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寄れば騒ぎも道しるべ


少女は。


その文字を見上げた。


……


王都総合案内所。


……


ここ。


少女は。


入口へ向かう。


数段の階段を上る。


扉。


……


取っ手が。


ない。


その前で。


足を止める。


……


扉の脇。


小さな魔石。


薄く。


魔力が通っている。


……


手を伸ばす。


その瞬間。


魔石へ。


魔力が集まる。


術式が。


動く。


すう。


二枚の扉が。


左右へ開いた。


……


少女の手が。


宙で止まる。


……


中へ入る。


背後で。


扉が。


閉じた。


振り返る。


……


もう一人。


人が近づく。


扉が。


開く。


その人は。


そのまま。


中へ入ってきた。


……


前を向く。


中。


……


人が。


いる。


入口の近く。


紙を広げている人。


壁に掛けられた。


大きな地図を見ている人。


長椅子に座っている人。


奥には。


横に長い台。


その向こうにも。


人。


……


一つ。


二つ。


三つ。


四つ。


……


窓口。


いくつもある。


それぞれ。


人が並んでいる。


……


右。


棚。


紙が。


たくさん並んでいる。


地図。


建物の絵。


文字。


……


その横。


小さなもの。


星の形をした飾り。


王城の形をした。


小さな置物。


紐のついた。


小さな魔石。


色のついた。


布。


……


案内所。


……


案内するところ。


……


でも。


物もある。


少し。


見ていると。


奥から。


声がした。


「次の方、どうぞ。」


並んでいた人が。


一つの窓口へ。


進んでいく。


……


ここで。


聞く。


……


賢人。


……


いくつもある窓口を。


順番に見る。


……


どこ。


少し。


立っていると。


横を。


一人の男が通る。


「ねえ。」


男が。


足を止めた。


「ん?」


「賢人。」


「どこにいる?」


「ケンジ?」


男が。


首を傾げる。


「お兄さんか何か?」


少女は。


首を横に振る。


「ちがう。」


「賢人。」


「……?」


男は。


辺りを見回す。


「迷子かな。」


「迷子。」


「じゃない。」


「うーん。」


男の視線が。


奥へ向く。


「あ。」


奥を。


指差す。


「あっちの人に聞けばいいよ。」


指の先。


ほかの窓口から。


少し離れたところ。


小さな台。


その上に。


札。


――総合相談窓口。


……


「何を聞けばいいかわからない時とか。」


「困った時は。」


「あそこで聞けば教えてくれるから。」


……


困った時。


「わかった。」


男へ。


頭を下げる。


「ありがとう。」


「はいはい。」


男は。


少し笑って。


そのまま歩いていった。


……


あそこ。


少女は。


総合相談窓口へ。


歩いていく。


台の向こう。


女が。


こちらを見る。


「こんにちは。」


「今日はどうされましたか?」


「賢人って。」


「どこにいるの。」


「賢人?」


女が。


少し。


目を丸くする。


「賢人の方を。」


「お探しなんですね。」


「うん。」


「お名前はわかりますか?」


少女は。


止まる。


……


名前。


知らない。


「わからない。」


「どんな方かは。」


「古い時代の。」


「魔法を。」


「研究してる。」


女が。


わずかに。


眉を寄せる。


「古い時代の魔法……。」


その時。


横から。


別の職員が。


近づいてくる。


「少しいいですか。」


女が。


顔を向ける。


職員が。


耳元へ。


何かを言う。


……


王城。


聞こえた。


女の視線が。


少女へ向く。


すぐ。


戻る。


「特徴は?」


小さな声。


「十歳前後の女の子。」


「白銀色の長い髪。」


「少し紫がかっているそうです。」


……


また。


視線。


……


女が。


こちらを見る。


「お嬢さん。」


「ちょっとだけ。」


「フードを外してもらってもいいですか?」


少女は。


首を傾げる。


「?」


「すぐで大丈夫ですから。」


……


フードへ。


手をかける。


「わかった。」


外す。


白銀の髪が。


肩から。


零れる。


淡い紫が。


光に混じる。


……


女が。


黙る。


隣の職員も。


黙る。


二人が。


顔を見合わせた。


……


「服は違いますけど。」


「ええ。」


