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戦隊捜査官の事件簿 〜戦隊さん、その事件の犯人、怪人じゃないかもしれません!〜  作者: サイトーアツシ
事件8「それでも未来を信じたいのかもしれません」

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事件8-1『人間カチコチ作戦』

 私は博士の車を、カーラジオを聴きながら運転していた。


「さぁということで今週も始まりました。レインと!」


光輝(こうき)の!」


「「朝からキラキRADIO(ラジオ)〜!」」


「パーソナリティは毎度お馴染み、虹斗(にじと)レインと、」


煌井(きらめい)光輝(こうき)でお送りしております〜!」


 こういう普段車を運転しない時間帯に運転すると、全く知らない番組をやっていて少しビックリする。

 私はこれを、長期休暇にドライブするときのちょっとしたあるあるだと思っている。


「さぁ今日はさっそく曲紹介から参りましょう! 一曲目は……、おっ、これは常連リスナーさんですね。いつもサンキュー!」


「嬉しくて心キラキラだぜ〜!」


「それでは参りましょう! "青春炸裂ガール"からのリクエスト。Perfomeの『再始動世界』です。どうぞ」


 その言葉とともに、ラジオから心地のよいテクノポップが流れ出す。


「ねぇ、あとどれくらいで着くのー?」


 後部座席に座っているすあまちゃんが、待ちきれないという様子で尋ねる。


「うーん、あと三十分くらいかなー」


「えー、まだそんなにー」


「文句を言うな、せっかくあずきお姉ちゃんが動物園に連れて行ってくれるんだ」


 助手席に座る博士はそう言いながら缶コーヒーを飲んでいる。


 すあまちゃんが夏休みの宿題に「好きな生き物の絵を描く」という課題を出され、「せっかくなら図鑑の写真じゃなく実際に見て描こう」という話になり、連れて行くことになったのだ。


