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魔女の呪いの行く末は  作者: 露(つゆ)
天川 星月編
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5/8

第4話 ~結婚してたりするんですか……?~

 私達は今、早速魔物と相対していた。

 相手は一匹だというのに心臓が早鐘を打つ。死ぬかもしれない。死というものに直面して頭が眩む。自殺もできない弱虫には刺激が強すぎる。

 星月さんは私を自身の後ろに隠す。

「大丈夫じゃ。動くでないぞ」

 その言葉は、力強く、優しかった。恐怖が和らぐ。

 星月さんは刀に手をかけ、体を沈ませる。そして……。

「シッ!」

 魔物を一閃。刀を抜いたところが見えなかった。魔物は一刀両断され、塵となって消えていった。

 私は呆気に取られた。あまりにも、あまりにも呆気無い。これが魔物? 皆を震え上がらせ、安全地帯に閉じ込めた……。いや……。

 星月さんは刀を振って鞘へとしまう。

 星月さんが強すぎるのだ。

「怪我は無いか?」

「おかげ……さまで……」

「じゃあ行(ゆ)くか」

 星月さんは私の手を引く。やっぱり……ドキドキする。


 ずっと歩くだけだから、何か話がしたかった。気になっている事でも聞こうか。

「星月さんって……結婚してたりするんですか……?」

 さっきとは違う意味でドキドキする。「してる」なんて返ってきた日には絶望だが、その心配は無かった。

「しとったら旅なんぞ出とらんて」

 星月さんはからから笑う。

 でもまだわからない。

「昔結婚してたり……恋人がいたり……」

「医者って忙しいんじゃ」

「はぁ……?」

 忙しいとどうなるのだろう。

「恋人ができてもフラれる。わしは恋愛に向いとらんと悟ってずっーと独り身じゃ」

「そ、そうなんですね」

 一安心。……って、さっきから私は何を思っているのだろう。

 星月さんがジーッと私を見る。さっきとは違う意味でドキドキする……。星月さんはにっと笑った。

「季行も年頃の女の子じゃのう。恋愛話に興味津々か?」

「ま、まあ……」

 とりあえず誤魔化す。

「悪い男には引っかからん様にな」

 大きな手で頭をぽんぽんとされる。やっぱり、胸が苦しい……。

 なので話題を変える。

「そんなに忙しいお医者さんがいなくなったら大変じゃないですか? 街の人達は止めなかったんですか?」

 すると、星月さんは少し顔を陰らせる。そして笑う。

「いやな、呪いにかかってから迫害されてしもうて」

「え……」

 だって自分の恋愛を捨ててまでみんなに尽くしてきたんでしょ? なのに……なんで……。

 私は怒りがこみ上げて、思わず手を強く握り締めた。

 そんな私を星月さんは優しい顔をして頭を撫でる。

「人間はな、弱い。未知のものが、自分と違うものが怖いんじゃ。あやつらは当然の反応をしたまで」

「恨まないんですか?」

 私なら……きっと……。

「そんな人間が、愚かでわしは酷く愛おしい。それに……」

「それに?」

「人間は強くもある。きっといつか何かに気づける。その為に生きておる」

 ……。思い出すのは縋る様なお母さんの顔。

「お母さんも、何かに気づけるのかな……」

「さあの。それは人それぞれじゃ。気づかんまま死んでいく奴もおる」

 それならば……。

「私は……気づいてほしくない。一生愚かなままの母親で死んでほしい」

 これが本音。私は星月さんほど優しくない。私はお母さんを赦す気は無い。

「それも一興」

 星月さんはそれだけ言った。


「今日はここで休むか。疲れたろう。少し横になるといい」

 足が棒の様になるとはこの事か……。初めて知った。私は大地に身を預ける。

「わしは夕飯を作るから待っておれ」

 その言葉に慌てて飛び起きた。

「私も手伝います!」

「いやいや、お前さんは初旅じゃ。休んでおれ」

「だって……なんでもかんでも星月さんにやってもらって……そんなの……私……役立たずは嫌です……」

 守ってもらってばっかりは嫌なのだ。私は役に立ちたい。それで、存在証明をしたい。小さな大きないつも抱えている私の意地。

 星月さんはいつもの様に優しく笑い、私の頭を撫でる。

「物事には順序がある」

「?」

 星月さんはいつも突然何かを言う。だから私はいつも意図を図りかねる。でもそれは、いつも私を納得させる事をこの短期間で知った。

「少しずつ、できる様になればいい。季行は今日はたくさん歩いた。それで花丸じゃ」

 星月さんの言葉は、私の心に深く沈む。

「それに」

「それに?」

「わしは季行とおれるだけで嬉しい。一人ではない、それが一等嬉しい」

「星月さん……」

 そうだ、星月さんだって人間だ。一人は……寂しい。

「私は……役に立ってますか?」

「人間は役に立つとか立たんとかではない。じゃが」

 星月さんはにっと笑う。

「わしの隣におるのが季行で良かったと思う」

 トクン……。

 心臓が、気持ちよくてふわふわする……。私は……。

「さ、一眠りしなさい」

 星月さんの心地よい言葉と疲れに、私の意識はいつの間にか落ちた。

 次の目覚めでとんでもないものを見る事になるとは知らずに……。

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― 新着の感想 ―
ここまで読みました〜。今回はとびきり好きな話でした! 自身の悪感情を吐露してしまう季行にたいして、『それもまた一興』と優しく包んでくれる星月の懐の大きさがよく表現されていて、良いバディだなぁと思います…
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