表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の呪いの行く末は  作者: 露(つゆ)
天川 星月編
PR
10/12

第9話 ~愛は世界を救う~

 魔物の、爪が、消えた。

「え」

 正確には塵となって消えていった。

 それを見た魔物達は何かを悟った様に散って行った。

 私はぺたんとその場に座り込んだ。

「季行!」

 星月さんが刀をしまい、私の下へやって来る。

「あ、はは……腰、抜けちゃいました」

 へらりと笑う私を星月さんはきつく、きつく抱き締めた。

「せ、星月さん? い、痛いです」

「季行……よかった……」

 星月さん……泣いてる……?

「わかったんじゃ……」

「何を……ですか?」

「お前さんが死ぬと思うたら、気づいた。これは曾孫に対する気持ちではないと。お前さんの事が、好きじゃ」

 今……なんて……。

「わしはずっと一人じゃった。それでええと思うた。けれど、季行、お前さんと出会って世界が色づいた。雛鳥の刷り込み。そう思おうとした。じゃが……もう無理なんじゃ……」

 それって……。

「分別の無い老人じゃと罵れ。卑怯な大人じゃと嘲ろ。それでもわしは……」

「星月さん」

 星月さんは私を離して顔を見た。

「大好きです」

 私は笑う。

「季行……」

 星月さんは顔を近づけ……私達は初めて『人工呼吸』でないキスを交わした。


「おめでとう」


 唐突にどこからか声がした。声の方向を向くと……魔女がいた。

 黒いとんがり帽子とドレス、ふわふわの金髪。

「魔女……!」

「ん?」

「え?」

 星月さんはなんだかピンときていない模様。

「え、星月さんあの人に呪いかけられたんですよね?」

「いんや、わしにかけたのは銀髪のシュッとした髪のおなごじゃが」

「え」

「種明かしをしよう」

 魔女がパチンと指を鳴らすと、景色が変わった。絵本で読んだ、洋風の庭の様な……。

 魔女は白い丸テーブルと椅子に私達を手招きする。

 私達は警戒しながらそこに行き、椅子に座る。

「紅茶はお好きかい?」

「いらん」

 魔女の言葉を星月さんは一刀両断。

「残念」

「用件を言え」

 魔女は椅子に座ってたおやかに言う。

「まずは自己紹介。私の名前はリーリア=ミラー。『季行』に呪いをかけた魔女だ」

 確かにそう。

「じゃあ星月さんにかけたのは?」

「私の昔馴染み、ブランシェ=アルカロイド。彼女は世界を滅ぼしたがっている」

「あの本の……」

「よく覚えているね」

 リーリアは私に微笑みかける。それは、とても優しげな微笑み。こんな非道な呪いをかけたとは思えないほどの……。

 非道……? いや、呪いがあったおかげで星月さんと旅ができた訳で……。もしかして……。

「あなたは人間の愛が欲しかったの?」

「正解だ。賢いね」

 リーリアが人差し指を立てるとポンッと紅茶セットが出てきた。

 だから解呪の方法に異性からの口づけなんて……。

「? なんで『異性』からの口づけ?」

 だって同性同士でも愛は育める。

 リーリアは口に人差し指を当てて呟く。

「『まだ』内緒」

「?」

 リーリアは何を隠しているのだろう。

「本を読んだという人間も、呪いについての本も、全てお前さんが仕組んだ事か」

「あなた方は非常に賢い」

 ポットが勝手にティーカップに紅茶を注ぐ。

「ブランシェはこの世の全てを憎んでいる。しかし私はそれを止めたかった。だから安全地帯と危険地帯なんていうちぐはぐなものができた」

 リーリアはカップを手に取り口をつける。

「なんでこの国に?」

 私は疑問をぶつけた。

「ブランシェは本国でいろいろやり過ぎてね。対策チームなんてできたものだから、この極東の島国に目をつけた。最後の抵抗さ。しかし、対策を誤れば一発逆転」

 本にも書いてあった。

「なんで星月さんなの? なんで私なの?」

 リーリアはふっと笑う。

「ブランシェはあなたなら負のエネルギーを増やせると考えたのだろうが、見る目が無いね。私は違う」

 つまり、私達なら愛を手にできると思ったから。

「じゃあ、もうお前さんはブランシェを止められると」

 リーリアは首を振る。

「どうして?」

「それは、まだ知らなくていい」

「?」

 リーリアの言っている意味がわからない。

「ブランシェはあなた達が倒してくれ」

「倒せとは?」

「そのカタナで殺してやってくれ」

 殺す……。私達が……魔女とはいえ、元人間を……。

 青ざめる私を星月さんは抱き寄せる。

「わしがやる。お前さんは何も気にせんでいい」

「星月さん……」

 リーリアがこほん、と咳払いをする。

「反撃は考えなくて大丈夫だ」

「魔女は人間に直接手出しできない」

 本に書いてあったことを私は言う。

「そう」

「魔物が襲って来ないのは、星月さんからエネルギーを貰うから。じゃあさっき魔物が消えたのは……」

「愛の力だよ」

 リーリアはにっこり笑う。ふざけている様だがたぶん真面目にその通り。

「さあ、お話はここまでだ。今日はここに泊まっていきなさい。明日、万全の準備でブランシェの下へ送るよ」

 リーリアそう言って立ち上がる。紅茶セットはいつの間にか消えていた。

 明日、最終決戦が始まる。私達が願った日々を掴み取る為に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