……


「賢人。」


女が。


こちらを見る。


「あ。」


「そうでしたね。」


少し。


笑う。


「お嬢さん。」


「こっちで。」


「賢人のこと。」


「もう少し詳しく教えてあげます。」


……


詳しく。


「うん。」


女が。


窓口から出てくる。


「こちらへどうぞ。」


その後ろを。


ついていく。


いくつかの窓口を過ぎる。


奥。


人の少ないところ。


小さな部屋。


扉の横に。


文字。


――迷子・保護室。


……


「私。」


「迷子じゃない。」


女が。


足を止める。


「ああ。」


「大丈夫ですよ。」


「ここが。」


「一番静かなので。」


扉を。


開ける。


「こちらで。」


「ゆっくりお話しましょう。」


……


中。


椅子。


小さな机。


……


入る。


「こちらに座っていてくださいね。」


少女は。


椅子に座る。


女が。


扉の方へ向かう。


「何か。」


「お茶か。」


「お菓子でも持ってきますね。」


「いらない。」


女が。


振り返る。


「賢人。」


……


「あ。」


「そうでしたね。」


女が。


一度。


口を閉じる。


「では。」


「賢人について。」


「何かわかる資料がないか。」


「探してきますね。」


少女は。


頷く。


「うん。」


「少しだけ。」


「ここで待っていてください。」


「わかった。」


女が。


部屋を出る。


扉が。


閉まる。


少女は。


椅子に座ったまま。


待つ。


……


賢人。


……


扉の向こう。


声。


「やっぱり。」


「あの子ですよね。」


「特徴は一致してます。」


「服だけ違いますけど。」


「白銀の髪に。」


「薄く紫がかってる子なんて。」


「そうそういませんよ。」


……


「王城からだけですか?」


「いえ。」


「他の案内所や。」


「門や詰所にも。」


「捜索の連絡が来てるみたいです。」


「そんなに。」


「どこかの令嬢なんでしょうか。」


「さあ。」


「侍女服だったらしいですけど。」


「王城から直接ですからね。」


……


王城。


……


少女は。


自分の髪へ。


触れる。


白銀。


少し。


紫。


……


「とりあえず。」


「王城へ連絡を。」


「お願いします。」


「私はここにいます。」


「はい。」


……


足音。


一つ。


遠ざかる。


……


探してる。


王城が。


……


私を。


……


戻されたら。


王城。


……


施設も。


来る。


……


少女の指が。


服の端を。


掴む。


……


だめ。


……


椅子から。


降りる。


賢人。


まだ。


聞いてない。


……


扉へ。


歩く。


取っ手へ。


手をかける。


開ける。


「あ。」


女が。


こちらを見る。


「どうしたんですか?」


「行く。」


「え?」


女が。


瞬きをする。


「どこへ?」


……


行く場所。


……


ない。


「どこか。」


そのまま。


歩き出す。


「ちょ。」


「ちょちょちょ。」


肩を。


掴まれる。


「もう少しだけ。」


「ね?」


少女は。


女を見る。


「資料。」


「取りに行ってない。」


……


女の顔が。


止まる。


「え。」


「賢人の。」


「資料。」


……


また。


歩き出す。


「あっ。」


後ろから。


身体に。


腕が回る。


足が。


床から離れる。


……


「もうだめだってば。」


「離して。」


「だめです。」


少女は。


前へ。


身体を傾ける。


進まない。


「あなた。」


「どこかの令嬢なんでしょ?」


「みんな探してますよ?」


「令嬢じゃない。」


「じゃあ。」


「なんで王城が。」


「こんなに探してるんですか。」


……


少女は。


女の腕を見る。


……


離れない。


……


女の後ろへ。


視線を向ける。


「王様。」


「え?」


「来た。」


女は。


動かない。


「そんな嘘。」


「ばればれですよ。」


「嘘じゃない。」


「じゃあなんですか。」


「冗談。」


「どっちでも同じです。」


……


もう一度。


前へ進もうとする。


女の腕が。


強くなる。


……


動けない。


……


また。


捕まった。


……


その時。


廊下の向こうから。


声。


「誰か応援きてー!」


女が。


顔を上げる。


「なにー?」


「子どもが迷子で。」


「泣きじゃくっててー!」


「私。」


「子ども苦手なのー!」


女が。


少女を抱えたまま。


声を返す。


「こっちも取り込み中!!」


