旅立ち 出立に向けて・5
ノルナゲスト:
「初めまして……
私がノルナゲストだ。
いきなり斬りつけるなんて、君は酷いな。
まぁ。
君を襲ったのは私の部下だが……
ちょっと、試させてもらった」
直樹:
「冒険の書。
超回復ラブリービューティー。
30分、止血、そして修復だ。
殺されるかと思ったぞ。
慰謝料を払え!」
ノルナゲスト:
「お互い様だと思うが。
いくらだ?」
直樹:
「10万。
いや、20万だ」
ノルナゲスト:
「まぁ、いい。
まずは、私室に来てもらおう。
話はそれからだ」
少将は偉い人ではないのか?
いいのか?
慰謝料は200万ぐらいにすべきだったかな……
命の危険があったんだから。
金がまったくないと、10万でも高額に思うから不思議だ。
この世界の相場も、わからん。
馬車に乗せられて、どこかへと連れていかれる。
途中、いつも寝ている宿舎のへの道を通ったから。
軍の施設の区画なのは間違いない。
少将のあとに続いて建物に入る。
そのまま部屋まで付いていった。
ノルナゲスト:
「さぁ
まずは席にかけてくれ」
直樹:
「あぁ」
ノルナゲスト:
「さて、ナオキくん。
話はなんだい?」
直樹:
「何故、ここまで連れてきた?」
ノルナゲスト:
「君は、何を言ってるんだ?
そもそも。
君が私に会いたいという話だった。
ハズだが?」
直樹:
「あーー。
そういえば……
それよりも。
何故、俺を襲った!」
ノルナゲスト:
「色々、理由はあるんだが。
私が君を知りたかった。
なんでも……
君は至る所で奇行に及んでいそうだな。
報告では冒険の書の強化に必要だとか。
だがそんな話。
聞いたことがない。
それにな。
こちらの情報と大きな食い違いが生じている。
戦闘能力を確かめる必要があるだろ?」
直樹:
「そもそも、俺の能力は。
物資の輸送に適しているんだろ?
お前たちの情報だ。
何故、戦闘が必要なんだ?
それは、おかしいじゃないか?」
ノルナゲスト:
「それだよ。
君からの提案では、木箱500の輸送だ。
1万や2万でなく。
本当に輸送型なのか?
しかも、だ。
君は、なぜ歩ける?
報告では走るそうじゃないか?
馬鹿みたいな速度で。
君を診ていた医療スタッフからの報告では。
半年近くは、まともに歩けないはずだった。
走るなど不可能だ。
君はもしかしたら……魔術や戦闘系の能力ではないか?
という疑問が出てくるのは当然だろ?」
直樹:
「その為の威力偵察か?
俺は間違いなく。
物資の輸送型だ」
ノルナゲスト:
「それは、本当かな?
戦いを見させてもらったが……
驚いたぞ。
戦闘系かと思ったら回復魔術を使っている。
異世界人に回復魔術は、効果がないはずなんだがな。
魔術攻撃はしないのか?
本当の得意分野はなんだ?」
直樹:
「当初の情報通り、輸送能力だ。
それ以外は、答える必要はない」
ノルナゲスト:
「フーーン……
そうか。
では、話を替えよう。
なぜ木箱500なんだ?
君は1万ぐらい平気で輸送できると聞いているが?」
直樹:
「こちらにも色々ある。
最も大切なことなんだが……
物資運搬の結果に対して保証ができない」
ノルナゲスト:
「どういうことだ?
詳しく聞かせてもらう」
直樹:
「輸送はできるだろうと、思うんだが。
実際にやった事がない
それに物資の品質が低下する恐れがあった」
ノルナゲスト:
「劣化?」
直樹:
「そうだ。
食品や医薬品関連が問題だ。
破損や腐敗、劣化する可能性があった。
自分でテストした際には食品がすぐに腐敗している。
でも今は大丈夫だと思う。
冒険の書を強化しておいた。
しかし。
結果を確認するのに40日以上は掛かりそうだ。
俺はそんな悠長に、テスト結果を待つ気はない。
貴重な物資を無断にしたら困るだろ?
