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ドラゴンの国と深淵へのクエスト ~異世界転移したおっさんが、戦場を彷徨う~  作者: 社畜とキメラ
第三章 異世界転移したおっさんが、戦場を彷徨う。
113/124

貰い火 嘆き・20

俺は、七色迷探偵を使い傷ついた隷属者を探し始める。

すぐに一人目を発見できた。


隷属者:

「ぅ……  ぁ・・」


傷ついた鎧が、黒いモノで汚れたいた。

土なのか、血なのかも分からない。

出血はない加護の力で、止血されているようだ。

顔色は悪く、このままでは死んでしまう。



直樹:

「クッソ!

 助けられないのか!」


魔導書ドラクエ:

「どうした?

 ナオキ」


ストン。

と猫が現れる。



直樹:

「この兵士を、助ける方法は何かないのか?」


魔導書ドラクエ:

「可能だが……

 おすすめはしない」


直樹:

「何故だ!?

 助けられるんだろ?

 俺のために戦ったんだぞ!」


魔導書ドラクエ:

「効率が悪い……」


直樹:

「効率!?

 何のことだ?

 何を言っている?」


魔導書ドラクエ:

「購入ポイントが必要だ。

 隷属の書は1、隷属者完治の書は5だ」


直樹:

「助けられるじゃないか!

 使う!

 すぐに作ってくれ!」


魔導書ドラクエ:

「待て! ナオキ。

 この戦闘で、多くの者が死にかけている。

 そっちは見捨てるのか?

 購入ポイントは、もっと大切に使うべきだ!

 強化にも必要だぞ。

 そいつを見捨てれば、5人の兵士が補充できる」


直樹:

「馬鹿を言うな!

 助ける!

 魔導書ドラクエ!

 すぐに作れ!

 冒険の書」


隷属者完治の書を購入して、傷ついた兵士に貼り付けた。

苦悶の表情は無くなり、傷も治り始める。



隷属者:

「主よ。

 申し訳ありません」


直樹:

「よく頑張ってくれた。

 ありがとう」


畑へと転移させる。



直樹:

「ユミル!

 フリスト!

 護衛部隊!

 全兵士をここへ集めろ!

 

 要救護者とそれ以外を分類する。

 要救護者は、軽症、重傷、重体者に分けるんだ!」



重体者に、隷属者完治の書を与えていく。

30分ほどで、全員が集まった。


重体者は253人。

重傷者には余裕ができたら、完治させることを約束した。


七色迷探偵で、残りのを探索する。

152人を発見できた。

12人に隷属者完治の書を与える。




直樹:

「17番、居るか?」


冒険の書で、隠れ家の17番に連絡をとった。


17番:

「はい」


直樹:

「被害状況を確認したい。

 把握はできているか?」


17番

「重傷者486人、軽症者1684人、問題無しが1181人です。

 649人の所在がわかりません」


直樹:

「265人は、俺が助けた。

 すると。

 384人が行方不明か……」



1番と連絡を取る。


1番の話によると、

遺体が氷のようなものに、包まれて畑に現れたらしい。

それと、隷属の書の束があった。


至急、数を確認させる。

隷属の書と遺体の数を数えると、384人だ。

元は4000人いたので、数はあう。

どういう事だ?



魔導書ドラクエ:

「それは、どちらも隷属者たちだ。

 器に包まれたものは、元の世界に帰りたいと望んだ者。

 隷属の書は、死後もお前に仕えたいと願ったものだ」


直樹:

「魔導書ドラクエか?」


魔導書ドラクエ:

「器の者達は、外へと返してやれ。

 隷属の書は、お前が持っておけ」


直樹:

「どういう事だ?