「早く来てってばー!」


「もう!」


女が。


声のした方へ。


顔を向ける。


「あーもう。」


「こんな時に限って。」


……


少女の身体が。


床へ降ろされる。


女が。


少女の肩を掴む。


「いいですか。」


「すぐに。」


「戻ってきますから。」


女の顔が。


近づく。


「絶っっ対に。」


「ここにいてくださいね。」


……


「……。」


「絶対ですよ?」


……


女は。


もう一度。


少女を見る。


それから。


廊下の向こうへ。


走っていった。


……


その背中。


遠ざかる。


曲がる。


見えなくなった。


……


絶対。


ここにいて。


……


少女は。


何も。


言ってない。


……


自分の髪へ。


手を伸ばす。


白銀。


少し。


紫。


……


探してる。


特徴。


……


フードを。


被る。


髪を。


中へ入れる。


……


廊下。


誰も。


こちらを見ていない。


歩き出す。


……


窓口。


地図。


長椅子。


人。


……


来た時と。


同じところ。


入口へ。


向かう。


近づく。


すう。


扉が。


左右へ開く。


……


外へ出る。


背後で。


扉が閉まる。


……


王都。


人。


たくさん。


フードの奥から。


道を見る。


……


賢人。


……


どこ。


     ◇


少女は。


歩く。


……


道。


人。


建物。


また。


道。


……


どれくらい。


歩いたか。


わからない。


……


足が。


重い。


立ち止まる。


水の音。


……


少し先。


広場。


その真ん中。


丸く。


石で囲まれた。


水。


中央から。


細い水が。


いくつも。


上へ昇る。


高く。


弧を描いて。


また。


水の中へ。


落ちる。


……


そちらへ歩く。


石の縁。


腰掛ける。


……


水が。


昇る。


落ちる。


風が。


吹く。


細かな水が。


白く。


散る。


……


頬に。


冷たいものが。


触れる。


一つ。


二つ。


……


また。


風。


今度は。


もっと細かい。


水の霧が。


フードの端。


頬。


手の甲へ。


かかる。


……


冷たい。


少し。


顔を上げる。


……


涼しい。


空は。


まだ。


青い。


日は。


少し。


傾いている。


それでも。


日差しは。


強い。


……


フードの中。


熱が。


こもる。


額に。


汗。


袖で。


拭う。


ローブの襟元を。


少し引く。


……


この服。


暑い。


水の方から。


また。


風。


湿った空気が。


首元へ。


入る。


……


目を閉じる。


水の音。


風。


頬に。


細かな水。


……


少し。


そのまま。


……


今。


何時。


服へ。


手を伸ばす。


……


止まる。


懐中時計。


……


エステラに。


もらった。


……


侍女服の。


中。


自分の服を見る。


……


ない。


……


もう一度。


目を閉じる。


……


足が。


地面に。


届かない。


少し。


前へ。


後ろへ。


ぷら。


ぷら。


……


その向こう。


声。


「ちょっと。」


「見てきます。」


「え。」


「エルネちゃん。」


「危ないですよ~。」


「知らない人に。」


「話しかけたらだめって。」


「お姉ちゃんが~。」


……


「そうだぞ。」


「やめとけって。」


「こんな暑いのに。」


「あんなローブ着てるしよー。」


……


「ビビってるんですか?」


「はあ!?」


「びびってねーし!」


「じゃあ。」


「行けますね。」


「なんで俺が行くんだよ!」


「怖くないんですよね?」


「怖くねーよ!」


……


目を閉じたまま。


聞く。


……


さっきより。


近い。


笑い声。


足音。


いくつか。


……


「ほんとに。」


「やめた方がいいですよ~。」


「見るだけです。」


「それも。」


「だめだと思います~。」


……


また。


笑う。


……


少女の足が。


止まる。


……


声。


近い。


目を開ける。


水の向こう。


何人かの。


子どもたちが。


こちらへ。


歩いてくる。


……


少女の前で。


止まった。


一人。


前へ出る。


「ちょっと。」


「いいですか?」


「なに?」


……


小さい。


少女より。


少し。


背が低い。


金色の髪。


左右。


