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戦隊捜査官の事件簿 〜戦隊さん、その事件の犯人、怪人じゃないかもしれません!〜  作者: サイトーアツシ
事件8「それでも未来を信じたいのかもしれません」

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事件8-3『君が去った病室』

〈前回までのあらすじ〉


冷蔵庫ヒドーダがふたたび出現した!

レッドもブルーも居ない今、果たしてゴールドファイブは勝つことが出来るであろうか?

 さっきの場所に戻ってみると、ヒドーダ怪人とゴールドファイブのイエロー、ホワイト、グリーンの死闘が開始されていた。


 私はすぐに近くにあった木の陰に隠れて様子を観察する。


「このゴボウスティックで、お前ら全員瞬殺っしょ!」


 冷蔵庫ヒドーダはゴボウのような棒を、棒術のような動きで振り回す。


 棒はしなりながら、ブンブンと風を切ってゴールドファイブの三人に迫ってくる。

 三人は、それを華麗な身のこなしで躱(かわ)していく。


「ハァハァ……熱い……」


「汗かいた……」


 しかし、ホワイトもグリーンも、心なしかいつもより息が上がっているように見える。少し心配だ。


「くっ……、ウチのゴボウ棒術、ゴボウ術をここまで躱(かわ)すなんて……、でも、まだまだ行くっしょ!」


 冷蔵庫ヒドーダはなおも攻撃を続ける。


「今でござる!」


 イエローが敵の振り回すゴボウを掴んだ。そして、そのまま敵ごと持ち上げて投げ飛ばす。


 冷蔵庫ヒドーダは地面に叩きつけられ、その拍子にゴボウ(のような棒)は折れてしまった。


「チョベリバ! せっかく新しい武器持ってきたのに〜!」


 冷蔵庫ヒドーダは立ち上がって地団駄を踏む。


「もう、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム! こうなったらみんなカチコチ氷漬けにしちゃうっしょ!」


 そういって、冷蔵庫ヒドーダは自身の扉を開けた。ものすごい冷気が吹き出し、イエロー、ホワイト、グリーンを襲う。


 まずい、このままでは三人とも氷漬けにされてしまう。


「その手は桑名の焼きアワビでござる!」


(それを言うならハマグリでは……?)


 私がそう思ったのも束の間、三人が武器を構えて冷気を吹き出し続ける冷蔵庫ヒドーダへと向かって行った。


 ホワイトはゴールドクローで、グリーンはゴールドアローについた刃の部分で斬撃。相手がひるんだところを、イエローがゴールドハンマーで殴りつける。


 冷蔵庫ヒドーダの身体は思いっきりふっ飛ばされ宙を舞い、やがて地面に落ちた。


(あれ……? なんで凍らないの?)


「いてて……ヨッコイショウイチ……」


 冷蔵庫ヒドーダが腰を押さえて立ち上がる。


「ちょっと! なんでカチコチになんないの! ムカつく!」


「知りたいでござるか? ……これを見るでござる!」


 すると、ゴールドファイブの三人は変身を解除した。


「ちょっと、なにそれ!」


 怪人は目を丸くした。私も目を丸くした。


 ――なんと三人の着ていた上着の上には大量のカイロが貼り付けられていたのだ。


「これは博士に頼んで作ってもらった特別製のカイロ! 通常のカイロの何倍も高い熱を外部に放出しながらも、着ている人が火傷しないように内側の温度が調整された特注品でござる!」


