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戦隊捜査官の事件簿 〜戦隊さん、その事件の犯人、怪人じゃないかもしれません!〜  作者: サイトーアツシ
事件4「恋は人を盲目にさせるのかもしれません」

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事件4-2『ニセモノと10秒』

〈前回までのあらすじ〉


大好きな彼氏とのデート中に怪人が発生し、ご機嫌斜めなあずき。

怪人の発生現場へ向かう途中に、自分の彼氏そっくりな男と、謎の女性が二人で歩いているところに遭遇する。

無我夢中で追いかけると、そこに現れたのはタヌキとキツネの二匹の怪人だった。

 真っ暗な夜の闇の中、ゴールドブルーとゴールドグリーンが武器を構えて勇み立つ。


 その正面にはそれぞれタヌキとキツネの姿をした、二匹のヒドーダ怪人。


 周囲の家の塀や道路はこの怪人に壊されてしまったらしく、辺りは瓦礫だらけだ。


 私はサッと、近くに落ちていた大きな瓦礫の陰に隠れる。


「やっと見つけたよ! あまり逃げ回らないでくれないかな」


 ブルーの言葉を聞いて、タヌキの怪人は応えるようお腹を叩いた。


「ポンポコポン! オイラはタヌキヒドーダのポン太だポン!」


 続いてキツネの怪人が尻尾をふりふりして名乗る。


「コンコンコン! 私は妹のコンコだコン!」


 すると二匹の怪人は軽快なステップを踏みながら、なぜかリズムに乗ってラップをし始めた。


「ポンと言ったら、コンと答えて」


「ツーと言ったら、カーで通じる」


「息ぴったりだぜ、双子の兄妹(きょうだい)!」


「絆は最強! 相性は最高!」


「「二匹合わせて、ポンコンブラザーズ!!」」


 二匹の怪人はそういうと決めポーズをしてドヤ顔を見せてきた。


 と、次の瞬間、バキュン、バキュンと銃声が鳴り響く。


「痛っ! 痛い痛い!」


 ブルーが二匹の怪人に対して、ゴールドブラスターを連射したのだ。息のあったラップには一切反応を示さずに。


「痛いコン! 何するコン」


「オイラの妹に何してくれるポン!」


 二匹の怪人は、その場でジタバタしながら怒りをあらわにする。


「深夜にうるさいよ、静かにしなきゃあ」


 グリーンも続けて、キツネの怪人に向けて矢を放つ。キツネヒドーダはそれをひょいっと体を逸らして(かわ)す。


「だからいきなり攻撃するなコン!」


「街を破壊する悪党に貸す耳は、持ち合わせてないんだよね」


 そういって笑うグリーンの姿を見て、キツネの怪人はムクッと頬を膨らませる。


「クゥ〜ン! お兄ちゃん、アイツら嫌い! とっとと倒しちゃうコン」


「もちろんだポン! オイラたち双子の兄妹(きょうだい)を力を思い知らせてやるポン!」


 そういうとタヌキとキツネの怪人は、二匹がかりで襲いかかってきた。


 やつらは軽快な動きで、すぐにブルーとグリーンに対して距離を詰める。


 パンチやキック、尻尾攻撃が次々に飛んでくる。


 銃使いのブルーと、弓使いのグリーンに、近接戦はかなり不利だ。


 しかし、それでも彼らは負けはしない。不利な状況でも戦えるよう、訓練を受けているのだ。


 グリーンの武器、ゴールドアローの弦の部分には刃がついており、グリーンはそれを駆使して、襲いかかってきたキツネの怪人に次々と斬撃を喰らわせる。


 ブルーもブルーで、タヌキの怪人の攻撃をヒラリヒラリと(かわ)しながら、体術と銃撃で応戦する。


 そして二人はそれぞれ、怪人が怯んだところで思いっきりその腹部を蹴り飛ばした。

 夜の道路にタヌキとキツネ、二匹の怪人の身体が転がる。


「どうだ!」


「やったか?」


 しかし、タヌキとキツネの怪人はめげずに立ち上がる。


「酷いコン! そっちばっかそんな武器使って! ズルいコン!」


「卑怯だポン!」


 いや、ズルいと言われても困る。使いたければそっちだって使えばいい。と、心のなかで思う。


「もう怒ったポン! こうなったらオイラたちの真の力、見せてやるポン!」


「お兄ちゃん! 一緒にやるコン!」


 そういうと、二人は指で忍者のように(いん)を結んだ。


「ポポンがポン!」


「ココンがコン!」


 その言葉とともに、二匹の怪人から大量の煙が噴き出した。

 辺り一面が真っ白になり、私も思わず咳き込んでしまう。


「ゲホッゲホッ……何……?」


 やがて煙が晴れてくると、先ほど怪人の居たはずの場所に、まったくの別人の姿が見えはじめた。


「なんだ……、あの姿……」


「うそッ! あれって!」


 ――煙の中から現れたのはもう一人のゴールドブルーとゴールドグリーンだった。


