表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦隊捜査官の事件簿 〜戦隊さん、その事件の犯人、怪人じゃないかもしれません!〜  作者: サイトーアツシ
事件5「暴飲暴食には注意が必要かもしれません」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/26

事件5-4『爆発する山羊』

〈前回までのあらすじ〉


殺人事件の謎を追っていくあずき。

果たして、犯人は誰だ!?

 今のところ、怪しいのはヤギヒドーダことヤギ助だ。

 単純に動機があり過ぎるし、そもそもヒドーダ怪人。もしかしたら、善良なフリをしているだけのスパイかもしれない。


 だが、妙に引っかかる。


 あの頭の悪そうな怪人が本当に殺人なんかするだろうか。仮にしたとして、それを黙っておけるだろうか。あの知性で。


 私はその疑問を確かめるため、ヤギ助の部屋へ向かった。


   ◇   ◆   ◇


「やっほー! 何しに来たの!? もしかして食べ物くれたりする!?」


 私が部屋に入ると、ヤギ助がなぜか部屋の真ん中で踊っていた。


 ヤギ助の部屋は足の踏み場もないほど床中にゴミが散乱していて、家具や壁などあちらこちらに齧られた跡がある。

 多分お腹が空いたときに食べているのだろう。


「食べ物なんか持ってませんよ……。事情聴取したいので席に座ってください」


 私は目の前に置かれた向かい合わせの椅子の片方に腰掛けると、ポケットからメモ帳とペンを取り出した。


「あー! その紙美味しそう! 食べていい!?」


「駄目です! これには事情聴取した大事な情報が書かれているんですから!」


 本気なのか、それとも捜査を撹乱するためにわざと食べようとしているのか判断がつかない。


「ていうか、さっきからなんで踊ってるんですか……?」


 私が尋ねると、ヤギ助は嬉しそうに答える。


「だってーー……楽しいから! シャル・ウィ・ダーンス?」


 ヤギ助がこちらに手招きする。


「いいから座ってください。時間がないんです」


 早く事件を解決して白銀の殺し屋(なぞのてき)と戦う仲間の元へ駆けつけたい。

 私はなんとか説得を試みる。


 ――その後しばらく説得したが、結局ヤギ助は席には座らず、踊ったまま事情聴取を受けることになった。


 おそらくこの踊りは本当に事件と何も関係がない。単に本人が踊りたいだけだ。


「まず……、今朝は何時に起きましたか?」


「えー? ぼくちゃん時計読めなーい」


 私はさっそく頭を抱える。正直この時点で既に事情聴取をやめたい。


「あでもー、窓の外見たら暗かった!」


「え……? 夜に起きたの?」


 意外だ。コイツは食べたらグッスリ寝てそうなタイプなのに。


「うーん……夜っていうには明るかったけど、朝っていうには暗すぎたし……、少なくとも太陽は出てなかったな……」


 ヤギ助はスクマさんが遺体を発見するより前に起きていたことになる。だとしたら何か事件を隠すための隠ぺい工作をしていたかもしれない。


 私はさらにヤギ助を問いただす。


「なんでそんな時間に起きたの? 何か理由が?」


「なんか美味しそうな臭いがして目が覚めた! それで玄関の前見たら……おまんじゅうがあったから、それ食べた! アレってキミがくれたの?」


 おまんじゅう? 私が持ってきたのは昨日彼が箱ごと食べたはずだ。


「知らないけど……?」


 私が首を傾げると、ヤギ助がハッとして答える。


「あっ! 昨日は箱ごと食べて後で所長に怒られたから、今回はちゃんと箱を開けて中身だけ食べたぜぃ! 見るか!」


「じゃあ、お願い」


 するとヤギ助は踊りながら、あちこち探し回り始めた。そして床に散らばったゴミの中から一つの大きな白い箱を拾い上げた。


「あった! これこれ〜!」


 ヤギ助が拾った箱をこちらに見せてくる。


 まんじゅうが入っていたにしてはあまりに大きすぎるその白い箱の蓋には、大きい文字で「おまんじゅう。すぐ食べて」と書かれている。贈り主の名前はどこにも無い。


「こんな大きい箱に、まんじゅうが入ってたの?」


「うん! でっかくて大きいおまんじゅう! いちごソースがかかってて、美味しかったのでございます!」


 いちごソース? まんじゅうに?


