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空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです【徳島編】  作者: 平木 ナヲル


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封印の旅『つるぎの里』  その4

『ヒーッヒッヒッヒ めんこい小娘じゃのう!!』

蛇骨婆じゃこつばばあと名乗った妖怪が、海の前に立ち塞がった。


「そう言うお婆ちゃんは、随分とユニークな襟巻きをしてるのね!お年寄りなのに、首元が冷えないかしら。心配だわ!!」

海が、蛇骨婆の頸筋くびすじに巻き付いた大蛇を油断なく見ながら、揶揄うように笑いかけた。


『その気の強さが、いつまで続くかな!楽しみが減るから、あっさり死んでくれるなよ。ヒッヒッヒ!!』

蛇骨婆が海の軽口に応え、ニヤリと笑う。


大蛇が海を睨むと、大きく口を開けた。

『来る!』

身構えた海に、大蛇から毒液が吐き出された。

予想外の攻撃に、慌てて横に飛び退き毒液を避ける。

そこに、大蛇の牙が襲いかかる!

辛うじて薙刀で大蛇の牙を受けるが、海の身体は大きく後ろに飛ばされた。


『ヒーッヒッヒッヒ しぶといお嬢ちゃんだね!さっさと諦めて死んでおしまい!!』


蛇骨婆が海を見下ろして、甲高く笑った。




『お前が優とか言う小僧か!』

優の前に立ち塞がったのは、巨大なほこを手にした魅頭血みずちだった。


『厄災様が気にかける程のレベルには見えぬが……。まあ良い、いずれにせよここで死ねば関係あるまい!』

魅頭血が口から高圧の水を吐き出された。

それを避けた優がその水の跡を見ると、深い穴が穿たれていた。


「げっ!なんて威力だよ!!」

優がその穴の深さを見てつぶやく。


『我が水流に貫かれるか、矛に切り裂かれるか、好きな方を選ばせてやろう!!』

二股に割れた舌をチョロチョロと出しながら魅頭血が優を見下ろした。


「ならば、俺の剣にお前が切り刻まれるので頼むよ!」

優がガイアの剣の切先を魅頭血に向けて不敵に笑った。


『はあ?そのような未来は無いわ!!』


「やってみなけりゃわかんねえよ!!」

優がガイアの剣を構え直して、魅頭血を見据えた。





『キサマらも物怪もののけならば、厄災様に従うが良い。さすれば、命だけは助けてやろう!』

蟒蛇うわばみ盧頭血のずちは、前鬼と後鬼を値踏みするように声をかけた。


『我は前鬼!前鬼は戦鬼なり!!』

『妾は後鬼!後鬼は護鬼なり!!』

『『我らは役小角様の従者なり!厄災如きが我らを従えるだと、笑わせるななり!!』』


『小鬼どもが、厄災様に不敬な。ならば修験者共々死ぬが良い』


蟒蛇が巨大な口を開けて、前鬼と後鬼に襲いかかる。

『キサマらなど、一呑みにしてくれるわ!』

その横から盧頭血が大槌を振り翳し、前鬼と後鬼に叩きつける。


『妾が盾にそんなものは効かぬなり!』

後鬼が、蟒蛇と盧頭血の攻撃を跳ね飛ばすと、前鬼がすかさず棍棒を振り下ろした。


『『そんな攻撃、痛くも痒くも無いわ!!』』

前鬼の一撃が蟒蛇と盧頭血を捉えるが、威力が足りないため、ダメージが通らない。


『優のレベルが足りないなり!』

前鬼が悔しそうに蟒蛇と盧頭血を睨みつけた。




『これは何だ?』

空は自分の身体が羽のように軽く、だがそこから繰り出される一撃が、岩をも砕く威力を持つことに戸惑いを隠せなかった。


『これが仏を我が身に宿すと言うことか!これなら!!』

空が飫炉血の三又の槍を軽やかに躱し、智慧の利剣を叩き込む。


ぬるいわ!』

レベルが上がった空の攻撃だが、飫炉血を倒し斬るには届かない。


そこに『ブォーーー!』と鳴き声が響く。

そこには巨大な黒牛が飫炉血を睨み、角を向けていた。

