事件5-5『殺し屋シルバー!』
〈前回までのあらすじ〉
新たなる脅威!白銀の殺し屋とはいったい何者なのか。
ゴールドファイブにかつてない危機が訪れようとしていた。
私たちが現場へ駆けつけると、エリアSJ-05は既に火の海となっていた。
「なんだこれは……」
私とレッド、そしてグリーンは、その絶望的な光景に愕然とする。
街路樹は焼け焦げ、辺りには瓦礫が散乱し、駆けつけたと思われるパトカーや救急車、消防車はみな紙くずのようにぐしゃぐしゃになっている。
逃げ惑う人はすでにおらず、逃げ遅れてもう動けなくなってしまった人たちだけが、ただそちらこちらにモノのように転がっている。
「あ、あれは!」
ブルーがそう叫んで、向こうの方へ走っていく。その先をよくみると、座り込んで傷だらけのいとしさんを抱きかかえるホワイトの姿がある。
私たちも、すぐにそれに気づいて駆け寄った。
「何があったの?」
すあまちゃんは震えて何も答えない。
「――やっと、全員揃ったか……遅いんだよ」
背後から声がして振り返ると、そこには全身銀ピカの、ゴールドファイブとよく似た戦士の姿があった。
すあまちゃんはそれを見て、思わず目を伏せる。
「あなたね……、あなたが街をめちゃくちゃにして、二人を!」
「ちゃんと予告したんだから備えとけよ。せっかく楽しいゲームができると思ったのに、シラけるぜ」
銀色の戦士はそう言ってため息をつく。
レッドはそれを聞いて、怒りに震える声で叫んだ。
「ゲームだと……貴様、何者だ!」
すると銀色の戦士は、カッコよく決めポーズを取って叫んだ。
「白銀の殺し屋、シルバーキラー。お前たちを憎むものだ」
シルバーキラー、聞いたことがない。だが、妙だ。腕についた銀色のブレスといい、マスクといい、やはりどこかゴールドファイブに似ている。
しかし、似ていると同時にまったく真逆のようにも思える。全身から、言葉では言い表せない邪悪なオーラをひしひしと感じるのだ。
「よくも……よくもボクたちの仲間を!」
「だるいけど……キミは絶対に許さない!」
ゴールドブルーとゴールドグリーンはそういうと、二人でシルバーキラーに向かっていく。
シルバーキラーはその様子を見て大きく聞こえるように舌打ちをすると、手中に銀色の槍を召喚して構えた。
「シルバランス!」
ブルーとグリーンはゴールドブラスターとゴールドアローを駆使してなんとか立ち向かうが、その攻撃は全てヤツのシルバランスで弾かれてしまう。
「終わりだ……、シルバーインパクト!」
シルバーキラーがそう叫ぶと、槍から光の刃が発射されブルーとグリーンに直撃した。
二人の変身は解除され、その場に倒れ込み気を失う。
「ブルー、グリーン! おのれ……!」
レッドが拳を強く握る。
「ったく、期待外れだな。お前らはまるで配管掃除をしたばかりのトイレみたいだ。綺麗なだけで詰まらない」
レッドはすあまちゃんのそばから離れると、ゴールドソードをシルバーキラーに向け構える。
「黙れ! これ以上、お前の好き勝手にはさせない!」
「やめとけ、今のお前らじゃ俺には勝てねぇよ。……来い! バスター5号!」
シルバーキラーが指を鳴らすと、片腕が剣、片腕が銃になった人型のアンドロイドがどこからともなく私たちの前に現れた。
「お前にミッションを与える、簡単なゲームだ。そのバスター5号を倒してみろ。じゃあな」
そういうとシルバーキラーは、ひょいっと近くの家の屋根へ跳び乗り、そのままどこかへ走り去っていった。
アンドロイドは体表にバチバチとした電撃のような妖光を纏いながら、ゆっくりと近づいてくる。
レッドは意を決して、そのアンドロイドへ向かっていった。
アンドロイドは片腕の銃を乱射しながら牽制しつつ、もう片腕の剣でゴールドソードを受け止める。
まったく無駄のない動きにレッドも翻弄され、太刀打ちができない。
そのまま腹部に片腕の銃を突きつけると、それを発射しレッドの身体を吹き飛ばした。
しかし、レッドも負けじと、地面に打ち付けられた身体を持ち上げ、再び立ち上がる。
(どうしよう……、このままじゃレッドも敗ける……、なにか……、戦隊捜査官としてできることは……)
「そうだ! 新兵器!」
私はポケットから、先ほど研究所で作った新兵器・マキシマムガジェットを取り出した。
それは手のひらサイズの小さな四角い機械。その表面は金色で、全体に赤、黄、白、青、緑の五色の宝石があしらわれている。
