだけ。」
妹が。
寝台へ近づく。
「どれだけ心配したと思ってるんですか!」
「わ。」
妹の両手が。
少女の頭へ伸びる。
わしゃ。
「……。」
わしゃわしゃ。
退紅の髪が。
乱れる。
「エステラ。」
「はい。」
わしゃわしゃ。
「髪。」
「知りません。」
「……。」
「本当に。」
わしゃ。
「本当にもう……!」
……
少女は。
されるがまま。
妹を見る。
姉も。
涙を拭いながら。
小さく。
笑っている。
……
やがて。
妹の手が。
止まる。
少女の髪は。
すっかり。
乱れていた。
「エステラ。」
「なんですか。」
「少し。」
「やりすぎです。」
妹は。
少女を見る。
「勝手に。」
「出ていった。」
「この子が。」
「悪いんですよ。」
少女は。
瞬きをする。
「私?」
「おもち様です。」
「……そう。」
妹の手が。
止まる。
「冗談ですよ。」
少女は。
妹を見る。
「……冗談。」
「はい。」
妹の手が。
今度は。
頭へ触れる。
乱れた髪を。
撫でる。
指で。
少しずつ。
整えていく。
「もう。」
「勝手に。」
「いなくならないでくださいね。」
少女は。
妹を見る。
……
「うん。」
妹は。
もう一度。
頭を撫でた。
……
姉は。
床を見る。
倒れた水差し。
広がった水。
「……さて。」
「こちらも。」
「片付けないといけませんね。」
「あ。」
妹が。
声を上げる。
……
「水。」
少女と。
目が合う。
「……。」
「……。」
少女は。
妹を見る。
……
妹も。
少女を見る。
……
「今度こそ。」
「持ってきますから。」
少女は。
頷く。
「うん。」
「それと。」
姉が。
眠る少女を見る。
「お二人が目を覚まされたことも。」
「知らせて参ります。」
……
少女は。
隣の寝台を見る。
「ガゼル。」
眠っている。
……
「また。」
「起きる?」
「はい。」
妹が。
目元を拭う。
「必ず。」
「ですが。」
「すぐに治療師も呼んできます。」
少女は。
もう一度。
頷く。
……
姉と。
妹が。
扉へ向かう。
今度は。
一緒に。
……
扉が。
閉まった。
……
静か。
少女は。
隣を見る。
……
眠る少女。
色の抜けた髪が。
枕へ広がっている。
……
少女は。
左手を伸ばす。
寝台の端。
その手へ。
触れる。
……
指を。
重ねる。
……
あたたかい。
……
少女は。
そのまま。
手を握る。
……
あたたかい。
生きてる。
……
さっき。
目も。
開いた。
声も。
聞いた。
……
『きれい。』
……
少女は。
自分の髪へ。
視線を落とす。
退紅の髪。
……
少女は。
眠る少女を見る。
しばらく。
そのまま。
……
そして。
目を伏せる。
……
丘。
侍女。
……
違う。
侍女じゃない。
アレ。
……
アレは。
何。
少女は。
眠る少女の手を。
握ったまま。
目を伏せる。
私を。
見ている。
そう。
言っていた。
偶然。
会ったんじゃない。
私を。
知っていた。
……
O-M-1。
施設で。
使われていた。
私の呼び方。
……
どうして。
知っていた。
……
それに。
アレは。
私の。
何かを。
見ていた。
……
魔力。
……
いや。
もっと。
深いところ。
……
血。
……
口の中。
温かい。
鉄みたいな。
味。
……
少女の喉が。
詰まる。
胃の奥が。
持ち上がる。
「……っ。」
口元を。
押さえる。
……
いや。
……
握っている手。
……
あたたかい。
……
少女は。
指先へ。
力を込める。
……
ガゼル。
……
息を。
吐く。
……
大丈夫。
……
今は。
考える。
魔力。
あの時は。
考える余裕が。
なかった。
でも。
アレから。
感じた。
魔力。
普通とは。
違う。
私と。
似ていた。
……
星。
……
同じ。
ではない。
でも。
近い。
私と。
何か。
関係がある?
……
O-M-1。
施設の呼び方。
知っていた。
私を。
見ていた。
血に。
反応した。
それに。
私と似た。
魔力。
……
施設?
……
もし。
施設に。
関係があるなら。
私の呼び方を。
知っていたことにも。
繋がる。
でも。
施設で。
見たことがない。
……
それでも。
関係が。
ないとは。
言えない。
……
少女は。
眠る少女を見る。
その手を。
離さない。
……
私のことを。
知っている。
何か。
……
繋がりそうで。
繋がらない。
……
考えても。
答えは。
出ない。
……
わからない。
……
でも。
アレは。
私の反応を。
見ていた。
……
それなら。
また。
来る?
……
来るなら。
危険。
……
少女の肩が。
小さく。
震える。
……
でも。
反応できない。
速度では。
なかった。
……
見えていた。
動きも。
攻撃も。
私の。
魔力の塊も。
当たった。
……
でも。
動いた。
……
頭が。
なくなっても。
動いていた。
身体を。
壊しても。
止まらないなら。
どこに。
当てればいい?
……
わからない。
……
それに。
アレは。
私を。
殺そうと思えば。
殺せた。
でも。
殺さなかった。
……
なら。
それを。
逆に。
使えば。
少女の眉が。
寄る。
……
いや。
……
捕まった。
捕まってから。
何も。
できなかった。
なら。
捕まったら。
だめ。
……
捕まる前に。
離れる。
攻撃する。
それでも。
捕まったら。
……
少女は。
自分の手を見る。
……
腕を。
なくしてでも。
離れる……?
……
できる。
たぶん。
……
左腕は。
戻った。
でも。
また。
戻る?
……
わからない。
……
それに。
痛い。
……
痛いのは。
嫌。
……
肩が。
また。
震える。
指先まで。
震えている。
……
あの声。
……
笑う。
顔。
……
近づいてくる。
気配。
……
少女は。
眠る少女の手を。
強く握る。
……
怖い。
……
戦いたくない。
……
施設。
アレ。
ガゼル。
……
考えるたび。
胸の奥が。
苦しくなる。
……
肩が。
震える。
……
少女は。
握っている手を見る。
あたたかい。
……
でも。
足りない。
……
もう。
なにも。
考えたくない。
……
少女は。
その手を。
離す。
身体を。
起こす。
「っ……。」
傷が。
痛む。
……
それでも。
隣の寝台へ。
身体を寄せる。
……
眠る少女の。
横。
空いているところへ。
潜り込む。
……
身体を。
丸める。
眠る少女へ。
身を寄せる。
……
震えを。
止めるように。
何かから。
隠れるように。
……
あたたかい。
……
「ガゼル。」
……
返事は。
ない。
……
少女は。
もう少し。
近づく。
「起きて。」
……
返事は。
ない。
……
「ガゼル。」
……
「声。」
喉が。
小さく動く。
「聞きたい。」
……
眠る少女は。
動かない。
……
少女は。
その服へ。
顔を寄せる。
……
あたたかい。
……
「起きて……。」
……
しばらく。
そのまま。
動かなかった。
……
眠る少女の服が。
頬の触れているところだけ。
濡れていた。




