侵略Ⅶ
エリシウムが地球保全連合に加盟することは、十分に可能である。何が問題かと言えば、そんな気配が今までなかったことだ。
「今までそんなニュース聞いたことないです。そうだよね、お姉ちゃん」
「う、うん。そんな大切な話なら、コロニーのニュースでも流れてるはずです。議会で与野党交えて議論しないと、そんなことは――――」
アリスも香織の言葉に頷いて、一般的な国会での法案の通し方を思い浮かべた。どんなことも、民主主義国家である以上は議論した上で投票を行い、可決されなければ何事も動くことはできない。
しかし、それを聞いた三堂は大きく頷いた。
「その通りだ。ちゃんと公民の授業で学んでいるようだね。じゃあ、私から質問だ。現在、この国は他国から侵略をされている。自分たちの力だけで叩くことは可能だが、当然、仲間がいた方が被害も少なく済むだろうし、戦争を早く終結させることもできるはずだ」
三堂はグルファクシへと向かう通路を歩きながら、腰の後ろで手を組んで肩ごしにアリスと香織を見る。
「与党と野党。ここで反対をする議員が半数もいると思うかな?」
「仮にどちらの党にも売国を考えている議員がいたとしても、キンメリアが圧倒的に有利という訳でもない。もし、キンメリアが敗北ないし撤退をした場合は、国民は反対した議員をどう見るか」
響も真剣な顔でアリスたちを見る。
勝てば官軍、負ければ賊軍。そんな言葉があるが、いくら金や地位を相手国に約束されたとしても、この攻撃の最中に己の命が保証されているわけではない。そして、仮に上手く行ったとして、本当にその対価が払われる保証も、また無い。
正直、分の悪い賭けなどというレベルではない。議員になるような頭の持ち主が、それを理解していないはずがないのだ。仮にいたとしても、それが半数を超えることなどあるはずがない。
「ま、もし、そんなことを実行したら、最悪、外観誘致で死刑を求刑されて、裁判で何年も争うことになるかもしれないな。流石にそれだけだと証拠が薄すぎて無罪放免になるだろうけど」
ロンが言うとシャルも違いないと同意する。
そんな中、時折、天井や壁の向こうなど、何もない所を見て難しそうな表情をするジョンにアリスは気が付いた。
「ジョンさん、何かあったんですか?」
「いや、今、ここがどれくらいの深さで、ミサイルやトライエースの攻撃にどれくらい耐えられるのか気になったんだ。シェルターに併設された軍の施設ともなれば、相当な強度だと思うけど」
ジョンは、そう言いながらもしきりに視線を動かしている。以前、ネームレスに同乗した時とは違い、かなり警戒している様子にアリスは違和感を抱いた。それはジョンが魔法使いであるということから、何かしらの危機を感じ取っているのではないかという考えが浮かんだというのが一番大きい。
「さて、グルファクシの艦橋に乗ってもらうが、一つここで提案をしたいことがある」
三堂はグルファクシへと伸びる通路の扉の脇に立ち、アリスたちに振り返った。その視線は響や美亜ではなく、ジョンへと向けられている。
「君さえよければ、エリシウム軍に入ってほしいのだが」
「――――だから、ネームレスがここに?」
ジョンは特段驚いた様子は無く、むしろ、その質問が来るだろうと待ち構えていたかのように三堂へと問い返す。
「そうだ。君が知っているかは知らんが、あれを動かせる者はいなかったと聞いている。起動こそできるが、ロックがかかっていて内部を調べることこそ、何とかできても動かすことはできない。何か心当たりがあるのではないかね?」
「……まぁ、無いと言えば噓になります」
「聞けば、初めてのトライエースの操縦で多くの敵機を撃墜したとか。EMU軍の予備兵などと言わずに――――」
そこまで三堂が言葉を口にしたところで、警報音が通路のスピーカーから流れだした。