「いちごの味はしなかったけど。あ、あともっと小さいおまんじゅうも箱の隅に入ってたから、それも食べた!」


「大きいおまんじゅうと小さいおまんじゅうを食べたの?」


「うん! そのあと寝た!」


「え!? 寝たの!?」


 「食べてすぐ寝ると牛になるぞ」とか言おうかと思ったが、そもそもヤギが牛になったところで大差ないと思い踏みとどまる。


「その後は?」


「なんか部屋の外がうるさいからって出たら、みんな走ってどこか行くから、追いかけたら山奥でジェッ太が死んでたら!ららら!」


 「ららら!」の意味はサッパリだが、この点に関しては、他の人とたいして変わらない。


(やっぱり……なんかおまんじゅうだけ……ん?)


「最後にもう一つだけ、質問しても?」


「ん? なぁに?」


 ヤギ助が首を傾げる。


「あなたが今朝おまんじゅうを食べたこと、他の誰に話したりした?」


「話してない! すぐ寝たから!」


 なるほど、これで分かった。


 ――この事件の犯人、怪人じゃない!


   ◇   ◆   ◇


 私はすぐにりゅうま隊長に連絡し、みんなを応接室に集めた。


 所長といおさんは部屋の隅に立って紅茶を飲み、りゅうま隊長とめぐむは深くソファに腰を掛け、いつきとスクマさんは二人で壁に寄りかかっている。


 ヤギ助はなんかソファの横にしゃがみこんで何か大事そうな書類を食べている。あれは放置していいのだろうか。


 めぐむはよくみると、またゲームをしている。これはいつものことなので放置していい。


「ここに集めたってことは……何か分かったんですか?」


 スクマさんが不安そうな表情で呟く。


「はい。事件の犯人が分かりました!」


 私がそういうとみな驚いて辺りを見回す。


「えーー! まって! 違う! ぼくちゃんじゃない!」


 ヤギ助がまるで犯人みたいに慌てふためく。紛らわしいからやめてほしい。


「今の反応、怪しい? やっぱりヤギ助が……」


 スクマさんの言うとおり、たしかに今の反応は怪しすぎるが、私の推理はそうではない。


「犯人は……あなたです!」


 私はそういって、部屋の隅で紅茶を啜る萬葉(まんば)いおさんを指さした。


「は、はぁ!? 私が!? そんなわけないじゃないですか!」


 いおさんが思わず、持っていた紅茶のカップを取り落とす。カップは割れ、辺りに破片と紅茶が飛び散る。


 周囲が一斉にいおさんを見る。


「いおさん、あなたは一昨日、敷地内の山奥で小型爆弾のテストをしたんじゃないですか? 無許可で。そして、それを近くの倉庫にお酒を飲みに来たジェッ太さんに見られた」


 所長の許可なく無断で爆弾や兵器のテストをしたら、研究所を追放されてしまう。それをもし見られたとすればそれは十分殺害の動機となり得る。


 いおさんがものすごい形相で私を睨む。


「言いがかりはやめてください! そんな証拠どこにあるんですか!」


 するとりゅうま隊長が口を割った。


「一昨日の土砂崩れの土砂の中から、僅かながら金属片が見つかった。あれはキミが開発していた爆弾なんじゃないか?」


 ここにみんなを集める前に、あらかじめりゅうま隊長に頼んで、撤去した土砂の中に爆弾のパーツらしきものが無いか確認を取っていたのだ。


 おそらく一昨日の土砂崩れは、その爆弾のテストによって起きたものと推測される。


 それを聞いて、いおさんはフフッと笑う。


「……めちゃくちゃな推理過ぎますよ。爆弾なんて、この研究所の研究員ならいくらでも作れます。それだけで犯人だなんて」


 たしかに、ここはゴールドファイブの兵器開発をしている研究所。今この場にいる全員が爆弾を作れるだろう。ヤギ助を除いて。


「いおちゃんを庇うわけじゃないけど、ボクも少し引っかかるね。第一、もし仮に土砂崩れがいおちゃんの爆弾が原因だとして、それが殺人に繋がるとはいえないよ」


 いつきの言うとおり、別にジェッ太は爆発で殺されたわけではない。


「ええ、そもそも凶器は爆弾じゃない。そして、その凶器こそ、今回の犯罪を裏付ける重要な証拠品」


 それを聞いて、スクマさんが不安そうに尋ねる。


