壊れた異世界人 交渉・4
コンコンコンコン。
フリスト:
「どうぞお入りください」
扉が開くと軽装の兵士が何人も部屋の中に入ってくる。
全員が緊張した面持ちだ。
フリストは、すぐに直樹の脇へと戻った。
僕もナオキ様のすぐそばにいる。
兵士たちが、ジリジリとこちらに近づいてきた。
一人の兵士が、武器を預けてこちらにやってくる。
顔にはビッショリと汗をかいていた。
護衛兵:
「ユミル伍長。
我々が、異世界人に近づいても大丈夫か?」
ユミル:
「大丈夫だと思いますが……」
護衛兵:
「そうか。
確かに、我々は今も正気を保っているが……
ヴァンランディ中佐がいらしている。
ユミル伍長。
君には中佐の生命を保証してもらうぞ!」
兵士が合図を送ると、扉の入り口に椅子が置かれた。
椅子を守るように2人が入ってくる。
あれは軍の魔術師か?
ヴァンランディ中佐が……椅子に座った。
ヴァンランディ:
「はじめまして。
異世界人、ナオキ様。
私は、ヴァンランディと申します」
直樹:
「こちらこそ、はじめまして。
自分は直樹といいます」
ヴァンランディ:
「ナオキ様の待遇の交渉の前に、ひとつお約束いただきたい。
交渉がどの様な結果になっても。
私の命を保証していただきたいのです」
直樹:
「お前はいったい、俺を何だと思っている……」
ヴァンランディ:
「申し訳ございません。
ナオキ様には、すでに。
36人が殺され、100人以上の関係者が傷を負い、昏倒しています」
直樹:
「そんなにか?
感情は制御するように心がけよう。
俺は従軍する気はないし、監視役の10人は不要だ」
ヴァンランディ:
「ナオキ様。
私達はあなたのために、大きな犠牲を払っています。
異世界人の保護は、慈善事業ではありません。
軍にとって。
あなたという存在は、それだけの利用価値があるからです。
正直言わせていただくと、従軍。
そして。
あなたを守り監視する10人は必要だと考えます」
直樹:
「いきなりこれか……
しかしな、サラリーマンをなめてもらっては困る。
上司や顧客の無理難題は、いつものことだ。
妥協点は探らせてもらう。
俺のほうが有利な立場のようだしな。
まず、監視の10人。
この中に俺の指定する人物を、含めることは可能か?」
ヴァンランディ:
「人数と人物像によります」
直樹:
「人数は2人。
ここに居る、フリストとユミルだ」
ヴァンランディ:
「いいでしょう」
直樹:
「ユミルについて条件を追加したい。
彼の妹、彼女の待遇を改善してほしい。
今より良いものに」
ヴァンランディ:
「妹さん?
それほどユミル伍長を気に入った……
ということですか?」
直樹:
「あと、その妹だが。
俺の指示があれば、何時でも殺せるようにしてくれ。
駄目だと言われても自分で殺しに行くがな」
ヴァンランディ:
「それは……?
とくに詮索はしませんが、可能です」
直樹:
「監視の10人は減らせないか?」
ヴァンランディ:
「私達は10人でも足りないと思っています」
直樹:
「なぜだ?
俺を含め10人の異世界人が来ているはずだ。
ならば、俺にはそれだけの価値はないだろ?
監視に10人もいらない。
フリストとユミルで十分なはずだ。
何か理由があるはず。
それは、隠す必要がある事なのか?」
ヴァンランディ:
「いいでしょう。
それで私達との関係改善が、はかれると良いのですが……
まず、私はノルナゲスト少将のためにここにいます。
申し上げたとおり、異世界人は価値のあるものです。
少将は現在、異世界人を所有していません。
そして、異世界人の所有は大将へと進む条件でもあります。
通常、異世界人は大将以上に与えられるものです。
大将になるための条件だというのに。
少将が異世界人と交渉する。
こんな機会は、二度とあるものではありません。
後ろ盾のない我々が、上を目指すには必要なのです」
直樹:
「派閥に属さない者は、異世界人を入手できない。
そうか……
少将が異世界人を持たないことで、俺の価値は上がったのか?
そして従軍は必須要件。
それは俺が弱く、役に立たないとしてもか?」
ヴァンランディ:
「その通りです」
直樹:
「交渉の余地はないのか?
では、従軍はしよう。
従軍はする。
だが、立場は対等だ。
協力関係にすぎない。
それが守れないなら、俺が協力する事は難しい。
これでお前たちの要求は叶ったはずだ。
俺の要求も聞いてもらう」
ヴァンランディ:
「どのような要求ですか?」
直樹:
「そうだな。
運用方法……
任務の主導権をこちらにほしい。
それと情報もだ。
俺は自分の家族を探し出す。
お前たちの指示で、場所を決められたり。
一箇所にとどまったりでは、それも不可能だ。
そもそも、俺は弱い。
戦いなんかできないぞ」
ヴァンランディ:
「私達に、代わりの異世界人はおりません。
戦場へ投入はありえないとお考えください。
失う危険が高すぎます。
物資の輸送をお願いしたい」
直樹:
「輸送業務か。
情報と主導権はどうなる?」
ヴァンランディ:
「それは、あなたの働き次第です。
資金も必要ではありませんか?」
感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。
おかしい部分や修正点、加筆部分なんかを知りたいです。
よろしくお願いします。




