↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の呪いの行く末は  作者: 露(つゆ)
風吹 一荷編
PR
25/30

第3話 ~同じなのかもしれない~

 一荷と恋人とは何をするか話し合った結果、一つずつ試してみる事にした。


 その一、手をつなぐ。

 手をつないで歩いた。

「どう……?」

「……ドキドキする」

 一荷は照れくさそう。

「そっか」

 私は笑った。


 その二、食事をあーんする。

「はい、一荷、あーん」

「あ、あーん……」

 私は一荷の口に味が薄めの混ぜご飯を運んだ。一荷はマスクを外してもぐもぐと咀嚼する。

「どう?」

「なんか……むずむずする……」

 一荷は照れくさそう。

「そっか」

 私は笑った。


 その三、ロマンチックに夜景を見る。

「……」

「……」

「明かり、見えないね」

 安全地帯はまだまだ遠い。

「そもそもなんで夜景なんか見るんだ?」

「わかんない」

 改めて考えると恋人ってわかんない事だらけだ。いっぱい恋してきたのに。


 その四、デートする。

「ねえねえ一荷! あっちにクレープ売ってるって!」

 安全地帯に来た私達はいろんなところを回った。

「男がクレープなんて食えるかよ」

「じゃあ、わけっこしよ!」

 私がそう言うと一荷はマスクの上から頬を掻く。

「……いいけど」

 結局クレープは味が濃くて吐きそうって言われたけど、なんだか一荷は嬉しそうだった。


 その五、キスする。

 私達は見つめ合う。一荷の瞳はサングラスに隠れてよく見えないけど。

「しないの?」

「いや……やっぱ順序ってもんが……」

「もうしたじゃん」

 一荷はもごもごと口ごもる。

「あれは……勢いっていうか……」

 私は一荷のマスクをそっと取って、その唇に口づけた。

 一荷の頬は真っ赤だ。

「どう?」

「柔らけぇ……」

 私は……ドキドキした。


 その六、セッ……。

「なしなしなしなし!!!」

「どうして?」

「心の準備が……できてねぇ……」

 一荷の言葉は尻すぼみになる。一荷って案外純情?


「恋人ってあと何すればいいんだろう」

 私は地面に座って足をパタパタさせる。

「知らん。お前は何してたんだ? ……ナニ以外で」

「んー、一緒にいてた」

「そんだけ?」

 私はみんなの事を思い出して笑う。

「それだけで嬉しいんだよ」

「……」

 一荷は私を見て何かを考えている。

「……ま、時間はあるか」

「そうだね」


 私は座りながら真っ暗な夜景をぼーっと見てた。

「何してんだ?」

「一荷」

 後ろから声をかけられて私は振り向く。

「考えてた」

「何を?」

 一荷は隣に座る。

「私、一荷に酷い事言った」

「それはもういいっつっただろ?」

 私は首を振る。

「私はずっと自分の事、被害者だと思ってた。でも……」

 胸が、気持ち悪い。

「加害者には簡単になれる。ううん、もう加害者でもあったのかも」

 真央さんの時の様なわかりやすい事ではない。もっと、日常に溶け込んだ誰かの地獄。

「周りの事恨んでた。家族も……」

 あの日捨てたお母さんの顔を思い出す。

「けど、きっと私もおんなじなんだね」

 それを認めるのは酷く心がぐちゃぐちゃになる。私は膝に顔を埋める。

 そしたら一荷は言った。

「同じなもんかよ」

「え」

 私は顔を上げた。

「そいつらと同じなら、俺はお前の事……好きになってない。今頃殴り殺してる」

「笑えないよ」

 そう言いながら私は笑う。

「悪かったよ……」

 一荷も、変わったんだ……。

「俺も……同じだったのかね……周りの奴らと」

 私は一荷に同じ事言ってやった。

「そしたら好きになってないよ、私の王子様」

 一荷は少しの間の後、がりがりと頭を掻く。

「王子なんて柄じゃねぇ」

「ふふ」

 一荷も遠くを見た。

「俺、どうやって旅続けてるかわかるか?」

「……?」

 質問の意図がわからなかった。普通に旅をしているんじゃないの?

「他人から物盗んで生活してんだ。時にはこいつで脅して」

 一荷は腰から大型ナイフを取り出した。

「そんな真っ当じゃない奴に恋して、お前は後悔しねぇか……?」

 なんだ、そんな事かぁ。

「うん」

「即答!?」

「だって私、もっとえげつない事してる人と地獄に堕ちる気だから」

 一荷は私を見てちょっと不機嫌そうに言った。

「歴代彼氏?」

「うん」

 一荷は自分の膝に顎を置く。

「俺だけのもんになれよ」

「それは無理」

「ちぇっ……」

 そう言う一荷を私は抱き締めた。

「でも、今は一人占めできるよ。このチャンス、一荷はどうする?」

 一荷は顔を上げ、マスクを取って私に口づけた。

「一生俺のもんになれ」

「いいよ」

 私達は、何度も口づけを交わした。


 そうして私達は気ままな旅を続けた。

 物を盗んで、それで生活して。やっぱり私は地獄に堕ちるべきなのかもしれない。

 でも一荷と一緒ならそれで良いよ。

 そうして一年が経った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。