封印の旅『つるぎの里』 その7
「直公殿、ご苦労様でしたね」
日孁が剣山から帰ってきた直公を労った。
「とりあえずは安心で御座いますが…厄災の動きもありますので、このまま巡所の封印と、島喰いの楔をあと二か所施すまでは、枕を高くは出来ませぬ!」
「それはそうですが、今の空様達の徳で八岐大蛇を屠ったのは、やはり直公殿の教えの素晴らしさゆえにございましょう。阿波の国はこれで大丈夫だとして、次は土佐に御座いますね」
「いえ、確かに阿波最大の難所は終わりましたが、阿波の国の半分が終わっただけにござれば、まだまだ油断は出来ませんぞ。空達には更に徳を上げ、仏神一体を高めてもらわねば…」
「おやおや、這えば立て、立てば歩めですか」
日孁が明るく笑った。
それは、本当に久しぶりに見せる日孁の心からの笑顔だった。
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空達は剣山を後にすると、次の巡所に向かう為半田を目指すことにした。
「半田駅から魔導列車で小松島に向かおう!」
空が菊理媛から預かった地図を見て言った。
「半田…と言ったなりか?」
前鬼が海の腕の中でジタバタと蠢いた。
「半田がどうかしたのか?」
優が前鬼のただ事でない慌て様に尋ねる。
「前に行った市場村の村人が、半田はそうめんが美味いと言ったなり!空よ急ぐなり!!」
と海の腕の中でジタバタと暴れる。
「じゃあ、少し足を速めるか!」
空が笑った。
「これって、そうめんなの?」
海が机に置かれた『半田そうめん』をみて首を傾かしげた。
「これは…ひやむぎとか、細うどんに近いのかな?」
優もその半田そうめんを見て頷く。
「正式には『ひやむぎ』になるらしいけど、昔から『半田そうめん』と言ってたから、そうめんで良いらしいよ」
空が豆知識を披露した。
「美味ければ、細かいことはいいなり!」
前鬼が満足そうに半田そうめんを啜すすり、「海よ、前鬼は薬味には茗荷が好みなり!」と、海に注文をつける。
「このコシの強さ!妾はこの半田そうめんが気に入ったなり!!」
後鬼も大満足だ。
「だけど、ラーメンにうどん、蕎麦にそうめんって、徳島って麺料理が美味いんだな〜!」
優がこれまで食べた料理を思い出して言った。
「麺だけじゃねえぞ!」
突然、優の隣から声がした。
「次は小松島だろ!なら、しばらく海岸沿いになるから、海産物が美味いし、小松島なら竹ちくわにフィッシュカツは外せねえ。それに甘味の和三盆は喰ったか?」
その声に空達が驚き、顔を上げると、当たり前のようにぬらりひょんが半田そうめんを啜っている。
「い…いつの間に?」
目を剥く優にぬらりひょんが戯けるようにウィンクをした。
「ぬらりひょんよ、貴様に聞きたいことがあるなり!」
前鬼がぬらりひょんを睨みつける。
それを受けて、ぬらりひょんの目が、獲物を見つけた鷹のように鋭く光る。
その緊張感に、空と優が息を呑む。
「フィッシュカツとは、どのような味なりか?それに、和三盆が気になるなり!!」
口を開いた前鬼の問いに、空と優がずっこける。
「センちゃん。美味しい物を食べるのは良いんだけど…」と海が前鬼のお腹をつまんだ。
「戦鬼になる前に…布袋様か大黒様になっちゃうよ!!」
海の容赦ない一言に、前鬼の顔が歪む。
さらに「前鬼は豚鬼なり!!」と後鬼が追い討ちをかけると、前鬼がその場に膝から崩れ落ちた。
そんなやり取りを見ながら、ぬらりひょんが空に話しかけた。
「その徳で、よく八岐大蛇を退治できたな」
「俺の力では無理だったけど、周りのみんなが助けてくれたからね」
「それは…あの娘の力が大きいな!」
ぬらりひょんが前鬼を揶揄う海を見る。
「あの娘の御力であれば……あの町も持ち直すかもな。まあ、先は長いが頑張りな!!」
「あの町とは……?」
問いかける空がぬらりひょんを見た時、そこは既に蛻の殻だった。
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「ここが小松島か。潮の匂いが気持ち良いな!」
「すぐそこが海みたいね!!」
優と海が魔導列車から降りると、キョロキョロと周りを見渡した。
そこに……
『お大師様の匂いがする!!』
と小さなタヌキが空に抱きついてきた。
慌てて足元に目をやるが、空に抱きついたタヌキは、まるで息をするかのように、海の腕の中で前鬼と後鬼と一緒に抱きすくめられていた。
「可愛いポンちゃんでしゅね〜。何処から来たのかな?」
海に抱きすくめられた子ダヌキは、海の腕の中で驚いたようにつぶやいた。
「あれ?このお姉ちゃんからも、お大師様の匂いがする!」と、海の胸に顔を擦り付けた。
「おいらは5代目の金長なんじょ!お姉ちゃん達、おいらの郷に遊びに来てよ!!」