「なんなんですか? それって……」


 私は呼吸を整えると、目をカッと見開き大声で叫んだ。


「それは……おまんじゅうです!!」


 辺りが沈黙に包まれる。その場に居た全員がキョトンとする。


「えっと……、え?」


 あまりにビックリしすぎて、いつもは一切止まらないめぐむのゲームをする手が止まってしまった。


「そ、そんな、何を馬鹿な! おまんじゅうで人を殺せるわけないじゃないですか。冗談も大概にしてくださいよ」


 いおさんの声が明らかに震えている。やはり、思い当たる節があるのだ。


「えぇ、正確にはおまんじゅうではなく、凶器に使った大きめの石か何かでしょう」


「いや、全然違うじゃないですか! 石とおまんじゅうなんて似ても似つきませんよ!」


 そう、もちろん本来、おまんじゅうと石を間違える人間なんていない。全くもって別物だ。


 ――ただし、それは人間の話だ。


「たしかに石とおまんじゅうは全然違う。でも、その区別がつかない馬鹿が、この中にたった一人だけいます!」


「えー! 誰? 誰?」


 ヤギ助が辺りをキョロキョロ見回す。


 その場にいる全員がヤギ助を凝視する。


 ヤギ助がその様子に気づいてようやく、私が誰のことを言っているのか理解した。


「……え? もしかしてぼくちゃんに言ってる? ぼくちゃん今、推理にかこつけて悪口言われてます?」


 ごめん。悪口は言ってる。でも推理のためだからどうか許してほしい。


「そうか……そういえばヤギ助は、通信ブレスとおまんじゅうの区別もろくについていない馬鹿……あ」


 めぐむが言いかけて「しまった」という様子で口を押さえる。


「え! 今馬鹿って言った! ねぇ!」


 ヤギ助が更に憤慨して足をジタバタさせる。私はそんなヤギ助になだめるように話しかける。


「ヤギ助、待って。怒る前にいったんさっきのやつ見せて」


「えー、でも、あの人馬鹿って!」


「いいから! 早く!」


 なんの罪もないヤギ助には申し訳無いが、さっさと事件を解決させて我々は仲間の元へ駆けつけなければならない。


 ヤギ助はしぶしぶ、先ほどの白い箱をみんな見せた。箱の蓋には、大きい文字で「おまんじゅう。すぐ食べて」と書かれている。

 

「その箱……、箱ごと食べなかったんですか!」


 いおさんが思わず口を滑らせる。


「やっぱり見覚えがあるんですね?」


 私の指摘にいおさんが先ほどのめぐむ同様、「しまった」という様子で口を押さえる。


「今朝、ヤギ助がおまんじゅうの話をしたとき、あなたは『さっき食べたモノを言っただけなんじゃないですか?』とわざわざ聞きました。ヤギ助は夜中に部屋で誰にも言わずにおまんじゅうを食べたはずなのに。偶然にしては不自然です」


「それは、あなたがもってきたおまんじゅうのことで……」


 嘘だ。二時間や三時間前のことならまだしも、普通の人は昨日のことをさっきとは言わない。私が持ってきたおまんじゅうをヤギ助が食べたのは昨日のことだ。


「あなたはあのとき、突っ込みいれるふりをして、ヤギ助がちゃんとおまんじゅうを食べたか確認したかったんじゃないですか? そのおまんじゅうは本当は凶器の石だったのだから」


「そんな……、それで私が犯人だなんて!」


 いおさんは落ち着かないのか、片手で髪をいじくり始める。これは人間が緊張したり、不安感じたりしたとき、無意識的にする動作のひとつだ。


「それに、発言といえばお酒のこともです。最初にジェッ太さんが行方不明になった話を聞いたとき、あなたはどこかで酔い潰れているのではないかと言いました」


 すると、所長が話に割って入る。


「そういえばそうじゃ! あのとき変じゃと思ったんじゃよ。今のジェッ太が禁酒していることは、いお君だって知っておったはずなのに」


「それは……えっと……」


 いおさんが目を白黒させる。


「あなたは本当はジェッ太さんが禁酒していないことを知っていた。殺害する直前にお酒を飲むジェッ太さんの姿を見ていたから。だからあの行方不明の話のとき、話題を逸らそうとしてうっかり口を滑らせたのでは?」


