旅立ち 将校用宿舎・2
目が覚めると暗い。
もう夜になったのだろうか?
少し寒いな、薄暗いが光はあるようだが。
フリスト:
「ナオキちゃん、起きた?」
直樹:
「もう夜か?」
フリスト:
「もうすぐ、夕食にするよ」
ユミル:
「ナオキ様。
お加減はどうですか?」
直樹:
「あぁ。
寝たらすっきりした。
ユミル。
今度は魔法について教えてくれ」
ユミル:
「わかりました
フリスト、夕食の準備をお願いします」
フリスト:
「あい、あい」
フリストは、手を振りながら食事を取りに向かう。
ユミル:
「魔法というのは、魔方陣に魔力を流すことで使えます」
直樹:
「……」
沈黙が流れる
直樹:
「ん?
続きはどうした?」
ユミル:
「はい。
以上です」
直樹:
「簡潔すぎて、さっぱり解らない」
ユミルは、天井を見ながら、ンーーーーと唸っている。
ユミル:
「そうですねぇ。
魔術はご存知ですよね?」
直樹:
「ご存知では、ありませんが……」
ユミル:
「そうなんですか?
異世界人は全員、魔道書を持っていると聞いていたので」
直樹:
「魔道書?」
ユミル:
「はい。
冒険の書のことです」
直樹:
「冒険の書?
冒険の書……
聞いたことがあるような、無いような。
説明を受けられるか?」
ユミル:
「冒険の書とは。
神によって異世界人に与えられるもので、
利き腕の反対側に持っていると聞いています」
そういえば、何か持っていたような気がする。
使ったこともあったか?
左手にあったか?
何処かで……何度も説明されたような……
出すのに苦労したような……
ユミル:
「魔法と冒険の書。
どちらの説明をしますか?」
直樹:
「じゃあ、魔法で」
ユミル:
「さきほど説明した通り。
魔方陣に魔力を通すことで発現する現象のことを言います。
魔法というのは魔術を簡単に使えるようにしたもので。
魔法を理解するためには、簡単でも魔術について理解が必要です。
魔術は神のみ業を、神の子である我々が貸し頂くものだ。
という話です。
この世界で魔術に不可能はないといわれています」
直樹:
「何でも、できるのか?」
ユミル:
「そういわれてますね。
一節によれば、神は魔術でこの世界を作った。
と言われています。
この世界は魔術で作られたわけだから、不可能はない!
という事ではないでしょうか?」
直樹:
「ふーーん」
フリスト:
「俺様登場!
夕食さまのお通りである、頭が高い!」
直樹:
「ありがとう。
食事の準備を頼めるか?」
フリスト:
「まかせて!」
夕食は、肉の種類が羊に変わったぐらいで、たいした変化は無い。
これでも一般の兵士に比べたら、随分マシなのだが……
ユミル:
「魔術を使うのは、とても多くの技術・知識・経験が必要です。
時間もかかり、簡単にできるものではありません。
魔術は魔術陣と呼ばれる図形を描き、そこに魔力を流し込む。
その図形が正しいときだけ、世界が応えるのだそうです。
同じ効果を具現化するときでも毎回、図形は異なるそうですよ。
場所、時間、天気、対象、人数など様々な要因で図形を変えるそうです。
魔法は効果だけに着目し、環境の変化でも使えるように汎化。
それを多くの人に、簡単に使えるようにしたのが魔法です。
当然ですが。
魔法は応用力に欠け威力も、魔術とは比較にならないくらい弱いそうです」
直樹:
「威力が弱いのに、そんなの役に立つのか?」
ユミル:
「魔術と違い、瞬時に使えます。
複数の魔法組み合わせて使えば、かなり現象を具現化できるという話ですね」
食事をしながら、話を聞く。
直樹:
「魔術をどうやれば、魔法になるんだ?」
ユミル:
「魔術で作られる魔法陣・魔術回路とだけ聞いています。
それを固定化し、魔力を流すと使えるわけです。
これ以上詳しい話は、専門家ですかね」
直樹:
「うーーん。
魔法はある結果を具現化する魔術を、固定汎用化。
それを魔力を使って発現させる……
例えば、
火を出す専用魔法があったとすれば、魔力を流し込むと火が出る。
どんなに魔力を込めても水は出ない。
どんなに魔力を込めても火が出るだけで、火矢にはならない。
火矢を作るには、火を出し。
それを矢に変える魔法を通す必要がある。
魔法は組み合わせることで、魔術に似た効果が出せる。
魔術は単体で、火も水も出るし、火矢もだせる。
さらに威力は段違い、みたいな感じか?」
ユミル:
「そんな感じの理解で、いいと思います」
直樹:
「魔法と魔導書の違いはなんだ?
俺が持っているという、冒険の書は魔導書なんだろ?
魔法より凄いのか?
魔術と比べると、どうなんだ?」
ユミル:
「魔導書全般といわれるとわかりませんが。
冒険の書ということであれば、軍から資料をもらっています」
直樹:
「それでいい」
ユミル:
「冒険の書は、魔術と同等の力を秘めているそうです。
ただある特定の機能・分野のみ。
限定的な魔術とお考えください。
それを魔法陣を書くことなく扱えます。
例えば。
火の魔導書、水の魔導書といった具合です。
詳しいことは、異世界人自身が知っているそうです」
直樹:
「俺が?
知っているのか?」
ユミル:
「そのはずです」
直樹:
「俺は右利きだから、左手にあるのか?
いや、何も持ってないよな。
俺の手に何か持ってるか?」
ユミルに左手を確認してもらう。
真剣に調べているが……
ユミル:
「自分には、わかりません。
でも、本当に無いんですか?
落としたんですか?
そうなるとかなりマズイですよ。
ナオキ様は、冒険の書を持っているという、前提での待遇ですから」
直樹:
「まずいな。
失くしたのか……
いつだ?
いつから無い。
そもそも俺は、持ていたのか?
ここに来た時から、持ってなかったよな?」
ユミル:
「本当ですか?
しかし……
それでは、あれはどう説明するんですか?
ナオキ様は。
ナオキ様の世界では、触れずに他人を殺せるのが普通なんですか?」
直樹:
「そんな訳無いだろ。
魔術も魔法も存在しない。
神もいないと、俺は思っている」
ユミル:
「でも。
大変言いづらいのですが。
ナオキ様は、多くの人を傷つけました。
自分も死にかけています。
その現象の原因となると。
魔導書いがいには……」
直樹:
「いや……
あれは……
俺が望んで殺したというわけでは……
ただ、相手に殺意を持ったり、疎ましく思うと勝手に……
俺個人にそんな力はない。
すると、冒険の書が……
俺は持っているのか?
左手に」
目を閉じて、左手に集中する。
左手を、握ったり、開いたり。
握ったり、開いたり繰り返す。
ユミル:
「どうしましょうか?」
直樹:
「これは、俺にしかできないんだろ?
なんとかするしかない。
すまないな。
一人になりたい」
ベッドへと潜り込み、左手に集中する。
色々と試してみるが現れることはなかった。
感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。
おかしい部分や修正点、加筆部分なんかを知りたいです。
よろしくお願いします。




