貰い火 嘆き・6
ユミル:
「監視塔もありますからね。
昼間であれば、敵の動きはすぐにわかりますよ」
直樹:
「夜はどうなんだ!?」
ユミル:
「斥候が監視に出るはずですから……
たぶん、大丈夫だと思います」
直樹:
「宿舎が首都で、本当によかった……
ここで寝るのは危険だから辞めだ。
面倒でも戻るとしよう」
何も見なかった事にして、探索を再開する。
正面を端から歩いていくと、救護施設が見つかった。
軽症者ばかりで、それほど混んではいない。
戦死者は、居ないのかな?
しばらく考え込みながら歩いていると、風に乗って声が流れてくる。
声:
「さぁ、飲め。
飲んでくれ!
頼む!」
嫌な予感しかしない。
声の行方をたどると、救護施設の隣の隣。
大きなテントだった。
中に入ると血の臭いでむせ返る、あと死臭が酷い。
死体袋が荷物のように置かれていた。
3段に詰まれている場所がある。
3分の1くらいだろうか。
もしかして…あの積まれた中に。
息のある人間も居るんじゃないの……か?
考えたくもない。
整然と死体袋が置かれた場所に、人が居た。
直樹:
「あそこか……」
声:
「頼む!
飲んでくれ!」
声:
「い…… ま…生…き……」
直樹:
「フリスト!
あいつを押さえろ」
ガチャン、ガン、ガン。
フリストが鎧を着た兵士を、後ろに回りこんで引き剥がす。
直樹:
「おい。
お前、まだ息はあるか?」
死体袋から鎧を着た体が、半分くらい出ている。
金属製の鎧に穴が開くのか。
傷がひどい。
瀕死の兵:
「……け……だ…い」
直樹:
「悪魔に魂を売ってでも、生きたいのなら助けてやる。
いいか?
冒険の書」
隷属の書を貼り付ける。
首が少しだけ動いたのか?
動かないのか?
隷属しろ!
隷属するんだ!
口元がパクパクと動き、消え去った。
兵士:
「貴様!
貴様ーーーーーーー!
レンニを……
レンニを何処へやった!!
離せ!
俺を、離せ!!」
ガチャガチャと動くが、フリストが離さない。
直樹:
「まぁ、待て。
会いたいなら、今あわせてやる。
冒険の書」
取り込んだ奴を転送した。
喚く兵士と俺の間に入り込む。
隷属者:
「888番です。
命をお助けいただき、感謝しています」
兵士:
「レンニ!
お前、どうして……
その体は……
怪我は!
怪我はどうした!」
888番:
「トイヴォ。
僕は生まれ変わった」
トイヴォという兵士:
「どういうことだ、レンニ」
888番:
「トイヴォ……
僕の事は忘れてくれ。
君の知っているレンニは、毒を飲んで死んだ」
トイヴォという兵士:
「何を言っている?」
888番:
「僕は、どのみちあと10分も持たなかった。
この方が居なければ、間違いなく死んでいた。
時間がない。
この方の、邪魔をしないでくれ!」
トイヴォという兵士:
「レンニ……」
888番:
「中で聞いています!
みんなを……
みんなを、助けてくださるのでしょ?」
直樹:
「あぁ。
やるぞ!」
トイヴォという兵士:
「アンタ……
いったい何を……」
邪魔な兵士を、888番とフリストが縛り上げていく。
隷属の書をとりだし、888番、ユミル、フリストに配る。
1人ずつ声をかけて、隷属していった。
荷物のように詰まれたところも丁寧に確認していく。
兵士:
「ぁ…………」
直樹:
「悪魔に魂を売るか?
まだ生きられるぞ。
自分で選べ!」
隷属した奴を取り出して、次々と参加させる。
直樹:
「みんな急げ!
他の兵が来るぞ!」
兵が来るまでに1045人を取り込めたが、全員に声をかけられなかった。
隷属者を帰還させる。
超絶操作マッスルマリオネットで2人を抱えて逃げ出した。
首都の宿舎で、翌日を迎える。
お店に商品を届けると、何事も無かったように中将の陣地に戻った。
物資を届け、給水作業に勤しんだ。
兵士:
「商人の方々、中将がお呼びです。
ご案内しますので、こちらへどうぞ」
直樹:
「なんだろうな?」
フリスト:
「ナオキちゃん。
本気で言ってるの?」
直樹:
「昨日は……
人助けだろ?
感謝状か何かかな?」
フリスト:
「本気?
行って確かめたら?」
直樹:
「よし。
行くぞ!」
兵について歩いていくと、騒がしいテントへと案内された。
100人近く居るんだが……
隷属者を呼び出せば、問題ない数か。
兵士:
「中へどうぞ」
中に入ると中将と兵士が20人、将校と思しき者が1人と強そうな護衛兵が居た。
椅子が一つあったので、そこに座る。
直樹:
「中将。
今日は、なんだろう?」
中将:
「実は昨晩。
遺体安置所から遺体が盗まれる事件があった。
君に心当たりは無いか?」
直樹:
「遺体……か。
それでは、知らないな……」
中将:
「そうか……
入れてくれ」
兵士:
「はっ」
誰かが入ってきた。
昨日、いた奴だな……
毒を盛ろうとしていた奴だ。
中将:
「彼に心当たりは無いかな?」
直樹:
「知っている。
昨日テントの中で見た」
中将:
「では、彼の言った事は本当か?」
直樹:
「その男が、何を言ったのか……
俺は聞いていないからな。
判断がつかないぞ」
中将:
「遺体が消えた犯人は君だと言う。
我々の大切な仲間だ。
遺体を返してほしい。
今なら、罪は問わない」
直樹:
「そいつが言ってる事を、お前達は誤解している。
遺体は、持って行かないぞ」
護衛兵が腰の剣に手をかけ、声を荒らげる。
護衛兵:
「貴様!
いい加減にしろ!
犯人はお前だ!」
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