耳の少し後ろで。


束ねている。


腕には。


茶色い。


くまのぬいぐるみ。


……


金色の髪の少女の。


目が。


大きく開く。


「やっぱり。」


「かわいい!!!!」


「?」


顔が。


近づく。


……


近い。


鼻が。


触れそう。


少女は。


瞬きをする。


「エ、エルネちゃん。」


「ちょっと。」


「近いです~。」


後ろから。


声。


桃色の髪。


顎のあたりで。


揃っている。


眼鏡。


両手を。


胸の前で合わせて。


身体が。


右へ。


左へ。


少し。


揺れている。


……


「だって。」


金色の髪の少女が。


少女のローブを見る。


「このローブ。」


「すっごく。」


「かわいいです!!」


銀色の星。


紫へ。


色を変える布。


視線が。


上へ。


動く。


……


フード。


「絶対。」


「こっちも。」


「かわいいです!」


手が。


伸びる。


「?」


ばっ。


フードが。


後ろへ落ちる。


白銀の髪が。


広がった。


肩。


背中。


光の中へ。


淡い紫が。


混じる。


……


金色の髪の少女が。


止まる。


……


白い肌。


人形のように。


精巧な顔。


大きな。


淡い紫の瞳。


その奥。


星。


線。


細かな模様が。


重なっている。


……


「~~~~っ!?」


口が。


開いたまま。


止まる。


……


後ろ。


桃色の髪の少女も。


眼鏡の奥で。


目を大きくする。


「……。」


「物語から。」


「出てきたみたい……。」


……


その隣。


茶髪の少年。


同じくらいの年頃。


けれど。


少し。


大きい。


肩幅も。


広い。


茶色の髪は。


前から。


全部。


後ろへ流している。


……


止まっている。


頬が。


少し。


赤い。


……


金色の髪の少女が。


息を吸う。


「かわいいいいいいいい!!!!」


「うわっ。」


茶髪の少年が。


耳を塞ぐ。


「うるせーよ!!」


「だって!」


「見ました!?」


「見てるよ!」


「髪も!」


「目も!」


「顔も!」


「全部かわいいです!!」


……


うるさい。


金色の髪の少女が。


近づく。


そのまま。


腕に。


ぎゅっ。


組みついた。


「?」


自分の腕を見る。


……


離れない。


「あなた。」


「名前は?」


「お――」


「そのローブ!」


金色の髪の少女が。


袖を見る。


「どこで買ったんです?」


「これ――」


「あっ!」


顔が。


また。


近づく。


少女の瞳を。


覗き込む。


「その目!」


「コンタクトですか!?」


「こんた――」


「星が入ってます!!」


「すっごくかわいいです!!」


「私もほしいです!!」


「どこで売ってるんですか!?」


「有名なお店!?」


……


少女は。


口を。


少し開けたまま。


金色の髪の少女を見る。


……


「エルネちゃん。」


桃色の髪の少女が。


身体を揺らす。


「ひとつずつ。」


「聞いた方がいいと思います~。」


「でも!」


「全部気になります!!」


……


近い。


腕。


離れない。


声。


多い。


……


少女は。


立ち上がる。


金色の髪の少女も。


腕にくっついたまま。


一緒に。


立つ。


……


「うるさい。」


「ほら~!」


桃色の髪の少女が。


眼鏡の奥で。


眉を下げる。


「困ってますよ~。」


「エルネちゃん。」


「ちょっと。」


「落ち着けって。」


茶髪の少年が。


金色の髪の少女の肩を。


掴む。


「えー。」


「まだ聞きたいことが。」


「あとにしろ。」


「見ろよ。」


……


茶髪の少年が。


一度。


視線を逸らす。


「わ。」


「わるかったな。」


「邪魔しちゃったか?」


……


金色の髪の少女が。


そちらを見る。


口元が。


上がる。


「テオ。」


「なんだよ。」


「もしかして。」


「好きになったんですか?」


「はあ!?」


……


桃色の髪の少女の。


身体が。


止まる。


「え~!!!!」


顔が。


赤くなる。


「ふ。」


「ふ。」


「不純です!!」


「なんでだよ!!」


「そういうのは。」


「不純です~!!」


「何がだよ!」


「顔。」


「赤かったです!!」


「うるせー!」


「ほら!」


「やっぱりです~!」


「違うって!」


「ほんとですか?」


「エルネまで乗るな!!」


……


また。


一人。


また。


一人。


声が。


重なる。


……


何か。


言おうとする。


