事件3-3『信じてよ! ~マジカ・サンダー・チャージ〜』
〈前回までのあらすじ〉
異世界からきた魔法少女・マジカサンダー/江古田デンデンに対し、疑念を抱くあずき。
そんな中、デンデンはロボットの格納庫を見てみたいと言い出して……?
私は、デンデンちゃんに格納庫の案内をしていた。
目の前には巨大なアンコクオーが立っている。
普段なら合体を解除してから格納されるのだが、次にモグラヒドーダが出たときにすぐ戦闘に入れるよう、今日は合体したまま格納されている。
「どう、すごいでしょ!」
「うん! すごいよ! カッコいい!」
さっきはあんなに反応が薄かったのに、今は不気味なほどアンコクオーに興味津々だ。
「ちなみに、キンピカオーは?」
「ごめんね……あっちはまだ修理中だから……」
さっきの戦いで故障してしまったために、現在急ピッチで修理を進めている。
あの動きが速いモグラヒドーダに対しては、機動力のあるキンピカオーの方が有利だ。次に現れたときのために備えておきたい。
アンコクオーも素早く動けない訳では無いが、それにはより多くのエネルギーを消費し、タービンを高速回転させなければならない。
「ねぇ、ちょっとだけ一人で見て回っても良い? せっかくだからじっくり楽しみたいんだ」
「うん、分かった。私もやることあるし」
そのときブレスに通信が入った。
すあまちゃんからだ。
「ねぇ、あずきお姉ちゃん、まだなの〜?」
「うん、分かった。すぐ行くから待ってて!」
私は通信を切ると、小さく手を振った。
「じゃあ私、行ってくるから!」
そして私は、デンデンちゃんを一人残して、格納庫を後にした。
◇ ◆ ◇
格納庫で一人になったデンデンちゃんはキョロキョロと辺りを見回す。
周りには、巨大なロボット以外何もなく、シーンと静まり返っている。
「……よし」
デンデンちゃんは、周りに誰もいないことを確認すると、ポシェットからおもむろにマジカパクトをした。
蓋を開け、そこにエレメントバッジをセットすると、キラキラと心地の良い音が流れ始める。
いわゆる、変身待機音というものだろうか。
次の瞬間、デンデンちゃんはパクトを閉じ、そのまま自分の胸の前に突き出した。
マジカパクトが眩い光を放つ。
「マジカチェンジ! サンダー!」
その叫びと共にデンデンちゃんの衣装もキラキラと輝きに包まれ、どんどん姿が変わっていく。
「閃く友情、シビレビレ! 雷の魔法少女・マジカサンダー!」
完全に魔法少女の姿になると、その場で軽快なステップを踏み、決めポーズを取りながら名乗った。誰もいないのに。
一人でも魔法少女はあんなにノリノリで名乗らなきゃいけないものなのだろうか。
しかし、変身している最中の弾けるような笑顔とは一変し、その顔は再び曇る。
すると、ゆっくり巨大なアンコクオーを見上げ呟いた。
「……ごめんなさい。でも、私が友達を助けなきゃ」
デンデンちゃんことマジカサンダーが、右手の人差し指と親指を立て銃の形を作る。
―そして、そのままアンコクオーに向けた。
「壊れてしまえ。サンダーショット!」
「ダメーーー!!!」
「誰!?」
先ほどまで誰も居なかったはずの格納庫に、すあまちゃんの声が響いた。
デンデンちゃんが驚いてこちらを見る。
その瞳に映ったのは、ゴールドブルー、ゴールドホワイト、そして私の姿だった。
「嘘、なんで……」
「その手、封じさせてもらうよ」
ブルーがゴールドワッパーを放ち、マジカサンダーの指を締めつける。
これでもう魔法は使えない。
驚いて気が抜けたのか、マジカサンダーの変身はアッサリと解除されてしまった。
「騙してごめんね。私たち、実はずっとここに居たんだ」
そう。これは、ゴールドホワイトの特殊能力。
その名もゴールドビジョン。