機械上部には接続端子がついていて、ゴールドブレスに接続できるようになっている。
私はその新兵器をレッドの方へ投げた。
レッドはそれを片手で受け取ると、腕のゴールドブレスの下部にある差し込み口に端子を合わせてセットする。
「テストはまだだが……、特例だ。マキシマムチェンジ!」
レッドがそう叫ぶと、ただでさえ金ピカの鎧を纏ったその体表に、さらに神々しい、キラキラとした鎧が装備された。
鎧は赤、黄、白、青、緑の五色の宝石でできていて、それがマスクと胸部に纏わりついて眩い輝きを放っている。
これこそ、ゴールドレッドの新しい姿、マキシマムゴールドレッドなのだ。
「マキシマムキンキラバスター!」
レッドがそう叫ぶと、とても大きなキラキラ輝く銃が目の前に召喚され、眼前に漂う。
大きさからいえば、銃というより大筒という方が正しいかもしれない。当然ながら真っ金金で、さらに鎧と同様の五色の宝石があしらわれている。
レッドはそれを両手で抱えると、銃口を敵のアンドロイドに向ける。
「危ない!」
突然、アンドロイドが片腕の刃を向けて、こちら猛突進してきた。しかし、レッドはそれをヒラリと躱し、背中を蹴り飛ばす。
アンドロイドは蹴られてもモノともせず、すぐに体制を整えると、今度はもう片腕の銃を連射してくる。
だが、それも効かない。アンドロイドの銃撃は、すべてマキシマムゴールドレッドの鎧によって弾かれる。
レッドは再び、銃口をアンドロイドへ向け叫んだ。
「クイックリーショット!」
マキシマムキンキラバスターから赤い光弾が発射される。光弾はものすごいスピードでアンドロイドに迫る。
アンドロイドは逃げようと体勢を変えるが、その機械の身体が動く前に光弾が直撃した。
アンドロイドが直立したまま動きを止める。あまりの攻撃のショックで機械が停止したのだ。
その隙に、レッドはマキシマムキンキラバスターのチャージを開始する。
アンドロイドが再起動するまでのこの時間が、やつを倒す絶好のチャンスだ。
「バスター5号! お前は確かに優れた発明品だ。だが、俺の使うこの力には、人々の命を護りたいという想いが込められている」
レッドはそういうと、アンドロイドの腹部にしっかりと照準を合わせ、狙いを定める。
「人を傷つけるために生み出された発明が、人を護るための発明に勝てるはずが無い! マキシマムゴールドブレイカー!」
銃口から、ものすごい勢いのビームが放出され、アンドロイドの腹部を貫いた。
アンドロイドはそのまま、眩い光を放ち爆散した。
◇ ◆ ◇
ここはゴールドベース。メインルームでは、いとし、いつき、めぐむの三人が、身体を包帯でグルグル巻きにして部屋の床に寝っ転がったり、壁に寄りかかったりして休んでいる。
私はそんな三人を横目に、モニターでシルバーキラーの戦いの映像を眺めていた。
ゴールドファイブのマスクには録画機能が備わっており、戦闘中に限り自動でカメラが起動して戦いを記録するのだ。
「あんまり何度も見られたくないんだけど……、ボクのカッコ悪いところ」
いつきがそう愚痴をこぼす。
「ダメだよ。ゲームのRTAだって何度も何度も繰り返しやってコツを覚えていくもんなんだから」
「めぐむ殿の言うとおりでござる。それこそが武士道というもの」
「武士じゃないんだけどな、ボク」
そんな話を三人がしていると、りゅうま隊長がメインルームに入ってきた。
「あずき君、居るか?」
「はい。ここに」
「実はちょっと気になることがあってな。これを見てくれ」
りゅうま隊長はそういって、何枚かの写真を見せてきた。
「これは……、昨日のアンドロイドの……」
写真には、昨日倒したバスター5号の破片が写っている。私が戦闘終了後の調査で現場から回収したものだ。
「これが何か?」
「実は、頭脳となる部品が見当たらないんだ」
「え?」
ありえない。普通アンドロイドというものは、その内部に人工頭脳を搭載し、それに基づいて動く。
あれだけゴールドレッドの動きに合わせて的確に攻撃を仕掛けてきたアンドロイドが、人工頭脳を搭載していないただの機械人形なんて。
まさか私が回収をし忘れた? いや、確かに私はすべての部品を回収したはずだ。
「シルバーキラーといい、そのアンドロイドといい謎だらけですね……」
――突如現れた新たなる敵・シルバーキラー。ゴールドファイブの前に暗雲が立ち込めていた。
〈つづく〉




