貰い火 嘆き・7
直樹:
「遺体を盗んだというのなら、俺ではない。
大きな誤解がある」
中将:
「誤解?
それでは詳しく、聞きたいものだな」
直樹:
「兵士を千人ほどもらったが、全員、生きていたぞ。
だから、遺体が無いというのなら。
俺ではない。
お前の勘違いだ」
中将:
「それは、どういう……」
護衛兵:
「何たる無礼!
その言葉遣い!」
顔を真っ赤にした護衛兵が、鎧をガチガチとうるさい。
直樹:
「この中にお前たちの言う。
遺体の顔が分かる者はいるか?」
中将:
「大佐。
分かるか?」
大佐:
「確認してみないと、なんとも言えませんが……」
直樹:
「ユミル、フリスト。
視線を遮れ」
今回隷属した連中を、適当に10人取り出した。
護衛兵:
「馬鹿な!
どこから?」
護衛兵がさっきからうるさい。
取り出した連中が、こぞって自己紹介を始める。
こいつら状況が分からないのか?
隷属者の話を聞いてから椅子に座った。
直樹:
「時間を取らせた。
すまないな。
そこの大佐が、お前たちを確認したいらしい」
大佐:
「よろしいかな?」
大佐が前に出た。
驚きながらも、隷属者たちを確認していく。
大佐:
「あ!
この兵は見覚えがあります!
たしかに、我が軍の兵士です。
確か、致命傷を受けていたはず。
死んだはずでは……
それが、どうして……
元気そうじゃないか?」
護衛兵が怒鳴る。
護衛兵:
「栄光ある、我が軍の兵士が、なぜ!
異世界人、如きの元に!
目を覚ませ貴様ら!」
直樹:
「中将。
そこの護衛兵、静かにならないか?」
護衛兵:
「メグスラシル中将に対して、その口の利き方は何だ!
礼儀を払え!!」
激昂した護衛兵が襲い掛かってきた。
隷属者たちが、武器を抜いて俺の盾になる。
護衛兵は容赦なく切りかかった。
しかし、
それよりも早く、フリストが殴り倒す。
ガッン、ガシャガシャ。
護衛兵:
「グゥッ」
隷属者たちが護衛兵を引きずり倒し、首を切り落とそうとした。
直樹、中将:
「待て!」
俺と中将が同時に叫ぶ。
何処かの工場の流れ作業だろうか?
首が飛ぶところだった……
直樹:
「開放してやれ」
隷属者たち:
「はい」
隷属者たちは素直に答えたが。
護衛兵の手を後ろで縛りあげ、口を縄で縛る。
体をまさぐって、武器を全部取り上げ、俺の足元に放り投げた。
オイ、オイ、いいのか?
俺の目が点になっていると、向こうも驚いていた。
大佐の口が、金魚のようにパクパクしている。
直樹:
「お前ら容赦ないな……」
隷属者たちは、全員、剣を抜いたままだ。
向こうの兵士たちも全面に出てくる。
異様な殺気に包まれた。
メグスラシル中将:
「大佐。
准将の縄を切ってやれ」
大佐:
「はい」
直樹:
「中将。
うちの者が、すまない」
メグスラシル中将:
「こちらこそ、申し訳ない。
えーっと。
何とお呼びすれば、良いのかな?
異世界人殿」
直樹:
「自己紹介が、まだだったかな?
俺のことはナオキと呼んでくれ」
メグスラシル中将:
「自分は、メグスラシルだ。
では、ナオキ殿。
誤解について、詳しく聞かせてほしい」
直樹:
「遺体安置所から連れて行ったのは、全て生きていた人間たちだ。
そちらの大佐が、確認した通り。
元兵士で間違いない。
俺は遺体安置所で。
瀕死の兵士を殺そうとしていた人間に出会った。
それを見つけた俺たちが、その兵を助けたという訳だ。
毒を盛ろうとしていたのは、そいつだな。
気持ちはわかる。
それしか助ける手段がなかった。
苦しむ友人を、助けたかったのだろう。
だが、俺たちには別の手段があった。
だからそれを使って、救うことにした。
これが経緯だ」
メグスラシル中将:
「経緯は分かった。
ナオキ殿が救ったという。
その兵士たちは、今、どうしている?」
直樹:
「元気にしているぞ。
体もすべて、完治している。
ここにいる連中と同じだ」
メグスラシル中将:
「では、その彼らを。
軍に返して、もらえないだろうか?」
直樹:
「無理だ!」
准将らしい護衛兵:
「貴様!
なんと横暴な!
その態度!!」
メグスラシル中将:
「准将!
下がれ!
君には、こういう交渉事は向いていない。
黙れないのなら、ここから出ていけ!」
准将らしい護衛兵:
「申し訳ございません」
メグスラシル中将:
「ナオキ殿……
理由を聞いてもいいだろうか?」
直樹:
「中将。
異世界人についてどこまで知っている?」
メグスラシル中将:
「多くは知らない。
我々には無い、特別な力を持っている。
くらいだとしか……」
直樹:
「異世界人の俺も同じだ。
よくわからない力を持っている。
異世界人は冒険の書のと呼ばれる魔導書を持つらしい。
なぜ持っているかは、俺に聞くな。
俺も知らない。
この冒険の書には、特別な力がある。
個人によって違うらしいのだが。
この力を使って、瀕死の人間を治した。
これだけの奇跡だ。
当然、条件や代償がある。
俺が治せるのは、一人の人間につき1度だけ。
治された者は、一生俺の奴隷となる。
俺が一方的にはできる訳ではない。
相手の許可が必要だ。
事前に制約書を渡さなくてはできない。
彼らはこことは違う世界で、暮らすことになる。
こちらの世界に自分の意志では来ることができない。
そういう意味では。
死んでいるに等しい気もするが……」
メグスラシル中将:
「君の護衛兵10人、現在ここにいる訳だが。
他には何人、出てこられるのかな?」
直樹:
「うーーん。
試したことがない。
わからないな……」
メグスラシル中将:
「ナオキ殿。
君は自分がしたことの意味を、分かっているのか?
気づいているか?
事の重大さを!」
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