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戦隊捜査官の事件簿 〜戦隊さん、その事件の犯人、怪人じゃないかもしれません!〜  作者: サイトーアツシ
事件3「空から落ちてきたのはマジで魔法少女かもしれません」

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事件3-1『魔法使い秘術電撃』

「チュー! チュー!」


 今、私の目の前で怪人が街を破壊している。

 (ちょう)頭脳集団(ずのうしゅうだん)バカバッカが、新たなヒドーダ怪人を送り込んだのだ。


「ただ今現場に到着。通報通り、ヒドーダ怪人が街を破壊中です」


 電柱の陰で、私はりゅうま隊長と連絡を取る。

 もし気付かれたら最後、無事では済まないだろう。


 しかし、それでもやらなければならない。

 これも戦隊捜査官としての仕事なのだ。


「了解。まもなく到着する。怪人の特徴について教えてくれ」


 改めて注意深く怪人を観察してみる。ヒドーダ怪人は地球上の物体や生物の姿をしていることが多い。怪人の見た目も敵を探る重要なヒントとなり得るのだ。


「茶色の体、大きな耳、顔はとんがっていて、ヒゲが生えています。近い動物でいうと……ネズミ? チューチューと鳴いています。攻撃方法は両手の大きな爪。それ以外の能力は確認できていません」


「了解! これより戦闘に入る!」


 りゅうま隊長の声が、ブレスからではなく、もっと近くから聞こえた。

 ゴールドファイブが現場に到着したのだ。


「ゴールドレッド!」

「ゴールドイエロー!」

「ゴールドホワイト!」

「ゴールドブルー!」

「ゴールドグリーン!」


「我ら! 超金星(ちょうきんぼし)!」


「「「「「ゴールドファイブ!」」」」」


 五人が敵の前で決めポーズをとる。いつも思うが、あのポーズには何か意味があるのだろうか。今から倒す相手に名乗る理由が分からない。


「現れたなゴールドファイブ! この俺がお前たちを地獄の底に叩き落してやるチュー!」


 怪人が鋭い爪をゴールドファイブに向ける。


「うわぁ! ぼくネズミ苦手なんだよ! 帰っていい!?」


 そういってグリーンがレッドの後ろに隠れる。ガタガタと震え、完全に怯えきった様子だ。


「良い訳ないだろう。この美しい地球(ほし)を守るのは俺たちゴールドファイブの務めだ」


 レッドはそう話しながらも、目の前の怪人からは視線逸らさない。常に警戒し、敵の動きを注視している。


「ネズミさん、かわいいよ? チューチューって!」


 ホワイトが手の平を耳に見立て、頭の上に乗せてみせる。が、グリーンは全く見向きもしない。レッドの陰に隠れたままだ。


「お前らさっきから何言ってるチュー! 俺のどこがネズミなんだチュー!」


 え? ネズミにしか見えないし、チューチュー鳴いているのに?


「キミ……ネズミヒドーダじゃないのかい?」


「拙者の目には、どう見てもネズミとしか……」


 ゴールドファイブのみんなも明らかに困惑した様子だ。


 怪人が怒り、顔を真っ赤にしてじだんだを踏む。

 しかし、やはりどう見てもネズミにしか見えない。


「俺は誇り高きヒドーダ怪人! モグラヒドーダ様だ! それを汚いネズミ呼ばわりとは! 許せんチュー!」


(モグラ……、えっ……モグラ?)


「ネズミじゃないでござるか?」


「えぇ……どう見てもネズミじゃん、気持ち悪い」


「ボクの知ってるモグラとは……ちょっと違うかな……」


「ねぇ……りゅうま兄ちゃん。ああいう種類のモグラも居るの?」


「いや、まぁ……モグラと言われればたしかにそう見え……いやだが、あの耳……」


 全員がモグラヒドーダを凝視する。やっぱりモグラには見えない。


 そもそもモグラの耳って見た目にはほとんど分からないものじゃないのか。


「ぐぬ〜、ジロジロ見るな! こうなったら、新たに手に入れた俺様の武器、次元ホール発生装置の力を見よ!」


 そういうと、モグラヒドーダの耳がチカチカと点滅を始める。


「あー! 耳が光った!」


「耳じゃない! 次元ホール発生装置って言っただろ!」


 耳じゃなかったんだ。正直そう言われても、私にはまだ敵がネズミに見えている。


「開け! 次元の扉チュー!」


 すると、空に突然大きな穴が開いた。穴の向こうは、異次元空間なのか、極彩色の世界が広がっている。


 モグラヒドーダはその中にピョンと飛び込んで、そのまま姿を消してしまった。


「やつはどこに……?」


 そのときだった。


「うわぁ!」


 レッドの後ろに隠れていたはずのグリーンが突然悲鳴をあげた。振り返ると、グリーンの後ろにモグラヒドーダが立っている。


(嘘でしょ……!)