「――」


「だから違うって!」


「でも赤いです~!」


「テオ。」


「わかりやすいです。」


「お前らなあ!!」


……


少女は。


口を閉じる。


……


ずっと。


うるさい。


……


「賢人。」


三人の声が。


止まる。


……


「知ってる?」


金色の髪の少女が。


瞬きをする。


「賢人って。」


「なんですか?」


「え。」


茶髪の少年が。


腕を組む。


「ほら。」


「偉い人だろ。」


桃色の髪の少女が。


首を傾げる。


「曖昧です~。」


「じゃあ。」


「学院とか。」


「ギルドにいるんじゃねーの?」


「テオくんは。」


「ギルド。」


「ギルドって。」


「ほんと好きですね~。」


「うるせー。」


「冒険者。」


「かっこいいじゃん!」


「でも。」


「賢人がいるかは。」


「知らないんですよね~?」


「……。」


……


わからない。


……


「そんなことより!」


金色の髪の少女が。


少女の腕へ。


また。


ぎゅっ。


「私の質問に。」


「答えて下さいよ!」


……


「名前。」


「そうです!」


「おもち。」


「オモチさん!」


金色の髪の少女の。


目が。


輝く。


「かわいい名前です!!」


「それで。」


「ローブは!?」


少女は。


自分の服を見る。


「アイラと。」


「アニキに。」


「もらった。」


「アイラ!?」


三人が。


少女を見る。


……


「アイラ。」


「知ってる?」


「知ってますよ!」


「友達です!」


「アニキって。」


「アイラの兄貴か?」


少女は。


頷く。


「アニキ。」


……


茶髪の少年が。


少し。


首を傾げる。


……


「それで!」


金色の髪の少女が。


また。


顔を近づける。


「その目!」


「コンタクトですか!?」


「こんた?」


「コンタクトです!」


「知らない。」


「え。」


……


金色の髪の少女が。


少女の瞳を見る。


「じゃあ。」


「これ。」


「本物なんですか!?」


「目。」


「うん。」


「~~~~っ!!」


……


その横。


茶髪の少年。


……


まだ。


少し。


顔が赤い。


「テオ。」


「な。」


「なんだよ。」


「私のこと。」


「好き?」


「はあ!?」


少女は。


首を傾げる。


「なんで。」


「な。」


「なんでって……。」


茶髪の少年の顔が。


さらに。


赤くなる。


……


好き。


……


安心する。


落ち着く。


ずっと。


そこにいたい。


……


そういうもの。


……


テオ。


さっき。


会った。


……


なんで。


……


「テオ。」


「顔。」


「真っ赤ですよ。」


金色の髪の少女が。


にやにやしている。


「うるせー!」


「やっぱり。」


「不純です~!!」


桃色の髪の少女が。


両手を。


頬に当てる。


……


「あなた。」


「ひゃい!?」


桃色の髪の少女の。


身体が。


びくっとする。


「名前。」


「わ。」


「わわ。」


「わたしは。」


「ウルカです~。」


少女は。


頷く。


「ウルカ。」


「は。」


「はい~。」


……


「不純って。」


「なに。」


……


桃色の髪の少女が。


止まった。


「え。」


「えっと。」


眼鏡の奥。


目が。


泳ぐ。


「お姉ちゃんが。」


「そういうの。」


「不純だって。」


……


「そういうの。」


「そういうのです~。」


「ふぇ~ん。」


……


目に。


涙。


そのまま。


泣いた。


……


「あー!」


茶髪の少年が。


頭を掻く。


「めんどくせー!」


「好きとか。」


「そんなのは。」


「もういいんだよ!」


……


茶髪の少年が。


少女を見る。


「オ。」


「お前。」


「人探ししてるんだろ?」


少女は。


頷く。


「うん。」


「じゃあ。」


「やっぱり。」


「ギルドだよ!」


「どうして?」


茶髪の少年が。


胸を張る。


「すごいやつは。」


「みんな。」


「冒険者になるんだ。」


……


「だから。」


「その賢人も。」


「そこにいるぞ!」


……


「ほんと?」


「たぶん!」


……


「曖昧です~。」


泣きながら。


桃色の髪の少女が。


言った。


「うるせー!」


「いきたい。」


茶髪の少年の顔が。


上がる。


「よっしゃ!」


「じゃあ。」


「連れてってやるよ!」


道の先へ。


身体を向ける。


「こっちだ。」


歩き出す。


桃色の髪の少女も。


その後ろへ。


続く。


……


少女は。


