旅立ち 将校用宿舎
直樹:
「フリスト。
ユミルに謝れ」
フリスト:
「俺様、悪くないし。
ちゃんと手加減もしたし……」
直樹:
「あれで、手加減してるのか?
ユミルは死ぬところだったぞ。
ある意味、死んでしまったかもしれない」
ユミル:
「ナオキ様、自分は大丈夫です」
直樹:
「しかし……」
ユミル:
「自分は大丈夫です。
手当もしてもらいましたから」
直樹:
「うーーん。
そこまで、言うのなら……」
このままでは、話が進まないか?
仕方がない。
機会があれば、ユミルの不能になった息子に、回復魔法をかけてもらおう。
ユミル:
「ナオキ様。
いつごろ出立されますか?」
フリスト:
「ねぇ、ナオキちゃん
いつ出発するの?
どこ行にくの?」
直樹:
「そうだな……
まずは宿泊先に行こう。
たしか、軍の施設を使えるはずだよな?」
ユミル:
「はい。
将校用の宿舎が使えます」
直樹:
「それでは、移動しよう。
聞きたいことが、山ほどあるからな。
頼むぞユミル」
3人で将校用の宿舎へと移動を開始する。
軍事施設の内部にあるらしい。
ハァハァ。
やはり移動は、思った以上に重労働だ。
要人警護施設から将校用宿舎へと移動する。
歩いて20分ぐらいの距離だ。
たどり着くのに2時間近く掛かる。
痛みが酷く、全身も汗だくだ。
現在の筋肉状態では、まともに歩くこともできない。
杖を使いながらの移動だった。
正直、これはまずい。
世界を回るのは、現状不可能だ。
もっと筋力をつけないと。
やっとの事で部屋へとたどり着く。
椅子に座って休息をとった。
50m2位の広さの部屋だ。
疲れたのでベッドで、横になりたいのだが……
ユミルとフリストが、慌しく模様替えを始めた。
どういう状況だろう?
入った部屋は長方形で、本棚と角テーブルと椅子。
奥に簡易ベッド?が四つで、窓がある。
窓が本棚でさえぎられ、前にベッドが置かれた。
今は光は取り入れられる様に、隙間があるのだが。
寝る時にはぴったりと付け、ベッドを押し付けて固定するらしい。
部屋の中が少し暗いな。
出入り口の扉にもベッドが置かれる。
中央から扉側よった所にベッドをひとつ。
その横にテーブルと椅子だ。
侵入者を想定してるのだろうか?
しかし、トイレのときに邪魔だ。
お漏らしは御免こうむりたい。
直樹:
「お疲れのところ申し訳ない。
ベッドで休みたいんだが。
いいかな?」
フリスト:
「ナオキちゃん、駄目だよぉ。
お肉食べないと筋肉付かないからねぇ」
フリストの言葉遣いに、イラッときたが思いとどまる。
なんだかバカにされた気がしたからだ。
でも、歩いていた時ふらつくと、助けてくれたのは彼女だった。
面倒見はいいみたいだな。
そういう意味では、そばにフリストが居るのはありがたい。
俺は、もっと感謝すべきだろう。
直樹:
「ああ、わかった。
食事を頼む」
フリスト:
「よし、俺様が運んでこよう」
フリストが、食事を取りに出て行く。
テーブルとベッドを動かして出ていった。
毎回コレをやるつもりか?
直樹:
「ユミル
この世界について教えて欲しい」
ユミル:
「えーーーっと
何処から話せばいいのか。
この世界は神に作られたと言われています。
球体で水に満たされ……
あぁ、海と呼ばれるものです。
神はこの大地に、6つの種族を創造しました。
精霊族、不定種、人間族、竜種、獣人間族、人間族の6種を」
直樹:
「ちょっと待て。
今、人間族が2回なかったか?」
ユミル:
「はい、仰るとおりです。
人間族がいましたが……
その後、神により新たな人間族が作られました。
そのため最初の人間族は、旧人間族や見捨てられた種族と言われます。
彼らは自らのことを賢人族と名乗りました。
神の住まう大地を中心に。
賢人族、不定種、獣人間族、人間族の大地があり、
そして我ら竜種の大地アスガルドがあります。
精霊族の大地はありません。
神の住まう大地で暮らしています。
他に魔族と呼ばれる者たちがいます」
直樹:
「魔族?