 おそらくやつの鋭い爪にやられたのだ。グリーンが背中を押さえて座り込む。


「よくもめぐむ君を! ゴールドブラスター!」


 ブルーの銃撃を受ける前に、モグラヒドーダは再び次元の穴を頭上に作り、そこへ飛び込んで姿を消す。


「チューチュチュチュチュ! 見たか俺の次元移動マジック!」


 ゴールドファイブの目の前、空高くに開いた次元ホールから、モグラヒドーダが顔だけ出して嘲笑う。

 次から次へと次元に穴を作って移動するなんて、実に厄介な敵だ。


「俺の能力はこんなもんじゃないっチュー! それ!」


 モグラヒドーダの耳が更に激しく点滅する。耳じゃないらしいが、私には耳にしか見えないので耳と呼ぶ。


 すると、突然ゴールドファイブの頭上に穴が空き、そこから大きなタライが落ちてきた。五人の頭に直撃し、五人とも思わず頭を押さえ苦しむ。


「いたーい! モグラさんひどーい!」


「貴様よくも……!」


「喰らえ! ゴールドアロー!」


 怒ったグリーンが、レッドの後ろに隠れたままモグラヒドーダ目掛けて矢を放つ。


 が、すかさずモグラヒドーダはチュッと頭を引っ込める。

 矢は大きな耳……では無く、次元ホール発生装置に直撃したが、傷一つ付けられず弾かれた。


「固い……、ぼくらの武器じゃ壊せない!」


 モグラヒドーダは再び穴から顔を出し、更にチューチュー笑う。


「まだまだ、色んなものを出して困らせてやるチュー!」


 すると、ゴールドファイブの周囲あちこちに次元の穴が開き、そこから色んなものが出てきて五人を攻撃しはじめた。


 モグラヒドーダの耳が、次元の穴の発生に合わせて何度もチカチカと光る。どうやらあれが装置を使う合図のようだ。


「熱い! お尻熱いでござる!」


 イエローの背後に開いた穴からは火炎が放射され、その黄色いお尻を焼き焦がす。


「うわっ! きったな……」


 ブルーの頭上に開いた穴からは鳥の糞がいくつも落ちてくる。


「やめてよー! 苦しいよー!」


 次元の穴から伸びてきた植物の(つる)がホワイトの全身に巻き付き、激しく締めつける。


 攻撃が止み、穴が閉じると、三人はその場にへたり込んだ。


「さーて、残るはお前らだけチュー!」


 レッドの前方、地面から六メートルほどの高さに次元の穴が現れた。レッドが警戒してゴールドソードを構える。


 そのレッドの背中には、まだグリーンが怯えてしがみついている。


 すると、穴からものすごい勢いで何かが降ってきた。


「……いったーーーい!!!」


 降ってきたそれは、その場にお尻をつき、苦悶の表情を浮かべたまま地面にぶつけた場所を擦っている。


「あれは……人?」


「女の子……?」


 グリーンがレッドの背中の陰から、顔をのぞかせる。


 へたり込んでいた三人も立ち上がって、少女の方をジロジロ見つめる。私も思わず電柱の陰から身を乗り出し、その子を観察する。


 少女は黄色くフリフリの衣装を身に纏い、頭には大きなリボンを付けている。


 スカートの中は真っ白でモコモコのパニエが見え、そこから伸びた細い足は純白のタイツに包まれている。


 見た目からいって、年齢はまだ中学生くらいだろうか。


「チュー! 間違えて変なもの落としちゃったチュー!」


 その少女が気になるのか、モグラヒドーダは穴から出てきて少女に近づいた。


 少女は衣装についた砂をパッパッと払いながら、ゆっくり立ち上がる。


 そしてキョロキョロしてゴールドファイブとモグラヒドーダを確認すると、黙ったままモグラヒドーダを睨みつける。


 少女に睨まれたモグラヒドーダは、まるでヘビに睨まれたカエルのようにびっくりして動きを止めた。


「ねぇ、あんた。悪いやつでしょ」


 少女が初めて口を開いた。


「な、何を言うチュー! 俺はとっても優しいやつだっチュー!!」


 わざとらしく演技するが、全く優しいやつには見えない。


「じゃあなんで、あんたの周りだけやたら街が破壊されてて、瓦礫が散乱してるのよ?」


「そ、それは……」


 少女に図星を突かれ、冷や汗をかく。そういえば、本当のモグラって汗をかくのだろうか?


