壊れた異世界人 交渉・2
大きな両開きの扉がある。
木目も美しい。
この扉の向こうは、どうなっているのだろう?
まだ、黒い霧で満たされているのだろか?
行きたくない、行かなくてはならない。
ノブを掴んでは、また離す。
時間だけが無駄に過ぎていく。
ガチャリ。
内側からドアが空いた。
フリスト:
「ユミル、何してんの?
早く入れ」
すぐに逃げ出そうとするが、彼女は早かった。
捕まると、ズルズルと引きずられる。
ユミル:
「この、馬鹿!
離せ、離せよ!
この馬鹿力が!」
フリスト:
「ほら、早くしろ」
異世界人のいるベッドのそばへと放り投げられた。
逃げ出そうとすると、声をかけられる。
異世界人:
「逃げるな!
よかった。
生きていたんだな……
元気そうで何よりだ」
ユミル:
「……」
異世界人:
「どうした?
こっちにに来ないのか?
そこで構わない。
フリスト、ユミルに椅子を」
ユミル:
「なぜ自分を……」
異世界人:
「ん。
まぁな……
一つは、お前が生きているかを知りたかった。
もう一つは、お前がこの国の人間ではないと言ったからだ」
ユミル:
「自分の怪我を治したのは、あなたですか?」
異世界人:
「知らないぞ。
俺はお前を助けるように指示を出したあと、寝てしまった。
興奮してかなり疲れていたらしい」
ユミル:
「そうですか……
では、一体誰が」
異世界人:
「それよりも。
俺はお前のことが知りたい。
すべてを話せ。
どこで生まれたのか?
どうしてこの国にいるのか?
妹のこともだ」
ユミル:
「資料は届いてませんか?」
異世界人:
「資料なら読んでもらった。
それとは別だ。
お前の口から直接ききたい」
僕は話し始めた。
生まれ故郷のこと。
戦争によって、両親は死んだこと。
妹が大きな火傷を負ったこと。
何度も殺されかけたこと。
この国に助けられたこと。
異世界人は、ただ聞いていた。
相づちを打つわけでもなく、質問することもなく。
ユミル:
「……以上です」
異世界人:
「お前の妹は治るのか?
あと何年生きられるんだ?」
この異世界人は一体、なにを言っている?
僕の妹に何の関係がある!
ユミル:
「わか……りません」
異世界人:
「お前は妹を助けたいと思わないのか?
命を賭ける気はないか?」
ユミル:
「助けたいのは、当然だ!
僕は、やっている。
精一杯やっています!
今だって、命がけでここに来ている!」
苛立て、睨みつけてしまう。
異世界人:
「今までの話じゃない。
これからの話しだ」
ユミル:
「あなたは、何を言っているんだ!」
異世界人:
「そうか。
では、質問を変えよう。
もしお前が、こことは違う世界に来たら……
どうする?
何から手を付ける?」
ユミル:
「僕ですか……?
まず……
まずは、自分の世界との違いを調べます」
異世界人:
「では、どうやって調べる?
どうすれば、効率よくできると思う?」
ユミル:
「現地の人間と接触して、情報を集めます」
異世界人:
「そのとおりだ。
俺は異世界に来た人間で、お前は異世界の住人だ。
そこのヤツだけでは、心細くてな……
俺はここを出る。
死ぬにせよ。
家族を探すにしても、このままでは無理だ。
ユミル、俺の仲間になれ」
ユミル:
「無理に決まってるでしょ!
僕には妹がいる。
離れる事はできない!」
異世界人:
「だからだ。
俺がもらった資料によると、お前の妹の容態は変わっていない。
むしろ悪化しているんじゃないか?」
ユミル:
「それと、あなたは関係ない!」
異世界人:
「妹を助ける方法を探したいとは思わないか?
お前は今の環境で、それができるのか?」
ユミル:
「……」
異世界人:
「俺は異世界人だ。
お前たちにとって……俺は貴重なんだろ?
お前の妹の為に、口添えしてやろう」
ユミル:
「しかし……」
異世界人:
「異世界人には、不思議な力があるんだろ?
もし俺に、助ける力があるなら、助けてやろう」
ユミル:
「あなたに、そんな力は無い!」
異世界人:
「だが、家族を探すうちに多くの異世界人に出会うだろう。
お前の妹を助ける力を持つものに出会うはずだ。
ユミル。
お前は俺のために、毒と刃物を用意すると言ったな?
それは、軍に対する裏切りではないのか?
それが軍に伝わった時……
お前の妹は無事でいられるのか?
俺の不興をかったとき、それでも無事でいられるのか?
お前は妹のために、どんな事でもするのだろ?
ならわかるはずだ。
俺は家族のために、何でもやる。
お前の妹のハラワタを、引きずり出してでも俺は、家族を探しだす。
俺が馬鹿だったんだ……
馬鹿だったんだよ……
他人を、頼ろうとしたことがな!!
よく考えろ、ユミル。
お前の妹の事を……
人質をとっているのは、軍だけではない。
ユミル。
最後に一度だけ聞く。
お前に拒否権は無い。
ユミル、俺の仲間になれ」
ユミル:
「妹を……
妹を助けて……ください」
異世界人:
「よろしく頼む。
俺の名前は、直樹。
天野直樹だ」
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