14話 法国
14話 法国
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「お嬢ちゃん、そろそろ起きてもらわねぇーと」
……え?
だれ?
目が覚めると、見覚えのない男が私の顔を覗き込んでいたました。
心配そうな目を私に向けていて、特に悪意などは感じませんでした。
「お、やっと起きなすったか。しばらく起きないけど心配いらないって、半信半疑だってんけんども本当だったんね」
あたりを見回します。
ここは、どこでしょう?
私はなんでこんなところに……
そうです、私はフローラに変な薬を飲まされて
それで……
「おじさん、ここはどこですか?」
「ここはって、要望通り法国だけんども」
法国!?
王国から帝国挟んで正反対じゃないですか。
フローラに薬を飲まされて、それからずっと寝ていたってことですか?
かなりの距離です。
私よく起きませんでしたね。
そしてよく生きていますね。
きっとフローラのことですから、何か細工をしたのでしょうけど。
え?
ちょっと待ってください、帝国はどうなったんですか?
帝国と、王国の戦争は……
私がいなくなったってことはメーンベルトの作戦は失敗したと言うことになります。
指揮系統の混乱もないままなので情報はすぐに帝国軍に伝わって、皇帝は帝国軍をとどめておく必要もなくなり一点攻勢に出るはずです。
それに王国がどれほどの時間耐えられるのかって言うと……
「あれから、どれぐらい経ってますか!?」
「あれからってーと?」
「えーっと、私を船に乗せてからです」
「王国を出てからって~と、ざっと2セマィぐれーかね」
「もうそんなに!?」
まずいです。
私は戦場を直接目にしたわけではありません。
でも、王国の領土内に入った上で王国軍と戦いながら作戦の報告を待っていられるほどの余裕があることを思うと、とても楽観的に見ることはできません。
兵の消耗が激しければたとえ皇帝の命令でも軍がそこまで従うか不透明、軍の暴走はないにしても一旦引くと言う行動に出るべきです。
でも、そんな様子はなかった。
帝国が引けば王国は堂々と帝国に戦争で勝利したと、それで国中が大騒ぎになるはずですから。
「そんなに言うたって、王国から法国行こ思うたらそんなもんや」
「私、王国に戻りたいです」
「んだ!?」
一刻も早く戻らなければなりません。
今戻って私に何かできることがあるのか、そんなこと考えるのは後です。
私は王国に生まれたものとして、ただ王国を守りたいのです。
勘当されたとはいえ、グベッリーニ公爵家の長女なのですから。
「やらなければいけないことがあるの、私には……」
あっ、どうしましょう。
私結構狙われてるらしいのでした。
迂闊に話すわけには行きません。
とりあえず、適当な理由で誤魔化さなければ、
「……まぁ、報酬はたんまりもらってーし荷物のついでに送るんは構わないんだけんど」
「本当ですか!?」
よかったです。
これで、王国に戻れます。
私の身一つでは、法国の港町から王国までなんてどれほど時間がかかるかわかりませんし。
「法国来て何もせずん帰るって何がしたかたん?」
「……それは」
やっぱり、気になりますよね。
親切なおじさんです。
話しても、
いえ、私はそうやってずっと間違えてきたのです。
フローラも、サクラも、
私に都合のいい味方なんて存在しませんし、人を信用するのはもうやめたのです。
彼は私にとって都合がよかった。
それだけで十分です。
私と彼の間に個人的なつながりができる必要なんてないのですから。
「まぁ、詳しい事情はいいけん。お嬢ちゃんには理由があるらしいね、数日は待っててもらうんでな荷物下ろして積み込んだら王国に向けて出港じゃ」
……ごめんなさい。
でも、
「ありがとうございます」
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数日後
私は来たる日に向けて作戦を考えていました。
と言っても、王国の現状も何もわからないのでただの妄想といった方がいいのかもしれません。
でも、こうでもしていないと狂ってしまいそうなのです。
もう王国は帝国に負けてしまったのではないか、そんな想像が脳裏に張り付いてしまっているのです。
「出港は延期? いつにですか!?」
「わからん」
「……そんな」
ある日、おじさんからそんなことを告げられました。
今すぐ出ても間に合うかどうかすらわからないのに、その上期限なしの延期って……
しかも、
「仕方のないことじゃ」
「今日ついた船の者に聞いたんだが、我らの船が出港した後すぐに王国で内乱が起こったらしいでのう」
「そんな危険なとこ戻れるはずがなかろうて、なんの商売にもならんいうて」
「そんなの、誤報かもしれないじゃないですか」
王国内で内乱が起こったとの知らせが入ったそうです。
そんなの信じたくありません。
でも、簡単に想像がついてしまいます。
「それを確かめてるところじゃて、もっとも誤報の可能性はあまりないと思うっちゃけどのう」
「どちらにしても、安全が確認されるまでは下手に動けなかろうて」
理解はできます。
でも、
「お願いします!」
「私には戻らなければならない理由があるんです」
このままでは王国が、完全に滅びてしまうかもしれないのです。
私の生まれ育った王国が……
「だめだ」
「……そんな」
私がいなくなってメーンベルトの作戦は遂行不可能なものになりました。
ですが、メーンベルトの王国民からの指示が完全になくなったわけでもありませんし、あそこまでいけば真実を知っていたとしても帝国に協力する下級貴族や商人は少なくなかったはずです。
あとはそれらをうまいこと操って以前のように今度は王都で国民に武装蜂起させればいいのです。
すぐに鎮圧されるかもしれませんが、それは大きな隙になります。
そこまでされれば上級貴族でも靡くかもしれません。
内乱ということは、第一王子派閥が丸々飲み込まれた可能性があるのかもしれないのです。
「お前さんを我々に頼んだあの女の子の気持ちがわかるってもんじゃ」
「お前さん、このこと知っておったもしくは想像しておったんじゃろ?」
「その上で逃げようとしなかった」
「あんな危険な場所にはいけん」
「そんな、私はそれでも王国に」
カローイ様はきっと孤独な戦いを強いられています。
帝国も、第一王子も、周りを全て敵に囲まれてしまっているかもしれないのです。
魔女だって自らの目的のためにどんな行動をとるか、想像できません。
だから、私が……
「お前さんのためじゃなかろうて」
「我々はそこまでのするほどの金はもらっとらん、ただそんだけのことじゃけん」
「いく当てもないだろうし、しばらくのめんどうぐらいは見てやっても良いぐらいにはもらっているがな」
「……すいません」
そう、ですか。
このおじさんは、私にとって都合の悪い人でした。
ただそれだけです。
優しくしてもらったからとか、勝手な期待私はしていませんから。
「でも、結構です」
「私は一人でも王国に行きます!」
「あ、おい。お嬢ちゃん!」
待っていてください、カローイ様、お父様。
いえ、たとえ誰もいなかったとしても私が最後まで王国のために尽くします。
全てを捨ててでも、
たとえ無駄だとしても、
全ては王国の存続のために……
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