壊れた異世界人 交渉・3
ユミル:
「ナオキ……
ナオキ様とお呼びすれば良いのですか?」
直樹:
「そうだな。
そんな感じ……かな?」
ユミル:
「自分と軍の関係は、どうしたら……」
直樹:
「どういう意味だ?」
ユミル:
「ナオキ様とご一緒に行くのでしたら、
軍を辞める必要性があるのではないかと……」
直樹:
「軍はそのまま所属してくれ。
お前たちを養う手段がない。
それに軍の力を借りれるこの状況、メリットは多いはずだ。
この後、軍との交渉が始まるだろう。
奴らは、自分たちの利益を最優先にするはずだ。
ユミル。
お前と、俺の利益を守れ。
このまま色々と聞きたいところだが、体力が持たない。
現在、直面している問題は、この体力のなさだ」
ユミル:
「では、体力の回復を優先しましょう。
世話人の追加、食事の調整、医療スタッフの派遣を要請しますか?」
フリスト:
「ちょっと待って!
世話人は、私だけで十分でしょ?」
ユミル:
「いや……
増やしたほうがいいだろ?」
フリスト:
「嫌だ、嫌だ、嫌だ。
俺様、今まで頑張ってきたんだ!
ここで、お払い箱だと!?
ユミル、流石にブ殺すぞ!」
ユミル:
「しかし」
直樹:
「ユミル、フリストは仲間だ」
ユミル:
「え?
連れて行くんですか?
コイツ、かなりヤバイですよ」
直樹:
「知ってる。
フリストはたぶん、俺を裏切らない。
かなり、アレだが……
俺のためなら、お前を普通に殺しそうだ」
フリスト:
「無論!
殺る!
すぐにでも、殺る!」
直樹:
「俺は、誰も信用する気はない。
裏切る可能性が低い人間で、周囲を固める。
だから、俺はお前の妹を人質に取った。
フリストは狂信者だ。
何か問題はあるか?」
ユミル:
「わかりました。
それでも、世話人は必要です」
フリスト:
「はぁ?
ユミル、ちゃんと話は聞いていたか?」
ユミル:
「フリスト、お前こそ話を聞いていたか?
ナオキ様と一緒に行くんだろ?
準備だってあるし、自身の体調管理も必要だ。
いざ出立となった時、
お前のせいで日程が伸びるなんてことは、あってはならない。
ナオキ様の足を引っ張るな。
何が起こるかわからない。
やることは、山程あるはずだ。
お前をメインで、補佐の世話人を付ける。
それでいいか?」
フリスト:
「ついに、旅立つのか。
世界征服へと……」
直樹:
「いろいろアレだが。
その方向で頼む。
俺は疲れた、休ませてくれ」
異世界人の準備が完了したらしい。
明日からは、軍との交渉に移るように指示された。
部屋の中を杖を使いながら、グルグルと歩いている。
必死に歯を食いしばり、ダラダラと汗を流していた。
フリストが、ハラハラと見守っている。
母性が大爆発しているみたいだな。
まだ、2周間しか経っていない。
3ヶ月以上も寝たきりだった人間が、こんな短期間で動けるなんて……
一刻も早く、出立したいのだろうが。
正直イカれている。
体は鉛のように重く、全身に激痛が走っているはずだ。
異世界人は僕たちとは違う。
回復魔法を使っても、効果は無いに等しい。
医療スタッフの見立てでは、最低でも3ヶ月。
最悪、歩くことは一生できないと聞いていたのに……
ユミル:
「ナオキ様。
前から請求していた資料が届きました。
ナオキ様が救出された施設の情報です」
直樹:
「報告してくれ」
ユミル:
「施設から救出された異世界人は全部で17人。
こちらに来るまでに7人が死亡しています。
情報要求がありました髪色の件ですが、
黒髪、栗毛、赤髪の3種類です。
黒髪の人物は、ナオキ様を含めて3人でした。
全員、無事にこちらへ輸送されたそうです」
直樹:
「俺以外に2人……
家族の可能性はないか?」
ユミル:
「ご家族が含まれるのでしたら。
ナオキ様の説得へと、派遣されるのではありませんか?」
直樹:
「たしかに。
では、死亡者の髪色はどうなんだ?」
ユミル:
「黒髪はなかった、という回答でしたが」
直樹:
「死んだ7人の内。
遺体が回収されたのは、何人だった?」
ユミル:
「4人です」
直樹:
「3人の髪色が不明か……」
ユミル:
「黒髪は珍しいそうなので、やはり全部で3人なのでは?
救出時に容姿の記録は取ってあるはずです」
直樹:
「記録……
なぜそんな物を?」
ユミル:
「救出と称してはいますが、実態はただの誘拐ですから。
逃亡されたときのためにも、容姿の記録はしているはずです。
ナオキ様も。
自分の意思で、こちらに来たわけではないと思いますが……」
直樹:
「その通りだな……
なら、信憑性は高いだろう。
これ以上は、考えても答えは出ないか。
待遇は?
軍での俺の待遇は、どうなりそうだ?」
ユミル:
「当初の待遇で……
求められていたのは従軍です。
身の回りのお世話に10人付く予定でした。
有事の際は200人の護衛が付きます。
給与の支給、生活物資、軍事物資、生活拠点の提供があります」
直樹:
「有事、従軍、戦争か。
従軍な……
しかし。
それでは……
自由に動けるのか?
俺は家族を探しに出る。
身動きが取れないのはな……
やはり、駄目だ。
従軍はできない。
条件の交渉は、どうすればいい?」
ユミル:
「条件の変更は、少将の許可が必要です」
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