 すると、いおさんが震える声で怒鳴りつけた。


「そんなの全部、あなたの憶測でしかないじゃないですか! 私は研究者です! もっとちゃんとした、データとしての証拠を」


「データならありますよ」


 私はポケットから、折りたたまれた一枚の紙を取り出し、開いてみせた。


「これは、筆跡鑑定の結果です。箱の文字と、あなたが設計図に書いていた文字の筆跡が一致しました。あなたはヤギ助におまんじゅうと見せかけ凶器を食べさせたんですよ!」


 いおさんが膝から崩れ落ちる。着ていた白衣が紅茶で濡れた床に触れ、ゆっくりと罪の色に染みていく。


「クソ……なんで……」


 ヤギ助が証言していた、いちごソースのかかったおまんじゅうは、血のついた石である。


 おそらく、箱に香料かなにかで甘い匂いをつけて、食べさせたのだろう。


 ヤギという動物は非常に嗅覚が発達していて、非繁殖期の雌ヤギは雄の匂いを感じることで排卵と発情が促されるという話もあるほどだ。


 食いしん坊のヤギ助がおまんじゅうの匂いで食欲を誘発されても、不思議なことではない。


「も、もしそうだとして! それをどうやって確かめるんですか。食べてしまったなら証拠としては使えない!」


 いおさんが更に声を荒げる。


「いいえ、確かめる方法ならあります。……めぐむ、お願い!」


 めぐむは、ハッとして持っていたゲームをソファの上におくとその場で立ち上がりポーズを決めた。


「ゴールドチェンジ!」


 めぐむの姿がゴールドグリーンに変わる。そして、すぐにヤギ助の方を見ると大きな声で叫んだ。


「ゴールドスコープ! ……見えた! 血のついた石を確かに食べてる!」


 スクマさんが目に涙を浮かべて叫ぶ。


「いおさん……どうして……! どうして!」


 所長も険しい表情でいおさんを見つめる。


「いお君、本当なのか……」


 いおさんは俯いたまま、何も答えない。


 ――かと思うと、白衣のポケットから何かのスイッチを取り出した。


「……ふふふ、ははははは、あーっはっはっは!」


 いおさんはそのまま立ち上がると、突然狂ったかのように笑い出す。


「そうですよ! 全部私がやった! でもみなさんはここで終わりです! なぜなら、ヤギ助に食べさせたのは凶器だけではないのだから!」


 私はハッとした。よく分からないまますっかり忘れていたが、そういえばヤギ助は「もっと小さいおまんじゅう」も食べたと話していた。


 ――その正体が今ようやく分かったのだ。 


「みんな逃げて! ヤギ助の腹の中には爆弾もある!」


 しまった、小さなおまんじゅうが小型爆弾なんてところまで、頭が回っていなかった。


 白銀の殺し屋のことで、焦っていたのかもしれない。


「逃げられませんよ。そのお腹の中の爆弾は土砂崩れを起こした爆弾の何倍もの破壊力を持つ。一発でこの研究所ごと消し炭です!」


 いおさんの言葉を聞いて、スクマさんが咄嗟に叫ぶ。


「そんなことしたら、いおさんも死んじゃいますよ! 良いんですか!」


「構わない! 私は自分の開発した兵器で少しでも歴史に名を刻みたいだけ! 殺す相手が怪人だろうが人間だろうがどっちでも良いんですよ!」


 そういって、いおさんは更に高笑いする。


「いお君、どんな人間の心にも良心回路があるはずだ。キミのそれは狂ってしまったのか!」


「最初からありませんよ……そんなもの!」


 いおさんは近くにいた所長を思いっきり蹴り飛ばした。

 そして、吹っ飛ばれされ床に倒れ込んだ所長の顔を、すぐさま紅茶に濡れた足で踏みつける。


 それを見たいつきは、咄嗟にゴールドブルーに変身し、いおさんの持っていたスイッチをゴールドブラスターで撃ち抜いた。


 しかし、いおさんは少しも気にすることなく、なおも所長の顔を踏み続ける。


「言っときますけど、スイッチを壊しても無駄ですよ。あの爆弾は音声認識付き。私があいことばを叫べば、一秒とたたずドカンですからね」


「そんな……」


 みんなが焦って辺りをキョロキョロ見回す。


「りゅうま隊長! 爆弾を解除する方法は無いの!?」


 ブルーが、りゅうま隊長の元へ駆け寄り肩を掴む。


「いくら俺でも無理だ……! 爆破解除している間にあいことばを叫ばれて爆破される。それ以前に、腹の中の爆弾を解除なんかできん!」


