第753話 噂が噂を広げていく
仕事もまあまあ落ち着き、爺にもお忍びでリオーネに行ってもいいっつー許可はもらえた。なので、ハヤシライス以来だが『エディ』の装いでケントんとこの『スバル』に向かうことにした。
リリアもいっしょにと思ったけれども、国王の婚約者になったあいつの姿絵はちらほら出回っているらしいからっつーことで、却下された。エディを護衛にしたにしても、変な噂が立つのは嫌なんだと。
(まあ、『エディ』は目立っているしな?)
ケントのマブダチって言うのは一部の奴らに知られているし。王室御用達の店として『スバル』は国内外でも噂が広がっているとも聞くし、冒険者らの中でも憧れの店として人気なのは当然。
味もピカイチだが、『ポーション』になるパンとしても知名度が高くなってきた。いつも忙しそうだが、休暇日はちゃんとしているのとギルド経由で従業員を増やしたから助かっていると本人にも聞いたしな?
この前も、ハヤシライスっつー、うんまい飯は食わせてもらったが……異世界の料理はどこまで追求してもキリがないとケントは言っていた。前世の記憶を照らし合わせても再現する数が星くらいあってもおかしくないんだと。ヴィンクスも食いながらそんなこと言ってたな?
「なあ! オークション限定のポーションパンが変わるそうだぞ?!」
「マジ?? カツサンド無くなるのか??」
「それ以上に高額で美味いものらしいぜ!! 競り落とし出来るかな……」
「行こうぜ行こうぜ!!」
俺とすれ違った冒険者連中の話題に、少し興味が傾いた。
リオーネもだが、生産ギルドで定期的に行う『オークション』。
高額な商品を対象に『競り落とし』をして、資産運用の促しをするためのイベントだ。リオーネは三代前から取り入れた由緒正しいイベントとされているし、王都のギルドはもっと昔から続いているとされている。
だが、リオーネはケントが来てから彼の『ポーションパン』が特に人気の商品になっていた。表の店には出せない裏メニューがちらほら。それが一新したとなれば、俺もすごく気になる。競り落とすとまずいが、覗きに行くか? いいや、ケントに聞いた方が早いか?
(聞けば食わせてもらえるかもしれないし??)
金が必要なら、エディとしてもちゃんと購入するからと言えば大丈夫か。しかし、裏メニューのラインナップを変えるくらいにオークション限定の商品を増やすとは。俺直属ではないし、ロイズが変えるのは自由だからそこはあまり口出ししても……な?
だから、ギルドには行かずに『スバル』の方へ行くことにした。
「あ、うん。今日からオークションの方変わったんだ」
午後の仕込みが落ち着いたあたりに向かったのがよかったのか、ケントは住居スペースに俺を上げてくれた。下の方も休憩にするらしく、カウルとラティストだけが待機しているらしい。二人がそうなのは、生地の仕込みが関係しているんだそう。
「ロイズの依頼か?」
「うん。そろそろ変えないと、商品を真似する人たちも増えるだろうって」
「ポーションパンにすることは無理でも。食事としちゃ出来なくもないしな?」
「そうらしいよ。今回のもそうなる可能性高いけど」
「なんのポーションパンなんだ?」
「えっと。先に出した方がいいかもね?」
ステータスで収納魔法から出してくれたのは、『塊』に等しいもんだった。紙に包まれていたが、透けて見える中身は『肉』の分厚いもんが見えたぜ。
「肉? ハンバーガーって、前に食べさせてくれたのか?」
「それの。具を倍量にしたやつ。効果もすごいよ~」
「これ以外にもあんのか?」
「魚とかエビのフライとか。とりあえず、四種類くらいだね?」
「食っていい?」
「いいよ。ちなみに、これまだ改良予定だから感想ほしいな?」
「お!」
包みを開けたら、たしかにあの冒険者たちが羨ましがるような中身が出てきた。肉とチーズがそれぞれ四枚以上挟んである代物。ひと口食えば、夢のような味わいが広がった!! 効能は『完治』とかが主だったらしいが、俺今怪我とかしてないから特に問題はなかったな?
次回は金曜日〜