「しかしすまんな。私がペーパーなばっかりに」


「いえ、全然。私も動物好きですから、今日は楽しみです」


 私が運転していると、突然腕のブレスに通信が入った。


「こちらレッド! ……ゲホッゲホッ……ゆべぼ……夢野大学附属病院敷地内に……シルバーッ……ゴボッ、が居るとの通報があった! ゴホッ……」


 りゅうま隊長の声だ。しかし、明らかにいつもと様子が違う。なんかとんでもなく具合が悪そうだ。


「りゅうま隊長? 大丈夫ですか?」


「大丈夫だ……ゲホッ、それより早く現場に向かってくれ。こちらも今向かっている」


 うん、大丈夫じゃなさそう。


「すまんが動物園は中止だ、あずきくん、すぐに向かってくれ」


 私はすぐにカーナビで病院の位置を検索し、目的地を設定した。


「え〜〜! やだやだやだ! 動物園!」


 ルームミラーに、足をジタバタさせるすあまちゃんの姿が映る。


「ごめんね、すあまちゃん! 今度埋め合わせるから!」


 私はすぐに病院へと車を走らせた。


   ◇   ◆   ◇


 現場につくと、既にホワイト以外のゴールドファイブ四人とシルバーキラーが、向かい合って立っていた。


 ここは夢野大学附属病院敷地内にある庭園。普段は入院患者がここに咲いている花や木をみて楽しんでいる。


「やだやだー! 動物園行くのー!」


「ワガママ言わないでよ……ほら……」


 私は暴れるすあまちゃんの腕を引っ張って、四人のところへと向かう。


「すまん! すあまちゃん! 今日の夜はハンバーグにするから、それで勘弁してくれ!」


 向こうの方から博士の声が聞こえる。心配になって見に来たのだろう。


「博士は危険なので車に戻っててくださーい!」


 私はそう叫んで、なおもすあまちゃんを引っ張る。精神年齢は子供でも、パワーはゴールドファイブの戦士。引っ張るのも一苦労だ。


「よぉ、この間の。久し振りだな」


 私の叫び声に気づいたのか、シルバーキラーがこちらに声をかけてきた。


「その声は……!」


 すあまちゃんはすぐに顔色を変えると、ゴールドファイブの四人が立っている方へ走っていく。

 親の仇への憎しみが、動物園に行きたい気持ちを追い越したのだろう。


 そして、ゴールドファイブの他四人が並び立っている横に立つと、シルバーキラーの方を見て叫んだ。


「お母さんとお父さんの仇!」


「あぁ、そうだぜ? 親離れするいい機会だったろ?」


 シルバーキラーがあからさまに、すあまちゃんを挑発する。


「よくも……! ゴールドチェンジ!」


 すあまちゃんは腕を振り上げて、ゴールドホワイトに変身。すぐにゴールドクローを構える。


「やめろ! 挑発に乗るな! 今の君には私という家族がついている!」


 私の後ろで博士が叫んだ。その声を聞き、シルバーキラーが博士の方を見る。


「今日は授業参観か? 今の保護者は随分うるさいんだな」


 そういって笑うシルバーキラーに対し、遂に堪忍袋の緒が切れたホワイトが飛びかかった。


 しかし、シルバーキラーはシルバランスで突きを喰らわしてすぐにホワイトをふっ飛ばす。


 ホワイトの身体は地面に転がり、痛そうにうめき声を挙げる。


「ホワイト! よし、俺たちも……ゲホッ、やるぞ!」


 レッドが掠れ声で合図をすると、ホワイト以外の四人は一斉にそれぞれの武器を構えてシルバーキラーへと向かって行った。


 シルバーキラーも手中にシルバランスを出現させ、こちらの攻撃に対応する。


「博士は今のうちに逃げてください! 早く!」


「分かった! すあまちゃんを頼んだぞ!」


 博士はそういうと、すぐに走り去っていった。


「博士……、なるほどな……」


 シルバーキラーが何か思案しひとりごちる。


 私はすぐに近くの木の陰に隠れて、戦いの様子を伺う。


 ゴールドファイブとシルバーキラーの激しい戦闘が繰り広げられる。


 うずくまっていたホワイトもすぐに立ち上がってシルバーキラーに向かっていく。


「おらおら? その程度か?」


 次から次へとくるゴールドファイブ側の攻撃をヒラリヒラリと(かわ)すシルバーキラー。

 

 そこへレッドが、手にしたゴールドソードで真正面から斬りかかった。


「ゴールド……すらぁ……しゅ……」


 ――しかし、レッドはシルバーキラーの目の前でよろめいて、手にしていたゴールドソードを取り落としてしまった。


 そのまま地面に膝と手をついて、四つん這いで呼吸を整える。


「りゅうまお兄ちゃん大丈夫……?」


「どうしたでござるか!?」


「隊長?」


「何してんの!? 敵の前だよ!」


 しかしレッドは仲間の呼びかけに一切応えない。というより耳に届いていない様子だ。


「なんだ? ふざけてんのか? だったらこっちから行かせてもらうぜ」


 そういうとシルバーキラーは思いっきりレッドを蹴り飛ばした。


 レッドの身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。その拍子に変身が解除され、りゅうま隊長の姿に戻る。


