第22話
珍しく少しシリアス回です。
次の日。
「…。」
「……。」
「…いや、なんで?」
「フハハ!サンカンとやらがあると聞いたのでな!ちょっと見にきたのだ!」
「おわった…。」
ガラッ。
「はい、では授業をはじめm……っ!?」
至極当然の反応。むしろ平然としている他の親の方がおかしいだろ。
…って思って振り返ってみたら、全員血の気が失せた顔で呆然と立っていた。
「…だろうなぁ…。」
「オホン。でっ、では、授業を始めます…っ。」
その日、先生が語ったのは、第5次人魔大戦の終結と、その後起こった冥界軍侵攻の話だった。
◇
80年前、全世界を巻き込んだ第5次人魔大戦は、新たに現れた冥界軍によるユァース侵攻により、そもそも戦っていられなくなったことで、終結した。その後、魔王と人類は手を組み、冥界軍をなんとか押し返すことに成功した。
それでも、80年では、「魔王は恐ろしい存在」という考えは、消え切らなかったが。
当時、圧倒的な力で、一人で世界の約半分を征服していた魔王でさえも、一人では冥界軍の侵攻を抑えることができなかった。
そしてとうとう、魔王は、全世界に協力を求めた。
条件は、「現在支配下の、『世界の約半分』を全て返還し、今後、一切侵攻しない」というものだった。
そして、彼は最後にこう言ったという。
「嫌ならついてくるな。足手まといだ。だが、その国一つが協力しなければ、その国を含め、全ては余ではなく、冥界の手によって無に帰すやもしれぬのだと知れ。」
そして、最終的に、ウィルマール皇国を除く全ての国が魔王の下に集結した。
そして、各国の準備が整ったわずか数日後、突如として、ソレらは攻め込んできた。
ソレらは、人のカタチを成しておらず、それどころか、魔物のような、「ちゃんと生物であると分かるような構造」ですらなかったという。
まるで生物そのものの存在を侮辱するかのように、あるはずのない場所に出鱈目に器官が貼り付けられ、異様に捻れたような姿をしていたのだと…。
「人魔連合軍」は、なんとか冥界の勢力を退ける。しかし、冥界軍がとろうとしていたそれは、今までの戦争とは違う、徹底的な殲滅作戦だった。
魔王は、あとで支配する土地であるというのもあり、できる限り、土地や非戦闘員など、直接戦闘に関わっていなかった人やものに、絶対に危害を加えさせなかった。
しかし、冥界軍は違った。完全に根絶やしにするために、そして、「蹂躙」することを目的にした侵攻は、各地に大きな爪痕を残した。
80年経った今でも、いくつかの場所には、侵攻の跡が残っている。
◇
先生が語り終わったあと、教室は静まり返っていた。先生本人が体験したことも含めながら語られる戦争は、それまで、俺たちがどこか遠い国の御伽話のように感じていた、「冥界」の存在を、はっきりと現実のものへと変えた。
ふと、先生が魔王の方を向き、
「よろしくお願いできますか。」
と言った。
「うむ。」
魔王は、教壇にゆっくりと向かった。




