貰い火 嘆き・20
俺は、七色迷探偵を使い傷ついた隷属者を探し始める。
すぐに一人目を発見できた。
隷属者:
「ぅ…… ぁ・・」
傷ついた鎧が、黒いモノで汚れたいた。
土なのか、血なのかも分からない。
出血はない加護の力で、止血されているようだ。
顔色は悪く、このままでは死んでしまう。
直樹:
「クッソ!
助けられないのか!」
魔導書ドラクエ:
「どうした?
ナオキ」
ストン。
と猫が現れる。
直樹:
「この兵士を、助ける方法は何かないのか?」
魔導書ドラクエ:
「可能だが……
おすすめはしない」
直樹:
「何故だ!?
助けられるんだろ?
俺のために戦ったんだぞ!」
魔導書ドラクエ:
「効率が悪い……」
直樹:
「効率!?
何のことだ?
何を言っている?」
魔導書ドラクエ:
「購入ポイントが必要だ。
隷属の書は1、隷属者完治の書は5だ」
直樹:
「助けられるじゃないか!
使う!
すぐに作ってくれ!」
魔導書ドラクエ:
「待て! ナオキ。
この戦闘で、多くの者が死にかけている。
そっちは見捨てるのか?
購入ポイントは、もっと大切に使うべきだ!
強化にも必要だぞ。
そいつを見捨てれば、5人の兵士が補充できる」
直樹:
「馬鹿を言うな!
助ける!
魔導書ドラクエ!
すぐに作れ!
冒険の書」
隷属者完治の書を購入して、傷ついた兵士に貼り付けた。
苦悶の表情は無くなり、傷も治り始める。
隷属者:
「主よ。
申し訳ありません」
直樹:
「よく頑張ってくれた。
ありがとう」
畑へと転移させる。
直樹:
「ユミル!
フリスト!
護衛部隊!
全兵士をここへ集めろ!
要救護者とそれ以外を分類する。
要救護者は、軽症、重傷、重体者に分けるんだ!」
重体者に、隷属者完治の書を与えていく。
30分ほどで、全員が集まった。
重体者は253人。
重傷者には余裕ができたら、完治させることを約束した。
七色迷探偵で、残りのを探索する。
152人を発見できた。
12人に隷属者完治の書を与える。
直樹:
「17番、居るか?」
冒険の書で、隠れ家の17番に連絡をとった。
17番:
「はい」
直樹:
「被害状況を確認したい。
把握はできているか?」
17番
「重傷者486人、軽症者1684人、問題無しが1181人です。
649人の所在がわかりません」
直樹:
「265人は、俺が助けた。
すると。
384人が行方不明か……」
1番と連絡を取る。
1番の話によると、
遺体が氷のようなものに、包まれて畑に現れたらしい。
それと、隷属の書の束があった。
至急、数を確認させる。
隷属の書と遺体の数を数えると、384人だ。
元は4000人いたので、数はあう。
どういう事だ?
魔導書ドラクエ:
「それは、どちらも隷属者たちだ。
器に包まれたものは、元の世界に帰りたいと望んだ者。
隷属の書は、死後もお前に仕えたいと願ったものだ」
直樹:
「魔導書ドラクエか?」
魔導書ドラクエ:
「器の者達は、外へと返してやれ。
隷属の書は、お前が持っておけ」
直樹:
「どういう事だ?
器はいいが……
隷属の書は?」
魔導書ドラクエ:
「彼らの願いだ。
多くは聞くな。
僕には答えられない」
直樹:
「わかった」
中将の所から伝令がやって、俺たちを案内する。
死にかけた人間と、死体が並べられていた。
死体という表現は間違っている。
さっきまで、生きていたのだろう。
直樹:
「ユミル、フリスト。
助けるぞ!」
次々と隷属していくが……
フリスト:
「ナオキちゃん。
足りない!」
ユミル:
「ナオキ様……」
俺が出せた、隷属の書は162枚。
魔導書ドラクエ:
「ナオキ……」
直樹:
「魔導書ドラクエ!
お前に預けたポイントをすべて返せ!」
魔導書ドラクエ:
「あぁ、残りの400持っていけ!」
足りない、足りない。
全然足りなかった。
次々と重体者が運ばれてくる。
息も絶え絶えの者がほとんどだ。
血と土の臭いで、むせ返る。
軍医や衛生兵が、必死に手当てをしていた。
怪我人の友人だろうか?
手を握り、涙を流している。
必死に励ましていた。
俺はそこに立ち尽くした。
冒険の書を開いたまま。
きっとまだ死ぬ。
怪我は、状態は、悪化する。
一人の男が、こちらに向かって来た。
俺のことを掴んでくる。
兵士:
「あんた!
助けられるんだろ!
アイツはいい奴なんだ。
家族思いのいい奴なんだよ。
母親と弟も待っているんだよ。
俺の親友なんだ!
あんた、異世界人なんだろ?
助けてくれよ!
俺にできる事なら何でもやるよ!