空間に偽の映像を投影し、相手を騙すことができるのだ。
この能力を使って、誰もいない空間の映像を私たちの前に映し出し、あたかも私たちがいないと錯覚させたのである。
「ヘヘーン! すごいでしょ!」
すあまちゃんが変身を解除し、自慢げに鼻息を立てる。
「キンピカオーを壊したのも、あなただったんだね」
キンピカオーはモグラヒドーダの耳の機械、次元ホール発生装置の力で壊されたのではない。
本当に壊していたのは、マジカサンダーの魔法だったのだ。
「どうしてそれを……」
「だって本当にあの耳みたいな機械の能力なら、能力を使ったときに耳が点滅するはず。でもあのとき、耳の点滅は無かった」
やつがあの機械を使うたび、毎回あの耳は点滅していたが、あのときだけ点滅しないことに私は不自然さを覚えていた。
「それだけじゃ! それだけで私を犯人だなんて!」
デンデンちゃんは目を滲ませ叫ぶ。
「それに、あなたの反応は不自然だった。巨大化したヒドーダを見たときも、ロボットを見たときも」
「不自然……?」
デンデンちゃんが問いに、私は優しく答える。
「最初に巨大化したモグラヒドーダを見たとき、あなたは『あんなにでっかくなるの!?』って言ったけど、その反応の仕方は『でかくなること自体は知っていた』人の反応だよ」
デンデンちゃんが悔しそうにこちらを睨みつける。
「……他には?」
「二体目のロボを見たとき、あなたは一体目を見たときよりも驚いていた。しかも『ロボって、二体目居たの……』って言い方。一体目の存在を知ってなきゃおかしい」
私が話していると、いつきさんがそこにさらに付け加えた。
「それに、ボクたちにキミは『家で宿題中に穴が開いて落っこちた』なんて説明をしたけど、それなら既に変身した状態で落ちてくるのはおかしいよね?」
もしその話が本当なら、デンデンちゃんは普段から魔法少女に変身して宿題を解いていることになる。
変身したら頭が良くなるならまだしも、普通に考えたら魔法少女になって宿題する必然性は全くない。
「おそらくあなたは、モグラヒドーダから命令を受けていた。さっきメールで受信したのも、アンコクオーを壊すよう指示があったんでしょ?」
あのスマホが、別な次元と通信できるほど高性能とは思えない。
おそらくこちらの世界と何ら変わらないもののはずだ。
それに、デンデンちゃんがめぐむの言うような、恋愛ゲームを楽しむタイプにはどうしても見えなかった。
とすれば、あのスマホで連絡が取り合えるのは、この世界にいる人物に限られる。
「で、でも! 私はあなたと最初のときから常に一緒にいた。キンピカオーを壊すタイミングなんてなかったはずだよ!」
デンデンちゃんが尚も必死に反論する。しかし、それについても見当は既についている。
「モグラヒドーダが巨大化したとき、あなた、左手で無理やり私の顔を上に向けさせたよね? あのとき、右手で遠くのレッドに対してホーミングショットを打ってたんじゃない?」
先ほどの戦闘で、既にホーミングショットの性能は確認済みだ。
レッドの背中をピッタリ追いかけさせれば、電気の玉をロボットに侵入させることなど容易い。
そして、任意のタイミングでその電気玉を弾けさせることで、ロボットに高圧の電流を流し、回路をショートさせたのだろう。
しかし、二体目のロボットにはそれができなかった。
なぜなら、一回目のようにホーミングショットで操縦者を追尾しようにも、キンピカオーからアンコクオーにそのまま乗り換えられては、追尾のしようがないからである。
おそらく最初の戦いは「モグラヒドーダとマジカサンダーが初対面であり完全な敵同士」と誤認させるための演技であったが、そこで自分の能力を見せてしまったことが、却って裏目に出てしまったのだ。