頭へ。


手を伸ばす。


後ろへ落ちた。


フード。


被る。


白銀の髪を。


中へ入れる。


……


それから。


歩く。


金色の髪の少女は。


腕に。


くっついたまま。


……


歩きにくい。


……


水の音が。


少しずつ。


遠くなる。


「ついでに。」


前を歩く。


茶髪の少年が。


振り返る。


「魔力測定しよーぜ!」


金色の髪の少女が。


茶髪の少年を見る。


「毎日したって。」


「なにも変わりませんよ。」


「そういうのじゃないんだよ。」


「ロマンだ。」


「ロマン!」


「ふーん。」


金色の髪の少女が。


少女へ。


顔を戻す。


「かわいくないから。」


「興味ないです。」


「お前なあ。」


……


人の間を。


進む。


……


金色の髪の少女が。


少女の腕へ。


頬を寄せる。


すり。


すり。


……


また。


近い。


「ちなみに。」


金色の髪の少女が。


顔を上げる。


「わたしは。」


「オモチさん。」


「大好きですよ?」


「どうして?」


「かわいいから!!」


……


少女は。


瞬きをする。


「かわいいも。」


「好きになるの?」


「なります!」


金色の髪の少女が。


すぐに。


頷く。


「わたしは。」


「かわいいが。」


「好きなんです!」


……


好き。


……


その横。


「好きって。」


「ひとつじゃないんです~。」


鼻を。


すすりながら。


桃色の髪の少女が。


言った。


……


ひとつじゃない。


……


安心する。


落ち着く。


ずっと。


そこにいたい。


……


かわいい。


……


違う。


でも。


好き。


……


「ウルカ。」


「わかりやすい。」


「ふぇ!?」


桃色の髪の少女が。


目を大きくする。


「お。」


「お姉ちゃんの。」


「受け売りですよ~。」


……


「ウルカの。」


「好きはなに?」


「わ。」


「わたしですか~?」


桃色の髪の少女が。


指を。


自分へ向ける。


「えっと。」


「私は。」


「みなさんが。」


「笑ってるのを。」


「見るのが。」


「好きです~。」


……


金色の髪の少女が。


桃色の髪の少女を見る。


「良い子ぶってますね。」


「エルネちゃん。」


「ひどいです~!」


「だって。」


「ほんとです。」


「ふぇ~ん。」


……


金色の髪の少女が。


前を歩く。


茶髪の少年を見る。


にや。


「テオの好きは。」


「オモチさんですもんね!」


「ちげーって!!」


桃色の髪の少女が。


くすっと。


笑う。


金色の髪の少女も。


笑う。


「笑うな!」


「だって。」


「顔。」


「また赤いですよ~。」


「うるせー!」


……


道の先。


茶髪の少年の声。


その後ろ。


二人の。


笑い声。


重なる。


また。


笑う。


……


少女は。


三人を見る。


そのまま。


一緒に。


歩く。


……


しばらく。


歩く。


……


前。


茶髪の少年。


その先。


まだ。


道。


……


足が。


重い。


さっき。


休んだ。


でも。


また。


歩いている。


……


「テオ。」


「ん?」


「ギルド。」


「遠い?」


「あー。」


茶髪の少年が。


道の先を見る。


「ここからなら。」


「もうちょいだな。」


……


もうちょい。


……


どれくらい。


……


「もうちょいって。」


「どれくらい。」


「え?」


「んー。」


「十分くらい?」


……


十分。


少女の足が。


少し。


遅くなる。


……


金色の髪の少女が。


腕にくっついたまま。


少女を見る。


「オモチさん?」


「どうしました?」


「歩くの。」


少女は。


前を見る。


「もう。」


「いや。」


……


茶髪の少年が。


振り返る。


「は?」


桃色の髪の少女も。


振り返る。


「つ、疲れちゃったんですか~?」


少女は。


自分の足を見る。


……


朝から。


ずっと。


歩いてる。


「うん。」


……


茶髪の少年が。


道の先を見る。


「でも。」


「あとちょっとだぞ?」


少女も。


そちらを見る。


……


ちょっと。


長い。


……


「いや。」


「二回言った!」


……


自分の腕。


金色の髪の少女。


まだ。


くっついている。


……


「エルネ。」


「はい?」


「ちょっと。」


「離れて。」


「えっ。」


金色の髪の少女が。


腕を。


離す。


「なんでですか?」


……


少女は。


一歩。