お礼は必ずする!
お願いだ。
親友を助けてくれ!」
何も答えることが出来ない。
過去の自分が重なる。
竜族たちに、家族を探してくれと泣きすがった。
この男の気持ちは、理解できる。
でも、無理なんだ。
伝えれば。
理解してくれるのか?
分かってもらえるのだろうか?
兵士:
「ふざけるな!
何故だ! 何故だ! 何故だ!
どうして、助けてくれない!」
泣きながら俺を殴ってきた。
隷属者たちが、すぐに組み伏せる。
向こう側へと引きずって行った。
なぜ、俺が助けられることを知っている?
どうして、異世界人だと……
そうか。
中将が原因か。
陣地で行われていた、学芸会。
重体者の存在を触れ回っていた兵士がいたな。
ユミルに、ここから離れるように言われた。
だが動くことはできない。
ポイントが増える可能性があるからだ。
動けなかった。
呪詛のような苦悶の叫びを聞きながら。
最後の一人が息を引き取るまで。
最後の人間が死ぬまで、12ポイント増えた。
だから、12人を救う事が出来たんだ。
冒険の書を閉じる。
俺の見ている前で、1562人が死亡。
兵士たちが作業をしていた。
死体を袋に、詰め込んでいる。
魔導書ドラクエの言葉を考えた。
購入ポイントを効率的に使う。
それはある意味正しい。
だが、隷属者は消耗品ではない。
中将の兵士も助けてやりたい。
俺が使った、隷属者完治の書は265枚。
もし、隷属の書にしていれば、1325枚。
死者の数を、237人にまで減らせた可能性があった。
俺は、命の価値は平等だと習った。
俺もそう思っている……はずだ。
それは、本当だろうか?
気持ち悪い。
同じ病気なのに、助かる人もいれば死ぬ人間もいる。
出会った医者が、悪かったのだろうか?
気持ち悪い。
先進国に生まれた子供は命が助かり、貧困地域で生まれれば命を落とす。
命は本当に平等なのだろうか?
くだらない考えが、頭を巡る。
俺は、何を考えている?
気持ち悪い。
なんだ?
なんなんだ、いったい!?
命、命、命……
何が、悪い……
仲間を助けて、何が悪い!
命に順列を付けて、何が悪い!!
気持ち悪い。
すぐに走り出した。
ウェーーーー。
胃の中身をすべて吐き出す。
この世は、嘘でまみれている。
悪意で埋め尽くされている。
元の世界であっても。
命は決して…平等ではない。
綺麗ごとで、真実から目を逸らしている。
もういい。
これ以上は、ここには居たくない。
隠れ家に逃げ込んだ。
一人、考えごとをするが。
心の整理がつかない。
俺は、敵も味方も。
何人の命を、奪ったのだろう。
彼らにも、家族はいるのだ。
俺は、正しかったのか?
だが、ここは竜の国で。
賢人の奴らは、この国の人間を多く殺している。
竜族が一方的に、殺されていいはずがない。
自分たちを、家族、友人を守っているだけだ。
自分に問いかける。
俺は本当に、正しかったのか?
元の世界についても、よく考えろ。
国には軍隊がいる。
警察だっている。
守ることは、正しいはずなんだ!
国連軍だって、あるじゃないか!
アイツらだって、人を殺す。
子供だって、知っていることだ。
でも。
俺が…やる必要はないの……か?
魔導書ドラクエ:
「ナオキ、どうした?」
直樹:
「ちょっとな。
なんと、いうか。
戦いでな。
殺した。
命を、奪ったんだ……」
魔導書ドラクエ:
「ツラいか?」
直樹:
「心の整理が……な。
つかない。
敵が殺されるのも。
味方が殺されるのも。
見たくない。
俺自身、殺したくはない」
魔導書ドラクエ:
「では……なぜ。
戦場にいた?
戦場に、行かなければ。
いいだろ?」
直樹:
「戦場には、異世界人がいる。
俺の家族が、居るかもしれない」
魔導書ドラクエ:
「何を言っている?
今まで、一度も。
異世界人に遭遇したことはない。
違うか?」
直樹:
「そうだ。
でもな……
俺が参加しただけで、戦況は傾いた。
異世界人が参加する可能性は。
極めて高い。
それに。
この戦争を早く終わらせたい」
魔導書ドラクエ:
「なぜ?
君がやる必要があるのか?
君はこの世界の住人じゃない。
竜の国が、どうなろうとも。
君には関係ない。
逃げてもいいじゃないか!」
直樹:
「戦争が終われば、家族も探しやすい。
このまま戦争が続けば。
俺の家族が犠牲になるかもしれない。
それは嫌だ。
助けたい」
魔導書ドラクエ:
「これからも戦争に参加するのか?
君自身は、大丈夫なのか?」
直樹:
「参加するしかない。
家族を探すにも軍の協力は必要だ。
気が狂いそうだ。
正直、厳しい。
慣れていく、モノなのか?