 器はいいが……

 隷属の書は?」


魔導書ドラクエ:

「彼らの願いだ。

 多くは聞くな。

 僕には答えられない」


直樹:

「わかった」



中将の所から伝令がやって、俺たちを案内する。

死にかけた人間と、死体が並べられていた。

死体という表現は間違っている。

さっきまで、生きていたのだろう。



直樹:

「ユミル、フリスト。

 助けるぞ!」


次々と隷属していくが……


フリスト:

「ナオキちゃん。

 足りない!」


ユミル:

「ナオキ様……」


俺が出せた、隷属の書は162枚。


魔導書ドラクエ:

「ナオキ……」


直樹:

「魔導書ドラクエ!

 お前に預けたポイントをすべて返せ!」


魔導書ドラクエ:

「あぁ、残りの400持っていけ!」


足りない、足りない。

全然足りなかった。


次々と重体者が運ばれてくる。

息も絶え絶えの者がほとんどだ。


血と土の臭いで、むせ返る。

軍医や衛生兵が、必死に手当てをしていた。

怪我人の友人だろうか?

手を握り、涙を流している。

必死に励ましていた。


俺はそこに立ち尽くした。

冒険の書を開いたまま。


きっとまだ死ぬ。

怪我は、状態は、悪化する。



一人の男が、こちらに向かって来た。

俺のことを掴んでくる。


兵士:

「あんた!

 助けられるんだろ!


 アイツはいい奴なんだ。

 家族思いのいい奴なんだよ。

 母親と弟も待っているんだよ。

 俺の親友なんだ!


 あんた、異世界人なんだろ?

 助けてくれよ!

 俺にできる事なら何でもやるよ!

 お礼は必ずする!

 お願いだ。

 親友を助けてくれ!」



何も答えることが出来ない。

過去の自分が重なる。

竜族たちに、家族を探してくれと泣きすがった。

この男の気持ちは、理解できる。

でも、無理なんだ。

伝えれば。

理解してくれるのか?

分かってもらえるのだろうか?



兵士:

「ふざけるな!

 何故だ! 何故だ! 何故だ!

 どうして、助けてくれない!」


泣きながら俺を殴ってきた。

隷属者たちが、すぐに組み伏せる。

向こう側へと引きずって行った。

なぜ、俺が助けられることを知っている?

どうして、異世界人だと……


そうか。

中将が原因か。

陣地で行われていた、学芸会。

重体者の存在を触れ回っていた兵士がいたな。


ユミルに、ここから離れるように言われた。

だが動くことはできない。

ポイントが増える可能性があるからだ。


動けなかった。

呪詛のような苦悶の叫びを聞きながら。

最後の一人が息を引き取るまで。


最後の人間が死ぬまで、12ポイント増えた。

だから、12人を救う事が出来たんだ。

冒険の書を閉じる。


俺の見ている前で、1562人が死亡。

兵士たちが作業をしていた。

死体を袋に、詰め込んでいる。



魔導書ドラクエの言葉を考えた。

購入ポイントを効率的に使う。

それはある意味正しい。

だが、隷属者は消耗品ではない。

中将の兵士も助けてやりたい。

俺が使った、隷属者完治の書は265枚。


もし、隷属の書にしていれば、1325枚。

死者の数を、237人にまで減らせた可能性があった。


俺は、命の価値は平等だと習った。

俺もそう思っている……はずだ。

それは、本当だろうか?

気持ち悪い。


同じ病気なのに、助かる人もいれば死ぬ人間もいる。

出会った医者が、悪かったのだろうか?

気持ち悪い。


先進国に生まれた子供は命が助かり、貧困地域で生まれれば命を落とす。

命は本当に平等なのだろうか?

くだらない考えが、頭を巡る。

俺は、何を考えている?

気持ち悪い。


なんだ?

なんなんだ、いったい!?

命、命、命……


何が、悪い……

仲間を助けて、何が悪い!

命に順列を付けて、何が悪い!!

