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浸透世界のデリット  作者: 朝露 壱
第一章 魔術師アルト・クレッシェード
4/9

1―3 「ゆっくりと回りだす針」

「・・・」


暗い何処かの屋敷内。

まるで王が座るような大きな椅子に、長い黒髪を垂らした男は座っていた。

男は何も言わず、座っているがその顔は何時もどおりの無表情ではなく、少々歪んだ物だった。

しばらく目を閉じた男は、ある映像を見続けた。

1人の少年がエルドと呼ばれる、聖なる大樹の前に佇み、天を仰いでいる映像。

そしてその少年が何者なのかを、その少年が何故自らの《力》と共鳴しているのかを。

その男は、目を開く。


「どうかなされたのですか?」


目の前に立つ、金髪の少年は尋ねた。

フッと、微笑んだ後、口を開いた。


「人間とは、愚かな物だ・・・。・・・だが、もしかするとそうでない者も居るのかも知れんな」

「・・・?」

「・・・ククッ・・・面白いな。・・・因果とは」









「・・・というわけで、今回から我が部隊に配属されたアルト・クレッシェードだ」

「・・・えぇっと・・・。よ、よろしくお願いします・・・」


確実に緊張した声でアルトは頭を下げた。

あの後、クロウに案内されて此処、魔法騎士団第零部隊に来ていたが・・・。

周りの視線が痛く突き刺さる・・・。

横をチラッと見るとクロウが少しだけ笑っていた。



(コイツ今すぐ殴りてぇ・・・)



自分でも顔が火照っているのが判った。

視線が突き刺さるのも無理は無い。

その理由は、アルトの隊服が少なからず関わっているだろう。

他の者を見ると黒が強調された隊服ばかりなのに対し、アルトが着た隊服は長い黒マントに元は彼等と同じであっただろう隊服は、白色に変えられていた。

一見すれば何処かの貴族の様であるその風貌は、視線を集中させるのには十分だった。


「アルト・クレッシェード。俺は他の仕事がある。しばらく休んでいろ。長旅だったからな」

「・・・マジで?」


俺を置いていくのかよ!こんな視線が突き刺さるような場所に!

すると殺気めいた物を感じてすばやくしゃがんだ途端、壁にはナイフが突き刺さっていた。



―――ヒュガッ



「うぉあっ!?」



次々と飛んで来るナイフに、アルトは全てそれらを避ける。

全部で七本くらい飛んだあと、殺気とナイフが飛んでくる事は無かった。



「へぇ。お前全部避けれるんだ」

「・・・あーっと・・・。えー・・・?」



ナイフと目の前に立ちはだかる紅い髪の青年を見比べたアルトは恐る恐るナイフを一本引き抜いた。



「・・・自己紹介からだな。さっきナイフを投げたのはこの俺だ。名は、アイリス・クラウディアという」

「・・・はぁ・・・」


すると今度は黒髪の青年が近付いて、アルトに手を差し伸べた。

他の者も前に出て、アルトの前に立つ。


「俺の名前はレイリア・ファースト。魔物使いだ。アイツのナイフを避けれるなんてお前大した奴だな」

「私の名はフレルル・シャイテットといいます。これからよろしくお願いしますね。アルトさん」


その場に居た全員が一通り名乗った後、レイリアという青年が笑った。


「・・・まぁ、大体これくらいだな。・・・あーっと。他にもメカニックのアイツが居たか・・・」

「?」

「ま、そのうち会えるだろう。それより――――――」


一度言葉を病め、息を大きく吸ったレイリアは声を大きく張り上げた。


「歓迎会だッ!!!」

「おぉぉーーーーッ!!!」

「・・・は、え・・・歓迎会!?」

「まず肉の用意だ!」

「既に用意済みですわ」

「流石だフレルル!直ぐに鉄板の準備だ!」


ワイワイと周りが騒がしくなる中、アルトは切り替えの早さに呆然と立ち尽くす。

え・・・いや、歓迎会?