 まったく同じ姿の人間が二人、それぞれ向かい合っている。

 にわかには信じがたい光景だ。


「ボクがもう一人……?」


「えっ……どうなってるの……?」


 私は目を擦って改めて確認するが、何度見ても目の前にいるのは二人目のゴールドブルーとゴールドグリーンである。


「ゴールドブルー! ポン!」


「ゴールドグリーン! ……決まったコン!」


 今の言葉と決めポーズでようやく理解できた。あれはさっきの怪人が化けているのだ。


 いくら姿を変えても、語尾は変えられないらしい。


「本物の輝きには勝てないってことを教えてあげるよ」


「ただの偽物なら、とっとと倒すだけだよ!」


 本物のブルーとグリーンはそういうと、それぞれゴールドブラスターとゴールドアローを構えて、敵に向かい走っていく。


「見た目だけだと思ったら……」


「大間違いだコン!」


「「喰らえ!!」」


 すると次の瞬間、偽ブルーと偽グリーンは、本物が持っているのと全く同じゴールドブラスターとゴールドアローでそれを撃ち抜いた。

 本物の二人は衝撃でふっ飛ばされ地面に転がる。


 どうやら敵は見た目だけでなく、その能力までも真似できてしまうらしい。これは中々厄介だ。


「くそっ……早く帰ってゲームしたいのに……」


「ボクが好きな夜遊びは、こういうんじゃないんだけどな……」


 本物が倒れているのを見て、ここぞとばかりに偽物が近づいてくる。


 しかし、本物も負けじとすぐに立ち上がり、偽物と応戦する。


 ブルーが殴れば、もう一人のブルーも殴り、グリーンが蹴れば、すかさずもう一人のグリーンも蹴る。その強さは完全に互角だ。


 激しい本物と偽物の取っ組み合いが続き、私にはもうどっちがどっちやらさっぱり分からない。


「そこまでだ!」


 そのとき、後ろから声がした。

 振り返るとそこにはりゅうま隊長といとしさんの姿があった。

 ロボの修理が終わって駆けつけてくれたのだろう。


「ゴールドチェンジ!」


「ゴールドチェンジ!」


 二人はすぐさまレッドとイエローに変身した。


「さぁ……助けに……ん?」


「ブルーが二人……、グリーンも二人……」


 そりゃそうだ。

 ずっと見てた私でも見分けがつかないのに、今来たばかりの二人に分かるはずがない。


「ゴールドサーチ!」


 イエローが自身の能力、ゴールドサーチで二人を分析する。


「駄目でござる! ゴールドサーチでも見分けがつかぬ!」


「あずき、何か判別方法はあるか?」


「え、えっと……。あっ、そうだ!」


 私は瓦礫から飛び出し、取っ組み合っている方へ声をかけた。


「ブルー、グリーン! 本物なら返事してー!」


 四人が一斉にこちらを見る。


「ボクが本物だ!」


「いやボクこそ本物ポン!」


「そっちは偽物だコン!」


「嘘つかないでよ! 偽物は君だ!」


 怪人はまんまと私の罠に引っかかった。私はレッドに向かって叫ぶ。


「今、ポンとかコンとか言ってた方が偽物です!」


 私はそう伝えると、戦闘の邪魔にならぬよう、道の脇に避けた。


「そうか! ゴールドカラーボール!」


 ゴールドレッドの手に、金色の玉が出現した。


 これはゴールドだけが使える能力である。


 ゴールドレッドはさっそくその金色の玉を、今ポンとかコンとか言った方のブルーとグリーンに投げた。


 ポンとかコンとか言ってない方の二人は、飛んでくるゴールドカラーボールに即座に気付くと、サッと横に飛んでそれを(かわ)す。


 着弾したボールは弾け、中から金色のペンキが溢れる。偽物の二人はあっという間にペンキだらけになった。


「ちょっと! 何するんだポン」


「汚いコン!」


 そう、このレッドだけが使える能力、ゴールドカラーボール。これを使えば、敵にマーキングすることができるのだ。

 

「ポンコツめ! 本当のボクとグリーンはポンだのコンだの言いはしない! つまり君たちが偽物だ!」


 ペンキだらけになった二人を、本物のブルーとグリーンがすかさず押さえ込んだ。


「レッド殿! ホワイトからゴールドクローを借りてきたでござる! ここはアレで一気に!」


 イエローが、そういって持っていたゴールドハンマーとゴールドクローを差し出す。


「ボクのも使って!」


「僕のも!」


 本物とブルーとグリーンも、敵を押さえ込んだままに、持っていた武器をレッドに投げ渡す。


「よし!」


 レッドは渡された四つの武器、ゴールドブラスター、ゴールドクロー、ゴールドハンマー、ゴールドアロー、そしてレッド自身の武器であるゴールドソードを組み合わせ、巨大な武器を作り上げた。