気持ち悪い。


すぐに走り出した。


ウェーーーー。

胃の中身をすべて吐き出す。


この世は、嘘でまみれている。

悪意で埋め尽くされている。

元の世界であっても。

命は決して…平等ではない。

綺麗ごとで、真実から目を逸らしている。



もういい。

これ以上は、ここには居たくない。

隠れ家に逃げ込んだ。



一人、考えごとをするが。

心の整理がつかない。

俺は、敵も味方も。

何人の命を、奪ったのだろう。

彼らにも、家族はいるのだ。

俺は、正しかったのか?


だが、ここは竜の国で。

賢人の奴らは、この国の人間を多く殺している。

竜族が一方的に、殺されていいはずがない。

自分たちを、家族、友人を守っているだけだ。


自分に問いかける。

俺は本当に、正しかったのか?

元の世界についても、よく考えろ。


国には軍隊がいる。

警察だっている。

守ることは、正しいはずなんだ!


国連軍だって、あるじゃないか!

アイツらだって、人を殺す。

子供だって、知っていることだ。


でも。

俺が…やる必要はないの……か?




魔導書ドラクエ:

「ナオキ、どうした?」


直樹:

「ちょっとな。

 なんと、いうか。

 戦いでな。

 殺した。

 命を、奪ったんだ……」


魔導書ドラクエ:

「ツラいか?」


直樹:

「心の整理が……な。

 つかない。


 敵が殺されるのも。

 味方が殺されるのも。

 見たくない。


 俺自身、殺したくはない」


魔導書ドラクエ:

「では……なぜ。

 戦場にいた?


 戦場に、行かなければ。

 いいだろ?」


直樹:

「戦場には、異世界人がいる。

 俺の家族が、居るかもしれない」


魔導書ドラクエ:

「何を言っている?

 今まで、一度も。

 異世界人に遭遇したことはない。

 違うか?」


直樹:

「そうだ。

 でもな……

 俺が参加しただけで、戦況は傾いた。

 異世界人が参加する可能性は。

 極めて高い。


 それに。

 この戦争を早く終わらせたい」


魔導書ドラクエ:

「なぜ?

 君がやる必要があるのか?

 君はこの世界の住人じゃない。


 竜の国が、どうなろうとも。

 君には関係ない。

 逃げてもいいじゃないか!」


直樹:

「戦争が終われば、家族も探しやすい。

 このまま戦争が続けば。

 俺の家族が犠牲になるかもしれない。

 それは嫌だ。

 助けたい」


魔導書ドラクエ:

「これからも戦争に参加するのか?

 君自身は、大丈夫なのか?」


直樹:

「参加するしかない。

 家族を探すにも軍の協力は必要だ。


 気が狂いそうだ。

 正直、厳しい。

 慣れていく、モノなのか?


 切れば、血も出るし。

 悲鳴も上がる。

 嫌な目で俺を見てくる。

 血の臭い。

 土と金属の臭い。

 死ぬ間際の声。

 肌で感じる恐怖と憎悪。


 ゲームとは違う」


魔導書ドラクエ:

「チッ!

 条件が揃った……


 ゲーム? だったら。

 どうなるんだ?」


直樹:

「ん?

 まぁ、血も出ないし。

 消えるんじゃないか?

 サーーーーって」


魔導書ドラクエ:

「君が望むのなら、それも可能だ。

 だが、お勧めはしない」


直樹:

「お前……

 何を言ってるんだ!?」


魔導書ドラクエ:

「君が望むのなら。

 可能だと言っている」


直樹:

「は?

 どういうことだ?」


魔導書ドラクエ:

「まずは。

 この世界の常識を伝えよう。

 この世界の住人は、神によって作られている。

 君たちとは、まったく別の存在だ。


 君たち異世界人は。

 問題ごとに、巻き込まれることが多い。

 身を守るために誰かを殺す、必要性がある。

 そういう場合もあるんだ。

 精神的に負担を負うこともある。


 そのための、救済処置が与えられている。


 君の言う、ゲームみたいな感じになる。

 血が出なかったり、血が青かったり。

 サーーーーって、消えたり」



体がガタガタと震えだす。

手が汗でべたつき、ポタポタと落ちる。

涙が溢れ出した。


助かるのか?

