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第二十五話 一緒


昼が近かった。


柔らかな陽射しが病室へ差し込んでいる。


こんこん。


扉が叩かれた。


「こんにちは、おもち!」


元気な声だった。


赤い髪の少女が病室へ入ってくる。


今日も両腕には絵本を抱えていた。


「少し遅くなっちゃった。」


「午前のお勉強が長くて。」


少しだけ照れたように笑う。


少女は静かにその姿を見ていた。


赤い髪の少女は椅子へ腰掛ける。


抱えていた絵本を机へ置いた。


「今日も持ってきたよ。」


表紙を撫でる。


「おもちが読みたい時に読んでね。」


少女は絵本を見る。


昨日、自分で選んだ本もそこにあった。


赤い髪の少女は嬉しそうに続ける。


「今は私が読むけど。」


「いつかかわりばんこね。」


少女は小さく首を傾げる。


それでも。


赤い髪の少女は楽しそうだった。


「今日はね。」


赤い髪の少女は嬉しそうに話し始める。


「先生がね。」


「お庭のお花がもうすぐ満開になるって言ってたの。」


「おもちも一緒にみようね。」


「それと。」


「図書室に新しい絵本も入ったんだって。」


少女は静かに聞いていた。


赤い髪の少女の話は。


いつも楽しそうだった。


聞いているだけで。


病室が少しだけ賑やかになる。


こんこん。


扉が叩かれた。


「失礼します。」


侍女が昼食を運んでくる。


ワゴンの上には。


二人分の食事が並んでいた。


少女は少しだけ目を瞬かせる。


「……?」


赤い髪の少女も食事を見る。


「あっ。」


昨日のことを思い出したように笑う。


「そうなの!」


少女を見る。


「昨日ね。」


「お父様にお願いしたの。」


「今日から。」


「おもちと一緒にご飯を食べてもいいって。」


少しだけ照れながら笑う。


「だから。」


「今日から一緒に食べよう!」


少女は二人分の食事を見る。


静かに並んだ皿。


向かい合う椅子。


赤い髪の少女は席へ座る。


胸に右手を添えて。


「命の恵みに。」


少女はその様子を見つめていた。


赤い髪の少女は気付く。


「あっ。」


「ご飯を食べる前の挨拶なんだ。」


「おもちもよかったら私の真似してみて。」


少女は胸へ添えられた右手を見る。


赤い髪の少女を見る。


少しだけ考える。


そして。


ぎこちなく胸へ右手を添えた。


「……命の恵みに。」


赤い髪の少女は嬉しそうに笑う。


「うん。」


それだけだった。


それ以上は何も言わない。


赤い髪の少女は。


スープを口へ運ぶ。


パンを小さくちぎる。


「あっ。」


「焼きたてだから。」


「いい匂いだね。」


少女はパンを見る。


顔へ近づける。


少しだけ止まる。


……


赤い髪の少女を見る。


「……これが。」


「いい匂い。」


赤い髪の少女は嬉しそうに頷く。


「うん!」


「焼きたてのパンの匂い。」


少女はもう一度パンへ顔を近づける。


そっと指先で触れた。


「……ふわふわ。」


小さくちぎった。


ゆっくり口へ運ぶ。


柔らかかった。


ほんの少しだけ。


甘かった。


「このパン好きなんだ。」


「今日のスープもおいしいね。」


少女は向かいを見る。


赤い髪の少女は穏やかに食事を続けている。


少女は静かにスプーンを持った。


一口。


ゆっくり口へ運ぶ。


温かかった。


赤い髪の少女は気付いていた。


けれど。


何も言わない。


ただ。


静かに一緒の時間を過ごしていた。


やがて食事が終わる。


侍女が食器を下げる。


二人分の皿。


一つはきれいに空になっていた。


もう一つは。


昨日より。


ほんの少しだけ。


食べられた。


侍女は何も言わない。


赤い髪の少女も何も言わない。


少女も何も言わない。


静かな病室。


それでも。


昨日とは。


少しだけ違っていた。


赤い髪の少女は立ち上がる。


「じゃあ。」


「また明日。」


優しく笑う。


「明日も一緒に食べようね。」


少女は小さく頷いた。


赤い髪の少女は嬉しそうに手を振る。


病室をあとにする。


静かに扉が閉まる。


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