表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の呪いの行く末は  作者: 露(つゆ)
七里 千織編
PR
12/15

第1話 ~王子様はオネエ様~

 長い、長い夢を見ていた気がする。とても、とても幸せな夢……。


「あらあ、目ぇ覚めたあ?」

 気がつくと、知らない人の顔が目の前にあった。濃いピンクの髪、目、縦線の入ったセーター。二十代くらいの……お姉さん? お兄さん? たぶん体の性別はお兄さんだけど、世の中にはいろいろな人がいるので判断しかねた。

「え、えっと……」

 今どういう状況なのかわからない。私、何してたんだっけ……?

「森に来たらさ、アナタが気絶してるもんだから介抱してたの」

「あ、ありがとうございます……」

 そうだっけ……?

 頭が痛くないのはこの人が膝枕をしてくれているおかげだとようやく気づいた。

 私は起き上がる。

「あら、もう起きていいの?」

「はい……大丈夫だと思います……。ご迷惑、おかけ……」

『何が迷惑なものか』

 ズキン。

 頭が痛んで……何かを思い出しそう……。

「ほらあ、まだ調子悪いんでしょ! 寝てなさい!」

「わっ……!」

 私は再びこの人の膝枕のお世話になる。

「ねえ」

「はい?」

「アナタ、気絶してる時に『呪いが……』って何度も呟いてたけど……」

 まずい……また嘘つき扱いでもされるのか……。

「魔女って信じる?」

「!」

 この人は確かに『魔女』と言った。私が追い求めているもの……。

「何か! 知ってるんですか!?」

 今にも飛び起きそうな私をこの人はどうどうとなだめながら告げる。

「アタシも、魔女に呪われてるから」

 この人は頬に人差し指を当ててウインクした。


「なるほど~」

 私は全部言った。自身の呪いの事、解呪の方法。あと、なんかこの人の話術でほいほいと自分の置かれている環境とかもろもろ……。

「お兄さ……お姉さ……えっとあなたは……」

 私がどう呼ぼうか悩んでいると、この人はからからと笑って言う。

「体はお兄さん、心もお兄さん、恋愛対象は女の子。でも強いて言うならカタカナのオネエさん」

「オネエ……さん……」

「でもでも困った事に、魔女に『体の性別が変化する』呪いをかけられちゃった~! 住んでた街では更に白い目で見られるし、嫌んなっちゃって飛び出しちゃった。やる事無いし、魔女を懲らしめちゃお~! って旅してるの」

 なんだか元気な人だ。

「魔女なんてこいつでドン! よ」

 オネエさんはそう言うと腰から銀色の……拳銃を取り出した。

「銃!?」

「ちょっとしたツ・テ」

 オネエさんはうふふと笑う。

「ねえ、アナタ」

「え、はい」

「アタシと旅に出ない?」

「……え」

 オネエさんの唐突な申し出に私は固まった。

「アナタを腐らせる場所になんている必要ないわ。ふふ、アタシ、行動派なの。魔物にも襲われないし、アナタの事も守れるつもりよ」

 そう言って拳銃をちらつかせる。

「どう? このチャンス。アナタは掴む?」

 オネエさんは手を差し出す。

 びっくりしたけど、そんなのもちろん。

「はい!」

 私はオネエさんの手を掴んだ。

「それでこそ女よ」

 オネエさんは笑った。

「アタシは七里 千織(ななさと ちおり)。アナタは?」

「佐々木 季行です。よろしくお願いします」

「ええ、よろしく」


「ホントーにもう歩いて大丈夫~?」

「ええ、慣れてますから」

 私達は森の外へと向かっていた。

「無理しちゃダメよ~?」

「オネエさ……七里さんは……」

 そう言いかけると七里さんに人差し指で口を塞がれた。

「ノンノン。『ちおちゃん』よ」

「え」

「リピートアフタミーちおちゃん」

「ち、ちおちゃん……」

 七……ちおちゃんは満足そうに微笑む。

「アタシは『きゆちゃん』って呼ぶからね!」

「き、きゆちゃん……」

 あだ名で呼ぶのも呼ばれるのも初めてで、なんだか照れくさい。

「あと敬語もダメ。仲良くしましょ」

「は……うん」

 なんだかむず痒い。

「で、何言いかけたの?」

「あ……えっと……優しいね、って……」

 ちおちゃんは目を丸くした後、笑った。

「そ、アタシは優しいの。でも、優しい人を優しいって思えるきゆちゃんも優しいの」

「私……優しくない……。故郷も家族も捨てるんだもん……」

「アタシだって故郷も家族も捨てたわ。だからそれは『優しくない』の尺度には使えないわ」

 ちおちゃんの言葉は……新鮮で。目の前が開けた気がした。

「そっか」

「そ」

 ちおちゃんは笑う。


 装備を整え、誰にも内緒で私達は安全地帯と危険地帯の境目のフェンスにいた。

 なんでだろう……初めてのはずなのに、前にもここに来た気がする。

「ではでは、しゅぱーつ!」

 ちおちゃんは拳を上げる。

「おー!」

 私も一緒に。

 なんだか懐かしい感じがした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