 顔がほんのり赤く染まり、全身から大量の汗をかいている。やはり普通じゃない。


 シルバーキラーはそんなレッドにゆっくりと近づいていく。


「やる気が無いなら、とっとと死ねよ」


 シルバーキラーがレッドのすぐそばまできた、そのときだった。


「チョリーッス! 助けに来たよー! シルバっちー!」


 という声とともに何やら手足が生えた冷蔵庫みたいな変なヤツが走ってきた。そこにいた全員が声のした方を向く。


 変なヤツはその場で立ち止まると、両手でギャルピースを作ってポーズを取り、自己紹介する。


「はじめましてー! ウチわぁ、冷蔵庫ヒドーダっていいまーす! 体はヒエヒエだけど、心はアゲアゲなんでよろー!」


 その場にいた全員が呆然とする。


「シルバーキラー、知り合いでござるか?」


「知るか! ったく、なんかシラケたぜ。今日のところは勘弁してやる!」


 そういうと、シルバーキラーは次元の穴を作って、その中へと消えてしまった。


「えー! うそー! せっかくホロボス様の(めい)を受けてやってきたのにー!」


 レッド以外の四人、一斉に手にしていた武器を冷蔵庫ヒドーダに向ける。


「気をつけろ! 敵はヒドーダ怪人! どんな攻撃をしてくるか分からないでござる」


「分かってるよ! そんなこと!」


 イエローとブルーがそんなことを言い合っていると、グリーンが前に出て弓を引いた。


「まずはぼくから行くよ! ゴールドアロー!」


 グリーンが冷蔵庫ヒドーダに対して何発もの矢を放つ。するとヒドーダは手で自分の身体についた冷蔵室の扉を開いた。


「クールフリーザー!」


 すると、開いた身体からモノ凄い冷気が吹き出し、あっという間に飛んできた矢を凍らせてしまった。


 凍った矢がゴトゴトと音を立てて地面に落ちる。

 冷蔵庫ヒドーダが扉を閉じると、それともに冷気は止まる。


「見た!? ウチの力! チョー強いっしょ! バイヤーでレベチっしょ!」


 冷蔵庫ヒドーダがそういって飛び跳ねて笑う。


 すると、今度はブルーが前に出て銃口を冷蔵庫ヒドーダに向けた。


「これなら凍らないはずだ!」


 銃口からエネルギー弾が発射される。


 ヒドーダはふたたび自分の身体についた扉を開いて、冷気を出すがエネルギー弾は凍ることなく飛んでいてき、そのままその身体に着弾した。


「痛い! 痛い! 痛いっつーの!」


 冷蔵庫ヒドーダが悶絶し、すぐに自分の扉を閉じる。


「マジムカつく! ムカ着火ファイヤー!」


 冷蔵庫なのにファイヤーしていいのかは分からないが、冷蔵庫ヒドーダがとにかく怒る。


 すると今度は、自分の身体についた野菜室の引き出しを開け、中からトマトのようなものを取り出した。


「喰らえ! ボマトの威力!」


 冷蔵庫ヒドーダがそれをこちらに投げつける。ボマトとと呼ばれるそれがブルーの足元に落ちると、その場で激しい爆発が起きた。


「くっ……」


 ブルーが爆風でよろめき、その場に膝をつく。それを見た冷蔵庫ヒドーダはすかさず、身体についた扉を開いた。


「クールフリーザー!」


 モノ凄い勢いで冷気が吹き出し、ブルーの身体を包む。


「嘘でしょ……」


「いつき殿!」


「いつき兄ちゃん!」


 すると、何ということだろう。ゴールドブルーはあっという間にカチコチに凍って、動かなくなってしまった。


「みたか! ウチのクールでチョベリグなパワー! イケイケっしょ!」


 冷蔵庫ヒドーダがギャルピースしながら叫ぶ。


(そんな……ブルーが……)


