第4話 ~出会えてよかった~
「わ~ここ、遊園地、ってやつ?」
私は目の前の広大な敷地にたくさんあるアトラクションに目を奪われた。
「へ~実在してたんだな」
「前に水族館見たよ」
「マジ?」
「魚いなかったけど」
一荷は繋いだ手を引っ張る。
「行くか」
「え?」
「どうせ旅の終わりなんてわかんねぇんだから、お前の行きたいとこ行こうぜ」
私は嬉しくて顔がニヤニヤする。
「うん!」
「電気……は来てそうだけど、どうやって動かすんだ……?」
遊園地の裏側とでも言う所に来て一荷は配電盤を見ている。どこから電気が来てるんだろう……。疑問はとりあえず置いておいて。
「乗り物動かなくってもきっと楽しいよ!」
私は一荷の手を引いた。
「ったく」
そう言う一荷はなんだか嬉しそうだった。
アトラクションの名前はおとぎ話でなんとなくわかる。
コーヒーカップに乗って、動かないねぇなんて言っていろいろいじってたらぐるぐる回る事に気がついて調子に乗って回しまくったら、酔った一荷に「お前ふざけんな……」と言われた。私も気持ち悪い。
メリーゴーランドに乗ったら一荷が目を反らすから、なんで? って言ったら「なんかえろい……」って言われた。なんとなく言いたい事はわかる。
ジェットコースターに乗った。もちろん発車地点から一ミリも動かない。けど、前方の景色を眺めるとこれから起こるだろう事になんだか怖くなって一荷に降りようと抱き着いた。
一荷は「はは~ん」と嬉しそうな声。「弱点見っけた」そう言うから、意地悪……って睨んだら頭をわしゃわしゃされた。
お化け屋敷に入った。
お化け役の人なんていないし、お化けの機械も動かない。けど雰囲気がめちゃくちゃ怖い。
門を曲がった先にお化けの人形が放置されてたからおもいっきりびっくりして一荷に抱き着き、もう出ようもう出よう、と言った。一荷は笑っていた。
「あ~楽しかった!」
「そーだな」
私は一通りのアトラクションを満喫して園内のベンチに座った。
私達しかいないから待ち時間なんて無いし、一人占めだ。一荷と一緒。
「ねえ一荷」
「なんだ?」
「私、一荷と出会えて良かった。一荷と一緒だからこんなに楽しいんだ」
「季行……」
一荷が『季行』って呼んだ。珍しい。いつもは『お前』なのに。
「なあ……」
「ん?」
「俺と出会ってくれて……その……」
一荷はいつものもごもご。でも、ちゃんと言うのは知っている。
「ありがとう」
「私も」
一荷はマスクを外し、私達はキスを交わした。
「おめでとう」
その声に一荷はすぐさま立ち上がって私を後ろに隠す。
「一荷、大丈夫」
「って事はもう一人の魔女か……」
「そう、よく頑張ったね。愛の力は素晴らしい」
パチン。
リーリアが指を鳴らしていつもの庭。
「後はわかっているね?」
「うん」
リーリアはどこかへと行った。
「一荷、行こ」
私は一荷の手を取った。
「お、おう」
いつものお姫様部屋。ベッドに腰掛ける私達。する事は決まっている。別に決まってないけど、なんかそういうパターンだから、なんとなく。
私は一荷の膝に手を置いた。
「一荷……しよ……」
「……」
一荷はしばらく黙る。やっぱり恥ずかしいのかなぁ。
「あ、あのさ……」
一荷が口を開いた。
「うん?」
「俺の呪い、『五感が過敏になる』んだよ……」
「うん、知ってる」
今更なんなんだろう。
「あのー、つまりさ……」
すごく言いづらそう。
「すぐ……」
「すぐ?」
「イっちまうっていうか……」
「……」
「……」
しばしの沈黙。
「別に気にしないよ」
最初に口を開いたのは私。
「早漏とかダセェじゃん……」
「それは早漏の人に謝ろ? 人それぞれだからさ」
それでも「んん~……」とか「でも~……」とかごちゃごちゃ言うからめんどくさくなって私は一荷を押し倒した。
「私とヤリたい!?」
一荷はびっくりした様な後に言った。
「ヤリたい……」
一荷はそっとサングラスを外した。真っ赤な、綺麗な瞳で私を見つめる。ヘッドフォンもマスクも外す。
「いいの?」
「全部で季行を感じたいから」
私は嬉しくて微笑む。
「うん」
そうして口づけを交わした。
「もうこのパターン、頭に入れといた方がいいですか?」
「ごめんなさい……」
私は裸でベッドに横たわりながらリーリアに謝る。
一荷は早漏ではあった。だが若さかな。何回戦も求めてきた。五回戦くらいかな……。
そうして順当に足腰が立たなくなった私であった。
「はー? 男女の情事に口出す権利はお前にあるんですかぁ~?」
服を着てベッド脇に立っている一荷は腕を組んで、ああん? とリーリアを見上げる。
「わかった、わかった、私が悪かった。ゆっくり休みなさい」
リーリアはそう言って部屋を出ていった。
一荷は私に向き直り、先ほどとは打って変わって優しげな口調で私を気遣う。
「無理……させたか……?」
「大丈夫だよ」
私は笑う。
「呪いが解けたらさ」
「うん?」
「またいっぱいすればいいじゃん」
一荷は恥ずかしそうに私を抱き締める。




