第5話 ~病める時も健やかなる時も~
私の突拍子もない話を、ちおちゃんは真剣に聞いてくれた。
一緒に、旅をしてくれた……星月さんの事も。
「そっか……おじいちゃんでもあり子供でもあったのね……。うーん、属性特盛」
あれ? そっち?
「ち、ちおちゃんも負けてないよ……」
「あらやだ! 嬉しい!」
ちおちゃんは私を抱き締める。ド、ドキドキする……。
ちおちゃんは私を離すと、少し真剣な顔で言う。
「つまり、魔女……ブランシェを倒すには『愛』が必要。でも倒したんでしょ?」
「うん……そうなんだけど……」
気になるのはブランシェの最後の笑み。もしかしたら……あれで終わりではないという事……?
「でも、きゆちゃんの時間は戻って、おじいちゃんじゃなくてアタシが来た……どうして?」
「うーん……」
わからない……。
「わからない事以外の情報は出揃った。なら後やるべき事は一つね」
うん……まあ……。
「アタシと愛を育んでくれる?」
とっても……簡単で……とっても難しい問題……。
それから、私達は旅を続けた。あてもなく、ただ『愛』を見つける為に。
ちおちゃんの良いところ、いっぱい見つけたよ。
ちおちゃんの好きなところ、いっぱいできた。
でも、星月さんの事は忘れられなくて。
そんなこんなで一年が経った。
てくてくてくてく、今日も歩く。すると、ちおちゃんが口を開いた。
「あら、結婚式場」
そちらを向くと、白い建物が目に入った。ここは危険地帯。きっと打ち捨てられた建物の一つだ。
「入っちゃおっか」
「え」
「行こ行こ!」
ちおちゃんは戸惑う私の手を引っ張った。
「きゆちゃ~ん、どう~?」
「え、えっと……着れたよ……」
私は扉を開ける。
「きゃ~! 似合ってる~! 写真撮りたいわ~!」
今、私は純白のウエディングドレス姿。ちおちゃんに着て着て! と押され折れてしまった。私は押しに弱い……。
「ち、ちおちゃんも似合ってるよ……」
ちおちゃんは白のタキシード。
「あらやだ嬉しい!」
ちおちゃんと結婚式か……。できたらいいな……。でも、気持ちの整理がつかなくて。
「式場に行きましょ」
ちおちゃんは私の手を引く。
「え、う、うん……」
そうして式場。私達は部屋の真ん中に行く。
ちおちゃんは私の手を取る。
「病める時も健やかなる時も~……って言いたいけど、アタシ、無理強いはしない。ごっこ遊びに付き合ってもらえただけで嬉しいから」
「ちおちゃん……」
ちおちゃんは、ずっと私に向き合ってくれた。ずっと私を想ってくれた。そうだ。私はもう自分の心に向き合わなければいけない。
「ちおちゃん」
「なあに?」
私は息を吸い込む。そして言った。
「私ちおちゃんの事大好き。でも、星月さんの事だって同じくらい大好き。そんな私でも……ちおちゃんは……愛してるって言ってくれる?」
ちおちゃんは目を丸くして……そして私を抱き締めた。
「言ったじゃない……。その人の事好きなきゆちゃんを丸ごと愛するって」
「浮気かもしれない。不倫かもしれない。星月さんにもちおちゃんにも不誠実かもしれない」
私の声は震える。怖いのだ。どちらの事も裏切るのではないかと。
ちおちゃんは私から離れて肩に手を置いた。
「きゆちゃん、アナタはとっても誠実よ」
「だって……」
ちおちゃんは優しく笑う。
「こんなに悩んでるんだもの。こんなにどっちも想ってるもの」
「ちおちゃんと星月さんを重ねてるかもしれないよ? ちおちゃんの後ろに星月さんを見てるかも……」
ちおちゃんはそれでもなお、優しい。
「言ったじゃない。そんなきゆちゃんを愛するって。アタシ、誰にでもそんな事言わないわ」
「ちお……ちゃん……」
私はちおちゃんの手を取る。もう、心は決まった。
「私は、病める時も健やかなる時もちおちゃんを愛する事を誓います」
ちおちゃんは、笑って、解呪ではない初めてのキスを交わしてくれた。
火照る体で私は言う。
「リーリア、見てるんでしょう?」
「ご名答。やはりあなたは賢い」
すぅっとリーリアが何も無い空間から現れた。
「愛なら、もう持ってる」
私の言葉にリーリアはうなずく。
「充分だ。よく悩んだね。そしてよく決断を出した」
リーリアがパチンと指を鳴らすと、あの庭に景色が変わる。
「今日はゆっくり休みなさい。勝手ならわかるでしょう?」
「うん」
「え、え、何これ?」
ちおちゃんだけが置いてけぼりだ。
「ちおちゃん、私が案内するよ」
私はちおちゃんの手を取った。
「今日は、まだ長いから」
最終決戦……ううん、きっとこれで終わりじゃないけど、それに向けて私達は動き出す。