 大切な仲間が目の前で氷像となっている光景は現実味が無く、なんだか悪い夢を見ているかのようだ。


「ゴールドサーチ!」


 すると、イエローがすぐさま凍ったブルーを分析し始めた。


「安心なされ、いつき殿は無事でござる! これなら、あのヒドーダを倒して氷が溶けさえすれば、元に戻るはずにござる!」


 良かった。いや、氷漬けになっている時点で良くは無いが、ひとまずああやって凍っている分には命に別状は無いらしい。


 ――ピキッ。


 そのときだ、何か、木の枝を踏んだような音がした。しかし、私は木の枝なんか踏んでいない。


 音のした方をよく見ると、私と同じように木の陰に隠れている高校生くらいの女の子の姿がある。


 女の子は怪人に背を向けて逃げようとしていた。おそらく逃げ遅れて、ずっと木の陰に隠れて様子を伺っていたらしい。


 女の子は腰を抜かして、その場に尻もちをつく。


「ん? 今の何の音?」


 冷蔵庫ヒドーダが女の子の方を見る。


「あんた、いつから見てた感じ? 見せ物じゃないんですけど?」


「あの……、えっと……」


 女の子は震えた様子で、尻もちをついたまま後退りする。


「逃げるでござる!」


「早く!」


 イエローとグリーンが叫ぶ。


 しかし、女の子は動かない。というより、腰が抜けて動けないのだ。


 冷蔵庫ヒドーダがゆっくりと女の子に近づく。このままではあの子も氷漬けにされてしまう。


 そのとき、地面に倒れていたりゅうま隊長が顔を持ち上げ、ヒドーダ怪人と女の子の姿を見た。


 りゅうま隊長は女の子に気づくと、すぐに気合いで立ち上がって腕を振り上げる。


 隊長がゴールドレッドになったかと思うと、すぐに思いっきり跳んで、冷蔵庫ヒドーダの背中に飛び蹴りを食らわした。


 冷蔵庫ヒドーダは蹴りを受けてゴロゴロと地面に転がる。その拍子に閉じていた冷蔵庫ヒドーダの扉がパクリと開いた。

 レッドは地面に着地すると、そのまま意識を失い、地面に倒れてしまう。


「りゅうまさん!」


 女の子が思わず声を上げる。


 ……りゅうまさん? 名前を知っている? ゴールドレッドと面識があるのだろうか。


 冷蔵庫ヒドーダはその隙に立ち上がると、開いた自分の冷蔵室の扉を閉じようとした。


「うっそ、扉のパッキン壊れてる。萎えぽよ〜! しゃーなしだし、ドロンしまーす!」


 そういうと冷蔵庫ヒドーダはどこかへ去っていった。


 私はすぐにりゅうま隊長の元へ駆け寄る。


「大丈夫ですか! 隊長!」


 りゅうま隊長の肩を担いで持ち上げる。身体があり得ないくらい熱い。ものすごい熱だ。


「すぐに病院に運ばないと……、そういえば、さっきの子は?」


 私は辺りを見回すが、先ほどの女の子の姿はどこにも無い。


「あずき殿!」


 イエローが私を呼んだ。振り向いて見ると、氷漬けになったブルーの周りでイエロー、ホワイト、グリーンが立っている。


「現場調査と凍ったブルーの護衛は拙者たちで引き受けるでござる! あずき殿はりゅうま殿を!」


「せっかく病院にいるんだから、ゴールドベースに戻って診てもらうより、ここで診てもらった方がいいよ!」


 イエローとグリーンが叫ぶ。


「分かりました!」


 私はそう答えると、りゅうま隊長を担いだまま歩き出した。


   ◇   ◆   ◇


〈一方その頃〉


 病院から少し離れたところにある路地の裏。


 阿波連(あばれん)暴人(ばくと)がそこで座り込み、胸を押さえて苦しんでいた。

 走ってもいないのに息が上がっていて、顔が青ざめている。


「クソ……」


「なぜ逃げた?」


 暴人(ばくと)のブレスに通信が入る。(ちょう)頭脳集団(ずのうしゅうだん)バカバッカの首領、ホロボスの声だ。


「あのまま戦っていれば、お前はゴールドファイブに勝てていたはずだ」


 ホロボスはなおも問い詰める。


「黙れ……、お前こそなんであんな邪魔をした。今回は怪人を呼んで欲しいなんて頼んでない。前に頼んだのはシルバーキラーシステムの開発テストのためだ」


 一回目のモグラヒドーダの時は次元ホール発生装置のテスト、二回目のネズミヒドーダの時は機械コントロール装置のテスト。どちらもあくまで自身のシステムの強化のため。


 決して、ゴールドファイブを二人がかりで倒そうなどという目論見ではなかった。


「テストを終えて、俺のシルバーキラーシステムは究極となった。今ならきっと……」


「うぬぼれるな!」


 ブレスから怒鳴り声が響いた。


「我がお前に手を貸したのは、お前ならすぐに邪魔なゴールドファイブを始末できると思ったからだ。それなのに、いつになったら倒してくれるのだ!」


 暴人(ばくと)はそれを聞くと、フフッと笑って答えた。


「やってやるさ……、次こそは必ず……」


〈つづく〉

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