輸送の仕事 おっさんの畑・18
直樹:
「おっさん達が幸せだと……
何故、お前が決意するんだ?」
フリスト:
「おじさん達が、増えてた事には驚いたけど。
この人たち多分……
みんな脱走兵で。
この人たちが、笑顔で居るなんて。
こんな事、ありえない」
直樹:
「腕が生えたり。
歩けるようになれば嬉しいだろ?」
フリスト:
「違うの!
脱走兵が……あんな顔!
ありえないの!」
直樹:
「嫌になれば、脱走ぐらい……」
フリスト:
「兵士は他の職業よりも。
待遇が良くて、生活が保障されているの。
多くの兵はここ以外で生きていけないから、兵士になる」
直樹:
「大怪我をして、嫌になるぐらいあるだろ?」
フリスト:
「この国の兵士は、普通なら脱走なんて考えられない!
すべての兵士は魔法で、居場所が把握されているの。
怪我をしているような人間は、そもそも脱走できない。
それでも脱走するような人間は。
この国の未来を知って絶望した人がほとんど。
希望がある兵士は、家族のため友人の未来を守るため。
戦いに出るの。
この国の兵士が、訓練課程をおえて一番初めにやる、任務は。
脱走兵の狩り。
どんな目にあうか、脱走した人間がどういう末路を辿るのか。
自らが生き証人になる。
体が治った程度じゃ、あんな顔はできないよ。
脱走兵の顔は、恐怖と不安、猜疑心に支配され。
その目は虚ろで、濁っている。
でも、あの人たちは。
あれは未来を、希望をもった人たちの顔!
あと数年で滅びる国の兵士の顔じゃない
私も、そんな顔になれるのなら……」
直樹:
「大切な命を。
そんな、馬鹿な理由で!
命があれば、何とでもなる。
命を失ったら後悔すらできないんだぞ!
お前には、未来がある」
フリスト:
「無いよ。
ナオキちゃん。
無いの」
直樹:
「でも。
自分をもっと……」
フリスト:
「苦しいのは、嫌。
悲しいのも、つらいのも、嫌。
お腹が空いて、我慢するのも、嫌。
寒い外で寝て、不安なのも、嫌。
殴られて、殴られて、犯されたくない。
体だって、売りたくない!
助けて……
助けてよ!!
おじさん達を、助けられるのなら。
私を助けてよ!
私は、可愛いよ?
私も、頑張るよ!?
だから、助けて!!
私だって、幸せになりたい……」
俺は、この世界の住人ではない。
ここで育ったわけでもない……
命よりも一時の幸福。
浅はかなことだと断罪できるか?
俺に、彼女の何がわかる……
かつて死を願ったこの俺に。
彼女を否定する権利などあるのか……?
しかし、命を預けられる……
俺の責任、気持ちはどうなる?
感情的な思いと同時に、打算的な思考が首をもたげた。
能力、性格はともかく。
この信用できない世界で、嘘をつかない存在に喜ぶ自分。
俺を守る盾の存在。
俺の命令で動く駒が手に入ったと判断する論理思考。
気持ち悪い。
自分自身の考えに、恐怖を覚える。
俺にとって、命とはこんなにも軽いものだったのだろうか?
打算と倫理、思考は回り続ける。
直樹:
「泣くな、フリスト。
泣かないでくれ……」
彼女は、俺に対して、嘘は付けないと言うのに。
俺は嘘を吐く。
直樹:
「大丈夫だ。
きっと上手くいく。
フリスト。
俺が助けよう」
クソだ、クソだ、クソだ!
無力な自分に腹が立つ。
安堵している、自分が許せない。
しばらくすると、泣き止んでくれた。
だが、ここで止まっている暇はない。
竜の国はあと何年、存続できるんだ?
確認する必要がある。
おっさん達がいる、いつもの隅を目指す。
直樹:
「おーーーい。
1番、ほかのみんなも元気か?」
声を掛けるが、いつもの元気がない。
フリストとの口論を見ていたのか……?
1番:
「はい。
色々と購入していただき。
ありがとうございます」
結局11万4千、お金がかかった。
直樹:
「あぁ。
いきなりで悪いんだが。
ちょっと教えて欲しい。
ここ竜の国……
あと何年、もちそうだ?」
話を聞いていて、ざわつく場面もあったが。
16人+2の予想をまとめると……
ここ竜の国は、3~8年程で滅亡するらしい。
勝てると予想するものは、誰もいなかった。
8年前の戦いで、アスガルドの戦力の4割以上を失ったらしい。
その後、再編成をしてはいるがこの損害は埋めきれない。
純粋な竜を失ったことが絶望的だそうだ。
純粋な竜って、なんだろう?
また、征服されたヨトゥンヘイムは、当時のアスガルドの食料の6割を生産していた。
ミッドガルドへの進軍も間違いないらしく。
詳しい戦況は不明。
意見としては劣勢だろうと……
噂の類では、半部以上が征服されているらしい。
現在、俺たちがいるスヴァルトアルフヘイム。
穀倉地帯であるスオラが、戦闘地域となり食糧事情が問題になりつつある。
おっさん達が、幸せそうにしていたのは。
体の完全回復、60年の寿命、軍からの追跡と戦争からの脱却。
自分たちが生きるための食料の見込みが立った事によるもの。
畑の広さは、推測ではあるが……
一辺が1kmの正方形で、面積は1000000平方メートル。
1人が1年に必要な食料を自給するのに、必要な面積は500平方メートル。
つまり2000人の自給自足が可能である事。
あと1000人くらいが、こちらに来ても余裕。
1000人といえば大きな村だ。
隷属者の増加、本への取り込みを進言したい、と彼らは思っていたようだ。
自分の知人をこちらに招きたいらしい。
それに、隠れ家と畑の時間の流れの関係だ。
畑は、24倍の速度で時が流れる。
これをうまく使えば、竜の国が滅びる前に天寿をまっとうできる。
戦争のない時間を過ごせるというのは、彼らにとって想像するだけで幸福だ。
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