6種族にそんなのいたっけ?」
ユミル:
「魔族たちについては、よく解っていません。
数千年の戦乱で、魔族が誕生したと考えられています。
ある時、賢人族が突如戦争を開始しました。
それも全種族に対してです。
8年前、アスガルドで大きな戦いがあり……
あのクソどもに。
ヨトゥンヘイムが落とされました」
ユミルは拳を握り締め、悔しそうにしている。
直樹:
「重要なところ、悪いんだが……
ヨトゥンヘイムは、アスガルドのどの辺りだ?」
フリスト:
「俺様参上!
お昼が届いたよーー」
切れ込みがスーッと1本だけ入ったパン、太くて短い。
硬いのでスープがないと食えない。
焼いた鶏肉、香草と塩味。
野菜のスープ、出汁は牛だと思う。
ガサガサと昼ごはんの準備が始まる。
ユミルは、紙を取り出すと円を描く。
円の中心から、少し上側に横線を引いた。
線の下側を3分割したが、真ん中は広めになっている。
紙をこちら側に、向けて置いてくれた。
ユミル:
「竜の国。
アスガルドは、4つに分けて管理されていました。
上側の部分が、ヨトゥンヘイム。
下側の分割されている場所3つに分かれています。
右が、ヴァナヘイム。
中央がミッドガルド。
そして、左がスヴァルトアルフヘイム。
我々が居るのが、この地区です」
直樹:
「ヨトゥンヘイム全体が、征服されたって事なのか?」
ユミル:
「残念ながら……」
直樹:
「んー。
アスガルドの詳しい地図はないのか?
地形とか川の位置とか、道とかが細かく載ってるやつ。
世界地図とかは?」
ユミル:
「え?
あるんですか?」
直樹:
「え?
無いの?」
話が一瞬止まった。
食事の音だけが響いている。
フリスト:
「ナオキちゃん、馬鹿だなー。
アスガルドの詳しい地図なんてある訳ないじゃん。
世界地図なんて、論外」
直樹:
「え?
なんで?」
フリスト:
「ナオキちゃん、本気で言ってるの?
地図は、軍事の重要機密だよ。
詳しい地図があったら、簡単に攻められちゃうでしょ?
ここを進んで、ここに隠れて、ここを攻めて……
詳しい地図を持ってるのは、大将や元帥ぐらいだよ。
考えればわかるじゃん、常識!
そんなの持ってたら、捕まって牢獄行きだよ」
フリストが、ジトーーーと。
まるで馬鹿を見るような目で見てくる。
何故か、いたたまれない気持ちになった。
俺は馬鹿じゃない。
言われてみると、地図って重要なんだなぁ。
地図なんて当たり前だったし。
日本って、危ないんじゃないか?
本屋に売ってるし、ネットでもみれるよな……
ユミル:
「ナオキ様。
スヴァルトアルフヘイムの地図ならありますよ」
テーブルの上に、地図を広げてくれた。
紙にはサツマイモみたいな輪郭線があって。
6か所、丸がついていた。
右側が陸地で左側が海なんだろう。
ぼんやりとした位置関係しかわからない。
丸の一つを指さして。
ユミル:
「ここが我々の居る、首都ピュハです」
直樹:
「初めての情報で、頭がいっぱいだ。
すまないが疲れているので、横になりたい。
賢人族と全種族が交戦中。
竜の国、上側の地区が占領されている。
今はこれぐらいでいいかな?」
ベッドへ向かうと横になった。
ユミル:
「はい。
今は、それぐらいでいいと思います。
上側の地区 ヨトゥンヘイムですが……
ここがナオキ様の召喚された場所だと思われます。
それでは、お休みください」
直樹:
「あぁ」
ユミルのやつサラッと重要なことを……
疲労のせいで、すぐに眠りへと落ちていった。
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