「誰かを傷つけるやつは、この私が許さない! そこのモグラ野郎! 覚悟しなさい!!」


 そういうと、少女は右手の人差し指と親指を立て銃の形を作り、そのままモグラヒドーダに向けた。


「ホーミングサンダー!」


 少女の指先から小さな電気の玉が発射される。


「まずいっチュー!」


 モグラヒドーダは次元の穴を開き、そこへ逃げ込んだ。


「気をつけろ! やつはどこから出てくるか分からないぞ!」


 レッドの声に、少女は微笑(びしょう)して答えた。


「大丈夫だよ、黙って見てて」


 すると少女の背後に次元の穴が開いた。そこから怪人が大爪を振り上げ飛び出してくる。


「危ない! 逃げろ!」


「その必要はない」


 大爪が少女の身体を斬り裂こうとした、そのときだった。


「これでも喰らえ……ッ!? ヂュヂュヂュヂュヂュヂュ!!」


 突然モグラヒドーダが空中で激しく声を震わせ、その場に落下した。


 全身が黒く焦げ、痙攣し、頭からわずかに煙の筋が伸びている。


「どういうことだ……なぜ突然……」


「私のホーミングショットは敵を絶対に逃さない、穴の中へ逃げ込もうが必ず敵を追いかける」


 あのとき打った電気の玉は、そのまま次元の穴を通り、逃げる怪人を追尾していたのだ。


 モグラヒドーダはなんとか立ち上がろうとするが、それに気づいた少女は立ち上がるより先に怪人の腹部を蹴り飛ばした。


 蹴り飛ばされた体はそのまま地面に打ちつけられる。しかし、それでも敵は諦めない。


「こうなったら……最後の手段チュ……!」


 モグラヒドーダは立ち上がると、自分のすぐ横に開けた小さな次元の穴から、缶のドリンクを取り出した。

 そのラベルには「ビッグサイダー」と書かれている。


「ビッグサイダー! チューチューチュー、チューチューチュー」


 怪人は缶を開けるとそこにストローを挿して、中のドリンクを飲み始める。


 ――まずい、これはとてもまずいパターンだ。


 私もゴールドファイブも警戒し構える。


「このタイミングで水分補給……? まぁいいや、今のうちに倒しちゃえ」


 そういって少女は人差し指を立て、そこから電気玉を出した。

 飛び出た電気玉は、ひゅんひゅんと空中を飛び回り、モグラヒドーダにゆっくりと近づいていく。


「危険だ! 今すぐそこから離れろ!」


「イエローガール! いますぐ逃げるんだ!」


「え!? 何?」


 ビックリして少女の集中が切れたからか、電気玉が空中で花火のように弾けて消える。


「飲んだ、飲んだ! でっかくなるチュー!!」


 次の瞬間、その言葉と共にモグラヒドーダの身体が、まるで空気を流し込まれた風船のように、みるみるうちに膨らんでいく。


 ゴールドファイブは急いでモグラヒドーダから距離を取る。


 私も電柱の陰から飛び出し、少女の手を掴んで駆け出した。


「急いで! 逃げるよ!」


 モグラヒドーダはあっという間に巨大化した。


 その高さは、ざっと見ても八〇メートルはあるだろう。


 私と少女は、離れたところから怪人を見上げた。


「嘘……! あんなにでっかくなるの!?」


 少女は驚きのあまり口をポカーンと開ける。


 遠くの方に、同じように怪人を見上げるゴールドファイブの姿が見えた。私はゴールドファイブに連絡を取ろうと、通信ブレスに顔を近づけようとする。


 しかし、少女が突然、怪人を見上げたまま左手だけで私の顎をぐいっと持ち上げ、無理やり上を向かせる。


「よそ見してないで、上見て! 上! あんなでかい敵どうするの!?」


「ちょっちょっと! やめて!」


 私は咄嗟に少女の左手を振り払い、その子を睨んだ。少女は「しまった」という顔で頭を下げる。


「あっ、ごめんなさい。でも想像以上でビックリしちゃって……」


 だからといっていきなり人の顔を掴まないでほしい。どういうつもりなんだ。


「大丈夫、私たちゴールドファイブには頼もしい味方がいますから」


 そういって、私は遠くにいるゴールドファイブに目配せする。


 私からの合図を見たゴールドレッドはコクリと頷く。


 そして、ブレスを顔に近づけ叫んだ!


「出でよ! 金塊獣(きんかいじゅう)!」


 その言葉とともに、雲の切れ間から五体の獣が飛来する。


 金と赤の、いかにも怪獣(かいじゅう)という姿の獣。

 金と黄色の、ライオンのような獣。

 金と白の、(にゃんこ)みたいな獣。

 金と青の、クジラのような獣。

 金と緑の、甲羅(こうら)を持った獣。


 ゴールドファイブの五人は高くジャンプし、飛来した五体の獣にそれぞれ飛び乗った。


黄金合体(おうごんがったい)!」


 獣の内部から、レッドの叫び声が響いた。


 すると、五体の獣は空中で瞬く間に変形し、やがて合わさって一つとなり、ものすごい地響きを起こしながら着地する。


豪華(ごうか)燦爛(さんらん)! キンピカオー! 」


 そこに現れたのは、煌々(こうこう)と光り輝く黄金の巨神(ロボット)だった。


〈つづく〉

※この小説は他の戦闘ヒロインアニメ・小説等の創作物とも一切関係ありません。

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