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12話 悪役令嬢

12話 悪役令嬢

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 あれ、ここは?


 寝ていた地面は酷く硬くほんのりと湿っていて、身体中が痛くて特にお腹の辺りが……

 私なんでこんなのとろで寝ていたんでしょう。


 私は、確か……


 そうです!

 サクラに刺されて、気を失って、

 おそらくは、意識のない間にここに運ばれてきたのでしょう。

 ここは地下牢と言ったところでしょうか?

 大きな屋敷にはどこにでもあるものではありますが、私が魔法を使ったのを見てここに入れているということはよほど頑丈な牢とみるべきでしょう。


 ……殺されませんでしたね。


 私、まだ生きています。

 いくらでも殺せたのに。

 ということは、初めから殺すつもりなんてなかったということなのでしょう。


 そもそも、私を利用する予定で作戦を立てているのです。

 殺すのを避けるための不意打ち、殺すのを避けるための強力な一撃といったところなのでしょうか。


 だとしたら、なぜあんな話を私にしたのでしょうか。

 あんな話、私が敵対するに決まっています。

 確かに私は初めから疑念を持った上で彼を呼び出しましたが、彼の話をきくまでまだ確信にはいたれていませんでした。


 つまりは、私の意思などどうでもいいということなのでしょう。


 そうですね。

 確かに、私の意思なんて必要ないのかもしれません。

 他の王族や貴族ならともかく、私がサラーティ王国に反旗を翻す理由は十分です。

 そしてそれを多くの人が認知しているそうですし。

 私の体さえあれば、その意思も思想もどうでも良いというわけですか。


 ……サクラ


 いえ、これは考えても仕方のないことです。

 彼女はそもそもこの時のために身分を偽って公爵家のメイドになったのですから、初めから私の味方などではなかったのです。

 裏切られたと思う方がおかしい……


 私に残された唯一の味方だと思っていました。

 幼い頃からずっとそばにいて、私少しあなたに憧れていたんですよ。

 自由人で、美しくて、強くて、


 はぁ


「よかった、目が覚めたのね」


 誰、ですか?


 部屋には一人だと思っていたのですが、さすがに見張りぐらいはいた様です。

 ですが、どこにも人影がありません。

 何もないところから声がします。


 もしかして、透明化?


 でも、私が気配すら感じられないレベルとなると相当な魔法の腕です。

 そんな人がそうぽんぽんいるとは思えませんし、ましてや牢の見張りなんていう動けないポジションに置くのは悪手でしかないと思うのですが。


「マルシア、久しぶり」


 ……フローラ!?


 本当に、本物?


 よく私の前に顔を出せましたね。

 しかも、昔のような、私を騙していた頃のような笑みを浮かべて。


 私を笑いに来たのですか?

 何も気が付かずにあなたに協力し、みすみすお父様とカローイ様の洗脳に加担したことを。

 その後、また今度は帝国がバックに居る組織に手を貸して売国奴に成り下がっていることを。


 ここに彼女が居るというかとは、やはり魔女は帝国と組んでいたのです!

 敵の話を真に受けるべきじゃありませんでした。

 全てを私に話すはずがないのですから。

 私には話して良いことしか話していないはずです。


 だから、彼が魔女に触れなかったのなんてなんの証拠にも……


 いえ、冷静に考えるとそれでも魔女と帝国は繋がっていないと思えてなりません。

 そもそも、もし組んでいるのならこんな面倒なことする必要がないのです。

 私の体すら要らなくなるのですから、無駄に生かしておく理由もなくなります。


 しかし、ここはおそらくはメーンベルトの拠点の地下牢。

 つまりは帝国の勢力下です。

 ここに魔女がいる。

 それだけで状況的には……


 もしかして、フローラとしては帝国に協力しているけどフローラが魔女だということを帝国は認識していない?

 あるいは、フローラが魔女だということは知っていても魔女が現在王国をほぼ乗っ取っていることを知らないかです。

 どちらにしても、魔女が完全に帝国の味方とは言えません。


 明かさない理由は、魔女には独自の目的があるからでしょうか?

 少なくとも王国を帝国に併合させることを目的に、帝国の味方として動いているように見えません。

 なぜなら今の現状を明かすだけですぐにでも帝国は王国を手に入れ、その功績で魔女は莫大な富と地位を約束されるはずだからです。

 それと天秤にかけてでも得たいものがあって、それを得る算段がすでについているということでしょう。


 魔女には今王国を帝国に支配されては困る理由がある様です。


 ……


 お父様の、カローイ様の仇です。

 私の人生を破壊した張本人です。

 そして何より、親友だと思っていた私の気持ちを裏切った子です。


 私は、あなたのことが好きだったのですよ?

 フローラ。

 それは親愛であり、もしかしたらちょっとはそういう愛もあったかもしれない、それぐらいには好きでした。

 初夜は3人でなんて妄想したぐらいですもの。


 そして、今はとっても嫌いです。

 私から全てを奪ったから、あなたも含めて私の大好きな人が皆わたしから離れてしまいました。


 でも、どっちにしても私にとってあなたという存在はとっても大きなものなんです。


 ねぇ、なんで?

 私ってそんなにどうでもよかった?

 私には洗脳をかける価値すらなかった?

 私はあなたにとってそんな程度の存在だった?


 あなた、私になんでそんなに無関心なの……


 後悔させてあげます。

 責任をきっちり取らせてあげます。


 私の居場所を奪った罪を、

 私の愛した人を奪った罪を、

 私を騙し無視した罪を……


 ずっとそう思っていました。

 そう思って、王政の打倒を目論むメーンベルトすら利用しようとまで考えていました。


 でも、そこで私はそんなことがどうでも良くなってしまうぐらいの大きな真実を知ってしまいました。


 あなたの気持ちすこし分かった気がします。

 より大きなものを前にした時、些細なものはどうでも良くなるのです。

 それが大きければ大きいほど、本来大事な意味を持つはずであったものすら瑣末事と成り果ててしまいます。


 帝国による王国の併合……


 もしそれを防げるかもしれないというのなら、

 あなたが王国の存続に手を貸してくれるというのなら、

 私はこれまでの事、そしてこれからの事、全てを無視してでもあなたに協力すると約束しましょう。


 お父様、カローイ様ごめんなさい。

 私、悪い子です。

 でも、私にはやらなければならないことが出来てしまったの。


 たとえ魔女に魂を売ったとしても。

 物語の悪役の様に身を堕とす存在になったとしても。

 私は、この国のためならば……


「……久しぶりね、フローラ」

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