影の信者たち。裏切りの鎖
腐狼が滅びたことで森の均衡は崩れた。残されたのは、崇拝先を失った信者たち。だが彼らは終わっていない。怒りによって魔人へと変質し、新たな力を得ていた。
「俺は……勝った側につく」
ガズルの声が静かに落ちた。
その一言で、場の空気が凍りつく。
「……裏切り者が」
フードを被った信者の一人が低く吐き捨てる。
「貴様、それでも神に仕えた身か」
「腐狼様を喰らった異物に膝をつくなど……!」
「裏切りじゃねぇ」
ガズルは小さく息を吐いた。
そして、はっきりと言い切る。
「その神は……この泡の中にいる」
一瞬、場が止まった。
「……何?」
信者の声が揺れる。
「腐狼様が死んだだと……?」
「違う」
ガズルは淡々と続ける。
「死んだんじゃねぇ。喰われたんだ」
フードの奥で、信者たちの呼吸が荒くなる。
「喰ったのは誰だ……」
「この森を壊した泡……メグル」
ざわり、と空気が震えた。
その瞬間、信者たちの体から黒い魔力が噴き上がる。
怒りが限界を超え、肉体が歪む。
人間だった輪郭が崩れ、獣の紋様が皮膚に浮かび上がる。
“魔人化”。腐狼の死を糧にした異常進化だった。
「なら話は簡単だ」
リーダー格の信者が前に出る。
「その泡ごと消せばいい」
ガズルは小さく息を吐いた。
「できるならな」
その時だった。
森の奥にいる“何か”が、わずかに動いた気配がする。
メグルでも腐狼でもない。
ただ静かに見ている存在。
ガズルはそれに気づき、薄く笑った。
「……いるな。神ってやつが」
「なら見せてやるよ」
「この森で最後に立つのが誰かをな」
腐狼の消滅によって信者たちは魔人化し、新たな勢力へと変貌した。
そしてガズルは“裏切り者”ではなく、流される側から選ぶ側へと踏み出し始める。