嬉しいけども・・・何か・・・。


「・・・オイ」

「え、あ。えーっと。クラウディア・・・さん」

「クラウディアでいい。・・・最初は慣れないだろうが、直ぐに慣れる。ここのやつらはバカが多いからな」

「・・・バ・・・はぁ・・・」


すると遠い場所からまたしても声が張り上げられた。


「オーイ!アルト君!早くしないと肉無くなるぞ!」

「えっ・・・いや、俺は・・・」

「遠慮しなくていいから!早く来い!クラウディアも!」

「・・・行くぞ。あいつ等はモンスター並みの肉食だからな。直ぐなくなる」

「・・・えぇ・・・」


たった一日でこれだけ疲れるとは思わなかったアルトは、肩を落とし、彼らの元へ歩いていった。

席に座ってしばらくドンちゃん騒ぎをした後、全員が酔いつぶれてしまった。

アルトは苦笑しながら、バーベキュー用の焚き火に当たり続けていた。

空を見上げ、月を見ていたとき。

フッと、エルドを思い出す。


「・・・ハァ・・・」


駄目だな、ここまで来ると。

俺は親ばかなのか?・・・いや、何か・・・俺が親離れできてないって感じか・・・。



――――コツッ・・・



「・・・?」



靴の音が聞こえて、後ろを振り向く。

ソコに立っていたのは、水色の髪と透き通った白色の目をした少女だった。

髪と同じ色の水色のワンピースを着て、何故かウサギの人形を抱きしめてコチラをジッと見ている。



「・・・アルト・クレッシェード・・・」



少女がボソリと呟いて、コチラへゆっくりと近付いてくる。



――――ズキンッ・・・



「!」



右目が痛み出し、右手で左目を抑える。

スッと、少女がその右目に触れようとしているのかウサギの人形を抱いている片方の・・・左手をアルトの右目に触れた。


「呪われた・・・右目・・・。神に忌み嫌われしその右目は・・・」


少女はぼそぼそと喋り、右目が段々と痛み出す。

視界が歪んでいく。

神に忌み嫌われし右目?

何だ、それ。

少女の紡ぐ言葉が、段々と痛みを引き出しているように思えた。

少女は次々と言葉を紡いでゆく。

少女から発せられるのは神、そして忌み嫌われし、という単語が多かった。


「その右目の扱いには・・・気をつけたほうが、いい」


そして少女はひとしきり言葉を言うと、スッと消えて行った。

痛みがゆっくりと、和らいでゆく。


「・・・」


なんだったんだ?あの少女は。

アルトは右目に触れ、ゆっくりと月を見上げた。


「・・・?」


―――ザザッ・・・


月が一瞬赤く思えたが、どうやら幻覚だったようだ。

幻覚だったと、信じたかったのかもしれない。

アルトはゆっくりと、その場で目を閉じた。









――――数千年前。

《勇者》と謳われた者が此処に、愚かな人間を連れて立ちはだかった。

その中に居た、魔術師は俺に静かにこういった。



「お前は寂しい生き物だな」



何がだ。

確かそんな事を、数千年前、魔術師に聞いた。

《勇者》達は既に気を失い、残りはこの愚かな人間の仲間をしている我々《魔族の血》を持つ者の魔術師だけだった。

直ぐに殺せばいいはずだ。



なのに。


「お前はとても、孤独だ」


その言葉が、俺を動揺させた。

それに、魔術師は攻撃を一切してこない。


「・・・魔王というのも、楽じゃないようだな」


澄んだ瞳を見せ、確かに魔術師は微笑んだ。

ドコまでも見透かされたようなその瞳が、どうしても俺を動揺させる。


「人間と魔族の違いなんて、無いのに。何故、戦おうとするんだろうな」


そんなの。

魔術師は右手をスッと前に突き出した。


「魔王よ。私は勇者を護る元《魔族》の魔術師なり。反逆者として・・・殺したくば殺すが良い」


その言葉に呼応する様に、俺はその魔術師を殺した。

《反逆者》として。

《魔王の命を狙ったもの》として。


「・・・」


目を覚まし、俺は周りを見渡した。

何の変哲も無い、自室だった。


「・・・」


真っ赤に血塗れた右手を見て、勿論、幻覚だったが・・・。

俺は顔を歪めた。


「・・・」


目を閉じ、精神を集中させる。



―――――そこに、懐かしい魔力を感じた。



・・・微かだが、確かに美しいその漆黒の魔力は、まるで自分を誘っているようにも思えた。

そうして世界は、魔界は動き出す。

ゆっくりだが、確実に。


・・・また、あの魔術師に会えるだろうか。


「ハッ・・・」


死人に会えるなど、可笑しなことを言う。

けれどもそれもまた、何故か可笑しな事だとは思わなかった。

会えるような気がしてならない。



「・・・待っていろ。魔術師・・・」



俺は少し笑い、側にあった上着を着て次の作戦へ向かった。

今回も短いですね・・・スイマセンorz

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