輸送の仕事 戦場への輸送・8
直樹:
「1番と17番はいるか?」
1番:
「はい
領主様」
17番:
「ここに居ます」
直樹:
「そういえば。
もめ事があるという話だったが、何だ?」
1番:
「戦争についての話です」
直樹:
「国が勝つとか、負けるとか。
そういう話か?」
17番:
「いえ、我々も戦争に参加すべきではないのか?
という話です」
直樹:
「ふーーん。
最もうるっさいのは誰だ!」
17番:
「34番です」
直樹:
「34番と他の奴も集めろ!
畑に行っている連中は、そのままでいい」
俺を囲むように2列に整列した。
直樹:
「34番、前に出ろ!
お前、色々と問題を起こしているそうだな」
34番:
「はっ、はいー!」
ガタガタと震え、緊張のせいなのか甲高く返事をする。
直樹:
「34番、落ち着け。
話をするだけだ!
まず、脱走兵を非難することは許さない。
ここに居る人間は、元々がすべて瀕死の連中ばかりだ。
死の恐怖は全員が身にしみている。
だからといって、戦ってはならない。
という訳でもない」
しばらく沈黙が続く。
17番:
「どういうことでしょうか?」
直樹:
「順を追って話そう。
お前達、ヨトゥンヘイムの戦いは知っているな?
その時、巨大な戦力を持つ連中が居た。
それが異世界人だ!
この世界の住人では持つ事の出来ない。
大きな力を有している。
先の戦争で活躍し、竜の国は負けた。
俺自身も、異世界人だ。
お前たちのこの状況、納得できたと思うが。
知っていたよな?」
みんなの顔が険しくなり、ざわつき始める。
直樹:
「俺は。
ヨトゥンヘイムの戦いより後に召還され。
賢人と称するもの達により家族が離散している。
俺自身は、竜の国に保護され。
現在に至る」
34番:
「ご家族は……?」
直樹:
「わからない。
俺は……
賢人に対して、強烈な恨みを持っている。
奴らがくだらない事をしなければ。
俺は元の世界で幸せに暮らしていた。
奴らと戦う時がくるかもしれない。
だが今の俺の目的は、家族を探し出す事だ。
お前たちにも協力してもらう。
まず、俺の経緯についてはわかったか?」
隷属者達:
『はい』
全員が一斉に答える。
直樹:
「次は、俺の能力についてだ。
異世界人には特別な力がある、と聞いている。
驚異的な戦闘力や魔術などだ。
俺は元々。
物資の大量輸送に向く能力だと思われていた。
そのため。
現在も軍事物資を輸送する仕事をしている」
27番:
「では、輸送能力ではないのですか?」
直樹:
「そうだ。
俺の力は多分、空間の能力だと思う。
ここの隠れ家、そして畑、物資の倉庫。
それを管理させるためのお前たち隷属者。
お前たちの説明がつかない。
あぁ、そうだった。
もうすぐ森が作られるぞ」
1番:
「森ですか?」
直樹:
「あぁ、薪の自給が必要だろ?
森で食材が得られれば、さらにいい。
それに、もうしばらくすると……
俺は、非常に危険な立場になる」
17番:
「え!?
どういうことでしょうか?」
直樹:
「俺の能力が、発揮されつつある。
隠れ家から5カ所。
任意の場所へ、瞬時に移動が可能になった。
そして問題なのが、お前らだ。
特に34番!」
34番:
「我々ですか!?」
直樹:
「そうだ!
初めはただ。
命を助けたいとか。
便利だな、ぐらいに思っていた。
隠れ家と畑を使えば、1万人ぐらいは収容できる。
俺が居る場所に。
血気盛んな1万人の兵を展開できるんだぞ!
例えば、俺が。
野心を持っていたとしよう。
統括王に面会できたとする。
34番!
お前のような、戦いたがる兵士が居る!
俺はそいつらに命令を強制できる力を持つ。
さらには、瞬時に移動できるんだぞ!
34番!
もし、この事が、他の誰かに知られていたら。
お前はどう思う?」
34番:
「危険…極まりない……と思います」
1番:
「では、これ以上、増やすのをやめますか?」
直樹:
「それは駄目だ。
ここで暮らすお前達の事を考えれば、沢山の人間が欲しい。
普通の生活だけでも様々な職種が必要だ。
俺は家族を探すためにもこの世界を回りたい。
そのためには、自分を守る力が必要だ。
賢人達の地に行く必要があるかもしれない。
この能力は、しばらくなら隠し通せると思うが。
長期となるとそうはいかない」
1番:
「我々は、どうすれば……」
直樹:
「2万人ぐらい、自給自足できるように食糧を生産しろ。
主食の芋をとにかく増やせ。
それと戦闘訓練も、暇を見てしておいてくれ。
この世界は俺の能力として出来ている。
俺が死んだら、全員消えるぞ!
34番!
いつでも俺の警護が出来るようにしておけ。
俺の身に危険が及べば。
すぐに逃げられるようにだ!」
34番:
「はい!!
全身全霊を尽くします!!」
直樹:
「俺は戻るから。
後の事は頼んだぞ!
みんな仲良くな!」
隷属者達:
『はい』
一斉に声をそろえて、答えた。
色々と面倒だな。
馬鹿な連中が暴走しなければいいが……
竜車へと戻った。
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