旅立ち 病室
待ち遠しい時というのは、時間がたつのも速い。
今日でこの部屋ともお別れだ。
扉は開けてある。
椅子に掛けて2人を待った。
今はまだ筋力が足りない。
歩くのには杖が必要で、見た目は情けないが仕方がないところだ。
それにすぐに、この街を出ることはできない。
この世界知識と自分の力。
この2つは最低限、学ばなくてはならないからだ。
ユミルと一人の女が、入ってきた。
ユミル:
「ナオキ様。
お迎えにまいりました」
直樹:
「ああ、ユミル。
まずは座ってくれ」
ユミル:
「従者となりましたので、改めて自己紹介します。
情報部軍曹、ユミルです。
偵察、情報処理、土木建築を主とし。
補給活動の補佐にも駆り出されることもありました。
一応戦闘も可能ですので、有事の際は、時間稼ぎも可能です。
よろしくお願いします」
改めて眺めた。
軍服のようなものを着ている。
服の色は塗りたての乾いていない土壁のような……
赤みを帯びた鼠色?
自分の知っている、軍服はもっとピシッと
したイメージなのだが……
縫製が雑なのか、動きやすさを重視したのか、肩は緩そうに見える
腕は8分袖だろうか?
上着の裾は、股下と膝の中間ぐらい。
ボタンは3つ、
胸のあたりから腰のあたりまでを、3等分した位置についている。
ポケットはついていないようだ。
胸には階級を示すマークがついている。
インナーは、元は空色だったのだろうか?
薄くなっていて至る所が汚れている。
パンツは、ワイドパンツ……
パンツの太ももの幅が広く、ゆったりとしている。
髪は、ツーブロックでいいのか?
トップは、15cmぐらい。
周りは短く切りそろえている。
七三分け自分から見て、左が3右7。
ヘアワックスは、使ってないように見えるのに、
なぜか髪は立って、左斜めに流れている。
髪が太いのだろうか?
髪の色は、金髪……ではない。
金髪よりもほんの少し青い感じがする。
確か、アッシュブロンドといったかな?
顔は?というと。
北欧系で鼻は高い。
なんかムカつく。
優しそうな感じだが目つきは少し鋭い。
笑顔はきっと絵になるのだろうか……
なんかムカつくが、決して嫉妬ではない。
こいつはきっとムカつく顔なんだ。
平然とした顔で嘘をつに違いない。
いや、間違いない!
ちなみに自分も同じ服を着ているのだが、色はオリーブ色だ。
ユミルの服は、色あせたのかな?
俺の服には階級も付いていない。
ユミル:
「何かついていますか?」
ユミル:
「いや、こうしてじっくり見るのは、初めてだな。
と思っただけだ。
それより、フリストはどこだ?
ところで、お前は誰?」
もう一人の女を指さした。
知らない女:
「嘘!
そんな!」
プルプルと震えている。
知らない女:
「ナオキちゃん。
冗談、面白い!」
直樹:
「……」
知らない変な女:
「え?
ホントに?」
変な女は、顔が真っ青になった。
ユミルが答える。
ユミル:
「彼女が、フリストです」
直樹:
「は?」
知らない変な女:
「だって……
ずっと傍に、いたのに……」
なんか……
ピクピクしている?
知らない変な女:
「そんな!?
おはようからおやすみまで、『死にたい』って、
陰気なラブソングを歌ってもらったのに!
血が噴き出して、綺麗な虹が架かったことや……
お尻の穴から、足の水虫の数まで知っているのに!」
俺を指さして、コイツ!、とんでもない事まで言い出した。
ユミル:
「ナオキ様のお世話を、していましたよ……ね?」
なんか……
そんな気が……
シテキタ?
直樹:
「すまない。
フリストは、ずっと男だと思い込んでいた。
自分の事だけ必死で……
しかし、な……
俺の頭の中のイメージと全然違う、修正しすぎで。
もはや別人だ!、チェンジだ!!」
フリスト:
「嘘、嘘、嘘、嘘、嘘!
これは夢!
これは悪夢!
キット、俺様は、まだ寝てるって!?
俺様伝説は、
俺様の伝説は、何処!?」
肩をつかまれ、ガタガタ揺らされる。
すぐにユミルが仲裁に入った。
こいつ俺様とか言い出したぞ……
ユミルがフリストを、羽交い絞めにしている。
ユミル:
「フリスト、正気に戻れ!
あれは、冗談だ。
そう!
あれは異世界では、一般的な冗談なんだ。
辞令だて、出ているんだ!
いまさら変わらないから!」
フリスト:
「そうか……
そうだよね!?」
座りだして、紙きれを眺めている。
こいつは本当に、大丈夫なのか?
直樹:
「ユミル。
こいつは、役に立つのか?」
ユミル:
「はい。
お役に立てると思います。
彼女は応急手当が的確です。
ナオキ様が自傷された時、命を救ったのも彼女です」
直樹:
「そうか……?
あの時は助かった。
ありがとう。
でも、こいつ俺様とか言っているぞ。
教育がなってない。
まったく親の顔が見ていたい」
ヤレヤレだ……
フリスト:
「勇者様には、特別に俺様の両親に合わせてやろう。
ん?