黒牛が空に視線を送ると、空がその意味を理解した。


両手を前に出し、慣れた手付きで九字印を切る。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


すると、黒牛が光となり空の身体に纏わりつく。


「我が身体に仏を宿し、八百万やおよろずの神をこの身に纏う! 仏()一体 太郎笈纏身!!」

太郎笈は、霊峰剣山が具現化した姿であり、剣山の権現だった。


己の内に仏を宿し、霊峰剣山の神力をその身に纏うと、空はその御力を感じた。


『そんな付け焼き刃で、何が出来る!!』

叫びながら三又の槍を突き出す飫炉血の動きが、スローモーションのように空の目に映る。


「仏神一体のスキル 神技 霊剣斬魔!!」


その瞬間、飫炉血の頭がゴトリと地に落ちた。





『やれやれ、元気な婆さんだな!』

天から光が指し、海を照らし出した。


『誰だい!ワシの邪魔をする奴は?』

蛇骨婆がその光に目を向けた。


『龍族の王として、今回は見逃せないからな。婆さん、そろそろ成仏する時だよ!!』

『ケッ!誰かと思ったら娑伽羅(しゃがら)龍王かえ。ジジイは引っ込んでな!!』


『そうはいかんな!海よ、我を纏え!!』


海が娑伽羅に導かれ九字印を切る。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


が身体は既に仏身なり、仏身宿りてわれとなす…仏身一体 娑伽羅纏身!!」


海が娑伽羅の御力をその身に纏った。

「じゃあ、お婆ちゃん…さよならね!仏身一体のスキル 神技 龍牙咆撃りゅうがほうげき!!」


『ギェーー!』と悲鳴を残し、蛇骨婆が真っ二つに切り裂かれた。


「娑伽羅、ありがとう」

礼を言う海に『まだだ!海よ、那伽の時のように、我をその身の内に受け入れよ!!』と娑伽羅の声が海の頭に響いた。





魅頭血に対峙する優の前に、美しい青牛が現れた。

「お前は…たしか次郎だったな。そこは危ないぞ!」

魅頭血の一撃を弾きながら、優が次郎に話しかけた。


すると、『ムォーーー』と次郎が一鳴きすると、その身体が光となった。

『これは…』と慌てて優が九字印を切る。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


が身体は既に仏身なり、仏身宿りてわれとなす…仏身一体 次郎笈纏身!!」


その神力は、険しく…だが優しい柔らかさを兼ね備えたものだった。


「魅頭血よ、やはりお前が切り刻まれる未来が正解だったな!仏身一体のスキル 神技 斬魔一閃!!」


魅頭血が血を吹き出して倒れるのを横目に見ながら、優が次郎笈を労う。


だが、次郎笈は優から離れようとせず、そのまま優の身体の内に入り込む。

自分の内に次郎笈の神力を感じ、その神力が自分のレベルを引き上げるのを感じた。




優のレベルが上がったのを感じた前鬼と後鬼が、己の身体を見る。


その姿は体長が2メートルにも及び、蟒蛇と盧頭血を力強く迎え撃つ。


『優のレベルが上がったなり!』

『次郎笈の神力を借りただけなり!だが、今はこれで十分なり!!』


前鬼の一撃が力強く蟒蛇の頭蓋を砕く。

盧頭血の大槌を後鬼が軽々と防ぐと、前鬼の一撃が盧頭血の身体を砕いた。


「皆んな、これでこの地の邪鬼は全て撃退したな!」

空が周りを見渡して叫んだ。


その時、首だけになった飫炉血が『これで勝ったと思うな!!』と叫ぶと、飫炉血と魅頭血、蛇骨婆に蟒蛇と盧頭血の身体が昏い闇となり、剣山の山頂にある大岩の岩戸の中に吸い込まれていった。


すると……


『ドガ〜ン!!』と岩戸が内側から吹き飛び、そこには頭が八つに分かれた大蛇が空達を見下ろしていた。






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