「ゴールドベースに来てしばらくの間変身を解かなかったのも、ロボットの回路をショートさせるまでの間、ずっと魔法を使っていたから。だから変身を解除できなかった」
デンデンちゃんは気まずそうに私たちから視線を逸らして、何も答えない。
「なんでそんなことしたの! 人のもの壊すのって、すっごく悪いことなんだよ!」
すあまちゃんがほっぺをムクッと膨らませる。
その言葉を聞いて、デンデンちゃんはついにその場で膝をついて泣き出してしまった。
「……ごめんなさい……ごめんなさい! 私、友達を助けたくて……それで……!」
「友達? さっきの写真のピンクガールとブルーガールかい?」
ブルーの問いに、デンデンちゃんはコクリと頷く。
「下校中に突然あの怪人が現れて、二人を攫って……、『人質を助けて欲しければ作戦に協力しろ』って……それで……」
――そんな約束、モグラヒドーダが守るわけがない。
ヒドーダ怪人は文字通り血も涙も無い非道なやつらばかり。
きっと作戦が終わったら、デンデンちゃん共々皆殺しにするに決まっている。それがやつらのやり口だ。
私は、泣きじゃくるデンデンちゃんの前に屈み込むと、ポンと優しく肩に手を置いた。
「ねぇ、デンデンちゃん、私たちに協力してくれないかな……」
「……え?」
デンデンちゃんが驚いて顔をあげる。
「大切な友達を人質にして脅迫するなんて、私許せない。私たちがあなたの友達を助けるって約束する代わりに、あなたにはあの怪物を倒す協力をしてほしいの」
それを聞いて、すあまちゃんが不機嫌そうに頬を膨らませて文句を垂れる。
「いいの? その子、私たちを騙したんだよ? 悪いことしたんだよ?」
ブルーもそれに続ける。
「女の子にはできるだけ優しくしたい気持ちはあるけど、流石のボクでも敵だった相手を急に信じるのは、少々不安かな」
確かに、二人の言うことももっともだ。
だが、私はどうしても、この子を助けたいと、そう思ってしまっていた。
だってこの子もきっと、元の世界ではゴールドファイブと同じように、地球の平和を守るために戦う戦士だったのだから。
「この子なら大丈夫だよ。私は信じたい」
「でも……私なんかが……」
デンデンちゃんが申し訳なさそうに俯く。
「あなたは魔法少女なんでしょ?」
「?」
「元の世界で、悪いやつからみんなを守るために戦ってるんでしょ」
「そうだけど……私は……」
悪いことしてしまった意識から、完全に魔法少女としての自信を喪失してしまっている。
しかし、それでも私は諦めない。
「だったら、私はあなたの中にある正義を信じる! だからあなたも、私たちを、そして自分自身を信じてよ!」
私はデンデンちゃんが元の世界でどんな悪と戦い、周囲からどう思われているのかも知らない。
ただ、この子の中から感じる、ゴールドファイブと同じくらい熱い「誰かを守ろうとする気持ち」に共振し、信じたいと思ったのだ。
この子には自分への自信を、魔法少女としての自信を取り戻してほしい。
きっと元の世界には、他の二人の魔法少女には、彼女の力が必要だ。
「うん……、わかった……、でも何をすれば……」
デンデンちゃんが不安そうに見つめる。
「もしもし! 聞こえるか?」
りゅうま隊長からの通信が入った。
「こちら、あずき。今本人から確認が取れました。やはり、モグラヒドーダにロボを破壊する力はありません。そちらは?」
「こちらも順調でござるよ。今小暮博士が急ピッチで作業を進めているでござる」
りゅうま隊長といとしさんは、今研究室で博士の手伝いをしている。
実は二人には二人で重要な任務があるのだ。
「なんでぼくも手伝わされてるんだろ……」
訂正する。めぐむもその任務をさせられているらしいので三人だ。多分、メインルームでゲームをしてたところを引っ張り出されたんだろう。
