旅立ち 将校用宿舎・3
「わー…………………
見て……………………」
「…………見え……ぞ」
「さわっ……………」
「確………な」
「ナオキさん。
あな………………ますよ。
大丈夫、がんばてください」
「…………う?」
「おお、俺にも…………」
「あなたには神の力が、満ちています。
……………怒り。
…………う気持ちを、握り…………。
神の愛を……………ん」
「俺は現実主義なんだが……」
「よか………本が………ね。
………これ…………ろ?」
「力を…………とかなるさ。
それに、何があっても俺が守る」
「……………てる」
守れなかった。
守るはずだった。
離れてはいけなかった。
失ってはいけなかった。
気持ち悪い、二日酔いみたいだ。
景気が揺れる。
クラクラする。
ユミル:
「大丈夫ですか?
先程のあ……」
フリスト:
「ユミル。
黙れ」
直樹:
「ん?
何か……
あったのか?」
ユミル:
「いえ……
気のせいです。
それよりも、ナオキ様。
朝食の準備ができていますよ」
直樹:
「あぁ、ありがとう」
目を閉じて左手に集中した。
有る、たしかにココにある。
握りしめる?
何を握るんだ……
知ってる、俺は知っている。
体に纏わり付く何か、体の中の何か……
霧の様なものだ。
握ったり、開いたりを繰り返す。
ユミル:
「ナオキ様。
冒険の書は、どうなりましたか?」
手の中に何かがあるんだが……
直樹:
「上手くはいかなかった。
どうすれば冒険の書……」
左手にバシンという衝撃が走る。
直樹:
「……をだせる?」
ん?
何か持っている。
よく見ると黒い本を持っていた。
B5サイズのハードカバーの本。
これか?
何だろう……
こんなだったか?
黒い本だったか?
いや、青、青い本だったはずだ。
握った感触にも違和感を覚える。
薄い、もっと分厚かったはずだ。
大学ノート2冊分しか無い。
この倍以上の厚みがあったはずだ。
本当にコレか?
直樹:
「ユミル、これの事か?」
左手で持ったまま、テーブルの上に立てて見せた。
ユミル:
「えぇ……と。
どれでしょうか?」
怪訝そうな顔で、こちらを見ている。
直樹:
「なんだ、見えないのか?
じゃあ、触れもしないのか。
いや……
触れるはずだ」
ユミルが手探りで、本を探り始めた。
そう。
冒険の書は見えないが、触れるはずだ。
ユミル:
「あ!
何かあります。
あぁぁぁぁぁ!
おぉぉぉぉぉ
これが、冒険の書……」
少年のように目を輝かせた。
ユミル:
「持たせてもらっても……
よろしいでしょうか?」
直樹:
「あぁ、いいぞ」
ユミルに手渡す。
本から、手が離れると霧散した。
直樹:
「あ!
消えた」
ユミル:
「え!」
ユミルの顔が、一気に青ざめる。
ユミル:
「申し訳ありません。
本当に申し訳ありません。
僕が、不注意に触ってしまったせいで、とんでもない事に。
どう責任をとれば……」
フリスト:
「ユミル、どうしたの?」
ユミルが、必死な形相で謝り続けている。
そうだった、これはたしか……
直樹:
「冒険の書」
バシンという、衝撃と共に本が現れる。
直樹:
「また、出たぞ!」
ユミルに声を掛けると、手に触らせる。
椅子に座り安堵の表情でグッタリしていた。
本をテーブルに置いて、手を離す。
すると本は霧散する。
また本を取り出して、テーブルに置く。
右手の指で触りながら、左手を離してみた。
本は消えていない。
次は頭にのせて、落としてみる。
本は落下しながら、霧散していった。
直樹:
「大丈夫だ、ユミル。
俺の身体から離れると消えるみたいだ」
ユミル:
「そうでしたか……
それは、良かったです」
直樹:
「冒険の書の、使い方は解るか?」
ユミル:
「いえ。
使い方は、異世界人が知っているはずだと」
直樹:
「ふーーん」
冒険の書をペラペラとめくる。
日本語で何か色々書いてあるみたいだが。
いつでも読めそうだから、まずは食事にしよう。
フリスト:
「ユミル、顔色が悪いぞ。
汗もひどいな。
どうしたんだ?お前」
ユミル:
「大丈夫。
本を触っただけです」
フリスト:
「ん?」
フーーーー、スッキリした。
問題が解決できてなによりだ。
まずいメシも美味しく感じる。
直樹:
「ユミル。
聞きたかったんだが……
魔法、魔方陣は、何処で手に入る?
俺にも使えるのか?」
ユミル:
「魔力があれば使えるはずです。
魔法は、軍から支給されますよ。
簡単なものや生活魔術などは店でも販売してます」
直樹:
「店で売ってるのか魔法?
儲からないだろ?
一回買ったら終わりだし」
ユミル:
「いえ、違いますよ。
魔法はは消耗品です。
商品によりますが、使ってるうちに壊れます」
直樹:
「どこで作ってるんだ?」
ユミル:
「軍管理の工場です」
直樹:
「工場……」
魔法は家電扱いか……?
なんか俺のイメージと違う。
直樹:
「俺って、魔力あるのかな?
魔法は使える?」
ユミル:
「冒険の書を使うんですから、魔力はあるはずです。
魔力量を調べる試験紙がありますよ。
必要ないと思いますが、やってみますか?」
ユミルは自分の鞄から、名刺サイズの紙を取ってきた。
端のほうに丸が書いてある。
ユミル:
「端の丸を摘むと、紙に記録されます」
直樹:
「なるほど……」
言われた通り端の丸い部分を摘む。
これで俺も、魔法使いか!
ドキドキしながら、ユミルに見てもらう。
ユミル:
「えーっと。
エッ!?
反応ありません。
どうして!?
魔力が…ありませんが……」
直樹:
「なんだ、魔法は使えないのか。
残念だな。
元の世界に魔法なんかなかったし。
予想通りの展開か……」
ユミル:
「ナオキ様、どうするんですか?
魔力がありませんよ。
これでは魔導書が……使えません」
直樹:
「うーん。
どうだろう?
ユミルも死にかけたんだろ?
魔力以外に使える手段があるんじゃないのか?
冒険の書には色々と書いてあるみたいだった。
休憩中にでも読んでみるさ。
さて。
俺はまず、足の訓練を開始する」
早く歩けるように足の訓練を欠かすことはできない。
1日の訓練を終えると。
身体を拭いてからベッドへと戻た。
直樹:
「冒険の書」
魔道書を取り出すと読み始める。
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