 そう、これこそが五人の武器を合体した究極の武器。


 ゴールドファイブキャノンである。


 レッドは、ペンキだらけのニセモノ二匹に、その銃口を向けた。


 ゴールドファイブキャノンは撃つのに大量のパワーを必要とする。


 そのチャージ時間は約十秒。


 その十秒間のうちに敵に逃げられさえしなければ、確実に仕留めることが可能だ。


 今回は既に、敵は二匹とも押さえつけられ動けない状態だ。

 もはや逃げることはできないだろう。


「ど、どうするコン? お兄ちゃん」


「うぅ、このままじゃマズいポン」


 怪人たちは辺りをキョロキョロ見回す。


「あっ、お兄ちゃん、あれ!」


 キツネの怪人の視線の先を見ると、そこには一本の街灯が立っていた。


 その光の周りで、蛾がパタパタと飛んでいる。


「よし! あれだ! ポポンがポン!」


「ココンがコン!」


 次の瞬間、ものすごい煙が噴き出すとともに、怪人の姿が二匹の小さい蛾に変わり、空へと飛んでいった。


 レッドは咄嗟にゴールドファイブキャノンのチャージをやめ、辺りを見回すが、この煙の量ではとてもじゃないが、小さい二匹の蛾の位置なんて分からない。


 煙が晴れると、もうそこにタヌキとキツネのヒドーダの姿は無かった。


「取り逃がしたか……」


 そういうと、四人はその場で変身を解除し、私の方に集まってきた。


「しかし、まずいでござるな。敵は何にでも化けられる。追跡は難しいやもしれぬ」


「何か手がかりがあれば探せるけど……あのゴールドのペンキはどうせすぐ落とされるだろうし……」


 あのゴールドカラーボールのペンキは、水で簡単に流せてしまうという弱点があった。あまり期待はできない。


「普段はどんな格好をしてるのかな……? 人間に化けて潜んでたりしていたら、中々厄介かもね」


 いつきのその言葉を聞いて、私の脳裏にある一人の男の顔が浮かんだ。


 ――さっきたしかに見た、その凛々しくカッコいい顔が。


「私、見たかもしれない……あの怪人が化けた人間のことを」


「何! それは本当か?」


「どんなやつでござった? 名前は分かるでござるか?」


 みんなが食い入るようにこちらを見る。


「あの怪人が化けたのは多分……私の……彼氏……です」


 私の返事を聞いて四人が頷く。


「あ〜、なんだ、君の彼氏かぁ……」


「なるほど。彼氏彼氏」


「彼氏かぁ……へぇ……」


「彼氏でござるかぁ……」


「「「「……って、彼氏!?」」」」


 四人が一斉に目を丸くした。無理もない。

 私は彼がいることを誰にも話していなかったのだから。


「彼氏って、どういうこと? ボクは何も……」


 いつきが困惑した様子で自分を指差す。


「いや、君は彼氏じゃないでしょ」


「お前は彼氏じゃないぞ」


「というか、拙者はいつき殿がまともに女性とデートしているのを見たことがござらぬ。彼女、おらぬのでは?」


 私が否定するより先に、他三人が否定してくれたので何も言うことはない。


 私は自分の彼氏と、さっき見たものについて、全てを説明した。


 三年前からお付き合いしている男性がいること。


 先ほどまで自分が彼氏とデートをしていたこと。


 その彼氏を、通常なら来るのに一時間もかかる場所で目撃したこと。