 私が病室でりゅうま隊長の面倒を見ている間に、なんかすごいものが開発されている。


 でも対策の方向性が間違っている気がする。本当にこれで大丈夫なんだろうか。


「いや……全然……調整されてない……熱い……死ぬ……」


「変身したら……、結局内側に熱こもって……、意味ない……」


 すあまちゃんとめぐむが死にそうな声で呟く。


 無理もない。この炎天下で全身にカイロを貼って戦っていたのだ。早く決着を着けないと、みんな熱中症で入院することになってしまう。


「ぐ……、ウチのクールフリーザーも効かないなんて……、こうなったら!」


 冷蔵庫ヒドーダがそういって自分の野菜室を開けようとした、そのときだった。


「待って!」


 どこからか、まるで機械で加工されたかのような声が聞こえてきた。


 みると、全身を緑の大きな布で包み、顔にはペストマスクのような不気味なマスクを付けた者が立っている。

 ペストマスクを付けたそいつは、布で隠した手を口元に当てて話し始めた。


「私はペストマスクヒドーダ。あなたを助けに来た」


 冷蔵庫ヒドーダがそれを見て、困惑した表情になる。


「ペストマスクヒドーダ……? そんなの初耳なんだけど。でも、助けてくれるならマジ感謝! 一緒にやろ! チーム友達!」


 そういって、冷蔵庫ヒドーダはペストマスクヒドーダに対し指ハートをして見せる。


 それを見たペストマスクヒドーダは淡々とした様子で答えた。


「いや、今のままでは勝ち目は無い。ここは一旦引いてほしい」


「はぁ!? こんなにコケにされて退却とかありえないんですけど!!」


 冷蔵庫ヒドーダがそういって、また地団駄を踏む。


「実はあなたに協力して欲しいことがある。お願いだから一緒に来て。私もあなたのためならなんだってする」


 冷蔵庫ヒドーダが訝しげな表情でペストマスクヒドーダを見つめる。


 すあまちゃんとめぐむはいつの間にかカイロのついた上着を脱いで地面で寝転んでいる。流石に限界だったのだろう。


 いとしさんは気づいたらゴールドイエローの姿に戻って、敵の様子を注意深く観察している。


 冷蔵庫ヒドーダはしばらく無言で考えたのち、ため息をついてこう答えた。


「分かった。アンタが何者か知らないけど、面白そうだし乗ってあげる」


「ありがとう……、ついてきて……」


「案内よろー! じゃあこっちは目眩まし!」


 すると冷蔵庫ヒドーダは自身の身体についた扉から、大量の煙を吹き出した。

 怪人がものすごい煙に包まれて、何も見えなくなる。


 やがて煙が晴れると、冷蔵庫ヒドーダの姿も、ペストマスクヒドーダの姿も消えてしまっていた。


 私はすぐにイエローの元へ駆け寄る。


「大変ですね……、まさかもう一体怪人が現れるなんて……」


 私がそういうと、イエローは首を横に振った。


「いや……、違うでござる」


「違う……? 何が?」


「先ほど気になって、ゴールドサーチでペストマスクヒドーダを分析したでござる。その結果、ヤツについて分かったことが一つ……」


 イエローは深呼吸して、衝撃的なことを口にした。


「ヤツは……、ペストマスクヒドーダは人間でござる」


「……!?」


 たしかに見た目がいつものヒドーダ怪人とは違うし、冷蔵庫ヒドーダもヤツの姿を知らないような素振りではあったが、まさか人間だとは思いもしていなかった。


「先ほどの声はおそらく地声ではない、布に隠したスマホで声を加工したものであろう」


 そういえば、ヤツはずっと口元に手を近づけて喋っていた。あれも声を隠すためと考えれば説明がつく。


「あずき殿、ペストマスクヒドーダの正体を調べてはくれぬか? 拙者たちは拙者たちで調査するゆえ」


「分かりました、調査はします。ですが、皆さんは一度休んでください。この炎天下の中、カイロだらけの服を着て戦っていたんです。熱中症の危険があります」


 私の言葉を聞いて、いとしさんは笑って答える。


「なぁに、これくらい心頭滅却すれば火もまた涼しでござる」


「駄目です!」


 私は大声で怒鳴った。


「りゅうま隊長だって働きすぎで倒れたんですよ。自分の身体をちゃんと労ってください! すあまちゃんたちも、あんなにぐったり……あれ?」


 私はそういってすあまちゃんとめぐむが寝っ転がっていた場所を指さした。


 おかしい、先ほどまでそこで寝っ転がっていたはずのすあまちゃんとめぐむの姿が無い。


「……あれ? さっきまでたしかにそこに……」


「冷たーい! ひんやり気持ちいい〜!」


 そのときすあまちゃんの声が向こうの方から聞こえてきた。


 声のした方を見ると、すあまちゃんとめぐむが、氷漬けになったブルーに引っ付いて頬擦りしていた。


「……何やってるんですか? 二人とも」


「はぁ……気持ちいい……生き返る……」


 めぐむがそういってブルーを抱きしめている。


「おーい!」


 そこに大きなクーラーボックスを持った博士が走ってきた。


「博士! それは?」


「飲み物だ。あんなカイロだらけの服を着ては、いつ脱水になってもおかしくないからな」


 そういって博士はクーラーボックスを開け、すあまちゃん、めぐむ、イエロー、そして私に、一人ひとり冷たいジュースを手渡していく。


「ありがとうございます! ……ほらイエローも飲んでください。レッドもブルーも戦えない今、これ以上倒れられたら困りますから」


 イエローはしぶしぶ変身を解除し、カイロのついた上着を脱ぐと、ペットボトルのジュースを飲み始めた。


 他のみんなも、一斉にジュースを飲み始める。


 私はジュースをグイッと一気に飲み干すと、いとしさんに言った。


「皆さんはそのままここで休んでいてください。もしまた氷漬けのブルーが襲われたらまずいですし、近くに日陰もありますし」


 いとしさんもジュースを飲み干して答えた。


「承知した。拙者たちはここで休みながら、ブルーを護衛することにしよう。ではペストマスクヒドーダの正体の調査はあずき殿に任せたでござる!」


「分かりました! すぐに!」


 私がそういって、さっそく調査に出かけようとしたとき、向こうの方から白衣姿の一人の男が走ってきた。


「あなたは……ナダ先生!」


 走ってきたのは、先ほど倒れたりゅうま隊長を診てもらった医者の、加岳井(かがくい)ナダ先生。なんだかとても焦った様子だ。


「大変です! りゅうまさんが! 病室から消えました!」


「え!?」


   ◇   ◆   ◇


 私がナダさんに案内されるままに病室に戻ってみると、たしかにりゅうま隊長の姿は無かった。


 見ると、窓が開いて、そこから風が吹き込んでいる。カーテンがヒラヒラと風に靡く。


「あそこから逃げたんだ……、具合悪いのに……」


 私はりゅうま隊長が忠告を聞いてくれなかったことに怒りを覚えた。しかし、いったいどこに居るのだろう。冷蔵庫ヒドーダが現れた際、りゅうま隊長は現れなかった。


 私はふと、あることに気づく。


「あのカーテンの色……」


 病室のカーテンの色が緑色。ペストマスクヒドーダが纏っていた布の色と同じである。


(ペストマスクヒドーダの纏っていたのが病室のカーテンだとしたら……まさか……!? ペストマスクヒドーダはカーテンを纏ったりゅうま隊長……!?)


 私の脳裏に嫌な考えな過った。


〈つづく〉

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