旅立ち 散策
3人で宿舎を出た。
2にしばらく付いていくと、大きな通りに出る。
直樹:
「やけに、道が広いな」
15mくらいの道幅だ。
沢山の人や、馬車が行きかっているが、窮屈には見えない。
ユミル:
「ええ。
竜も通りますし、軍隊も通りますよ。
ナオキ様。
あちらに監視塔が見えますよね?
その反対側、山脈の中ほどに城があります。
監視塔と城を結ぶ道、全長約6㎞。
ここが首都の主要となる道、通称ローラ街道です。
山脈の麓の向こうにも道があるんですが、
麓からこちら側の道がメイン通りになります」
直樹:
「ローラ街道?」
ユミル:
「首都ピュハは、スヴァルトアルフヘイムの統括王である。
ローラ様が管理をしていますので」
直樹:
「管理というのがピンとこない。
ここはローラの国じゃないのか?」
ユミル:
「神竜が、地区を管理する統括王を、任命するんです。
任命されると千年単位で管理することになるそうですよ。
自国の様な感じになりますが、ローラ様は管理を任されている。
という形式なんです」
直樹:
「ふーん。
それにしても、この街はデカイな」
ユミル:
「いえ。
アスガルドの首都の中では、一番小さいはずですよ。
この主要路はキンックとシエニの方向へ伸びています。
監視塔から城の方向を12時とした場合、
キンックが8時、シエニが4時の方向になります。
都市の周囲は堀と塀で囲われていて、
出入り口は4時、6時、8時の方向なんです」
直樹:
「首都はどんな形をしてるんだ?
丸、それとも正方形?」
ユミル:
「形ですか?
一番近いのは首が長めの、壺型ですかね。
首のふちが山脈の方になります」
直樹:
「今歩いてる場所は、どの辺?」
ユミル:
「山脈の麓から2㎞程の位置で商店の立ち並ぶ所と軍事施設の堺あたりです。
これから何処に行きましょうか?」
直樹:
「ここから監視塔までを往復したい」
ユミル:
「乗り合いの竜車もありますが、どうしますか?」
直樹:
「いや、歩きでいい。
魔術の効果を知りたい」
ユミル:
「わかりました。
それでは参りましょう」
監視塔に向けて、のんびりと歩き出す。
ローラ街道の路面は敷石で舗装されていた。
定期的なメンテナンスがされているようだが……
それを行っているのは汚い服を着た大人。
そして、子供達だ。
建物は石造り、セメントで固められているらしい。
ユミルの話では、火山灰・石灰・岩・海水で作られているようだ。
魔法のある世界なので。
建物も魔法で作られているのか?
と思ったのだが、そんな建物は無いらしい。
土木魔術みたいなモノがあるかと思ったんだが、普及はしていない。
例えば。
レンガや木材を使い魔法で建物を作るとする。
最初のうちは確かに建物の形をしているのだが、
時間が経てば倒壊してしまう。
魔法は一時的なもので、時間がたつと消失するわけだ。
建材が結合しているわけでもないし、重心が噛み合っているわけでもない。
この世界の魔法は、定形魔術であり精密な作業はできないようだ。
本気で作るのなら魔術の領域が必要となる。
しかし、魔術師といえども建築技術に精通してるわけではない。
結局のところ建築士に任せたほうが、綺麗で強度の高い建物を安く作れる。
一般的な建物は、労働力の安い、子供達が酷使されるらしい。
せちがらい世の中だ。
街道から見える商店は、すべて専門店だ。
スーパーやは百貨店のような物はない。
ファーストフードがあったのは、面白かった。
1時間ぐらい歩いただろうか?、監視塔にたどり着く。
直樹:
「監視塔まで、距離はどれぐらいだった?」
ユミル:
「2.4㎞ぐらいでしょうか」
計算上は分速は40m。
色々と見ながらだ。
直樹:
「それにしても、腹が減ったな……」
ユミル:
「よし、俺様が買ってこよう!」
フリストが、走っていく。
直樹:
「武器屋とか薬屋ってないのか?」
ユミル:
「ちゃんと在りますよ。
そういうのは、門の付近です。
防具、医療、宿泊兼食事施設なども門の付近ですね。
監視塔の辺りは、娯楽や生活関連ですね」
直樹:
「それにしても、浮浪者が多くないか?」
ここに来るまで大人、子供含めて20回以上絡まれた。
物乞いだ。
フリスト:
「ナオキちゃん、ただいま」
食べ物を渡される。
パンに肉が挟まれたものだ。
フリストはモグモグと何か食べている。
直樹:
「そうでもないですよ。
浮浪者の数は、前よりも随分と減っています」
フリスト:
「ナオキちゃん、浮浪者に興味があるの?
