第4話 ~推理しよう~
頭が回らない。
何も、推理できない。
あなたの気持ちがわからない。
何故、人を殺すの?
何故、私を生かすの?
何も、わからない……。
日常のほとんどの事を真央さんにされながら私は生き続けていた。
食事を口移され、担いで歩かれ、呪いの発作が起きる度にキスをされ、そして人を殺して得た物品で私は生きていた。
私、なんで生きているんだろう……。地獄の先は地獄だった。王子様なんかじゃなかった。助けて、助けて、助けて。
ポタ。
え……。見上げると、真央さんが泣いていた。悔しそうな、悲しそうな、切なげな表情で。今まで見たこと無い。なんで、そんな顔で泣いてるの……?
推理、しよう。
ああ……そっか……わかった……。
私は真央さんの頬に手を伸ばす。
「あなたは奪う事でしか生きられなかった……。他の生き方になんて今更なれなかった……。でも、私の事は奪えなかった……。傷つけたくなかった……。こんな気持ちは初めてで……だから戸惑いながら私と一緒にいた……。私を生かし続けた……」
真央さんは私を抱き締める。
「不器用な……王子様……」
私も真央さんを抱き締め返した。
それから、私は心を決めた。真央さんの生き方と共に生きていく事を決めた。地獄に堕ちようが彼と一緒にいよう。
いつの間に、そんなに真央さんの事が好きになったのか? きっと、そんなに深い理由なんて無い。真央さんが一目惚れしたのと同じ様に。
恋って愛ってきっとそんなものだ。
真央さんが強盗に行った時は、寝ずに待っていて。帰ってきたら遠くに逃げる。そんな生活を一年、続けていた。
ある日、危険地帯を歩いていると、大きな大きな建物が目に入った。
「なんだろう?」
真央さんもそちらを向く。
「えっと……水族館、って書いてある」
水族館なんて、話でしか聞いた事がない。
真央さんにぐい、と手を引っ張られた。
「え、行くの?」
真央さんはずんずんと歩いていく。
推理しよう。
きっと私の顔に「行ってみたい」と出ていたからだ。そういうところが好きなんだ。私は思わず顔を綻ばせた。
水族館といえど、水槽があるだけで生き物はいなかった。死んだのかな? 水は濁ってないけど。
でも綺麗だな……。それに吸い込まれる様な静けさ。世界から二人取り残された様。
大水槽の前に行くと真央さんは立ち止まった。
推理しよう。
「綺麗?」
真央さんは何も言わないで私を見た。
「あのね、私、真央さんと一緒なら……何人か残してくれたらそれでいいよ」
星月さん、ちおちゃん、あと誰だろう?
真央さんは私の頬に片手を添える。私は背伸びして、真央さんは屈んで、口づけを交わした。
「おめでとう、って言うの?」
「推理力が鍛えられたね」
何もない空間からリーリアが現れる。真央さんは警戒するが、私が大丈夫、と言うと臨戦態勢をといた。
「もう君達は大丈夫。見事な愛だ」
リーリアはパチン、と指を鳴らし、いつもの庭に連れてくる。
「ゆっくりしていきなさい。明日の為にね」
「うん」
真央さんには後で説明しておいた。
いつもの部屋、いつもの大きなベッド。私達はそこに腰掛ける。
やる事は一つ。私は真央さんを押し倒した。彼は驚いている。
「今ならいいよ」
私がそう言うと、真央さんはむっとしてくるりと私を押し倒し返した。
推理しよう。
「抱くのは自分だ、でしょ?」
彼は奪う様な口づけをしてきた。
「あのね、明日は決戦、ってパターンだったでしょ、今まで」
「ごめんなさい……」
呆れるリーリアにベッドに横たわる裸の私は謝った。服を着てベッド脇に立っている真央さんは、何が悪い? とでも言いたげな表情だ。
そう……ハッスルし過ぎて私の足腰が立たなくなってしまったのだ。
「お楽しみ過ぎだろう」
「ごめんなさい……」
「まあそれも愛故か……しょうがない、決戦は引き延ばす」
「はい……」
リーリアが去った後、真央さんは私の体をぺたぺたと触る。
「ちょっと立てないだけだから大丈夫だよ」
真央さんはそれを聞くと服を脱ぎ出した。
「あのっ! それやっちゃうと永遠にブランシェのとこ行けないからね!」
真央さんはしゅーんとした。なんだか可愛い。
数日後。
「もう立てるね?」
「う、うん」
「はい、じゃあいってらっしゃい」
パチン。
景色が変わる。いつものブランシェの居場所だ。
真央さんは、扉を開ける。
ブランシェは私を激しい憎悪の目で睨んでいた。
「まだじゃ……まだ妾はやれる……!」
「ブランシェ……いつまでこんな事をやる気?」
ブランシェは吼える。
「世界を滅ぼすまでじゃ!!」
ブランシェがそう言ったと同時に、真央さんは槍でブランシェの喉元を突いた。
「妾は……絶対に……」
ブランシェは塵となって消えた。