だからまずは、木箱500の輸送だ」
ノルナゲスト:
「問題は解決したんだろう?
なら、木箱1万だ」
直樹:
「今は不可能だ」
ノルナゲスト:
「何故だ?」
直樹:
「はっきり言うが。
俺は今、死んでもおかしくない状態だ!
回復魔術を見たんだろ?
俺の命は冒険の書によって支えられているんだよ。
当然、輸送に回せる力は大幅に減っている。
木箱1万を超える輸送能力は、すべての力を輸送に回した場合の話。
冒険の書の力無しで動けるには、半年以上掛かるはずだ。
輸送と言っても、危険はあるんだろ?
俺は、まだまだ弱い。
さっきの戦闘ぐらいは、逃げれるようにはしておきたい。
冒険の書の力は今はそちらに回す」
ノルナゲスト:
「しかしな……
ユミルもフリストも付けている。
必要であれば手練れを何人か付けてもいい。
だからもう少し、輸送の方に力を回せないか?」
直樹:
「駄目だ!
これ以上の人員は必要ない。
そもそも、俺はこの世界の住人を信用できない。
あぁ、別にお前たちを……
という意味ではない。
救出してもらったことも、看病のことも心から感謝している。
少将殿も、俺のいきさつは知っているんだろ?
俺自身、思う事が多いんだ。
少将殿を信用するにも時間が掛かる。
俺は、物資の輸送を手伝える。
しかし……
何時まで必要とされるかが疑問だ?」
ノルナゲスト:
「どういう事だろうか?」
直樹:
「俺の希少性の部分だ。
例えば木箱を1万運んだとしよう。
2・3回、輸送した時点で。
俺が必要なくなる可能性がある」
ノルナゲスト:
「それは無い!」
直樹:
「俺には、それを信じるだけの知識も経験もない。
軍の援助を打ち切られて、生きていく自信もない。
それに、家族の捜索だ!
何処まで真剣に向き合ってもらえるのか……
心もとない。
申し訳ないが信じきれないんだ。
無論、感謝はしている。
家族の為にも協力はしたい!
喉から手が出るほど、協力は欲しい!
どうだろう?
まずは、500。
次は1000、2000と段階的に増やすというのは。
検討できないだろうか?
冒険の書の力を輸送に回すには。
まだ時間が必要だ」
コツッ、コツッ
指でテーブルを、叩いて考えているようだ。
ノルナゲスト:
「君は。
家族を探すために……
行く当てはあるのだろうか?」
直樹:
「今は、まだ無い」
ノルナゲスト:
「そうか……
では、スヴァルトアルフヘイムを回りながら。
この世界について学んではどうだろうか?
必要なら。
軍施設での訓練なども手配できるが……
如何かな?
その間に情報が集まるかもしれない。
こちらとしては、輸送にご協力願いたい」
直樹:
「こちらこそ、よろしく頼む」
ノルナゲスト:
「何か要望は、あるかな?」
直樹:
「そうだな……
木箱500だが、2つに分けてもらいたい。
それと。
荷物の輸送後に劣化や破損などがわかるようにしてほしい」
ノルナゲスト:
「2つに?」
直樹:
「冒険の書の、能力テストをしたいんだよ。
2日に分けて積み込みたい」
ノルナゲスト:
「2日掛かるのか?」
直樹:
「これも冒険の書の仕組みとしか言いようがない。
この街で、揃えたいものもあるしな」
ノルナゲスト:
「なるほど……
出立は、明後日の午前でもいいのか?」
直樹:
「明後日?
乱闘騒ぎがあったから、少しゆっくりしたかったが……
多少ずれるかもしれない」
ノルナゲスト:
「わかった。
こちらでも準備を進めよう」
直樹:
「20万も頼む」
ノルナゲスト:
「明日の朝、届けさせよう」
直樹:
「ありがとう、これで失礼する」
扉を出ると宿舎へと向かった。
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