声だけで不機嫌さが分かる。
「それより大変だ! 街にモグラヒドーダが出現した!」
「嘘!? 私まだ連絡してないのに……」
どうやら、デンデンちゃんがロボットを破壊したら連絡をする手筈だったらしい。
しかし、モグラヒドーダは痺れを切らして出てきてしまったのだろう。
ヒドーダ怪人は短気なやつが多いのだ。
「俺たちも格納庫へ向かう。全員揃ったらすぐにアンコクオーで出撃だ」
「え!? でも博士の開発は!」
博士の今開発しているものは、私としてもできる限り早く完成させてほしい物。遅れて欲しくない。
「なぁに、私を舐めるな。ここまでくれば、手伝いなんて要らないよ」
ブレスから大人な女性の声がする。
この声の主はゴールドファイブの創設に携わった考古学者にして、ゴールドファイブの変身システムの開発をした科学者でもある、小暮イヴ博士である。
「それより、早くモグラヒドーダを止めろ! 私の考察によれば、やつの次元を超える能力は他の世界にも多大な影響を与えかねない」
博士の考察に間違いはない。いつも的確だ。
「分かりました! 私たちは先に待機しておきます」
「あぁ、頼んだ!」
私は通信を切ると、ゴールドワッパーによって締め付けられたデンデンちゃんの手をそっと握り、その瞳を見つめた。
「えっ、何急に!」
「お願い! 私たちと一緒にアンコクオーに乗って!」
◇ ◆ ◇
ここは、アンコクオー内部。
コクピットには既にホワイト、ブルーの二人が搭乗している。
後は研究室からレッド、イエロー、グリーンが戻ってくれば発進可能だ。
私は、デンデンちゃんとともに、アンコクオーの動力室で待機していた。
動力室の壁には小さなモニターが付いていて、そこからコクピットや外の様子を確認できるようになっている。
「ここ……何……?」
「ここは動力室、あなたにはここで、この機械に直接電気を供給して欲しいの」
そういって目の前の機械を指差す。
大きな鉄の棒が二本生えた四角い機械。
謎の英語が書かれたプレートやランプやメーターが付いているが、それぞれ何を意味してるかは、正直私にもあまり分からない。
「直接電気って……それこそショートしちゃうんじゃ?」
「大丈夫、これはもしものとき、ロボットにエネルギーを直接供給するための装置だから」
と、少なくとも私はそう博士から聞いている。
「でもなんで……?」
「アンコクオーはパワフルな分、機動力に欠ける。動きの速いモグラヒドーダに対しては不利。そこで、タービンを莫大なエネルギーによって高速回転させて、無理やり機動力を高めて対抗するの」
実は先ほど、マジカサンダーの電気を利用した作戦を、博士とレッドに提案しておいたのだ。
ロボットにかなり負荷がかかる作戦なので、博士は嫌がったが、根気強く説得してなんとか渋々承諾してくれた。
あれほど嫌がっていたということは、多分あとのメンテナンスがよほど大変なんだろう。
そんなことを考えていると、装置の方を見てこちらに背を向けたデンデンちゃんが尋ねてきた。
「協力する前にさ……、一つだけ聞いてもいい?」
「何?」
「いつから……怪しいって思ってた?」
「最初にあの怪人を、モグラヒドーダを見たときから。どう見てもネズミにしか見えない怪人を、あなたは一発でモグラって言った。そのときから、ちょっとおかしいなって」
ただ、その時点ではまだ「かなり勘のいい子だな」と違和感を持つ程度だった。
「そっか……そんな前からか……」
デンデンちゃんが、自嘲したように笑う。
そんな話をしていると、ブレスに通信が入った。
「こちらレッド、ゴールドファイブ全員搭乗した。これより緊急発進する」
◇ ◆ ◇
「あぁイライラする! 作戦にいつまで時間かかってるチュー! まさか、ゴールドファイブに捕まって殺されたチュー!」
