第723話 当日の移動(女子②)
せっかくだからと、ルカリアさんやリリア様と馬車に乗ったのだけれど。お二人は私より少し年下のはずなのに、大人っぽい雰囲気ではあるが若々しくて眩しいお美しさを持っていらっしゃる。
そんなところに、錬金術師の妻になったとはいえ、市井だった年増の女が加わっていいものかと思ったが、旦那様のヴィンクスさんが誘われたなら……と、少し不満になりながらも了承していただいた。
「改めて。はじめまして、レイアさん。リリアと申します」
「は、はじめまして! レイア=エヴァンスです……」
「そう気負わずに。たしかに、私は王妃候補という立場ですが。今日から少しの間は『エディ様の恋人』という関係ですもの。……少し難しいですけれど、仲良くしていただけませんか?」
「え、あ、は……い」
「レイアさんの事情は軽く聞いております。ルカリアと少し似た精霊の事件があったと。……無事でよかったですね」
「……はい」
そう。この間聞いたのだけれど。
パン屋の副店長のラティストさんの奥さん?恋人さん?のルカリアさんは、私が少し前に目を取られそうになったときと同じく、『精霊』にもてあそばれそうになったらしい。そこは無事に解決したそうだけど……身分は違えど、似たような事件に遭うだなんて思わなかったわ。ルカリアさんはともかく、私なんてどこにでもいそうな……と言ったら、ヴィンクスさんを貶すことと同じらしいので強くは言わない。どうやら、私は平凡よりは上くらいに顔立ちが整っているそうだから。
「これから、王家の保養地のひとつに向かうのですけど。……せっかくですし、私たち。『敬語』を外しませんか?」
「まあ、素晴らしいわ。リリア!」
「はい?」
まだお話するのに物凄く緊張が解けていない私なのに、お嬢様たちは……なんというか、大胆だ。いや、ルカリアさんもラティストさんの恋人になるために、結構大胆行動をしてきたって聞いてたから……まさか、リリア様も?
「女の会話に男が口を挟みこまないときだけですわ。レイアさん……さすがに、呼び捨てはおいやでしょうから、やめますが」
「い、いえ!!? わ、わたし、なんて年上だけです、し!!」
「まあまあ、レイアさん。じゃあ、わたくしから『レイア』と呼ぼうかしら?」
「……る、るる、ルカ、リア……ちゃん?」
「そうね、年上からするとその愛称もたしかに。では、私も同じように」
「り、りりり!!?」
「ふふ。結構楽しい人ね、ルカリア」
「花屋の看板娘だけれど。普段は大人しい方でしてよ? さすがは、エヴァンス氏の慧眼に適った奥方」
普通。
普通過ぎて、王族や貴族の方々のイメージがどんどん崩れていくような気がしてならない。けど、言われてみれば陛下である『エディ様』も普段は年相応の砕けた物言いだったはず。
友だち……などと、いきなりは畏れ多いから。まずは、『交流』から始めてみよう。目の関係で家族やお客さん以外で『友だち』なんて関係の人たちは、最近でもエリーとシェリーしかいなかった。そっちにはサーラちゃんが乗って満員になったから仕様がないもの。
この機会。あのメンバーの中では既婚者である私だからこそ、同乗出来るのだと納得してから……頑張って、リリア様を『ちゃん付け』で呼ぶことが出来たのだ。
そのあとは、保養地の話題に変わり、温泉地での過ごし方についても色々教えてもらったの。考えたら、目が見えるようになってからの……旅行ってヴィンクスさんともまだだったわ。
次回は金曜日〜