この状況から。

逃げることが、できるのか?



直樹:

「すぐだ。

 今、すぐだ!

 すぐに! やってくれ!」


魔導書ドラクエ:

「駄目だ! まだだ!

 説明が終わっていない。

 最後まで聞け!


 救済処置を利用するための、条件に満たない。


 聞け!

 救済処置を使った場合。


 君が誰かを切ったとき!

 血は出ない、青く見える、もしくは、君は認識できない。


 君が誰かを故意に、火で焼いたとする!

 相手の体は、焼けている様には見えない。

 君は認識する事が出来ないんだ。

 それでも相手には、火は見えるし火傷を負う。


 そして、君の、心の負担を軽減するだろう。


 致死に至る、ダメージを与えた場合。

 相手は霧のように消えてしまい。

 物だけが残る。


 一度、設定すると解除できない。


 それでも、いいのか?」


直樹:

「ああ! それでいい!」


魔導書ドラクエ:

「ナオキ!

 本当にいいのか?

 よく考えてくれ!

 それでも、命は失われているんだ!」


直樹:

「何を言ってるんだ!」


魔導書ドラクエ:

「よく聞け!

 いいか!


 この救済処置は、心のタガを外してしまう……

 罪の意識を奪ってしまうんだ!


 血から目を逸らす。

 恐怖から、死から、罪の意識から、目を逸らす。

 本当に、いいことなのか?


 真実を包み隠して。

 目を逸らすことが、いい事なのか?

 

 ナオキ、よく、聞いてほしい。

 救済処置は、殺傷率を上げるんだ。

 君は、どれくらいだと思う?」


直樹:

「1割……

 もしかして、3割か?」


魔導書ドラクエ:

「桁が違う。

 10倍や、100倍だ」


直樹:

「馬鹿な!!

 俺が、そんな人間に見えるのか?

 俺は、そんな風には、ならない!!」


魔導書ドラクエ:

「みんな……

 初めは、そう……言うんだ。


 ナオキには。

 そんな人間にはなって欲しくない。

 

 簡単に、命を奪うんだよ!

 殺したことを、倒したって、言い換えるんだよ!

 ちょっと、狩りに行ってくる!

 ちょっと、ドロップ拾ってくるって!」


直樹:

「俺は、そんな人間じゃない。


 説明は……

 これで、終わりか?

 救済処置をやってくれ」


魔導書ドラクエ:

「ナオキ! ナオキ!

 どうして、分からない!


 君が殺した存在は、この世から消えてしまうんだ!

 何も残らないんだよ!

 消えてしまうんだよ!


 遺族はどうすればいい?


 弔う権利があるはずなんだ!

 命を奪われ。

 弔う事さえできない!


 タガが外れてしまう!

 罪の意識が消えてしまう!

 君は多くの者たちを、傷つけるんだぞ!


 罪と向き合え!

 強くなれ、ナオキ!」


直樹:

「俺が、俺が……

 誰かを殺したい、と、思うのか?

 命を奪いたいと!


 俺がそんな人間だと!

 本気で、思っているのか!?


 だったら、最初から。

 救済処置の事なんか。


 俺に……伝えなければいい。

 お前の責任だ!」


魔導書ドラクエ:

「仕方ないだろ……

 僕は案内人だ。

 そういう存在、なんだよ。


 条件を満たさなければ、何も出来ない。

 逆に、満たしてしまえば、伝えなくては、ならない。

 義務がある。


 それが、僕の意思に、反してもだ!


 君は、もっと、強くなれると、思っていた。

 すべては、君の弱さが原因だ!」


直樹:

「黙れ! 黙れ! 黙れ!」


魔導書ドラクエ:

「いいだろう……

 だが、覚えておけ!


 君はきっと、後悔する!

 君はいつか、壊れてしまう!


 君はいつか……

 君自身では、いられなくなる」

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