道は険しいがな……
口先だけか!?」
腕を組み、仁王立ちで、こちらを見ていた。
直樹:
「俺に、二言は無い。
お前の両親に、教育とは何たるかを教えてやる。
首を洗って待っていろ!」
フリスト:
「勇者よ、心して聞け!!
俺様はお前の従者になった、庶務部上級兵フリスト。
俺様は、唯の女ではない!
可愛い女の子だ!
好きなものは、ケーキや果物。
特技は、笑顔と上目遣い。
一生懸命がんばるので、捨てないでください。
不束者ですが、末永く可愛がってください。
よろしくお願いします」
直樹:
「おぅ。
こちらこそ、よろしく……」
予想外の挨拶に、返事をしてしまう。
あれ?
兵士としての能力は……?
俺、聞き逃したっけ?
思考が、停止してしまう。
悩んでいると、ユミルが補足をした。
ユミル:
「フリストは、ナオキ様が目的に集中できるよう。
雑務全般を担当します。
何なりとお申し付けください。
先ほど申しましたとおり、応急手当に定評があります。
戦闘能力も極めて高く。
連携訓練して頂けたら、利用の幅が広がっていくと思います。
見た目が見た目なので、警戒されずに諜報活動ができるかもしれません」
見た目ね……
ユミルと同じ軍服、女性用なのか少しほっそりな感じ。
インナーは、元はピンク色?
薄くなっていているが、ユミルよりは清潔感がある。
髪は、ポニーテールのノットヘアー?
少し上側で束ねているのかな?
自然にウェーブしている。
巻き毛か?
髪色は、ユミルよりさらに青みがかっているが、
並べて比較しないとよくわからない。
北欧系で鼻も高い。
というかみんなこんな感じなんだろう。
顔は、綺麗な感じだが幼さがかなり残っている。
目が大きく見えた。
気のせいか?
外人はみんな、キレイに見えるな……
こいつは馬鹿そうだから、諜報活動は無理だと思うぞ。
直樹:
「まさか、フリストが女だったとはな。
俺の記憶力はどうなっている?
まだ39だぞ。
認知症には早すぎる……」
ユミル:
「どうして、男だと思ったんですか?」
直樹:
「うーん。
どうしてだろう。
体の状態が良くなってからは、頭がはっきりしてるんだが……
そうだな。
交渉や部屋の片付けは、軍服を着た男が来ていたからな。
軍服は男という先入観だろうか?」
ユミル:
「フリストは、一時期……
全裸でナオキ様のお世話をしていた、と聞いていますが?」
直樹:
「全裸?
あぁ、居た居た。
しばらくして、服を着ろと指示した覚えがある」
ユミル:
「股を見ればわかるでしょ?」
直樹:
「いや……
だってな……
考えてもみろ。
もし見た時に、自分より大きかったら心が折れる。
ショック死するかもしれないだろ?
そんな死に方はゴメンだ。
小さいなら小さいで、ジロジロ見るのは失礼じゃないか。
それに俺のことを、神様みたいに扱っていたからな……
頭のおかしい狂信者だ、と思っていた。
狂信者と言ったら、男じゃないのか?」
ユミル:
「胸を見れば一目瞭然でしょ?」
直樹:
「胸、胸……
んー。
あーー。
あれね、アレ。
本人の前で言うのもアレなんだが。
存在感が、んー。
お淑やかというか、慎ましやかというか……
こう……な!
判別は難しい。
当時の俺は、色々と無関心だったからな」
これはマズイ。
この会話はマズイ。
フリストが明後日の方向を見て、プルプルしているぞ。
ユミル:
「いくら胸がエグレているからって。
流石にそ……
ガァアア。
ハァウーァ」
フリストはユミルへと、鮮やかな2連撃を加える。
戦闘能力が極めて高い、というのは本当らしい。
腹に一撃、金的に一撃だ。
綺麗に決まるもんだな……
とっさの事で助けられなかった。
遠くへ吹き飛んで、悶絶している。
白目を、向いてるんじゃないのか?
上がってる、上がってる、アレはきっと天まで上がってるぞ!
顔から汗が吹き出た、嫌な記憶が蘇る。
ウッワーーー。
ユミルを見ているだけで、辛くなる。
その痛みが、俺にまで移りそうだ。
俺の全身が、汗でビッショリになる。
両手から汗が滴り落ちた。
ユミルは、今……何歳だ?
この歳で不能が、確定してしまうのか?
ユミルの、男としての人生は、終わってしまうのか?
マズイ、マズイぞ!、可哀想に。
アノ状態はかなり、ヤバイ!
早く、腰を叩いてしてやりたいが……
距離が遠い。
俺は本当に、何もできないのか?
コレは死ぬんじゃないか?
オイ!
もうすぐ、俺の旅立ちだというのに……
直樹:
「衛生兵!、衛生兵を呼べ!」
返事がない!
クッソ。
なんてことを……
直樹:
「誰も来ないぞ!
侵入者だ!
警備兵!、警備兵は、いるかーーーー!」
警備兵が2人、部屋へと突入してきた。
直樹:
「その男を助けろ!
どんな事をしてもだ!」
その日、ユミルは帰ってこなかった。
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