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浸透世界のデリット  作者: 朝露 壱
第一章 魔術師アルト・クレッシェード
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1-7 「疑惑」

「・・・!」


何とか国立図書館の、あの部屋へ行くと、既にほとんどが廃墟と化していた。

俺は必死で周囲を見渡したが、レイスは見当たらない。


「・・・クソッ・・・レイス!返事しろッ!」


瓦礫を手で分けながら進んでゆく。

途中、手に痛みを感じたが構わず突き進んだ。

同時に意識を集中して、レイスの魔力を感じようとしたが、あの魔力の爆発の後だ。

・・・魔力はほとんど残っていないだろう。・・・もしかしたら魔力すべて使用した可能性がある。


―――ガラッ


「レイス!?」

「痛ッ・・・」


ガラガラと、自分の身体に乗っていた瓦礫を身体から退かして這うような形で何とかレイスは起き上がった。


「大丈夫か!?」

「何とか、ね。・・・魔力は全部使っちゃってスッカラカンだけど」


ヘラッと笑って、俺にそういうレイスは元気そうだった。

顔色こそ悪いが、・・・これなら俺に治せそうだ。

俺はレイスの身体に両手を翳して強く念じる。

俺の治癒魔法はかなり特殊な物で、精霊の力を借りて発動する。

普通の治癒魔法なら、自らの魔力を使用して体の細胞を活性化させるが・・・此方の方が手っ取り早い。

精霊たちが俺の両手に集まって、陣を描く。

今度は意識を澄まして、精霊たちの音を感じ取って、言葉を口にする。呪文とは違い、コレは精霊たちの会話だ。


(頼む。こいつは、俺の友達だ)


アシスト(精霊たちよ、加護を)


シュゥゥ、と音を立て、精霊の加護といわれる光の粒がレイスの身体へ吸い込まれていって、傷が塞がれていく。

それに驚いた様子で、レイスは俺の顔を見ていた。


「・・・精霊魔法・・・」

「え?あ、コレ、そうゆうんだ?」

「・・・知らなかったの?」

「あー・・・うん。・・・なんか、精霊たちと会話してると出来るようになっちゃって・・・」

「・・・」


黙り込んだレイスは、ガバッと突然起き上がって俺の身体をジロジロと眺め始めた。


「な、何だ?」

「身体に異変とか無い?特に髪の毛にッ!」

「べ、別に無いけど・・・」

「良かったぁ~・・・」

「・・・?」

「あ、そろそろ戻らないとね。心配されるから」

「え、ちょっ」


腕を引っ張られて立ち上げられた俺はそのままレイスの後を追って図書館を出る。


「!戻ってきた!」

「大丈夫か!?」

「あ、ハイ。アルト君に治して貰ったので」


他の隊員たちに心配されながらレイスは戻っていった。

その際、俺の方を向いて口パクで、またね、と呟いた。


(・・・それにしても、レイス・・・あの黒仮面の奴のこと知ってた・・・のか?)


そんな風に考えているとどんどん疑問が増えていって切りがなくなった。

溜息を吐いて、俺は肩を落とす。

・・・昨日に続いて、今日。

随分疲れる様な事ばっかり起こる。・・・疑問ばかり増えてしまう。

あの黒仮面に、レイスの事に、フレルルの言った言葉。


「・・・エルド。・・・俺、どうすればいいんだよ・・・」


呟いて、なんだか虚しくなった。・・・理由は全く判らなかった。


「・・・アルト」

「・・・」

「・・・俺はお前を信用している」


見透かしたようにそう言ったクロウに、俺は半分泣きそうになった。

信用、なんてエルドの森にいたときは、全く知らなかった。

こんなに信用されないという事が、辛いなんて知らなかった。


(・・・辛い?・・・辛いのか)


空を仰ぐように見て、俺は周辺を改めて見渡す。

国立図書館が破壊された事によってだいぶまだ周囲の住民が驚愕しているようだが、落ち着いてきている。

フレルルたちの方を見ると、後始末に追われているようだった。

右目に触れてみる。

呪われた右目は、魔力を微かに帯びたまま俺の側に居た。


「・・・ッハァー・・・とにかくつっかれた・・・」


ガクッと座り込んで、地面を見る形になる。

すると目の前に飴玉が入った袋を手渡された。見上げるとクラッドがソコに立っていた。


「やる」

「・・・アリガト」


口に一粒、放り込んで飴玉を転がした。


「・・・貴様がアルト・クレッシェードか」

「・・・?」

「私は第一作戦隊長のルルーシャという。・・・貴様の事はそこの、《勇者の末裔》であるクロウから聞いた。・・・単刀直入に言おう。貴様、一体何者だ?」


後ろを見ると、クロウの顔が凄く歪んでいた。・・・どうやらクロウが苦手なタイプらしい事は判った。

俺はルルーシャという女性を見て、自分が何者だ、といわれた返答を返す。


「・・・俺は《エルドの樹》に育てられた只の魔術師です」

「只の魔術師がソコまで禍々しい魔力を持つ訳が無いだろう。その禍々しい気配と魔力は、何だ。答えろ」


呪われた右目の事を言っているのだと、直ぐに気付いた。

わかる人間にはわかるのだろう。

俺は右目に手を添えて、溜息を吐く。

口を開けて、何かを喋ろうとした瞬間―――。


「アルト君!一緒にコッチに来て食べよう!」

「え、あっ・・・」


突然向こうからレイスの声が聞こえて、言いそびれて俺は動揺する。


「・・・行って来い、アルト」

「えっでも・・・」

「今くらい羽目を外せ。レイスが呼んでるぞ」


俺は頷いて、直ぐにレイスの元へ走った。


「・・・何故邪魔をした?」


ルルーシャの周りに、殺気が纏わり付く。

クロウはアルトが向かった場所を眺めながら、頬を吊り上げ作り笑いをする。


「決まってる。俺はお前が嫌いだからだ」

「・・・ハンッ・・・」


ルルーシャはその返答に苦笑する。

「随分嫌われているな、私は」と、そういってどこかへ行ってしまった。





「・・・アルト君」

「んぅ?」


アノ後。

やはりというべきなのか、またパーティらしき物が行われた。

俺は口に肉を頬張りながら首をかしげた。

レイスは苦笑しながら俺が肉を飲み込むのを待って、喋り始める。


「あまり、自分の事を詳しく言わない方が良いよ」

「・・・え?」

「色々、ややこしくなりそうだから」

「あ、・・・うん」


そのまま頷いて、俺は更に肉を頬張った。

―――フレルルがレイスに近付いて、溜息を吐く。


「・・・貴方。一体何者なんです?」

「・・・さぁ。何者でしょうねぇ」


レイスは作り笑いをしながら答えた。

フレルルはその作り笑いに嫌気がさす、という様に顔を歪ませる。


「・・・私の術でも、貴方の正体はつかめませんでした」

「当たり前だよ」


そういうとレイスは立ち上がって、フレルルの方を改めて見据える。




「彼に何か言ったみたいだけど・・・彼にもしも、何かあったら僕が許さないから」



「・・・」

「僕は天使だって殺せるんだよ?」




その表情は。

真剣で偽りなく、嘘でなく、道化ではなく、優しい微笑などではなく、冷笑でもなく。

無表情だった。




「・・・じゃあね」

「・・・ッハァ」


フレルルは彼が去って行った後、自分も部屋に向かう事にした。

何時にもまして短い・・・。

スイマセンorz

そして遅くなって申し訳ない・・・。

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