樹の試練(4)
霧花は9本1列に並んだ丸太の前に立ち深く呼吸をし集中し仙気を纏う。
次の瞬間、目にも止まらぬ速さで次々に丸太を斬っていく。
桜太は、先程霧花が言っていた仙人になった事で動体視力と記憶力の向上が事実だった事を実感した。
(凄く速い、でも見えるこれが仙人としての動体視力…)
そしてあっという間に霧花は全ての丸太を斬り終えた。
「全て見えましたか?」
「はい、見えました」
「では大丈夫ですね では今から 私が今やった基本を一つ一つを1万本ずつやっていただきます」
「1万本?! いや、一つ一つって事は基本が9だから9万本?! そんなやったら体力もたないし、それに何ヶ月かかるか…」
「桜太様、心配には及びません ユグドリア様も仰っていたようにお腹が空きませんし疲れもしません」
(そういや、言ってたなぁ…)
「それに9万本は集中してれば意外と速く終わりますよ」
流石にやりたくないとは言えない状況で腹を決めた桜太
「あぁ もうやってやるよ!!」
霧花は敬語の抜けた桜太の発言に(ふふ 少し素が出ましたね)と思い笑みを浮かべた。 そして「では桜太、9万本終わるまで姿を消して見守っていますので頑張ってください」といい消え去っていく
霧花がいきなり消えて「あ、ちょっ…」と少し戸惑ったが一呼吸して目付きが代わり「しゃ!やるか」とつぶやき霧花がやった9つ基本の流れを思い返しながら斬っていく。
1つ目は「真向」 上から下に斬る技
2つ目は「逆真向」下から上に斬る技
3つ目は「左袈裟斬り」右肩から左脇腹を目掛けて斬る技
4つ目は「右袈裟斬り」左肩から右脇腹を目掛けて斬る技
5つ目は「左逆袈裟斬り」左下から右肩目掛けて斬る技
6つ目は「右逆袈裟斬り」右下から左肩目掛けて斬る技
7つ目は「水平斬り」地面と水平に右から左に一文字に斬る技
8つ目は「逆水平斬り」地面と水平に左から右に一文字に斬る技
9つ目は「突き」前に突き出す技
桜太は途方もねぇと思ったがやらないと終わらないとも思い仙気を纏い斬り始める
だがなかなか上手くはいかなかった 普通の丸太なら仙気を纏って斬るだけで真っ二つに斬れるがこの丸太はユグドリアが生み出した世界樹の丸太のため仙気を纏ったとしても基本がちゃんとできてなければ斬ることができないそのため桜太が10本分斬り終えるまでに1日分の時間がかかってしまった。
「だァァ クソォォ 何故上手くいかないんだ」
疲れはたまらないとはいえストレスは溜まる。
集中の糸が切れため息を吐き横になる
「あーぁ何やってんだろ 俺」とぼやきふて寝しようと目を瞑るが全然寝れないため(クソ、寝る事もできねぇのかこの空間は)と思い目を開けると見覚えのある場所にいた
(ここは、なんで…なんで爺ちゃんの道場にいるんだ?)と思っていると後ろに気配を感じ振り返ると爺ちゃんの姿があり何度か「爺ちゃん!!」と呼ぶが爺ちゃんには声は届かず爺ちゃんはずっと瞑想している
すると扉の方から足音が聞こえた
扉が開き一礼をし「失礼します」と入ってきたのは小学生の時の俺だった
(俺がいる…って事はもしかして記憶の中か?)
「おぉ 桜太よいらっしゃい」
爺ちゃんは小さい桜太に優しい声で挨拶する
すると次の瞬間泣き出す桜太
「え? ど、どうしたのじゃ 桜太よ」
「今日の…試合も負けちゃった…悔しい…もうこんな思いしたくない もう剣道…辞めたい」
「そうか…負けてしまったのは残念じゃったな じゃが 「辞めたい」と思うのは早計じゃと思うんじゃ 桜太よ」
「え?」
「悔しい思いをしたくないから辞める確かに簡単な事かもしれんのぉ でものぉ その行動に後悔はないのか?」
「…でも試合になると勝ちたいのに緊張して上手く動けないしミスも沢山しちゃうし」
「そうじゃな でも緊張はみんなしとるよ 桜太よ お前は何を思い戦っとるんじゃ?」
「え? 負けたくない…かな」
「そうか 「負けたくない」か 確かに大切じゃな じゃがなその思いは焦ってしまう一方じゃ じゃから次からは深呼吸して「過去の自分を越える」って思いながらやってみろ」
「え、なんで?」
「もし試合で負けたとしても過去の自分にさえ勝っていれば今までしてきた努力は報われとるそれにそうと分かれば続けてれば勝てるという希望が見えてくるもんじゃよ」
「じゃから少しでも剣道に後悔があるなら立ち止まっても良いから前を進む事を諦めるな」
(あぁ そうだ 1度死んだからかな忘れてた 爺ちゃんのこの言葉があったから俺は立ち止まる事があっても何度でも前に進めたその結果高校では県大会準優勝まで行ったんだ)
今まで大切にしていたことを思い出し(爺ちゃんありがとう 記憶の中とはいえあえてよかったよ)と思いながら目を閉じ再び目を開け元いた空間に戻ってきた