近づく。


そのまま。


金色の髪の少女へ。


身体を。


預ける。


「わっ。」


背中へ。


覆いかぶさる。


腕を。


肩へ回す。


……


金色の髪の少女の身体が。


ぐらり。


揺れる。


「オ。」


「オモチさん?」


「これは。」


少女は。


そのまま。


「運んで。」


「え?」


「次は。」


「私が。」


「くっつく。」


……


金色の髪の少女が。


固まる。


……


桃色の髪の少女が。


二人を見る。


「オモチさん。」


「体格的に。」


「無理があります~。」


……


「じゃあ。」


「ウルカ。」


「運んで。」


「どうして。」


「そうなっちゃうんですか~。」


……


少女。


金色の髪の少女。


桃色の髪の少女。


三人が。


茶髪の少年を見る。


……


「……なんだよ。」


……


三人は。


見る。


……


茶髪の少年が。


胸を張る。


「力なら。」


「俺にまかせろ!!」


……


茶髪の少年が。


少女の前へ。


しゃがむ。


少女は。


その背中へ。


腕を回す。


……


立ち上がる。


「お。」


「軽いな。」


……


少し。


歩く。


……


茶髪の少年が。


鼻を動かす。


「おい。」


「お前。」


「なんか。」


「くさいな。」


……


少女は。


自分のローブを見る。


「カビ。」


「カビ!?」


茶髪の少年が。


顔をしかめる。


「うわっ。」


「降りろー!」


「いや。」


少女は。


首へ回した腕に。


力を入れる。


ぎゅ。


「ぐえっ!」


「首!」


「しまってるって!」


……


それでも。


茶髪の少年は。


歩く。


金色の髪の少女が。


眉を寄せる。


「テオ。」


「女の子に。」


「くさいって。」


「最低です。」


「お前が逆に。」


「平気なのが。」


「すげーよ。」


金色の髪の少女は。


少女を見る。


「かわいいから。」


「問題なしですよ。」


「問題あるだろ!」


その横で。


桃色の髪の少女が。


顔を。


真っ赤にしている。


「み。」


「みみ。」


「みみみみみ。」


……


「密着なんて。」


「不純すぎます~!!」


桃色の髪の少女が。


駆ける。


少女の腰へ。


腕を回す。


「離れてください~!!」


ぐい。


「ぐえっ!」


「ウルカ!」


「引っ張るな!!」


「だって。」


「不純です~!!」


……


金色の髪の少女が。


三人を見る。


「……。」


「ずるいです!」


「は!?」


「わたしも。」


「オモチさんに。」


「くっつきます!」


「来るな!!」


金色の髪の少女が。


反対側から。


飛びつく。


「オモチさーん!」


「わ。」


「おい!」


ぐら。


……


四人まとめて。


傾く。


どさっ。


……


「いってぇ……。」


「ふぇ~……。」


「オモチさん。」


「大丈夫ですか?」


……


少女は。


茶髪の少年の背中に。


まだ。


くっついている。


「うん。」


……


その横を。


人が。


通りすぎる。


……


一人。


二人。


三人。


……


こちらを見て。


笑う。


「ふふ。」


「元気ねえ。」


……


茶髪の少年が。


顔を上げる。


「笑うなー!!」


また。


笑い声。


……


少女は。


通りすぎていく人たちを見る。


……


笑ってる。


「オモチ!」


茶髪の少年が。


地面へ。


手をつく。


「降りろって。」


「言わねーから。」


「普通に。」


「掴まれ!」


……


「わかった。」


……


腕を。


少し。


緩める。


首ではなく。


肩へ。


掴まる。


……


茶髪の少年が。


ゆっくり。


立ち上がる。


「最初から。」


「そうしろよ……。」


……


金色の髪の少女。


桃色の髪の少女も。


立ち上がる。


服についた。


埃を。


払う。


……


また。


歩く。


今度は。


少女の足は。


地面につかない。


……


茶髪の少年の背中。


揺れる。


……


しばらく。


進む。


やがて。


茶髪の少年が。


前を指す。


「あれ!」


「ギルド!」


……


少女は。


顔を上げる。


道の先。


大きな。


建物。


人が。


たくさん。


出入りしている。


……


入口の上。


大きな文字。


《王国職業斡旋協会》


……


「ギルド。」


「そう!」


茶髪の少年が。


胸を張る。


「ここだ!」

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