アイツら……
ただの怠け者だよ」
直樹:
「そうなのか?
てっきり、国の失策だと……」
フリスト:
「そんなこと無いよ。
ローラ様は、すばらしい人だ。
ヨトゥンヘイムが制圧されたとき。
真っ先に移民の受け入れをされたのがローラ様。
食事の提供や、仕事の斡旋だってやったんだから。
俺様もユミルも、ヨトゥンヘイム組みだし。
浮浪者どもは、もっと楽な仕事にしろ。
食事をもっとよこせとか、もうわがまま放題。
3年間も、無償での食事提供はあったんだ!
今だって仕事を選ばなければいくらでもある。
寝床、食事、これだけで十分だよ。
ローラ様は自国の3割に、相当する移民を受け入れたんだ。
国民の反発だって物凄かったと聞いている。
この国だって奴らと戦ってたんだ!
そんな余裕ある訳がない。
ローラ様は、すごいんだよ。
ヨトゥンヘイムの民は、みんな感謝している。
ナオキちゃん……
私、頑張ったんだよ。
浮浪者のほうが正しいなんて、そんなこと、あってはならない。
私達の努力が無駄だった、なんて……
あってはならない。
楽して生きているくせに!
浮浪者は全員ゴミだ!
あのクズどもは殺されたって、文句は言えない!」
フリストは高揚しながら話してくれた。
ハァハァ、肩で息をしながら食べている。
直樹:
「浮浪者が、正しいなんて言ってないぞ。
ローラ様は。
すごいな……」
何故かフリストが偉そうだ。
直樹:
「腹が減ったな……」
フリスト:
「ナオキちゃん、今食べたばっかりじゃん」
直樹:
「そうなんだが。
腹がすくんだよ」
フリスト:
「もう……
しょうがないな」
ショルダーバッグから、もうひとつ食べ物を分けてくれた。
直樹:
「ありがとう」
腹が減っているときは、食事がうまい。
空腹は最高の調味料だな。
直樹:
「ユミル、お金頂戴!
ナオキちゃんと俺様の分、軍から出るんでしょ?」
ユミル:
「いや、出ないぞ。
ナオキ様の分は、一括で貰う予定だから」
フリスト:
「え!
嘘!
何とかしろ!
ナオキちゃん。
ナオキーーーちゃん」
ユミルは、ため息をつくと話を切り出した。
ユミル:
「ナオキ様、申し訳ありません。
預かっているナオキ様の前払い分から、出費してもよろしいでしょうか?」
フリストが上目遣いでこちらを見てくる。
直樹:
「はぁ。
わかった」
フリスト:
「ユミル、お金
あとお駄賃!」
ユミルが、すまなそうな顔を向けたので無言で頷いた。
直樹:
「さぁ、帰るぞ」
帰りは行よりも、早く帰ることができた。
身体の痛みもきつく疲れもひどい。
魔術とはすごいな。
こんな状態の身体で、歩くことができるなんて。
直樹:
「ユミル、フリスト、今から寝る。
夕食は食べるから取っておいて欲しい。
夜になっても起きなければ、起こしてくれ。
肉を多めに頼む。
食事は鳥の胸肉が理想だ」
ユミル:
「わかりました」
ベッドに横になると、すぐに眠りについた。
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