22 2年次生3(丸太の上の訓練)
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
ランスロに対する最強の騎士ホークによる指導が始まった。
それは、士官学校の通常の講義や訓練が終わった時間に行われることになった。
1日目、ランスロは校庭の裏手にある指定された場所に行った。
そこには、既に数十本もの丸太の杭が、地面に間隔を開けて打たれていた。
丸太の杭の高さは、地面から大人の背丈よりも高かった。
「ランスロ君、こんな時間しかとれなくて申し訳ないね。通常の講義や訓練の中に入れてもらおうと校長に言ったら、だめだそうだ。これはあくまで君だけに対する特別指導だからという理由だった。」
「特に問題ありません。講義や訓練が終わった今頃の時間、このごろはボーッとして過ごすことが多かったのです。それが、ホーク様の指導を受ける時間になるなんて最高にうれしいです。」
「それでは始めさせてもらおう。ランスロ君、ここに打たれている丸太の杭の上に乗ってみてください。どこでもいいよ。」
ホークの指示どおり、ランスロは丸太の杭の上によじのぼった。
丸太の太さは、両足をそろえてやっと立つことができるくらいの広さだった。
「ランスロ君、恐いかい。」
「はい。下に落ちてしまうことを考えるとかなり恐いです。」
「今君は、心が恐怖に支配されて、体や神経を適正に制御することができない状態だ。今日の訓練は、そのまま立っていることだ。ここに砂時計を置くから、時間が過ぎたら終わってもいいよ。ただし、途中で落ちてしまったら、最初からやり直しだ。」
ホークは、杭が並んでいる場所の前の台に砂時計を置いた。
そして、その横にある箱を示した。
「やり直し用の砂時計はここにたくさんあるから使いたまえ。僕は士官学校に書類を出してくるから、しばらく君1人で取り組んでください。」
「わかりました。ホーク様。」
ランスロは思った。
(砂時計は特に大きくないから、砂が全部落ちきるまでにそんなに時間はかからないな。)
それから彼は、地面に落ちた時のことばから考えていた。
そして、ケガをしないで落ちる体勢のことを心の中で組み立てていた。
すると、突然、突風が吹いた。
ふいをつかれて彼は杭の上から落ちたが、意識的に安全な体勢をとったので問題なかった。
彼は箱まで歩いて行き、新しい砂時計を台の上に再び置き丸太の上に乗った。
しばらくして、今度は誰かが近くを歩いて通り過ぎる気配がした。
「なんだ、地面にいっぱい丸太が打たれているぞ。」
「上に乗っているのはランスロだ。何かの訓練かな。」
彼の心が動揺すると、また杭の上から落ちてしまった。
今度は安全な体勢をとるのが少し遅れた。
「いた――っ。」
再び砂時計を置いてやり直そうとした時、彼は反省した。
(外部から受ける刺激に反応しないで、やり過ごすことができなくては、それに落ちた時の安全な体勢を無意識にできようにならなくては――)
彼は箱まで歩いて行き、新しい砂時計を台の上に再び置き丸太の上に乗った。
それから、何回も同じことを繰り返した。
そうして、だんだん丸太の上に立っていられる時間が長くなった。
ついに、ランスロは最高に長い時間、丸太の上に立っていられた。
(やっと、自分を制御して立ち続けられた。もう終わりのはず……)
彼はその後、砂時計を見た。
ところが大変驚くことに、砂時計の上で落ちきれず残っている砂がかなりあった。
「えっ。なんでまだあんなに残っているのかな。」
思わず、ひとり言が口からでた。
彼は、立ち続けるのがほんとうにいやになった。
しかし、自分の心をもう1回制御し冷静になろうと思った。
今度は、砂時計から下に砂が落ちているかどうか確認した。
すると、前より少し勢いが弱いような気がしたが、砂は落ち続けていた。
(砂は落ちている。だから必ず砂時計の砂は全て落ちることは決まっている。)
彼はねばり強く丸太の上で待った。
その後、わずかな時間が過ぎただけで、砂時計の砂は下に落ちきった。
そのことを確かめて、ランスロは丸太の上から降りた。
「ごめん、ごめん、知り合いに会ってしまって、帰ってくるのが遅れたよ。」
ホークは済まなそうな顔をしていた。
「やり遂げたんだね。1日目では不可能だと思っていたんだけど。」
「ホーク様、とても勉強になりました。丸太の上に立っているだけで、いろいろなことを学びました。」
「私から何を言う必要はないみたいだね。それじゃ、明日からも当分ここで指導するからね。」
「ホーク様ありがとうございました。」
「ところでランスロ君、一つお願いがあるんだ。その『ホーク様』という呼び方がどうもしっくりこないいだ。これからは『マスター』って呼んでくれませんか。」
「はい。マスター。」
ホークは手を上げて応えた後、帰って行き、ランスロはそれを見送っていた。
「ランスロ、お疲れ! 」
彼は急に後ろから誰かに抱きつかれた。
ザラだった。
「急に抱きつかれるとびっくりします。」
「そうか。私がランスロに抱きつくのはもうルーティンだ。慣れてもらわないと困る。ところで、今日は最強の騎士ホークに何を教えてもらったんだ。」
「ここに打たれている丸太の上に乗って、立ち続けることです。」
「ふ――ん。確かに人間の心や体を制御するためには良い訓練だな。」
そう言った後、ザラは丸太の上によじの登った。
そして、微動だにしないきれいな姿勢で立ち続けた。
「ザラさん。すごいですね! 」
「不思議でもなんでもないぞ。私はいつも闇に囲まれて恐怖を感じない。闇が心や体を制御している私には簡単なことだ。」
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