アンコクオーが現場に到着すると、街では既に巨大なモグラヒドーダ暴れていた。
どうやら、マジカサンダーからの連絡が一向にこないことにご立腹のようだ。
そのマジカサンダーは今、アンコクオー内部の動力室の機械の前で待機している。
謎の機械に取り付けられた大きな鉄の棒二本を掴み、呼吸を整える。
「私が合図したら、電気を供給して」
マジカサンダーは黙ってコクリと頷く。
その目はもう、さっきの泣きじゃくる子どもの目ではない。悪と戦う一人の戦士の目だ。
アンコクオーは巨大モグラヒドーダにゆっくりと近づく。
こちらに気づいたモグラヒドーダが大きな爪を構える。
「今度こそお前を墓穴に埋めてやるチュー!」
モグラヒドーダの耳がチカチカと点滅する。
次元の穴が開く合図だ。
「今だよ」
私の合図を受け、マジカサンダーが力いっぱい叫んだ。
「マジカ・サンダー・チャージ!!」
その瞬間、ものすごいスピードでアンコクオーが動いた。
一瞬にしてモグラヒドーダの眼前までくると、次元の穴へ逃げ込むより先にパンチを食らわせる。
強烈な一撃を受け、ふっ飛ぶ怪人。しかし、攻撃は一切止まない。
飛ばされた怪人の身体が地面に落ちるより先に背後に回り、そこにまたパンチを食らわせる。
そして相手がふっ飛ばされたら、また高速移動によって背後に回りパンチ。
怪人の身体は空中で何度もパンチを受け、もはやお手玉状態だ。地面に着地する暇もない。
あまりに動きが早すぎて、ロボット内も激しく揺れる。
私は手摺りに捕まってなんとか踏ん張る。
「すごいすごい! こんなに速くなるなんて! 予想以上だよ!」
「うっ……ありがと……」
かなり力を消耗しているのか、マジカサンダーの顔がかなり青白い。そろそろ決着を付けないとまずいかもしれない。
一方、モグラヒドーダはようやくお手玉から解放され、地面に叩きつけられた。
モグラヒドーダは近くにあったビルに手をついてなんとか立ち上がる。
「これでとどめだ! 更にエネルギーのチャージを頼む!」
レッドの声に、マジカサンダーが弱々しく答える。
「うぅ……はぃ……」
散々攻撃されたモグラヒドーダは、足がふらついてもはや立っているのもやっとだ。
対するマジカサンダーも疲れからか足がふらついている。
お互いに限界が近い。キメるなら今しかない。
「超必殺! アンコク電撃ビーム!」
レッドの叫びとともに、アンコクオーの胸部から電気を帯びたレーザーが照射され、モグラヒドーダの体を一瞬にして焼き払った。
勝った。まごうことなき大勝利だ。
「やった! やったよ! デンデンちゃん!」
しかし、マジカサンダーの様子がおかしい。
――次の瞬間、突然アンコクオーが激しい火花を散らした。完全にショートして動かなくなる。
「どうした! まさか、また!」
レッドからの通信が入る。
「あーいや、えっと……そういう訳じゃなくて……ちょっと、速く動かしすぎた……っていうか……」
私は、デンデンちゃんの背中を擦りながら答える。
「ごめんなさい……吐いちゃった……」
動力室の機械に、デンデンちゃんの吐いた“ソレ”が入り込み、そのせいで完全に壊れてしまったのだ。
修理には時間がかるだろう。
「あー、すまん。よく頑張ってくれたな……本当に感謝する」
「ゆっくり休むでござる」
デンデンちゃんは、息も絶え絶えになりながら答えた。
「ありがと……ござい……うっ、まだ出る!」
少女の苦しそうな声とともに、アンコクオーは更に激しく火花を散らした。
◇ ◆ ◇
しばらくゴールドベースのメインルームで休んだあと、デンデンちゃんは私に案内されるがまま、研究室にやってきた。
