貰い火 補給線
すべてが、初めてで。
経験したくはないモノだった。
精神的にも、肉体的にも、限界だった。
あの後、すぐに眠りに落ちる。
ユミルの話では、伝令係が来たらしい。
戦闘の軍議に呼ばれたのだ。
俺が寝ているので、ユミルが断った。
今日の午前中には、呼び出しが来る。
簡易的なモノだそうだ。
早めに経験した方が良いらしい。
俺が戦闘に、参加することが前提になっている。
戦力に組み込まれているかもしれない。
死人をもっと減らせないだろうか?
隠れ家の外に出る。
今も怪我人の手当ては行われていた。
多くの兵士が動きまわている。
フラフラと歩いている兵士を見つけた。
顔が赤い。
酒を飲んでいるのだろう。
誰も咎めることはなかった。
あれだけのことが、あったというのに……
不思議な事では無い、のか。
多くの人間が死んだ。
敵も、味方も。
酒を飲まなければ、やっていられない。
そういう人間も居るのだろう。
きっと心が壊れてしまう連中も、少なからず居る筈だ。
そうだな。
元の世界でもそうだった。
大きな戦闘の後。
参加した兵士の中には、心の病で苦しむ兵士がいるそうだ……
昨日のことを思い出す。
もっと。
救える道は、確かにあった……
俺はただ。
近しい人間を優先しただけだ。
俺は、正しかったのだろうか?
では、あれは間違いだったのか?
俺には分からない。
俺に掴みかかってきた奴も。
自分の友人を優先していたはずだ。
俺だけが、責められる理由はない。
いくら考えても答えは出ない。
それにしても、凄いな。
気分が嘘のように、スッキリしている。
救済処置か……
ユミルが兵士を連れてきた。
伝令:
「ナオキ様でしょうか?
中将がお呼びです。
今回の戦闘の評価が行われます」
直樹:
「わかった」
テントへと案内された。
近づくに連れて兵士の数が増える。
相変わらずだな。
護衛兵か?
俺に対する警護の者か?
中に入ると知らない顔があった。
机がコの字型に並んでいる。
中将は一番奥に居た。
中将の正面に、横長の机が一つ。
その机の両側に、手前に向けて、長い机が2つ並んでいる。
俺は中将の傍へと案内された。
机にいるのが全部で13人と、護衛の兵士が30人だ。
全員が鎧を着けていた。
軍服の俺がおかしいみたいだ。
そういえば。
ユミルも、フリストも、鎧を付けている。
戦闘が終わって、それほど時間が経っていない。
いつ敵が攻めてきても不思議ではないのか。
鎧が汚い。
土と、血と、武器による傷の数々。
昨日の戦いを思い出すかと思ったが。
特に問題は無い様だ。
メグスラシル中将:
「ナオキ殿。
この度の協力、感謝する」
直樹:
「あぁ」
メグスラシル中将:
「では、報告を頼む」
少将1:
「正規兵2244人、準兵士3523人が消耗しました。
重傷者が168人、軽症が8542人です」
少将2:
「戦果は、敵陣を占領。
敵兵士、約2万人を殲滅しました」
メグスラシル中将:
「ナオキ殿の方は、どうだった?」
直樹:
「俺のところは。
死者384人、重傷者486人、軽症者1684人だ」
メグスラシル中将:
「かなりの戦闘だたはずだ。
兵士の規模に比べて、重傷者が多いな……
それに死者の数も少ない」
直樹:
「そうなのか?」
メグスラシル中将:
「戦闘中は、治療も難しい。
手当が遅れて、死ぬことが多いからな」
俺の方は、魔術で止血はしていたからな……
直樹:
「そうか。
運が良かったな」
メグスラシル中将:
「こちらの消耗が約6千人、敵の消耗が2万人。
今回の戦闘は、大勝利と言って差し支えないが……
現在わが軍の兵力は、約1万4千人。
逃走した敵兵が、約7千人。
前方敵陣地の構築に携わっている兵力を5千人と想定している。
ナオキ殿の情報が、確かなら。
今後、敵の増援、5万人が予想される。
合わせて、6万2千人だ」
直樹:
「中将。
大丈夫なのか?」
メグスラシル中将:
「現状では、戦線を支えるのは不可能だろう。
だがやるしかない。
それを、これから話し合うつもりだ。
ナオキ殿には、頼みたいことがある」
直樹:
「ん?