 それを聞いたブルーは、悔しそうに近くの壁を殴りつける。


「そんなッ!」


「いやだーー! 死にたくなーい!」


 ヤギ助がその場で、子供が駄々をこねるのようにジタバタ暴れる。


 ――そのとき、スクマさんがボソッと呟いた。


「爆弾が腹から取り出せれば、爆弾を止めることができることができるかもしれないのに……」


 それを聞いて、ヤギ助が急に暴れるのをやめ、スクリと立ち上がる。


「できるよ」


 全員が一斉にヤギ助の方を見る。


「え?」


いおさんも、所長を踏みつけるのをやめて、ヤギ助を見つめる。


「まさか……、そんなこと……」


「だって、ぼくちゃんヤギだもん」


 そうだ。思い出した。

 ヤギや牛などの一部の動物は反芻という行動を取る。一度胃のなかに入れたものを、戻すことができるのだ。


「んー、ちょっと待っててね……、えーこれじゃなくて、あ、これだ! ペッ!」


 その言葉とともに、ヤギ助の口から血のついた石と、小型爆弾が吐き出された。

 どちらもよだれまみれでデロデロになっている。


「よし! これなら行ける!」


 それを見たスクマさんは咄嗟にポケットから小瓶を取り出す。そしてその蓋を空け、中の薬液を爆弾にかけた。


「やったか!?」


 スクマさんがギュッと小瓶を握り締め目を瞑る。


「今さら何を……、まぁいい……とっとと爆破すればいいだけのこと。あいことばは……、クラッシュアウト!」


 いおさんが叫ぶ。


 しかし、何も起こらない。


「そんな馬鹿な……、クラッシュアウト! クラッシュアウト!」


「やった……やった! 成功だ!」


 スクマさんが嬉しそうに叫ぶ。私はスクマさんに尋ねた。


「あの薬品は?」


「あれは僕が開発したバーストップ薬です。バーストをストップする。つまり、この薬を爆弾にかけるだけで、簡単に爆弾を止められるんです!」


 たしかに、爆弾はまったく爆発しない。この薬品があれば、多くの人が命を救われるだろう。

 まったく素晴らしい発明だ。


「なんでだよ……なんでだよクソが!」


 いおさんが悔しそうに、髪を掻きむしって騒ぎ立てる。


 ブルーはそんないおさんを見かねて、すぐにゴールドワッパーで身柄を拘束した。


 身動きが取れなくなったいおさんは、抵抗することをやめ、静かにその場に座り込む。


 その様子を見た所長は、その場からゆっくり立ち上がると、座り込むいおさんの肩をポンと叩いた。


「いお君、なぜ、キミの発明が彼に負けたか分かるかね?」


 いおさんは、目に涙を浮かべて、小さく首を横に振る。


「気持ちじゃよ。良い発明とは誰かの暮らしを良くしたい、誰かの助けになりたいという気持ちから生まれるんじゃ。キミの発明にはそれがなかった」


 いおさんはただ黙ってすすり泣く。


 そのとき、りゅうま隊長のブレスに通信が入った。


「りゅうま兄ちゃん! 助けて!」


 あずきちゃんの声だが、様子がおかしい。明らかに元気がないし、焦っているし、なんだか涙声だ。


「どうした、何があった!」


「いとし兄ちゃんが……死んじゃう!」


(え? 嘘でしょ?)


 自分の鼓動が早くなるのを感じる。あずきちゃんといとしさんは、ゴールドファイブの中でもレッドの次に強い実力者だ。


 その二人が追い詰められるなんて、ただごとではない。


 所長はそれを聞いて、すぐにこちらを見た。


「キミたちは早く仲間のもとへ急げ。いお君は私が責任を持って警察に引き渡す」


「隊長!」


 私は思わず、りゅうま隊長の服の袖を掴んで揺する。


「ああ、すぐに向かうぞ、ゴールドチェンジ!」


 こうしてゴールドレッド、ゴールドブルー、ゴールドグリーンの三人と私は、急いで研究所を跡にした。


〈つづく〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最新話まで拝読させていただきました。 ギャグなのかシリアスなのか、絶妙なところをいく作品で、ところどころツッコミも入れてしまいつつ、ここまで読ませていただきました笑 キャラがみんな生き生きとしていて、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