表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです【徳島編】  作者: 平木 ナヲル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/45

封印の旅『つるぎの里』  その5

同じ頃……元の世界では、大量の酒樽を剣山の山頂に運び込む直公の姿があった。


その姿を認めた月読が直公に声を掛けた。

「直公殿、鞍馬山から出雲の国とご苦労様にございます」

「なんの…この世界の危機、老骨に鞭打って働かせて頂きます」

「老骨などとご謙遜を!」

月読が鍛え込まれた直公の身体を見て笑った。


「ところで、やはりヤツが現れましたか!」

彼方の世界から溢れ出る邪気を感じ、直公が警戒感を強める。

「そのようです。お持ち頂いた八塩折之酒やしおりのさけが役に立ちそうです。大社(おおやしろ)大国主大神おおくにぬしのおおかみ様の御神力もお借りし、私がこの酒樽を八岐大蛇用に変えて、彼方の世界に送ります。ただ、私の神力は使い切りそうなので、後は須佐之男…お願いしますね!」


「ああ、任せろ!今度こそ、二度と復活出来ないように封じ込めてやる!!」

須佐之男が、固く拳を握りしめた。



ーーーー



「何よあれ!怪獣じゃない!!」

八岐大蛇の巨体に海が目を見張った。


「首周りだけでも5メートルはありそうだが……それが8本か!!」

うんざりしたように優もつぶやく


「アイツが暴れたら、世界が破滅しそうだな。やるしか無いし、今の俺たちなら大丈夫だ!!」

空が自分の内の仏と、太郎笈の力を感じながら、決意を固めた。


「よし、行こう!!」

八岐大蛇の巨体に気押されそうになりながら、優が声を振り絞る。


「飛斬!飛斬!飛斬!」

次郎笈の神力を感じながら、優が飛斬を放つ。


だが、八岐大蛇はその斬撃に微動だにせず、真っ赤に染まる目で空達の様子を伺っていた。


「なら、これでどうかしら。神技 竜斬一閃りゅうざんいっせん!!」

巨木を切り裂いた海の神技も、八岐大蛇を覆う強靭な鱗に阻まれ、本体に傷一つ付けることは叶わなかった。


優と海に続き、空が内なる仏と、太郎笈の神力を感じながら技を繰り出す。

『仏神一体のスキル 神技 破邪斬断はじゃざんだん!!』


だが、仏神一体のスキルでも、八岐大蛇の鱗を数枚吹き飛ばすのが精一杯だった。


八岐大蛇が蝿でも追い払うように軽く頭を振ると、突風が巻き起こり空達に襲いかかる。

『危ないなり!!』

後鬼の盾が突風を防ぐ。


「あんなの、どうやって退治するのよ!!」

空のスキルまでが弾かれ、海が絶望したように声をあげた。


『墜ちたとは言え、元は水神!やはり正面からでは敵わぬか!!』

海の内で、娑伽羅しゃがら龍王がつぶやき、『其方のレベルでは、我はここまでじゃ。後は水天と神界に委ねるが、竜女が加護を与えた薙刀に、我が御力を宿しておく!』と告げ、天に返っていった。




手詰まりかと思われたその時……

『前鬼と後鬼は御力を優に戻して、太郎笈は空から離れて優を纏いなさい!』

何処からか、声が響いてきた。


その声に従い、前鬼と後鬼が小さくなり、太郎笈は光となって空から離れ、次郎笈と共に優の身体を纏った。

『優は、この後で力を使ってもらいます。そのまま力を蓄えておきなさい』


「貴方様は……?」

空が尋ねる。


われは十二天 ((1))がひとつ水天すいてん。水の神にして龍をべる者です。娑伽羅の願いにより参りました。其方の内の仏はまだまだ未熟ゆえ、われが其方の内に入りましょう』