そうか。
俺も頼みたいことがある」
メグスラシル中将:
「まず聞こう」
直樹:
「俺の所の死者、343人を家族のもとに返したい。
戦死補償金も払ってやってくれ」
メグスラシル中将:
「彼らは、今回の功労者だ。
当然だ。
約束しよう。
自分の頼みは。
補給線回復に協力をお願いしたい」
直樹:
「例の?
見つからなかった奴か?」
メグスラシル中将:
「そうだ。
例の拠点が、補給線を圧迫している可能性が高い。
補給線が回復すれば。
兵の補充ができる。
今よりも、状況は好転するはずだ!」
直樹:
「できるかどうかは。
確約できないぞ」
メグスラシル中将:
「構わない。
だが、尽力はしてほしい」
直樹:
「わかった。
だが、少し。
休みが欲しい」
メグスラシル中将:
「休息は2日では、どうだろう?
こちらも時間が惜しい」
直樹:
「その間の、水の供給は大丈夫か?」
メグスラシル中将:
「問題ない。
鹵獲した物がある。
それに備蓄を使えば、しばらくは問題ないはずだ。
医薬品や嗜好品。
装備品の修繕資材の方が問題になる。
物資の輸送は可能か?」
直樹:
「あぁ、短時間だからな。
そっちはやろう」
メグスラシル中将:
「ありがたい。
2日間は休息を取ると良い。
準備ができ次第、連絡をする。
我々は、今後の方針を話し合う。
ナオキ殿は、休んでくれ。
後で、ノルナゲスト少将への手紙を渡そう。
戦死保障金と家族への引き渡しの件だ。
手続きをしてくれるだろう」
直樹:
「わかった。
では、俺はこれで帰らせてもらう」
メグスラシル中将:
「ありがとう」
陣地に出入口を設置する。
兵士を回収し、首都の宿舎で休息した。
2日休みを貰う。
物資輸送の際にノルナゲストへと手紙を渡した。
ノルナゲストは、すぐに手紙を読む。
俺には、何も聞いてこなかった。
ノルナゲスト:
「ナオキくん。
大丈夫か?」
直樹:
「あぁ。
色々とあったが。
今はまだ。
大丈夫だ」
ノルナゲスト:
「わかった。
彼らのことは。
良いように取り計らう」
直樹:
「すまないな」
色々と聞いてくるものだと、思っていたんだが。
遺体を引き渡す。
家族に無事届くことを願って。
休息も終わり。
いつもの輸送業務へと復帰した。
中将の陣地から、首都へと遺体を輸送する。
畑から水と食料の供給も再開した。
気がまぎれる。
ありがたい。
と、思っていたんだが。
昼過ぎに、伝令がやって来る。
簡単な説明を受けた。
中将の言っていた敵拠点の探索の件だ。
探索隊が編制されたらしい。
しばらく待っていると、竜車が到着する。
先発隊が10台。
後で追加の20台が来る予定だ。
竜車に乗って連れていかれる。
直樹:
「ここか?」
キンックに近い、敵拠点だ。
兵士:
「はい。
この辺りで。
敵を見失ってしまいます」
草が生えてはいるが、平地で見通しも良い。
こんなところで消えるものなのか?
探索隊50人で、辺りを調べたが。
何も見当たらない。
魔法、もしくは魔術。
俺のように、出入口が設置されているのか?
冒険の書を取り出して、ポイントを確認する。
購入ポイント5910。
クソッ
あの時これだけあれば……
直樹:
「七色迷探偵」
自称ワトソン君が、現れる。
直樹:
「追加、七色迷探偵。
この辺を調べろ」
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