侵略Ⅵ
三堂が近付くと自動で扉が開く。そこでも多くの軍人がひしめいており、キーボードを打ち続けながら会話をしている姿が見られた。
階段状に敷き詰められた床と一体になった机とパソコン。それは正面にある大きなガラス越しに何かを見ながら作業をしているように見える。
アリスは思わず彼らの体が向く先へと視線を向けると、ガラス越しにとんでもないものがあることに気が付いた。
「航宙、艦!?」
「うむ、我が国とEMC軍の共同開発した新型だ。全領域対応特別強襲艦『グルファクシ』。全長五百メートルを超える大型艦だよ」
三堂は誇らしげに胸を張る。
全体的に上から見ると二等辺三角形に近い形をしており、トライエースの射出口や大口径の砲門に合わせて、真っすぐな区画が見られる。後部には大きな翼が二対あり、正面から見るとアルファベットのXを横に細長くしたようであった。艦橋は滑らかにせり出ており、そこの手前にはいくつか砲台らしきものが鎮座していた。
白みがかった灰色の地に白と赤がアクセントに用いられており、ライトの眩い反射光が金属特有の光沢を感じさせる。
「もしかして、これのシステムにお父さんたちが?」
香織が恐る恐る振り返ると、響と美亜は先程見たような嬉しさと悲しさが混ざったような表情で頷いた。
「あぁ、機体制御を始め、砲台の動き方や防御機構の反応。それを可能な限りコンパクトかつ最適になるようにしたつもりだよ」
どこか自信無さげに応える響に、美亜は苦笑いを浮かべる。
「机上の空論にならないことを祈るわ。それで三堂さん、私たちはどこに行けばよいのですか? ここのパソコンを貸していただける感じでしょうか?」
「いえ、実際に中に乗っていただいての作業になります。外からでもできますが、可能な限り回線を通さない形で行いたいのです」
ネット回線を通せば、傍受される可能性が上がる。例え基地内であっても、スパイがいる可能性を三堂は否定するのは難しいと話す。その点、乗り込んでの作業であれば、スパイも中へと乗り込む必要がある。つまり、確実に犯人を絞り切れるという判断だ。
「…………」
「おい、ジョン。どうしたんだ?」
「いや、ちょっと、な」
三堂が部屋を通り抜けて、更に先へと進んでいくが、ロンが足を止めて動かないジョンに話しかける。アリスのように見た光景に驚いて止まっているようにも見えたのだが、ジョンはすぐにロンの言葉に反応して歩き出した。
「どうかしたんですか?」
「――――ネームレスがあった」
「えっ?」
アリスは何気なくジョンへと問いかけたところ、想像だにしない返事に思わずガラスの向こう側へと視線を戻した。
整備員があちこちで点検をしていたり、荷物を積み込んでいたりする中で、トライエースらしきものが壁際に立っているのが見えた。遠目ではあったが、アリスは特徴的な青い装甲の色を見て、確かにネームレスがあると確信する。
「なんで鹵獲機が新型の航宙艦に……?」
「何かしらの作戦、というには急すぎるな。普通、バラシて解析するんじゃないのか?」
シャルもネームレスの存在に気付いたようだが、その扱い方に父親が軍人であるからか疑問があるらしい。
その声が三堂にも届いたのか、少し笑いながらアリスたちに聞こえるように声を張り上げた。
「先程の会話で何か疑問に思わなかったかな? この艦はどことの共同開発だったかと」
「えっとEMU軍ですよ、ね?」
アリスが恐る恐る答えると三堂は大きく頷いた。そして、更にアリスたちへと問い返す。いくら協力国とはいえ、このような艦を共同で作ることが許されるのか、と。
「もしかして、エリシウムは――――」
「あぁ、君たちの考える通りだ。エリシウムは、地球保全連合に加盟する。もうすぐな」
本来、一般人が知らない機密情報が幾つも目から耳からと入って来たアリスたちは、思考が追い付かずに表情が固まってしまった。