その声に導かれ、空が九字印を切った。

すると、天から光り輝く雨が空に降り注ぎ、その雨が空の内に入り込んだ。




同じ時、海が頭に飾ったくしが眩い光を放つ。

柘植つげくしげのくし!海よ、妾をその身に受け入れ神託を告げなさい!!』

「貴女は?」

『妾の名は櫛名田くしなだ。さあ、八岐大蛇を屠りますよ!』

その言葉のまま、海も九字印を切った。



「兄貴!元の世界から八塩折之酒やしおりのさけの酒樽が送られてきたから、太郎笈と次郎笈の力で八岐大蛇の近くまで運んで!!」

海が、その身の内にある櫛名田比売くしなだひめの神託に従い、優に声を掛ける。


海が指し示す方を見ると、いつの間にか山積みにされた酒樽が芳醇な薫りを漂わせていた。

ただ、そのサイズが桁違いに大きい。

どうやって運び込んだのか、どう見ても人力で動かせる大きさではなかった。

それが八個。


「げっ!これをヤツに呑ませて酔い潰すのか?だけど、そんなに上手く呑んでくれるかなぁ!!」


「それは任せて!兄貴は太郎笈と次郎笈に頼んで、運んでくれたら良いから!!」


「匂いだけでも酔いそうだな!!」

優がぶつぶつと言いながらも、太郎笈と次郎笈の神力を借りて、酒樽を八岐大蛇の頭が届く所に並べた。


その匂いに釣られ、八岐大蛇が真っ赤なまなじりをニタリと下げるが、警戒しているのか酒を呑もうとはしない。


すると、何処からか『ドン ドン ヒャララ ピーヒャララ』と、陽気なお囃子が流れてきた。


いつの間に現れたのか、舞姫がそのお囃子に合わせて踊り出す。

舞姫が一節舞ったところで、一際高く『ピー!!』と横笛の音が鳴り響き、『テン テン テテテン』とつづみが打ち鳴らされる。


「元は水神で有らせられた八岐大蛇様に、我が舞を一差しお披露目いたしましょう」

皷の音がかき消えると、そこには天宇受売命アメノウズメを纏い、舞姫を周りに従えた海の姿があった。


ハラリ ハラリと海が持つ扇子が宙を遊ぶ。

その天女の舞に、八岐大蛇の警戒が薄れた。

目の前には大量の酒があり、顔を上げると天宇受売命を纏う海が雅に舞い踊っている。


たまらず、八岐大蛇が目の前の酒樽に頭を突っ込み、ゴクゴクと八塩折之酒を呑み干していく。

やがて、八岐大蛇の頭が地面に落ち、そのまま寝入ってしまった。


「八岐大蛇は上手く眠ってくれたが……どうやってトドメを刺すんだ?」

神技を使っても、数枚の鱗しか傷つけることが出来なかった、巨大な体を見て優が頭を捻った。



ーーーー



元の世界にいる須佐之男が、櫛名田比売の気配を感じ取っていた。

「おぉ、櫛名田が異世界への渡りを手助けしてくれるか!」

須佐之男が懐かしげにその名をつぶやくと、限界まで神力を高め、手にした十束剣とつかのつるぎを固く握りしめた。



海が深く眠る八岐大蛇を確認すると、空の方に振り向いた。

「これから須佐之男すさのお様を召喚します。空兄は、水天様と須佐之男様を仏神一体で纏い、八岐大蛇を仕留めてください」


櫛名田比売をその身に宿した海の願いに、須佐之男がその場に顕現し、須佐之男を空が纏う。


『櫛名田よ、久しいな!』

空の身体を借りて、須佐之男が櫛名田()を抱きすくめる。

『貴方様もお変わりなく!!』

櫛名田も海の身体を借り、須佐之男()の胸に顔を埋めた。





その横では……「コラコラ〜!!」と今にも須佐之男()に飛び掛かりそうな優を、前鬼と後鬼が小さな身体で押し留めていた。







後は八岐大蛇を切り刻むだけなのですが…トドメは次話に回します。

本来、天宇受売命アメノウズメは八岐大蛇の神話には出ませんが、前回(神話)でやられたのと同じ方法でやられる設定のため、海に舞を一差し披露してもらいました。

もちろん、神話の踊りとは違う雅な踊りです。


用語解説  基本的にはWikipediaを参考にしています


(1)【十二天じゅうにてん

仏教の護法善神である「天部」の諸尊12種の総称。

帝釈天たいしゃくてん火天かてん焔摩天えんまてん羅刹天らせつてん水天すいてん風天ふうてん毘沙門天びしゃもんてん伊舎那天いざなてん梵天ぼんてん地天じてん日天にってん月天がってん

の十二天部


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