輸送の仕事 探り合い・5
ユミル:
「いえ。
噂ですよ、噂……
小麦の都市、スオラが劣勢だと。
主食である小麦が、高くなっていますから」
直樹:
「大丈夫なのか?
俺の家族は?」
ユミル:
「異世界人は、最優先で確保されるはずですから。
ただ、ナオキ様の家族限定で探すというのは無理かもしれません。
それに見つかっても秘匿される可能性もあります」
直樹:
「何故だ!」
ユミル:
「脅威だからです。
明るみに出れば、暗殺される可能性も否定できません。
それに能力が知られれば、対策をたてられ不利になります。
ナオキ様も一部の者しか知りませんし。
もし情報を知りたければ。
それこそ軍の上層部へ食い込むしか……」
こんな話、知ったところでな……
今の俺では、何もできない。
直樹:
「クソッ!」
ユミル:
「変な話をしてしまいましたね」
直樹:
「ああ、すまないな」
この国は、そんなに安全な状況では……ないのか。
時間的な猶予はあるのか?
まずは、人・物・金どれか一つでも。
それと冒険の書の強化だ。
その為にも購入ポイントと情報だ。
ユミル:
「キンックは上から見ると首の長い花瓶のような形をしていて、
ふちの部分が山脈の麓に刺さってるような形です。
水が貯まる丸い部分の中心が街の中心で、その部分に領主の館があります。
外縁の部分に、兵士が常駐している感じです。
兵士は首都とは反対方向に多く配置されているんです。
街の中心よりも、山脈の方が活気はあるんですよ。
あっちにいるのは殆どが、鉱夫達です。
鍛冶屋は街の方に工房を開いています。
商品を見るのであれば、街の中心へ行きましょう」
直樹:
「よし。
街の中心へ行ってから食事だ。
あとは、冷やかして回る」
フリスト:
「ナオキちゃんのオゴリ?」
直樹:
「うーん。
いいだろう。
予算は一人3千でいけるか?」
フリスト:
「本当?
早く! 早く!」
街の中心へと来ると昼時になり、フリスト案内の店で食事をした。
護衛へたちは携帯食を食っていたが、4人に千ずつおごってやる。
人間関係を円滑に回すための基本だからな。
食事に1万2千お金が掛かった。
戻れば5万もらえるから気にしない。
この後も買い物をする気もないし、そもそも武具はやたらと高いのだ。
鍛冶屋の都市だけあって、安くて良質なものが多い。
首都では1本7千もした投げナイフが4千で、売っていたのが悲しかった。
これからはこの街で買う事にしよう。
それにしても視線を感じる。
ユミルとフリスト、護衛兵たちが自分の事をチラチラとみている気がするのだ。
鳥のフンでも、ついているのだろうか?
フリストに至っては、俺の周りを何回も回っていた。
俺のことを敬う気になったのだろうか?
宿舎に戻り夕食もすました。
ベッドでゴロゴロとしているとフリストから話しかけてきた。
フリスト:
「ナオキちゃん。
お昼から気になっていたんだけど。
何か……
魔法でも使ってるの?」
直樹:
「何のことだ?」
フリスト:
「何かが、ナオキちゃんの体の周りに。
居ると思うんだよね……」
自分の体を眺めてみるが特に変わりない。
フリスト:
「今ね、多分だけど。
頭の上だと思う」
おもむろに頭を触ると本があった。
掴んでみてみると、本の真ん中に一つの目があり。
蜘蛛みたいな6本の足が生えていた。
直樹:
「ウワッ!
キモチッワリッ!
死ね!」
壁に向かって、全力で投げつけた。
手から離れたとたんに霧散してしまう。
突然左の腕にまた現れる。
投げ捨てようとすると話しかけてきた。
化け物:
”コラ!
ナオキ、何するんだ!!”
直樹:
「気持ち悪いな!
お前は、いったい何だ!」
化け物:
”馬鹿なのか!?
ナオキ!
魔導書ドラクエ様だ!”
直樹:
「はぁ?
冒険の書って、こんなにキモかったっけ?」
化け物:
”可愛い僕に向かって、なんて事を!
心の広い僕でも、さすがに怒るぞ!”
直樹:
「いや……
でもさ……」
化け物:
”目と足を生やしたのは、お前だろ!!”
直樹:
「え?
あれ?
そうか……
魔導書ドラクエか?」
そういえば。
魔導書ドラクエ、普通に喋れるじゃんか!
フリスト:
「ナオキちゃん。
誰と話してるの?」
直樹:
「あれ?
フリストって、冒険の書。
触った事、無かった?
ここにあるから触ってみるか?」
怪訝そうな顔で、触ろうとすると。
フリスト:
「あ!
なんかある!?
変なのが生えてる!!」
ペタペタと触っている。
大丈夫か?
魔導書ドラクエの足を、引き千切ったりしないよな?
直樹:
「それが、異世界人の持つ。
冒険の書だ」
フリスト:
「へーーー。
これが、何の役に立つの?」
直樹:
「異世界人の異常な力。
その源だ。
物資の輸送も、これのおかげで出来る」
フリスト:
「へーーー。
ナオキちゃんが、急に早く動いたりしたのも!?」
直樹:
「そうだ。
この本の力だ」
フリスト:
「いいな
俺様も欲しいな……」
直樹:
「それは無理だ」
フリスト:
「そう、残念」
寂しそうな眼をすると、興味が無くなったのか去っていった。
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