 知らない女性と一緒にいたこと。


 私を見て逃げ出したこと。


 なんだか恥ずかしいし、彼氏がいることは結婚するまで黙っているつもりだったが、今はそんなことを言っている場合では無かった。


「たしかに、それは気になるな。緊急用(きんきゅうよう)連絡通路(れんらくつうろ)の存在を、一般人が知っているとも考えにくい。後に見たその彼氏とやらは、敵が化けた擬態の可能性がある」


「ねぇ、もし仮にあのヒドーダ怪人が君の彼氏……えっと……名前は……」


 めぐむは何かを言おうとして口ごもる。そういえば、まだ名前を教えていなかった。


五星(ごせい)天身(てんしん)くん……だよ」


「そう、その人に化けてるなら、その天身(てんしん)さんは、怪人のことを見ているかもしれないんじゃない?」


「……なぜ?」


「ほら、さっきのこと思い出してよ。さっき、僕たちから逃げるとき、わざわざ周りを見て、近くにいた蛾に化けて逃げたでしょ? あれってつまり、自分が見たものにしか化けられないってことじゃない?」


 たしかに、アレで逃げられるなら、最初から鳥だのコウモリだのでもっと早く逃げられたはずだ。


 思えばあの二匹が最初に化けたのも、目の前にいたゴールドブルーとゴールドグリーンだ。


「なるほど……その可能性は、大いにあるかもしれません。明日直接会って、話を聞いてみます」


「はぁ……、本当に彼氏居たのか……」


 いつきはそこでなんか体育座りで落ち込んでいるので今は放おっておこうと思う。


「あー! ボクは絶対彼女に隠し事しないし、正直で誠実な人間で、彼氏にはピッタリなんだけどなー!」


 かなり大きめの独り言を言っているが、一切無視しようと思う。


「よし、我々は今から怪人を捜索しよう。あずき君はここの現場調査を終えたら、先に帰って休んでくれ」


「えっ、僕たち帰れないの!?」


 めぐむがショックを受ける。


 そういえば今日、好きなゲームのダウンロードコンテンツが配信されるとか言って大喜びしていた。

 きっとやりたいんだろう。可哀想に。


「仕方がないでござろう。まだこの近くに怪人が潜んでいる可能性もある」


「何にでも化ける怪人なんて、探しよう無いだろ」


 たしかに。めぐむの言うことももっともだ。しかし、それでも探さなければならないのが、ゴールドファイブの使命である。


「何か他のものに化ける敵だ、市民にも注意喚起した方がいいな……、捜索は三人に任せよう。私は報道機関と掛け合って話をつける」


 そういってりゅうま隊長がその場を後にする。


「承知いたした。ではこちらで探しておくでござる。行くぞ、いつき、めぐむ」


「えぇ〜〜」


 めぐむがすっごく嫌そうな顔をする。


「ボクの方がイケメンで、誰に対しても平等に接する博愛主義者で、戦いのセンスも抜群で……」


 いつきはまだ一人でブツブツなんか言ってる。そんなに私が好きだったのか。正直、半分冗談だと思っていた。


 ――その後、三人の夜を徹しての捜索もむなしく、怪人の足取りは掴めなかった。


 逃げた怪人のニュースは各報道機関で取り上げられ、瞬く間に全国に知れ渡った。


〈つづく〉

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