切れば、血も出るし。
悲鳴も上がる。
嫌な目で俺を見てくる。
血の臭い。
土と金属の臭い。
死ぬ間際の声。
肌で感じる恐怖と憎悪。
ゲームとは違う」
魔導書ドラクエ:
「チッ!
条件が揃った……
ゲーム? だったら。
どうなるんだ?」
直樹:
「ん?
まぁ、血も出ないし。
消えるんじゃないか?
サーーーーって」
魔導書ドラクエ:
「君が望むのなら、それも可能だ。
だが、お勧めはしない」
直樹:
「お前……
何を言ってるんだ!?」
魔導書ドラクエ:
「君が望むのなら。
可能だと言っている」
直樹:
「は?
どういうことだ?」
魔導書ドラクエ:
「まずは。
この世界の常識を伝えよう。
この世界の住人は、神によって作られている。
君たちとは、まったく別の存在だ。
君たち異世界人は。
問題ごとに、巻き込まれることが多い。
身を守るために誰かを殺す、必要性がある。
そういう場合もあるんだ。
精神的に負担を負うこともある。
そのための、救済処置が与えられている。
君の言う、ゲームみたいな感じになる。
血が出なかったり、血が青かったり。
サーーーーって、消えたり」
体がガタガタと震えだす。
手が汗でべたつき、ポタポタと落ちる。
涙が溢れ出した。
助かるのか?
この状況から。
逃げることが、できるのか?
直樹:
「すぐだ。
今、すぐだ!
すぐに! やってくれ!」
魔導書ドラクエ:
「駄目だ! まだだ!
説明が終わっていない。
最後まで聞け!
救済処置を利用するための、条件に満たない。
聞け!
救済処置を使った場合。
君が誰かを切ったとき!
血は出ない、青く見える、もしくは、君は認識できない。
君が誰かを故意に、火で焼いたとする!
相手の体は、焼けている様には見えない。
君は認識する事が出来ないんだ。
それでも相手には、火は見えるし火傷を負う。
そして、君の、心の負担を軽減するだろう。
致死に至る、ダメージを与えた場合。
相手は霧のように消えてしまい。
物だけが残る。
一度、設定すると解除できない。
それでも、いいのか?」
直樹:
「ああ! それでいい!」
魔導書ドラクエ:
「ナオキ!
本当にいいのか?
よく考えてくれ!
それでも、命は失われているんだ!」
直樹:
「何を言ってるんだ!」
魔導書ドラクエ:
「よく聞け!
いいか!
この救済処置は、心のタガを外してしまう……
罪の意識を奪ってしまうんだ!
血から目を逸らす。
恐怖から、死から、罪の意識から、目を逸らす。
本当に、いいことなのか?
真実を包み隠して。
目を逸らすことが、いい事なのか?
ナオキ、よく、聞いてほしい。
救済処置は、殺傷率を上げるんだ。
君は、どれくらいだと思う?」
直樹:
「1割……
もしかして、3割か?」
魔導書ドラクエ:
「桁が違う。
10倍や、100倍だ」
直樹:
「馬鹿な!!
俺が、そんな人間に見えるのか?
俺は、そんな風には、ならない!!」
魔導書ドラクエ:
「みんな……
初めは、そう……言うんだ。
ナオキには。
そんな人間にはなって欲しくない。
簡単に、命を奪うんだよ!
殺したことを、倒したって、言い換えるんだよ!
ちょっと、狩りに行ってくる!
ちょっと、ドロップ拾ってくるって!」
直樹:
「俺は、そんな人間じゃない。
説明は……
これで、終わりか?
救済処置をやってくれ」
魔導書ドラクエ:
「ナオキ! ナオキ!
どうして、分からない!
君が殺した存在は、この世から消えてしまうんだ!
何も残らないんだよ!
消えてしまうんだよ!
遺族はどうすればいい?
弔う権利があるはずなんだ!
命を奪われ。
弔う事さえできない!
タガが外れてしまう!
罪の意識が消えてしまう!
君は多くの者たちを、傷つけるんだぞ!
罪と向き合え!
強くなれ、ナオキ!」
直樹:
「俺が、俺が……
誰かを殺したい、と、思うのか?
命を奪いたいと!
俺がそんな人間だと!
本気で、思っているのか!?
だったら、最初から。
救済処置の事なんか。
俺に……伝えなければいい。
お前の責任だ!」
魔導書ドラクエ:
「仕方ないだろ……
僕は案内人だ。
そういう存在、なんだよ。
条件を満たさなければ、何も出来ない。
逆に、満たしてしまえば、伝えなくては、ならない。
義務がある。
それが、僕の意思に、反してもだ!
君は、もっと、強くなれると、思っていた。
すべては、君の弱さが原因だ!」
直樹:
「黙れ! 黙れ! 黙れ!」
魔導書ドラクエ:
「いいだろう……
だが、覚えておけ!
君はきっと、後悔する!
君はいつか、壊れてしまう!
君はいつか……
君自身では、いられなくなる」
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