研究室もメインルーム同様見えるもの全てが金ピカ。壁も床も、机も椅子も、棚やそこに置かれた実験器具にいたるまで全て金色で、少し落ち着かない雰囲気だ。
部屋に入ってすぐの辺りに、りゅうま隊長、いとしさん、そしてその隣に白衣姿にボサボサな紫髪の赤縁眼鏡をかけたお姉さんが立って待っていた。
この紫髪のお姉さんこそが、このゴールドファイブを陰から支える縁の下の力持ち、小暮イヴ博士である。
よくみると、博士の横には、まるで空港の金属を探知するゲートのような機械が置かれている。
「ようこそ……! 君が噂の魔法少女だね!」
博士が元気よく声をかける。
「はい。でも、どうしてこんなところに……? それに……」
デンデンちゃんは、不思議そうに博士の横にある機械を見つめる。
「あー、この機械は……」
そのとき、突然デンデンちゃんの背後に何者から忍び寄り、その手で両目を隠して見えなくした。
「うわっ、ちょっと! 何!」
「だーれだ!」
「嘘……、この声……」
デンデンちゃんは、目を隠す手を払い、後ろを振り返る。そして、後ろにあった光景を見て目に涙が浮かべる。
「法子ちゃん! まつりちゃん! 無事だったの!?」
デンデンちゃんの後ろに立っていたのは、モグラヒドーダに人質にされていたはずの二人の少女。真地魔法子ちゃんと、不忍まつりちゃんだったのだ。
「あったりまえだのクラッカー、あたしはそう簡単にやられないよ!」
法子が得意そうに答える。
「そちらも元気そうで何よりですわ」
まつりちゃんもそう言って笑う。
デンデンちゃんは、言葉より先に二人を抱きしめた。
「よかった……、本当によかった……!」
「えへへ、ちょっと苦しいよー」
「そうですの? 私はこれくらいがちょうどいいですわ」
嬉しそうに笑い合う三人。再会できて良かったと心から思う。
「でも、なんで……?」
友達を抱きしめたまま、デンデンちゃんが顔だけこちらに向けて尋ねる。
「いとしさんの……、ゴールドイエローのお陰だよ」
私がそういうと、博士がそれに続いて得意げに解説を始める。
「彼の能力、ゴールドサーチによる分析で、先に装置の仕組みと、やつの作る次元の穴が繋がっている時空の座標データは入手していたからね。あとは時空間移動ゲートを開発するだけだったんだよ」
最初の戦いのとき、デンデンちゃんが落ちてきた瞬間、実はイエローはゴールドサーチを使っていた。その時点で開発に必要な全てのデータは揃っていたのである。
おかげで博士は時空間移動ゲートを開発し、戦いから戻ったデンデンちゃんが休んでいる間に、捕まった二人を助けに行けたというわけだ。
「まぁ、とは言っても流石にりゅうま君やいとし君、それからめぐむ君に手伝ってもらったけどね」
そういって博士がボサボサの頭を掻く。
それでもこの短時間で時空間を移動する装置を作れる博士は、やはり天才としか言いようがない。
博士が横にある機械のスイッチを押すと、機械の内部にモグラヒドーダが作っていたような次元の穴が空いた。
「さぁ、もう元の世界へ帰れるぞ。親御さんも心配しているだろうし、今日は早く帰りたまえ」
「このゲートはいつでも開けておくから、また好きなときに遊びに来るでござる」
いとしさんも優しく話す。
三人はそれぞれこちらを向いて姿勢を正すと、その場で深々とお辞儀した。
「本当に……ありがとうございました!」
私は笑顔で答える。
「向こうの世界でも、頑張ってね!」
「はい!」
そうして少女たちは、ゲートを通って元の世界へと帰っていったのであった。
――それぞれの世界には、それぞれのヒーローが居て、それぞれの戦いがある。
私たちも私たちの世界を守るために、全力で戦おう。
そう心に誓うのであった。
戦え! 超金星ゴールドファイブ!
この地球に、平和を戻す、その日まで……。
〈つづく〉




